マサチューセッツ工科大学の研究所であるMITコンピュータ科学・人工知能研究所(CSAIL)の科学者が、自動運転AI(人工知能)が運転を学習するためのシミュレーションエンジン「VISTA 2.0」を開発した。コードは全てオープンソースで公開されている。
■危険な運転シナリオも試せる実験場
自動運転車にとって超リアルな仮想世界は、危険な運転シナリオを安全に試すために適した実験場だ。
これまでこうしたシミュレーション環境機能を持ったソフトウェアは、各企業で開発されたり有料で公開されたりする例が多かった。しかし、VISTA 2.0はオープンソースであるため、企業の研究者たちがアクセスして研究開発を加速させていくことが可能だ。
CSAIL博士課程の学生であるAlexander Amini氏は「VISTA 2.0は、2DのRGBカメラだけでなく、高次元の3Dライダーやイベントベースカメラ、他の車両とのインタラクティブでダイナミックなシナリオもシミュレーションする機能を備えている」と述べている。
■デンソーやトヨタなど日本企業も
こうしたデジタルツイン的な取り組みは、世界的に増えている。
車両ダイナミクスシミュレーションソフトウェアのプロバイダーの米Mechanical Simulationは、多様な条件下で車両の性能をシミュレーションする高度なソフトウェアを開発・販売している。世界200社以上のOEM(完成車メーカー)やティア1サプライヤーらと取引しているという。ちなみに同社は2022年3月、自動運転向けのシミュレーション技術に強みを持つ米Applied Intuitionに買収されている。
自動運転シミュレーションプラットフォームの開発を進める韓国スタートアップのMORAIは、高精度地図データをデジタルツインに自動変換して精密な仮想シミュレーション環境を構築する技術を持っている。すでに世界20都市以上を再現済みで、2022年2月に発表した資金調達シリーズBラウンドで総額総額2,080万ドル(約24億円)の出資を受けている。
デンソーはIoT技術で乗用車やバス、トラックなど多様なモビリティをクラウドで1つにつなげ、仮想デジタル都市空間で現実の交通社会を再現する技術を開発している。仮想デジタル都市空間でのシミュレーション結果をもとに、多様な情報やサービスのモビリティへのフィードバックや、デジタルツインを通じたデータ解析、モビリティ制御も可能だ。
トヨタがNTTなどと開発するのはデジタルツイン技術を活用した「スマートシティプラットフォーム」だ。データマネジメントやモビリティも含む情報流通、それらに基づくデジタルツインと周辺機能で構成されている。まずトヨタが建設している実証都市「Woven City」に実装し、その後ほかの都市でも展開していく予定のようだ。
■デジタルツインの活用がさらに活発化
今回、オープンソースのシミュレーション・エンジン「VISTA 2.0」が発表されたことで、自動運転関連分野においてデジタルツインの活用はさらに活発化しそうだ。VISTA 2.0に関する詳しい内容は、以下のMITの英文ニュースからも確認できる。
▼Researchers release open-source photorealistic simulator for autonomous driving
https://news.mit.edu/2022/researchers-release-open-source-photorealistic-simulator-autonomous-driving-0621
【参考】関連記事としては「親和性抜群!自動運転×デジタルツイン、仮想の現実世界で自由に実証」も参照。