自動運転の現在のレベルは?

自家用車はレベル3、商用車はレベル4開発が主流に



自家用車や商用車、ロボットなど多方面で実用化が進む自動運転技術。各分野の開発・実用化はどのような状況となっているのか。


この記事では、自家用車、自動運転バスやタクシーなどの移動サービス、自動運転トラックによる輸送サービス、自動走行ロボットの各分野について、国内外の動向を解説する。

■自家用車
レベル3が市場化、ODD拡大とともに普及加速へ

自家用車においては、ADAS(先進運転支援システム)に相当する自動運転レベル1の標準装備化、レベル2のスタンダード化が始まっている。高度なレベル2が実現する「ハンズオフ」機能は、フラッグシップへの搭載から今後徐々にミドルエンドモデルなどに普及していくものと思われる。

2021年3月には、世界初の市販車向けレベル3を搭載したホンダ「レジェンド」がリース限定で市場化され、自家用車における自動運転時代が幕を開けた。ドライバーの存在を前提に一定条件下で自動運転を実現する技術だ。

当初計画より遅れつつ他社も市場化を目指しており、2022年にメルセデス・ベンツが「Sクラス」などにオプションとしてレベルシステム「DRIVE PILOT」を設定したほか、BMWやボルボ・カーズ、ヒョンデなども近く追随するものと思われる。2022年中に米国などで市販化を目指す動きが活発化する可能性が高そうだ。


国際基準もレベル3のODD(運行設計領域)を最高時速130キロ、車線変更可とする改正が合意されており、実用域を満たす水準へと達している。各社の技術がいっそう高度化し、こうした基準を満たすレベル3システムが市販化されれば、レベル3の普及が大きく加速するかもしれない。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1494076626426023938

レベル4を目指す動きも

このように、自家用車市場においては今後レベル3に注目が集まるところだが、モービルアイのようにレベル4を搭載したコンシューマー向けの車両を販売する計画を打ち出す動きも出ている。


同社は2022年1月、中国Geely(浙江吉利控股集団)のプレミアムEV(電気自動車)ブランド「Zeekr」とのパートナーシップのもと、レベル4機能を備えたコンシューマー向けの自動運転車を2024年にも中国市場で発売すると発表した。

ODDなどは不明だが、高速道路を中心とした自動車専用道路が第一に予想される。レベル3を飛び越え、自家用車において本当にレベル4を実現できるのか、要注目だ。

【参考】モービルアイの取り組みについては「自動運転で未知の領域!「市販車×レベル4」にMobileyeが乗り出す」も参照。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1479574040897789952

■バスやタクシーなどの移動サービス
先行するWaymoCruiseや中国勢が猛追

バスやタクシーをはじめとした移動サービス車両については、ドライバーレスによるコスト低減効果などを背景に早くからレベル4開発が進められている。自動車メーカーも開発を行っているが、実用化を見据えた取り組みはスタートアップ勢などが大きく先行している印象だ。

自動運転タクシーで先陣を切ったのは、米Waymoだ。同社の前身となるグーグルは他社に先駆けて自動運転車の公道実証を実現し、開発プロジェクトを母体に分社化されたWaymoはアリゾナ州でパイロットプログラムを立ち上げ、2018年に商用サービスを開始した。2019年には、一部車両でドライバーレスも達成している。

その後、中国勢がWaymoを猛追する。IT大手百度をはじめ、WeRide、AutoX、Pony.aiなどのスタートアップが次々と中国主要都市で実証を開始し、サービス提供段階に達している。最有力の百度は、一部ドライバーレスを含み7都市までサービスを拡大しているようだ。

また、百度は自動運転タクシーの生産コストを約500万円に抑えたことも発表している。低価格販売が実現すれば、自動運転サービスの普及が大きく加速しそうだ。

このほか、GM傘下のCruiseがカリフォルニア州でサービス実証を開始し、ドバイなど海外展開も見据えた取り組みを進めている。モービルアイもドバイやドイツ、米国など多方面展開していく計画だ。

国内では、ZMP組、日産組、ティアフォー組などが開発を進めている。近々では、ホンダがGM、Cruiseとのパートナーシップのもと、日本での自動運転サービス実現に向けた実証に着手しており、今後の展開に注目が集まる。

【参考】自動運転タクシーの動向については「自動運転タクシーとは?(2022年最新版)」も参照。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1510784217784852485

小型シャトルタイプが世界で実用化

自動運転バス関連では、仏NavyaとEasy Mileが小型低速の自動運転シャトルをそれぞれ開発し、早くからグローバル展開を推し進めている。

米国でもスタートアップ勢が先行しており、トヨタが出資するMay MobilityやLocal Motorsなどさまざまな企業がサービス実証を進めている。中国では、百度のアポロプロジェクト系が強く、金龍客車などがすでに量産化段階を迎えている。

また、CruiseやWeRideのように、自動運転タクシー開発を主力としながら小型シャトルタイプにも技術を応用させていく企業も出始めている。

日本では、ゴルフカーをベースにした小型自動運転シャトルの実用化が先行しており、公道外で遠隔監視・操作システムによるレベル3走行を実現している。国の事業として中型自動運転バスなども進められているが、ボディサイズの大きさなどがハードルとなっており、実用化にはもう少し時間がかかりそうだ。

【参考】自動運転バスについては「自動運転バス・シャトルの車種一覧(2022年最新版)」も参照。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1499498782236373022

■自動運転トラック
海外ではレベル4トラック、国内では隊列走行技術の開発が盛ん

大型トラック関連では、米国・中国ではレベル4開発が中心となっており、TuSimpleやPlusなど量産化のフェーズを迎えつつある企業も出始めている。自動運転システムやセンサースイートなどをソリューション化し、さまざまな市販トラックモデルへの導入を推し進めている。

まずは高速道路(自動車専用道路)をODDに据えているケースが大半で、徐々に配送ネットワークを拡大していく戦略となりそうだ。

ラストマイルを担う小型・中型の自動運転トラックの開発も盛んだ。WaymoやGatikなどさまざまな企業が開発・実用化に乗り出しており、ウォルマートなどの小売企業と提携を交わし、配送実証を進めている。

一方、日本ではレベル4トラック開発に向けた動きは海外と比べおとなしく感じられる。その代わりというわけではないが、高速道路における隊列走行技術の開発は盛んで、官民一体となって推し進めている。

2021年2月に3台の大型トラックが時速80キロ、車間距離約9メートルで走行する後続車無人隊列走行の実証に成功しているほか、後続車有人の隊列走行の商用化を見据えた取り組みも進んでいるようだ。

【参考】自動運転トラックについては「自動運転トラックの開発企業・メーカー一覧(2022年最新版)」も参照。

https://twitter.com/jidountenlab/status/1500607157233926151

■自動走行ロボット
国内でも開発本格化

歩道を走行する自動走行ロボット(宅配ロボット)の開発も熱を帯びている。海外では、米Starship Technologiesを筆頭にスタートアップやAmazonなどが開発・実用化を進めている。Starship Technologiesは米国や英国などで累計350万回の配送を達成している。

また、Nuroのように車道を走行するタイプのロボットを開発する企業もある。自動運転に関する法規制やインフラ整備などが整えば、このタイプの開発も勢いを増しそうだ。

国内でも、歩道走行型のロボット開発が大きく進展しており、ZMPやHakobotなどのほか、パナソニックやホンダ、ティアフォーなど開発勢が厚みを増している。

サービス実証も本格化し始めており、改正道路交通法の施行でその動きはいっそう活発化しそうだ。なお、現在の開発レベルとしては、遠隔監視・操作を伴う実質レベル3が主流となっている印象だ。

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■【まとめ】自家用車はレベル3、商用車はレベル4開発が中心に

自家用車分野においては現状レベル3開発が中心となっている。ODDが相当拡大するまでは乗用車にドライバーは付きものとなるため、まずはレベル3でODD拡大を目指し、技術の成熟を待ってから満を持してレベル4へ――といった戦略が主流となりそうだ。

一方、バスやトラックなどの商用車分野においては、ドライバーレスの恩恵を最大限生かすべくレベル4開発が中心となっている。路線バスなどODDを限定しやすいサービスは完全無人化による人件費削減効果が大きく、ビジネス性の増大はもちろん、地方公共交通においても事業の継続性を担保しやすくなる。

2020年代前半は、このように自家用車分野でレベル3、商用車分野でレベル4開発が中心となるが、2020年代後半には大きなイノベーションが訪れる可能性もあり、良い意味で先が見通せない状況だ。

今なお加速し続ける自動運転業界の今後の動向に引き続き注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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