
これまで米国・中国内に限られていた自動運転タクシーサービスが広がりを見せ始めた。中東や欧州ではすでに無人サービスが実現しており、グローバル化の波が本格的に押し寄せてきた。
この波と同時に注目が高まっているのが配車アプリだ。これまでは各開発事業者が自前のアプリでサービスを展開するのがマストとなっていたが、多都市展開、グローバル化とともに配車専門プラットフォーマーの土台で競争を開始する動きが活発化してきた。
配車アプリに焦点を当て、自動運転タクシーの最新動向に迫る。
記事の目次
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■自動運転タクシーの配車アプリとは?
グローバル化とスタンダード化でシェア獲得競争が本格化
自動運転タクシーの配車アプリは、タクシーやライドシェアなどの配車アプリ同様、アプリ内の地図から現在地と目的地を設定し、効率的に配車可能な近傍の車両とマッチングする。アプリ内決済も標準装備されている。
相違点としては、ドライバーがおらず車内無人のため、ドアの解錠やトランクの開閉、車内温度の設定、緊急時のサポートなど、さまざまな機能が付加されている点が挙げられる。
自動運転タクシー開発事業者自らが独自アプリの開発・実装を行うのがこれまでマストだったが、利便性を高めるため既存の配車サービス大手と手を組むことも珍しくなくなってきた。その理由は、グローバル化と自動運転タクシーサービスのスタンダード化だ。
特にグローバル展開する上では、進出先で実績を持つアプリとの連携を重視することは珍しくない。その国の文化にあったUI・UXを一から構築する手間や、既存サービスの輪の中に割って入る手間を考慮すれば、すでに浸透しているアプリに便乗する方が効率的だ。
現在は自動運転タクシーそのものが希少性を持ち、特別なサービスとして受け止められることが多いため独自アプリでも成立しやすいが、自動運転タクシーから新規性が失われ、スタンダード化するにつれ他の移動サービスと真正面から競争しなければならなくなる。その上でシェアを獲得しなければならないのだ。
そうした未来を見据え、開発各社はどのような戦略を採用するか。配車サービス・アプリに係る戦略上の役割もどんどん増していくことになりそうだ。
以下、代表的な開発事業者の動向を交えつつ、自動運転タクシーを利用可能(見込み含む)な配車アプリを紹介していく。
■Waymo(アメリカ)
グローバル化で他社アプリとの連携進む可能性も

2018年に自動運転タクシーサービスを開始したパイオニア的存在のWaymo。2026年6月現在、北米11エリアでサービスを提供しており、さらにロンドン、東京を含む21エリアで実用化に向けた実証を重ねている。一週当たりの配車回数は50万回を突破したという。
迎車予定時刻を最短 1 時間後まで設定可能な予約機能や、家族などと最新の到着時間を共有する機能、最大4ヵ所まで複数の経由地を追加できる機能なども備わっている。
サービス展開中の11カ所のうち、9カ所で自社アプリを導入しているが、オースティンとアトランタではUber Technologiesアプリのみでサービスを提供している。他社との連携を模索していく可能性が高そうだ。
進出予定の日本ではGOとパートナーシップを結んでおり、GOのタクシー配車の選択肢の一つとしてWaymoの自動運転タクシーが位置づけられるものと思われるが、別途自社アプリを導入するのかなど注目が集まるところだ。
【参考】関連記事「Google/Waymoの自動運転戦略まとめ ロボタクシーの展開状況は?」も参照。
■Tesla Robotaxi(アメリカ)
自社アプリによる独自路線で覇権狙う

EV大手テスラは、2025年6月にテキサス州オースティンでロボタクシーサービスを開始した。現在、ダラス、ヒューストンにエリアを拡大し、一部では車内無人化も果たしている。サンフランシスコでも自動運転タクシー化を見据えたタクシーサービスを実施している。
Tesla Robotaxiアプリを利用するにはテスラのアカウントを取得する必要がある。配車依頼後、ロボタクシーが到着したらアプリに表示されているナンバープレート番号と照合し、乗車する。
エアコンの設定、シート位置、音楽などをはじめ、乗車状況の確認や降車場所の変更、サポートリクエストなど、重要な情報はアプリと車両のタッチスクリーンに表示される。
フリートは現在Model Yで構成されているが、将来的には専用のCybercabが導入される予定だ。テスラはE2Eモデルによるレベル5の実現を目指しており、全米をはじめ全世界で自動運転を実現する目標を掲げている。
独自路線を貫いているため、おそらく他社アプリとの連携には消極的で、自社アプリによる覇権を狙う可能性が高そうだ。将来、テスラ主導のパートナーシップが結ばれることがあるのかなど、動向に注目が集まるところだ。
【参考】関連記事「テスラの自動運転機能(FSD)とロボタクシーを徹底解説」も参照。
■Zoox(アメリカ)
Uberとパートナーシップ締結
アマゾン傘下Zooxは、2025年9月にラスベガスでサービスインし、現在サンフランシスコでもアーリーライダーを対象にサービスを開始している。マイアミ、オースティンでも実証に着手している。
自社アプリ「Zoox」でサービスを提供しているが、2026年3月にUber Technologiesとのパートナーシップが発表され、2026年夏からラスベガス、2027年にはロサンゼルスでUberネットワークにZooxのサービスが導入される予定としている。
アマゾン傘下として、今後物流におけるラストマイルへの自動運転技術導入なども見据えているのか気になるところで、こうした面も含めたアプリ展開にも注目したい。
【参考】関連記事「AmazonとUberが組んだ!ラスベガスで自動運転タクシーが拡大中」も参照。
■Apollo Go(中国)
中国内ではApollo Go 、海外ではUberやLyftとパートナーシップ
中国のテック企業百度は、自動運転タクシーサービス「Apollo Go」を北京や上海、深セン、武漢など10都市以上で展開している。同名のアプリが主力で、中国内の他社配車サービスとも連携しているようだ。2025年10月時点で、一週当たり25万回のライドを実現している。
百度の自動運転タクシーは2025年に ドバイ と アブダビ に進出し、無人運転テストと商業化運営サービスの許可を取得している。2026年3月にドバイで正式にサービスインした。6月にはスイスのバス運営会社PostBusと提携し、レベル4タクシーの運営許可を取得したという。
Uber TechnologiesやLyftともパートナーシップを結んでおり、ドバイなど海外ではUberのグローバルな配車ネットワークを主力に展開していく戦略のようだ。
【参考】関連記事「百度(Baidu)の自動運転戦略」も参照。
■Pony.ai
中国内はPonyPilot、海外では…

Pony.aiは、北京、上海、広州、深センで公式アプリ「小馬智行(PonyPilot)」による自動運転タクシーサービスを提供している。
海外ではクロアチア、シンガポール、韓国、カタール、ルクセンブルクなどで実用化・サービス実証を進めており、クロアチアのザグレブでは提携先のVerneアプリのほか、Uberでも配車可能になるとしている。韓国ではGemVaxLinkをパートナー、シンガポールではタクシー事業者のコンフォートデルグロと手を組み、それぞれ実証を進めている。
ルクセンブルクでは、ステランティス、Boltとパートナーシップを結んでおり、Boltアプリで配車される見込みのようだ。
【参考】関連記事「中国のトヨタ系企業、ロボタクシーの「黒字化」達成」も参照。
■WeRide(中国)
海外ではUberやGrabと提携

WeRideは、広州や北京など中国内では自社アプリ「WeRide」でサービスを提供している。テンセントのスーパーアプリ「WeChat」からも自動運転タクシーを予約できるミニプログラム「WeRide Go」をローンチしている。
海外では主にUber Technologiesと手を組んでおり、ドバイやアブダビ、マドリード、チューリッヒなどではUberアプリで配車されている。シンガポールではGrabと手を組んでいるようだ。
【参考】関連記事「米Uber、ドバイで自動運転タクシーを展開 中国企業WeRideとタッグ」も参照。
■Uber(世界展開)
開発各社のグローバル展開の波に乗り世界の覇者へ

グローバル化が進む自動運転タクシーにおいて、台風の目となるのがグローバル配車プラットフォーマーだ。その代表格であるUber Technologiesは、WaymoをはじめZoox、Motional、Avride、Nuro、Avride、WeRide、Pony.ai、Momenta、Wayve、Autobrainsなど、名だたる自動運転開発事業者各社とパートナーシップを結び、自社プラットフォームと各社の自動運転タクシーの統合を進めている。
米国では、アトランタとオースティンでWaymoのサービスを提供しているほか、ラスベガスでMotionalやZoox、ダラスでAvride、サンフランシスコでZooxのサービスを展開する計画が発表されている。
また、NuroとLucid Groupとともに2026年後半にもサンフランシスコで自動運転タクシーを開始予定で、Rivianとも自動運転技術の性能目標達成を条件に最大5万台の自動運転タクシー導入する計画を発表するなど、プラットフォーマーの枠を超えた戦略に足を踏み出した。
海外では、WeRideとドバイやアブダビ、マドリード、チューリッヒ、Autobrainsとミュンヘン、Verne・Pony.aiとザグレブ、Wayve・日産と東京など、各地でプロジェクトが進行している。
自動運転開発で先行する米中勢の海外展開の受け皿となっており、今後、自動運転サービスの開拓地となっている中東や欧州でどこまでシェアを高めていくか注目が集まるところだ。
プラットフォーマー関連では、Lyftが早くからMotionalと手を組んでいるほか、Mobileyeと丸紅による自動運転タクシー事業の受け皿となる計画も持ち上がっている。海外では、百度と手を組んで欧州展開を目指す計画が明らかになっている。
東南アジアを拠点とするGrabは、WeRideと手を組みシンガポールで事業展開を進めている。エストニアのBoltは、ステランティスとPony.aiと提携し、ルクセンブルクで自動運転タクシー実用化に向けたプロジェクトに着手した。今後、欧州各地に拡大していく構えだ。
インテル系Moovit は、グループのMobileyeによる自動運転タクシーサービスを2027年にも米国内の都市で開始予定としている。
こうしたプラットフォーマー間の競争は、今後激化していくことは間違いないだろう。
【参考】関連記事「Uber、ロボタクシーで「八方美人」化!トヨタ・日産・ホンダとも協業」も参照。
■GO(日本)
移動サービスのDXを図る急先鋒

日本国内最大手のタクシー配車アプリ「GO」を展開するGOは、Waymoと日本交通とともに東京都内での自動運転タクシー事業化に向け実証を進めている。
GOは、前身となるJapanTaxi時代からティアフォーなどの自動運転実証に協力するなど、早くから自動運転時代を見据えた取り組みを行ってきた。
Waymoとの提携では、タクシーアプリのプラットフォーム企業として、ともに市場を評価する中で、進化する日本のモビリティ環境について視座を提供し、プロジェクトの推進と社会受容性の向上をサポートするとしている。
Waymoの自動運転タクシーをGOが配車する――とは一切謳っていないが、この関係性でサポートのみでは終わらないだろう。Waymoとしても、文化が異なる日本において、すでに多くのタクシー利用者を顧客に抱えるGOの選択肢に入り込んだ方が利用増を図りやすい。
2026年6月に東京証券取引所グロース市場へ上場したGOは、交通・運送等モビリティに関連する新規事業の一つに自動運転を据えている。タクシー配車に終わらず、タクシー業界、ひいては移動サービスのDX化を図っていく急先鋒として注目の一社だ。
【参考】関連記事「タクシーアプリGO、上場は「自動運転ビジネス」の伏線か」も参照。
■newmo(日本)
新たな時代見据えた取り組みに要注目
国内では、newmoの存在も気になるところだ。タクシー・ライドシェア事業の運営を目指し2024年1月に設立されたばかりの後発組で、DX推進などにより旧態依然としたタクシー事業にメスを入れ、稼働率を高めて移動サービスの再生を図っている。
M&Aで国内各地の事業展開を加速している段階だが、大阪ではすでにタクシー配車アプリ「newmo」を導入しており、今後全国に広げていく予定としている。
自動運転開発室(現newmo Autonomy)も立ち上げ、ティアフォーなどとのパートナーシップのもと自動運転タクシーの開発・実証にも着手している。大阪市や堺市と自動運転タクシー実現に向け連携協定を結び、2028年のレベル4商用化を目指している。
タクシー事業者として、開発事業者として、そしてプラットフォーマーとして今後どのような動きを見せるのか。スピード感ある新進気鋭の取り組みに要注目だ。
【参考】関連記事「メルカリ元幹部、自動運転タクシー事業に着手!「自動車メーカー勢」と対決へ」も参照。
■【まとめ】配車シェアはどのように変化する?
先行する米中勢は、現状自国内であれば自社アプリが通用するものの、欧州など他国では容易に通用しない。すでに普及している配車アプリに便乗した方が効果的に顧客をつかめる。
また、近い将来、自動運転タクシーがもの珍しい存在ではなくなった時、有人サービスなどと同じ土俵で勝負しなければならない。その際、自社の車両のみをマッチングするサービスでは不特定多数の利用を見込めなくなるのは必然だ。
日本ではGOが絶対王者として君臨しているが、Uberが訪日客らを取り込み、決済データベースで初めて首位に躍り出たとする情報も報じられている。新参newmoなどを交え、自動運転タクシー時代のシェアはどのように変化していくのか。各社の動向に要注目だ。
【参考】関連記事としては「自動運転タクシー(ロボタクシー)とは?日本やアメリカ・中国の状況は?」も参照。













