ロボットタクシーとは?自動運転技術で無人化、テスラなど参入

ライドシェア以上の衝撃!

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Robotaxiについて説明するイーロン・マスク氏=出典:テスラ公式YouTube動画

AI(人工知能)やIoT技術などの発展によりさまざまな製品のロボット化が進んでいるが、その勢いは自動車領域も例外ではない。自動運転技術によるドライバーの無人化が目の前まで迫っており、ロボットカーなどの言葉を目にする機会が急増している。

中でも、注目のサービスがロボットタクシーだ。完全自動運転車によるビジネスモデルのシンボル的存在で、世界各地で開発・実用化が進んでいる分野だ。

今回は、米電気自動車大手(EV)のテスラの取り組みを中心に、ロボットタクシーの開発状況と可能性を追ってみた。

■ロボットタクシーとは?

ロボットタクシーは、自動運転レベル4(高度運転自動化)以上の完全自動運転技術によって、ドライバーを必要とせず無人で運行することが可能なタクシーのことだ。ロボタクシー、無人タクシー、自動運転タクシーと呼ばれることもある。

基本的には、現在普及が進んでいるタクシー配車アプリと同様のシステムを用いて運用する。利用者は、従来同様スマートフォンでタクシーを呼び、乗降場所指定や決済処理をして降車するだけのシンプルな利用方法となる。

運営サイドは、イニシャルコストはかさむものの人件費を削減することが可能となり、従来のタクシーやライドシェアよりも低料金でサービスを提供することが可能になるものと考えられている。

■テスラのロボットタクシー事業
新AIチップで完全自動運転の実現を公言

テスラは2019年4月、投資家を対象にした技術説明会の中で「Robotaxi(ロボタクシー)」事業への参入に言及した。イーロン・マスクCEOは「2020年半ばまでに完全な自動運転車を100万台以上生産する」と豪語しており、同社の動向に大きな注目が集まっている。

マスク氏は説明会の中で、自社開発を進めている完全自動運転向けの新たなAIチップを紹介し、モデルSやモデルX、モデル3への搭載を開始したことを発表。米半導体大手NVIDIA製品の約20倍にあたる、1秒間に36兆回の演算を可能とし、冗長性も備えているという。

これまでのテスラ車を含め、フィードバックされた大量のデータをもとに解析能力などをより高め、オートパイロットシステムを進化させていくことで完全自動運転を実現させる構えだ。

【参考】テスラのロボタクシー事業については「米テスラ、2020年に100万台規模で自動運転タクシー事業」も参照。

TESLA NETWORK」×「Robotaxi」で配車サービス参入

このAIチップを活用した完全自動運転車を量産・市販し、ユーザーを巻き込みつつ新たなビジネスにつなげるアイデアが「TESLA NETWORK(テスラネットワーク)」だ。

テスラ車をリース契約したオーナーは、テスラネットワークに登録することでマイカーをロボタクシーにすることができる。テスラネットワークはいわゆる配車サービスのプラットフォームで、マイカーを使用していない時間を配車サービスに充てることでオーナー自ら運賃を稼ぐことができ、テスラにも手数料が支払われる仕組みだ。

無人自動運転だからこそ可能なビジネスモデルで、個人所有車両を活用するためタクシーというよりはライドシェアのイメージだ。

テスラの試算によると、1マイル(1.6キロメートル)あたり0.65ドル(約71円)を得ることができ、9万マイル(約14万5000キロメートル)走行すれば3万ドル(約330万円)得ることができるという。事故の際の責任はテスラが負い、リース契約終了後は車両をテスラに返却する必要がある。

極めて高い安全性能を本当に確保できるのか、マスク氏おなじみのビッグマウスではないのか……という懸念はぬぐえないが、完全自動運転車の活路を個人所有に広げるアイデアは先駆的かつ有効なものだ。時期がずれ込む可能性は否定できないが、実現に向けテスラが大きく動き出すことは間違いないだろう。

【参考】テスラの戦略については「テスラの自動運転技術と開発史まとめ イーロン・マスク氏の狙いは」も参照。

■テスラ以外のロボットタクシー事業
Waymo:ロボットタクシーのパイオニア

世界で初めてロボットタクシーの商用化をスタートしたGoogle系の米Waymo(ウェイモ)。2018年12月から、米アリゾナ州フェニックスで自動運転タクシーの有料商用サービス「ウェイモワン」を展開している。

現状は、安全面を考慮して運転席に専用のスタッフが同乗した状態で運行しているが、近くエリアを拡大するなど次の段階に移行するものと思われる。

また、車両を改造して自動運転車を作り上げる「工場」の建設計画や、独自開発を進めるLiDARセンサーの他社への提供など戦略の幅を広げており、自動運転タクシーの製造を本格化させ、他地域でのサービス展開をはじめ、ロボットタクシー本体やプラットフォーム・ノウハウの提供といった動きを今後見せる可能性もありそうだ。

【参考】ウェイモの自動運転タクシーについては「グーグル系ウェイモの自動運転タクシー、米アリゾナ州で商用サービス開始」も参照。

GM×Cruise Automation:2019年サービス開始予定、Waymoを追いかける

米自動車メーカー大手のゼネラル・モーターズ、及び傘下のCruise Automation(クルーズ・オートメーション)は、2019年にも自動運転タクシー事業に着手し、先行するウェイモを追いかける計画だ。

事業参入に備え、サンフランシスコの湾岸沿いの駐車施設に18基の急速充電器を設置したほか、独自の配車アプリ・車両管理システム「クルーズ・エニウエア」の試験を行っていることなどが2018年夏ごろ、複数の関係者により明らかにされている。

ライドシェア大手の米Lyft(リフト)とも提携を結んでおり、既存のプラットフォーマーとともに一気に事業を拡大する可能性もありそうだ。

米国ではこのほか、スタートアップの「Zoox(ズークス)」が2020年、自動車大手のフォードが2021年の実用化を目指すなど、ロボットタクシー開発は活発に行われている。

百度:2019年後半を目標にサービス展開へ

中国メディアによると、中国ネット検索最大手の百度(バイドゥ)も、自動運転タクシーの運用開始を目指しており、2019年下半期にも実用化する見込みのようだ。

現地報道によると、百度はまず100台規模で自動運転タクシーの商用化を実現する見通し。エリアは湖南省長沙市で、市も自動運転タクシーの事業化を支援するものとみられる。

百度はこのほか、スウェーデンの自動車メーカー、ボルボ・カーとも自動運転タクシーの製造開発を視野に入れた取り組みを行っている。ボルボ・カーが自動車の製造技術を、百度がアポロ計画で得た成果などを提供する形で実現を目指す方針のようだ。

中国ではこのほか、広州公共交通グループが運営する「Baiyun Taxi(広州公交集団)」や自動運転開発スタートアップの「Roadstar.ai(ロードスター・エーアイ)」なども開発・実証を進めており、実用化に向けスピードを増している印象だ。

ダイムラー×ボッシュ:2019年に米カリフォルニア州で実証実験着手

欧州勢で最有力と評されるのが、独自動車大手ダイムラーと独自動車部品大手のボッシュだ。米半導体大手エヌビディアと手を組み、2019年にも米シリコンバレーで無人の配車サービスを試験的に開始する。

高い技術力を結集させ、CASE戦略とともに一気に台頭することも十分考えられる。

欧州勢ではこのほか、独コンチネンタルと仏スタートアップ「Easymile(イージーマイル)」や、仏スタートアップの「Navya(ナビヤ)」なども開発・製品化を進めている。

【参考】ダイムラーの戦略については「ダイムラーの自動運転戦略まとめ 計画や提携状況を解説」も参照。

ZMP×日の丸交通:2020年の実用化目指す両社に注目

日本国内では、ロボットベンチャーのZMPとタクシー事業者の日の丸交通が2020年のロボットタクシー実現に向け歩を進めている。ZMPは自動運転車の開発とともにプラットフォームの開発にも力を入れており、将来的には他の事業者との協業などにも注目したい。

国内では、日産自動車とDeNAが共同開発を進める新しい交通サービス「Easy Ride」も有力だ。両社は2020年代早期の実現に向け実証を重ねている。

また、トヨタ自動車と米ライドシェア大手のUber(ウーバー)も自動運転開発領域で手を結んでおり、ライドシェア事業におけるロボット化にも大きな期待が寄せられている。

【参考】ZMP・日の丸交通の取り組みについては「世界初、自動運転タクシーの営業サービス実証実験がスタート ZMPと日の丸交通、大手町と六本木間で9月8日まで AI、ICT技術も活用 東京オリンピックの2020年に実用化」も参照。Easy Rideについては「【インタビュー】日産×DeNA、自動運転タクシー「Easy Ride」の進化に迫る」「【試乗ルポ】ハンドルが無人でクルクル…興奮必至の自動運転タクシー「Easy Ride」に乗ってみた 日産とDeNAが開発」も参照。

■【まとめ】ロボットタクシーで個人所有の完全自動運転車に活路

現実味を帯びてきた完全自動運転と、商用化に向けその技術を有効活用したロボットタクシー。法律などの規制から実証の多くは米国や中国が主戦場となっているが、近年中に世界各国にすそ野を広げ、開発や実用化は加速していくことになるだろう。

その中でも、完全自動運転車の活路を個人所有に広げるテスラのロボタクシー事業案は秀逸だ。レベル4以上の自動運転車は専ら商用ベースで開発されているため、個人がその利便性を享受するのはサービスを受けるときに限られているからだ。

レベル5技術の完成度は正直なところ未知数だが、個人利用に道を切り開いた功績は大きい。実現すれば、ライドシェア以上の激震がタクシー業界に走ることになりそうだ。

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