センサー市場過熱、HMI超進化…2020年の潮流が見えた!自動運転やコネクテッド領域

CES 2020とオートモーティブワールドを振り返る

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海外ではCES 2020、国内ではオートモーティブワールドと、年明けを賑わす先進技術の見本市が2020年も盛大に開催された。

自動運転関連技術も多数出展された両展示会を通し、自動運転業界における2020年の展望を探ってみよう。

■世界最大のエレクトロニクス技術の見本市「CES 2020」

世界最大のエレクトロニクス技術の見本市として毎年1月に米ラスベガスで開催されるCES。今年も世界各国から4500社以上の企業が出展し、大盛況を得たようだ。日本からも、トヨタをはじめ自動車関連業界から多数の企業が出展し、世界に日本の技術を紹介した。

ソニーは自動運転試作車、トヨタはコネクテッドシティ構想をそれぞれ発表

独ダイムラーは、自動運転EVの最新コンセプトカー「メルセデス・ベンツ・ビジョンAVTR」を初公開した。車両後部に特殊な機構を施すことで前後のほか斜めや横方向にも移動できる技術を搭載しているようだ。

仏ヴァレオは、自動運転EV配送ドロイド「Valeo eDeliver4U」を世界初公開したほか、自車位置を数センチレベルの精度で特定できる新技術「SpotLocate」や、ローカリゼーションアルゴリズムと認識システムを利用したマッピングシステム「Drive4U Locate」などの実演を行った。

国内からは、ソニーが自動運転の試作車「VISION-S Prototype」を披露した。同社のモビリティの取り組み「VISION-S」を具現化した試作車で、計33個のセンサーによってクルマの周囲360度をはじめ、車内で過ごす人にも細やかな気配りを可能にするイメージング・センシング技術のコンセプト「Safety Cocoon」を盛り込んだ内容となっている。

一方、トヨタはより大きな視点に立った発表を行い、会場を沸かせた。e-Paletteなどの展示とともに、あらゆるモノやサービスがつながる実証都市「コネクティッド・シティ」のプロジェクト概要を発表したのだ。

2020年末に閉鎖予定の東富士工場(静岡県裾野市)の跡地約70万平方メートルを利用した新たなまちづくり構想で、人々が生活を送る通常の環境のもと、自動運転やMaaSなどの検証や実験ができる実証都市「Woven City」を2021年初頭に着工する予定としている。

未来を感じさせるダイムラーの独創的なコンセプトカーや、日本が誇るテクノロジー企業・ソニーの自動運転分野への本格参戦、そしてトヨタのWoven City構想など、例年に劣らぬ話題が目白押しとなった。

センサー関連ではLiDAR出展際立つ

センサー関連では、LiDAR開発の代表格・米Velodyne Lidarが最新技術を搭載したさまざまなラインナップを発表したほか、中国DJI子会社のLivoxも10万円前後の低価格かつ高性能な新製品を展示した。独ボッシュは、新型の長距離LiDARとともに、カメラやレーダーとのセンサーフュージョン技術などを発表したようだ。

日本国内からは、パイオニアの子会社パイオニアスマートセンシングイノベーションズが開発を進める500メートルの遠距離計測が可能な次世代3D-LiDARセンサーの試作機を発表。また、初出展の京セラもLIDARと画像センサーを一体化した「カメラ-LIDARフュージョンセンサー」技術やAIを搭載した小型カメラモジュール「AI認識カメラ」などを展示した。

自動運転の実用化に際し、本格的な市場化の兆しを見せるLiDARの躍進が2020年も続いている印象だ。

その一方で、イスラエルのモービルアイはLiDARやミリ波レーダーなどを使わずカメラのみで自動運転を可能にした動画を公開し、注目を集めたようだ。

自動運転ではLiDARやカメラなどの各センサーを一体化するのがスタンダードとなりつつあるが、コスト増や高度なフュージョン技術などを敬遠し、可能な限りシンプルな構成で自動運転を確立する研究も進められている。米EV大手のテスラや日本のベンチャー・Revatron(レバトロン)などもその方向で開発を進めている。

実用化進むHMIも、より進化

自動運転の実用化に伴い、人とクルマがコミュニケーションを図るHMI(ヒューマンマシンインターフェース)技術にも高い注目が寄せられている。

米セレンスは、AI音声認識技術を生かして車両と乗客の対話を可能する自動運転EVバス「e.GO Mover」を展示。視線入力やジェスチャーを検知する技術なども取り入れた。

三菱電機は、最新のセンシング技術やHMI技術を搭載したコンセプトキャビン「EMIRAI S」を出展した。カメラ映像と音声情報を組み合わせることで、どの座席の人が話したのかを聞き分け、他の乗員の会話中もEMIRAI Sへの要望を認識して人とクルマが快適なコミュニケーションを図ることができる技術や、浮遊感・奥行き感のある映像を表示する「ワイドクロッシングディスプレイ」などを発表した。

なお、同社は2020年1月、エッジ機器単体で不足情報を自動補完して理解し、曖昧な命令も理解することを可能にした「コンパクトな知識処理に基づくHMI制御技術」の開発も発表しており、この分野における研究開発が盛んなようだ。

■自動車関連の先端技術が集結する「オートモーティブワールド」

東京ビッグサイトで2020年1月15~17日の日程で開催されたオートモーティブワールドには世界最大規模の1017社が出展した。「カーエレクトロニクス技術展」「EV・HV・FCV技術展」「クルマの軽量化技術展」「コネクティッド・カーEXPO」「自動車部品&加工EXPO」「自動運転EXPO」の6展で構成されており、最新技術の展示や商談などが盛大に行われた。

自動運転EXPO:最新LiDARが目白押し

3回目を迎えた自動運転EXPOでは、自動運転やADASシステムをはじめ各種センサーやAI、半導体などの最新技術が集結した。

アイサンテクノロジーは、自動運転サービス実証パッケージソリューションや事故の予防・補償などに加え自動運転時の見守りを行うコネクテッドサポートなどを紹介した。

ハンガリーのAImotiveは、自動パーキングや自動運転レベル2オブジェクト認識、レベル4自動運転まで対応したソフトウェア「aiDrive」をはじめ、自動評価可能なシミュレータツールによって短期間で安全な自動運転開発を行う「aiSim」などを出展した。

中国のAutoXは、独自開発の360度マルチセンサー高精度融合技術で3Dディープラーニングに基づく照準、カリブレーション、認知、追跡、予測を可能にしたレベル4ソリューション「xFusion」など、同社の自動運転技術を惜しみなく披露した。

また、LiDARをはじめとした最新センサーの展示も多く、米スタートアップのCepton Technologiesは高解像度3D LiDAR「Vista-X」やエッジベースのスマートLiDARシステム「Vista-Edge」などを展示。米Velodyne Lidarは全方位レーザーLiDARイメージングユニット「Alpha Prime」や非回転で超高解像度、長距離計測を実現したLiDAR「Velarray」などを展示した。

東陽テクニカはベルギーのXenomatiX社が開発した世界初のTrue-solid-state型マルチビーム方式LiDAR「XenoLidar」、商社のコーンズテクノロジーは米LuminarのLiDARや独Toposensの3D超音波センサー、米FLIR Systemsの赤外線カメラモジュールなど各種センサーをそれぞれ展示した。

コネクティッド・カーEXPO:最新の通信技術を生かした先端システムが集結

コネクティッド・カーEXPOでは、ティアフォーが自動運転OS「Autoware」をコアとしたオープンエコシステムをはじめ、自動運転仕様のJPN TAXI車両や5G時代の自動運転車の遠隔監視・制御システムなどを展示。パイオニアは、高度な運行管理・支援を実現する通信ドライブレコーダーを展示し、デモンストレーションを交えながら紹介した。

日立ソリューションズは、無線通信やセンサーによって自動車やその周辺状況をリアルタイムに解析し、高度な安全運転支援システムの実現を支援するC2Xミドルウェアプラットフォームを展示。シリコンスタジオは、HMIデザインや自動運転の研究開発を支援する最先端のリアルタイム3次元グラフィックス(3DCG)技術を披露した。

アプトポッドは、膨大な制御・センサーデータを通常のモバイル・インターネット網を介してリアルタイムで双方向に伝送・収集することを可能にする高速IoTフレームワークintdashを中心に、デモを交えて各種サービスを紹介した。

アルプスアルパイングループのソフト開発拠点シーズ・ラボは、AIを利用したバス車内状況の分析システムを展示。アップストリームはコネクテッドカーやスマートモビリティサービスをサイバー攻撃や誤用から保護するために設計されたクラウドベースのサイバーセキュリティソリューションなどを展示した。

NECソリューションイノベータは、自動運転を見据えた新しいHMIとしてフィンガージェスチャー技術を紹介したほか、センサーフュージョンと最新のAIを活用した画像認識ソフトウェアなどを展示した。

5G関連技術やMaaS関連も登場

5G関連では、森田テックが国際特許申請の小型5G OTA(Over The Air)試験環境を中心に、キーデバイスのアンテナカプラ、3次元空間電磁波可視化装置を実機出展したほか、アンリツが5G車載機アプリケーション評価ソリューションを展示するなど、関連技術が増加傾向にあるようだ。

一方、MaaS関連も登場し、日本マイクロソフトが同社のクラウドプラットフォーム「Azure」の活用案として自動運転開発やコネクテッドカーなどとともにMaaSへの導入を提案したほか、OTSLは大学と共同開発中の自動運転EV車両を用いた物流MaaSシステムを紹介した。

2020年10月開催予定の名古屋オートモーティブワールドから、新たに「MaaS EXPO」も構成展に加わる予定となっている。

■【まとめ】2020年はセンサー市場過熱、HMI技術の導入も進む

未来を予感させる技術満載の展示内容となっていたが、自動運転技術の本格実用化が予想される2020年には、こうした未来の一部が現実のものとなって導入されることになる。

センサー類では、自動運転レベル3搭載の自家用車、レベル4相当の自動運転タクシーの実用化を見据え、LiDARの量産化・低価格化・高機能化が一段と進むものと思われる。自動運転車の量産化に伴い、採用をめぐる開発とPR合戦が熱を帯びそうだ。

また、従来からADASなどで主役を張っていたカメラの進化も著しい。技術的には良い意味で未知数な部分もあり、市場化が進むLiDARとの技術合戦が今後の見どころになりそうだ。カメラを主軸とするモービルアイやテスラの動向にも注目だ。

HMI分野では、すでに普及が始まっているコネクテッドカーでも大いに役立つ技術が多く、カメラ映像による乗客認識技術や音声認識技術、新たなディスプレイ機器など市販化に達する最新技術・サービスが出てくるものと思われる。

国内でも、実証が中心とはいえ自動運転車を目にする機会が増え、レベル3搭載車が解禁される予定の2020年。5Gの本格運用も始まり、通信技術関連の伸びも予想される。自動運転技術がより身近な存在となる一年になりそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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