ソフトバンクGがパトロン!閉鎖されたArgo AI、自動運転トラックで新会社

創業者らが「Stack AV」を設立



出典:ソフトバンクグループ公式ライブ中継

2022年10月に事業閉鎖を発表した自動運転開発企業のArgo AI。その創業者らが新しいスタートアップを立ち上げた。自動運転トラックを開発する「Stack AV」だ。

そしてそのStack AVを日本のソフトバンクグループが支援していることが明らかになった。投資額は公式には明らかにされていないが、米メディアによると10億ドル(約1,480億円)という情報がある。


■Argo AIの創業者らが新たにベンチャー
出典:Stack AVプレスリリース

Stack AVは、Argo AIの創業者でCEO(最高経営責任者)であったBryan Salesky氏と、同じく創業者で社長であったPeter Rander氏、CTO(最高技術責任者)を務めていたBrett Browning氏により米ペンシルベニア州ピッツバーグで設立された。AI(人工知能)を搭載したトラックの自動運転技術を開発している。同社によると、すでに15の州で150人の従業員を雇用しているという。

自動運転ラボでも、新会社立ち上げについて2023年3月に記事にしているが、その時点では自動車メーカーではない企業から本格的な自動運転開発企業の立ち上げを支援され、新会社の立ち上げに至ったと報じられていた。

今回その支援した企業が、ソフトバンクグループだと判明したというわけだ。Stack AVのCEOであるSalesky氏は「独自の技術と専門知識、そしてソフトバンクグループという長期的なパートナーのコミットメントにより、トラック輸送と物流業界に革命を起こすことができると確信している」と語っているようだ。

■Argo AIが事業閉鎖した経緯

Argo AIは、自動運転プラットフォームやLiDAR開発を手掛ける有力スタートアップであった。2016年に設立され、すぐにフォードから総額10億ドル、2019年にはVWから合計26億ドルの資金を調達した。2022年の自動運転企業の資金調達企業では、36億ドルで1位になるなど、経営は順調と思われていた。


しかし、約2,000人いたとみられる従業員のうちの150人を解雇したことが2022年7月に報じられた。これについて同社は、今後のさらなる成長と自動運転車両の配備に向けて必要な措置だと説明していた。

その後、2022年11月に事業閉鎖に追い込まれた。出資元のフォードとフォルクスワーゲングループ(VW)がともに投資を引き上げたことが理由だ。フォード、VWともArgo AIの従業員に対する雇用を確保し、各社で自動運転分野のプロジェクトを発展させていくという考えであったようだが、実際どのくらいの数の人材がフォードやVWへ行き、Stack AVへは元Argo AIの従業員が何人流れたかなどについては不明だ。

■ソフトバンクグループ×自動運転に注目

ソフトバンクグループと自動運転技術の関係は深い。ソフトバンクグループの傘下となった半導体設計企業の英Arm(アーム)は自動運転分野で精力的に事業拡大を図っている。

また投資部門ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)は、自動運転開発を手掛けている米Aurora Innovationや、配車サービス大手で自動運転も行う中国のDidi Chuxing、自動運転トラックを手掛ける中国のJD Logisticsにも投資を行っている。ソフトバンク子会社のBOLDLYは国内の自治体や企業と組んで、自動運転バスの実証や実用化に取り組んでいる。

ソフトバンクグループが新たに投資したStack AVによる自動運転トラックの開発状況を、今後注視していきたい。

【参考】関連記事としては「自動運転業界、誰も予想してなかった「Argo AI閉鎖」の背景」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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