中国×自動運転、最新動向まとめ ユニコーンも表舞台へ

自動運転タクシー、2019年内に実用化?





自動運転分野において瞬く間に開発大国となった中国。米国や欧州勢に負けじと国ぐるみで技術開発や実用化を推し進めている。







同分野における中国の国策とはどのようなものか。民間企業の取り組みとともに、最新の動向をまとめてみた。

■中国における自動運転関連の法令・条例など
中国と自動車社会、インフラ整備は割と最近

日本などと比較し自動車社会の到来が遅かった中国では、現近代的な同国初の道路交通安全法が2004年に施行されるなど、道路インフラの本格的な整備をはじめ良好な交通環境の構築に取り組み始めたのは割と最近の出来事だ。

自動運転に関して明確に定めた法律はなく、中国政府の方針のもと各省や直轄市などが独自に規制を敷いているのが現状のようだ。政府の方針は、自動運転開発をはじめとするスマートシティの確立に向けられており、その背景には同国の産業構造の変化がありそうだ。

かつての中国は世界各国の企業からさまざまな製品の部品や電子機器などの製造を請け負って出荷する輸出産業が主体となっていたが、発展とともに貿易不均衡や人件費の高騰などが顕在化し、新たな成長モデルが必要となった。

そこで政府は、内需拡大とともに世界一の経済大国の地位を確立するため、さまざまな分野でデジタル化やネットワーク化、スマート化を推進すべく「中国製造2025」(2015年)や「自動運転技術に関するロードマップ」(2016年)、「自動車産業の中長期発展計画」(2017年)、「知能自動車創新発展戦略」(2018年)、など、自動運転やAI(人工知能)、ロボティクス技術の開発などを推進する施策や基準を次々と打ち出した。

2018年に「知能自動車路上試験の国家標準」

法規関係では、2017年に同国工業情報化部が「コネクテッド車ネットワーク構築の国家基準」を発表。コネクテッドカーの実現に向けセキュリティやHMI(ヒューマンマシンインタフェース)、アシストコントロールなどの技術要件を定め、2020年までにADAS(先進運転支援システム)を含む低レベルの自動運転コネクテッドカーの基礎を構築することとしている。

また、2018年には「知能自動車路上試験の国家標準」を発表し、自動運転車の公道実証試験の技術要件などを明示している。自治体としては、上海市が2018年3月に「ICV路上走行試験管理弁法」を試行的に発表するなど、この年から公道実証の道が大きく開かれ、北京や深センなど各市で実証が始まった模様だ。

【参考】中国における公道実証ガイドラインについては「中国、自動運転走行テストのガイドライン発表 非公共ゾーンでの事前試走義務付け」も参照。

■中国における自動運転技術の開発企業
百度:自動運転タクシーの運用開始間近か 実証加速

政府が重点分野に掲げる自動運転、スマートシティ、医療、音声認識の4分野のうち、自動運転のリーダー企業として選ばれている百度(バイドゥ)は、2017年4月に自動運転車向けのソフトウェアプラットフォームをオープンソース化するプロジェクト「Project Apollo(阿波羅)=アポロ計画」に着手し、自動運転開発に本腰を入れ始めた。

アポロ計画は、バイドゥが「アポロ」と名付けたAIを活用し自動運転を制御するソフトウェアの技術情報をオープン化したプラットフォームサービスで、HDマップサービスや自動運転シミュレーションエンジン、深層学習アルゴリズムなどのリソースを共有することが可能で、開発スピードを早めることができる。完全自動運転車の量産を2021年に開始することを目標に掲げている。

現在オープンソースとして公開しているのは、ソフトウェアプラットフォームのほか、ハードウェア開発プラットフォームやクラウドサービスプラットフォーム、ターンキーソリューションなど。短期間のうちにバージョンアップを重ねており、2019年7月にアポロ5.0がリリースされている。

参画企業には、中国国内の第一汽車、北京汽車、長安汽車、東風汽車、長城汽車、奇瑞汽車、江淮汽車、フォルクスワーゲンの中国法人などをはじめ、独BMWやダイムラー、スウェーデンのボルボ、米フォード、韓国の現代、英ジャガーランドローバーなどの海外自動車メーカーや、独ボッシュ、コンチネンタル、ZF、仏ヴァレオ、米エヌビディア、マイクロソフト、インテル、ベロダインライダー、日本からはホンダ、パイオニア、トヨタ自動車など、世界各地の自動運転開発関連企業が名を連ねている。2019年10月時点で、148の企業や研究機関などがパートナー登録しているようだ。

各社と連携した取り組みでは、同国のバス車両メーカー金龍客車と自動運転バスの量産化を2018年7月にも開始することを明らかにしているほか、同国のカーシェアリング企業PandAutoと自動運転車を活用した自動車シェアサービス「自動運転モデルパーク」をスタートしたことも発表している。同年11月には、第一汽車集団有限公司(FAW)と共同でレベル4クラスの自動運転車を開発し、2020年末ごろから量産に乗り出すことなども報じられた。

海外勢では、米フォードが2018年10月、中国国内の公道で自動運転の実証実験を行うことを発表している。実験期間は2年間を予定しており、百度が開発した自動運転ソフトを搭載し、自動運転レベル4の実用化を目指すこととしている。スウェーデンのボルボ・カーも同月、百度と共同で自動運転EV(電気自動車)タクシーの開発を進めることを発表している。

実証実験では、2019年7月までに北京市内における公道走行実験に関するライセンスが付与されたほか、9月までに武漢市で自動運転サービスの商用ライセンスが付与されたことが報じられている。2019年下半期にも自動運転タクシーの運用開始を目指す動きがあり、実用化に向けた取り組みが加速している状況だ。

Didi Chuxing(滴滴出行):分社化で自動運転開発を加速

配車サービスで世界最大手争いを繰り広げるDidi Chuxing(滴滴出行/ディディチューシン)も、自動運転開発を本格化している。中国と米国の研究開発センターでDiDiのプラットフォーム上で生成された膨大なデータを自動運転アルゴリズム訓練の基礎として役立て、V2R(Vehicle-to-Road/路車間通信)やV2V(Vehicle-to-Vehicle/車車間通信)をはじめとしたさまざまな研究を進めている。

2018年には、米カリフォルニア州で自動運転車の公道試験走行の許可を取得した。また、DiDiの配車アプリへの登録ドライバーの車両10万台に車載カメラを設置し、画像のリアルタイム解析を進めることなども発表されている。同年11月には、カナダのトロントにもラボを立ち上げ、研究ネットワークを拡大している。

2019年には、社内の自動運転開発部門を独立し、自動運転開発に特化した新会社の設立を発表した。DiDiのプラットフォームのリソースと技術的利点を統合し、革新的な技術開発への投資を継続するとともに、自動車メーカーらとの協力体制をより深め、効率的で安全なモビリティ環境の構築に向け自動運転技術の推進を積極的に模索していくこととしている。

ライドシェアをはじめとした配車サービスの基盤は確立されており、開発次第で自動運転タクシーの導入が一気に進みそうだ。

【参考】DiDiの自動運転分社化については「中国DiDi、自動運転部門を分社化 自動車メーカーとの共同開発体制など強化」も参照。

Pony.ai:レベル4自動運転タクシーの配車サービスを2019年末にも計画

中国の広州に設立されたスタートアップで、2018年1月に広州市南沙区で自動運転車の走行試験を開始しており、一般市民を乗せたパイロットサービス「PonyPilot」も行っている。2019年6月には、米カリフォルニア州で自動運転タクシーの走行テストの許可を取得した。2019年末には自動運転レベル4相当の開発車両の商用化を目指し、配車サービスを始めていく計画という。

2019年8月には、トヨタ自動車と自動運転の分野で提携することも発表している。両社は自動運転車の開発と展開を加速させるため、自動運転車の試験運用で協力することとしており、レクサス「RX」にPony.aiの自動運転技術を搭載して公道走行テストを行う計画だ。

Momenta:ユニコーン企業入りで開発に弾み

2016年創業のスタートアップで、ディープラーニング(深層学習)のアルゴリズムを構築し、自動運転車における頭脳となるAI開発などを手掛けている。

特に画像認識・判断を強みとしており、これまでに自動運転の基盤となるインフラストラクチャープラットフォームの構築をはじめ、センサー類の状況認識、精度とポジショニングマップの確立、状況判断といった一連のソフトウェアアルゴリズムの構築、高速道路や都市などを想定したさまざまな自動運転レベルを確立した運転ソリューションの形成などに取り組んできた。同社が開発しているシステム・ソフトウェアは、ティア1への納品を想定しているようだ。

2018年10月に、投資家や政府系基金団体から10億ドル(約1150億円)の資金調達を発表するなどユニコーン企業入りも果たしており、今後の動向に注目が集まる。

WeRide.ai:自動運転タクシー事業に向けジョイントベンチャー設立

2017年4月に米シリコンバレーで設立されたスタートアップで、同年12月に本社を中国広州開発区に移転し、中国市場向けにAIを駆使した自動運転レベル4の自律型車両の開発を進めている。

2018年10月には、ルノー・日産自動車・三菱自動車が設立した戦略的ベンチャーキャピタルファンド「アライアンス・ベンチャーズ」が同社に3000万ドル(約34億円)を出資しており、これをもとに、2019年に自動運転車500台を用いて累計走行距離を500万キロまで伸ばすとともに、広州市と安慶市で主要パートナー企業とともに運用・商業化に向けた実験を行う計画を発表している。2019年3月には、自動運転レベル4を搭載した車両のプロトタイプも発表している。

2019年8月には、同国タクシー大手Baiyun Taxi Groupとジョイントベンチャー「WeRide RoboTaxi」を設立したと発表した。自動運転タクシー(ロボタクシー)事業の展開に向け、スタートアップならではのスピード感でサービス導入を進めている印象だ。

【参考】WeRide.aiについては「中国WeRide、グーグルに続き自動運転タクシーを商用化へ?」も参照。

HUMAN HORIZONS:高級EV「HiPhi」量産を発表

2017年創業のEVスタートアップで、スマートカーをモバイルセンサーやデータソースとして機能させる新しいデジタル情報プラットフォーム「Human Oriented Architecture(HOA)」などの開発を進めている。

「新しいスマート車両の開発・製造」「車両やそれに伴うネットワークと資源のシェア」「コネクテッドカーと先進の自動運転システム」「スマート輸送アプリケーション」「スマートシティ開発」の5つの分野に重点を置いており、ドライブバイワイヤー技術によりハンドルを3つの座席のどの位置にも動かすことができる「RE.C.E.S.S.」システムを搭載したコンセプトカー「Concept H Hypervelocity」なども発表している。

2019年8月には、高級EV「HiPhi」の量産準備が完了したことなども発表されている。

Horizon Robotics:エッジAIプロセッサーなど開発

AIソリューションプロバイダーのスタートアップであるホライゾン・ロボティクスは、エッジAIプロセッサーの大量生産・商用化で注目を浴びている。2019年2月の資金調達Bラウンドでは、6億ドル(約650億円)を調達した。パートナーには、独アウディやボッシュなどが名を連ねているようだ。

2019年7月には、コネクテッドカー通信ソリューションのプロバイダーである中国のGosuncnテクノロジーグループとの戦略的提携も発表された。自動運転技術をはじめ、運転手行動監視システム(DMS)やAIコックピットなどに関するマーケティングに共同で取り組むほか、AI技術を活用した製品開発なども推進していく方針だ。

■「中国×自動運転」の注目トピックス
習近平氏肝いりの自動運転シティ構想

習近平国家主席肝入りの国家プロジェクトとして2017年に発表されたスマートシティ構想は、自動運転社会を見据えた大規模な新都市開発として注目を集めている。信号機や建物などインフラの至るところにセンサーを設置し、歩行者や障害物、路面状況などを自動車に送信するインフラ協調型のまちを作る計画で、上海や北京、重慶など主要6都市近郊で計画が進められているという。

上海郊外にある安亭地区では、関連企業の集積地が作られ、人が住んでいない地域に試験区域を整備し、5キロ平方メートルのテストコースを設けているようだ。また、北京の南西100キロメートルあまりに立地する雄安新区は、将来的な開発面積が2000平方キロメートルに及ぶという。東京都に匹敵する面積で、中国の本気度がうかがえる開発規模だ。

東京都の小池百合子知事も現地視察を行ったようだ。

【参考】自動運転シティ構想については「狙いは?小池都知事、中国の自動運転シティ「雄安新区」視察へ」も参照。

日本と中国、自動運転分野における協業進展

世耕弘成経済産業大臣(当時)は2018年5月28日、日中韓情報通信大臣会合への出席のため来日したミャオ・シュー中国工業信息化部部長と会談し、自動車分野において7月をめどに自動運転政策を議題とする課長級対話を開催するなど両国が連携していくことに合意した。

同年10月には経済産業省と中国工業信息化部が「第1回・自動運転に関する日中官民合同セミナー」を東京都内で開催するなど、自動運転分野における協力体制が構築されつつあるようだ。

同月には、一般社団法人日本自動車工業会と中国自動車工業協会が自動運転など次世代自動車の技術開発で連携するという内容の覚書も締結しており、協力分野の具体化などが水面下で進んでいるものと思われる。

民間では、トヨタ自動車が中国との連携を加速させている印象が強い。自動運転やAIの研究開発拠点を中国の北京市などに設置する方針であることが2019年2月に報じられたほか、同年7月には百度のアポロ計画参加も報じられている。

また、同月にはDiDiと中国におけるMaaS領域での協業拡大に合意したと発表。8月には、Pony.aiと自動運転技術の開発などで協業することも発表されている。

自動運転開発で先行する欧米に立ち向かうアジア連合――というわけではないだろうが、技術の吸収にどん欲な中国勢と、ポテンシャルの大きい中国市場に期待する日本勢の思惑が一致した感が強く、今後の動向に要注目だ。

【参考】トヨタの中国進出については「トヨタ自動車、自動運転とAIの研究拠点を中国に開設か」も参照。

■【まとめ】世界の工場から開発大国へ 勢いはまだまだ続く

公道実証試験も本格化し、自動運転タクシーの実用化も2019年度内に見込まれるなど、開発の勢いはますます加速している印象だ。世界各国の開発企業も、市場的魅力を背景に中国国内での開発や連携を強化する流れが続いている。

貿易摩擦などの懸念は依然として残るものの、自動運転分野における中国の存在感は巨大化している。かつての「世界の工場」から開発大国への脱皮は着実に進んでいるようだ。

【参考】関連記事としては「自動運転、ゼロから分かる4万字まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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