ヨーロッパ×自動運転、最新動向まとめ

EUは2019年に欧州統一の枠組み構築へ





北米、中国とともに大きな自動車市場を形成するヨーロッパ。有力な自動車メーカーや部品メーカーも多く、自動運転開発も活発で、世界各国への影響は根強いものがある。







また、国連への影響力が強い国々を有するEU(欧州連合)は、日本が奮闘する国際ルールの策定においても当然影響力が強い。自動運転レベル3に対する基準案の作成が2020年3月までに予定されるなど大詰めを迎えつつある中、EU諸国の動向から目が離せない状況が続いている。

自動運転の開発を進める各企業の取り組みとともに、EU諸国の最新の動向について探ってみた。

■ヨーロッパにおける自動運転関連の法令・条例など
EUの動き:安全基準統一に向け指針作成に着手

EU加盟各国は2016年4月、自動運転分野における協力に関する「アムステルダム宣言」に調印し、2019年までに自動運転の実用化・導入に関する欧州統一の枠組みを構築し、欧州共通の戦略を策定することで合意した。

具体的には、統一した国際・欧州・国内ルール、データ利用、プライバシーとデータ保護の確保、車車間・路車間通信、セキュリティ、国民の認識と受容性、自動運転に係る共通定義、国際協力の各項目を共通課題に据え、加盟各国は国連欧州経済委員会との密接な連携を図りながら国内法の採択、国境間を超えた大規模実証実験などを行うこととした。

また、EUの政策執行機関である欧州委員会が進めることとして、自動運転に係る欧州共通の戦略の策定(C-ITSプログラム、Gear 2030、自動運転ラウンドテーブルを基に策定)、C-ITSプログラムの継続の検討、欧州規制枠組みの見直しと採用、研究開発に向けた連携したアプローチの開発――なども盛り込まれた。

このほか、産業界が行うこととして、欧州戦略策定などへの参加や公共政策と規制介入すべき分野の特定、車車間・路車間通信の開発、相互運用可能性と標準の重要性の認識、自動運転のデータ利用可能性に関する当局との議論、大規模実証実験への参加、自動車産業とテレコム産業との連携、モバイル通信の利用可能性に係る調査――なども明記されている。

一方、欧州委員会は2018年5月、完全自動運転社会を2030年代に実現するためのロードマップを発表し、域内基準の策定に向け大きく動き出した。

2018年内に域内各国の自動運転車の安全基準の統一を図るための指針の作成に着手し、2020年代に都市部での低速自動運転を可能にするとしている。すべての新車がコネクテッド化された後の2030年代には、完全自動運転が標準となる社会を目指すこととしている。

2019年5月には、自動運転のシステム性能やミニマム・リスク・マヌーバー、サイバーセキュリティ、安全性に関わる評価と試験などについて規定した、自動運転車の認証手続きに関するガイドラインを発表している。

ドイツ:いち早く道交法を改正 国際ルール待ちの状況

ドイツ政府は2015年9月に「自動運転及びネット接続運転に関する戦略文書」を公表し、インフラ整備や法整備、技術革新、ネット接続性の確保、サイバーセキュリティとデータ保護の5領域を検討すべき政策課題に据えた。

2017年1月には、自動運転における車両制御技術や装置開発の妨げになりかねない法的障害を除去するため、道路交通法の改正案を提出。高度な自動運転機能や完全な自動運転機能を有する車両が開発された際に公道での自動運転を実現できるよう、ドライバーが一定の条件下でシステムに車両操縦を任せられるよう新たな規定を盛り込み、審議の末に改正案は可決され、6月に施行された。

なお、公道走行には国連WP29(自動車基準調和世界フォーラム)における国際的な車両安全基準の策定が必要なため、現時点で自動運転車の公道走行は実現していない。

フランス:2020年解禁に向け法整備進める

フランス政府は早ければ2020年に自動運転車の公道走行を解禁する方針で、法制度の整備も急いでいるようだ。2018年6月に経済改革の一環として閣議決定した「企業の成長・変革のための行動計画に関する法案」の中で、公道実証実験の認可対象となる自動運転車の範囲を広げ、実証実験中に発生した事故における責任の所在を規定する方針について触れている。

また、ガソリンやディーゼル燃料で走る自動車の販売についても、2040年までに全廃する計画を2017年に発表しており、EV(電気自動車)などクリーンエネルギーを利用した自動車のみ認める方針だ。

2019年6月には、EVをはじめとするクリーンカーへの移行を奨励する法案が同国議会の上院に続き下院でも可決されたようだ。

イギリス:自動運転見据えた自動車保険の法改正 事故時の責任の所在に言及

英国運輸省は2016年7月、自動運転車の法整備に係る政府方針を公表し、自動運転の導入に向けた環境整備に本格着手している。2018年7月には、「自動運転と電気自動車に関する法律」が可決され、強制自動車保険の対象を自動運転車まで拡大し、保険請求を円滑に行えるようにするとともに、自動運転車の事故における責任の所在についても言及している。

2019年3月には、都市交通へのイノベーション技術の導入がもたらす利益や政府の原則を示した政策文書を公表。新たな輸送モデルや交通サービスが安全性を確保するよう設計されることや、公共交通機関が効率的な輸送システムの基本であり続けること、カーシェアリングなどの利用により道路混雑が減少すること、新たな交通サービスが統合輸送システムの一部として設計されること、新たな交通サービスから得られたデータが輸送システムの運営改善などを目的に共有されることなどが定められている。

オランダ:無人自動運転の公道実証法案可決 自動運転向け免許の検討も

オランダも自動運転技術の導入に積極的で、2018年に自動運転車の公道実証に関する法律が可決されており、遠隔監視のもと無人による自動運転実証が可能になった。このほか、自動運転専用の新たな運転免許についても検討を進めているようだ。

■ヨーロッパにおける自動運転技術の主要な開発企業
フォルクスワーゲン(VW):2022年に自動運転車量産へ

アウディやポルシェ、ランボルギーニなど数々のブランドを有するグループの筆頭である独VWは、効率的な開発と市場化を見据え米自動車大手のフォードとの提携を深めている。

2018年6月にフォードと商用車の共同開発を柱に協業することを発表し、2019年7月にはこの提携を自動運転やEV開発へ拡大することを発表した。フォード出資のもと自動運転車のソフトウェアプラットフォームを開発する米Argo AIにVWも出資し、Argo AIの自動運転システムをそれぞれの車両に合わせながら搭載を進め、ヨーロッパと米国で商業展開を図っていくことなどを計画している。

自社の自動運転ロードマップとしては、ステアリングもペダルも廃した自動運転コンセプトモデル「I.D.VIZZION」の量産を2022年に開始する予定としている。

この実現に向け、2019年4月にドイツのハンブルグで自動運転レベル4の公道実証実験を開始した。同社のEV「e-Golf」にレーザースキャナーや超音波センサー、レーダーなどを搭載した車両で、実験を通して自動運転ソフトウェアの評価や検証などを行い、今後の自動運転技術の開発に生かしていく構え。

【参考】VWの実証実験については「独VW、ハンブルクで自動運転レベル4の実証実験を開始」も参照。

アウディ:高機能化したレベル3車両を早ければ2020年に導入

量産モデルで自動運転レベル3を世界で初めて実現した「Audi A8」を2017年に発売した独アウディ。今後は、より高機能化したレベル3の「ハイウェイパイロット」を2020年から2021年に導入する予定で、出入制限のある高速道路において制限速度内のハンズフリー走行が可能になり、車線変更や追い越しも可能になるという。

レベル4以上に関しては、2019年4月に新たなレベル4コンセプトカー「AI:ME」を発表している。また、2017年のフランクフルトモーターショーで発表した「Audi Aicon(アイコン)」をベースにした完全自動運転EVを、2021年に発表するとしている。ステアリングやペダル類を排除し、ラウンジのようなインテリアデザインが特徴で、当初は都市間を結ぶシャトルとして公道における試験走行を開始し、2020年代の半ばに自動運転車として生産を開始する予定という。

実証実験では、中国通信機器メーカー大手の華為技術(ファーウェイ)とレベル4の走行テストを中国内で2018年11月に成功させている。

同社はこのほか、航空機メーカーの仏エアバスなどと空飛ぶクルマの開発も進めており、自動運転機能付きのEVと乗員用ドローンを組み合わせたプロトタイプ「Pop.Up Next」も公開している。

BMW:ダイムラーとの協業深化 2024年レベル4実用化へ

独ダイムラーとの協業を進める独BMW。2018年3月に新たなモビリティサービスの提供に向け協力体制を構築していくことを発表し、2019年にはカーシェア、ライドヘイリング、パーキング、チャージング(充電)、マルチモダリティの各領域で両社が展開するサービスを連携・統合し、5つの合弁会社の設立を発表した。

その後、共同でレベル4相当の自動運転開発を行うことも明らかにしており、2019年7月には戦略的長期提携に関して発表している。運転支援システムや高速道路における自動運転、自動駐車などの分野で共同開発を進め、2024年ごろの実用化を目指す構え。

市販モデルでは、ハンズフリー運転が可能な高度レベル2技術を搭載した最上級モデル「BMW X7」の販売を2019年6月に開始している。

【参考】ダイムラーとの提携については「BMWとダイムラーが長期提携、自動運転や自動駐車など共同開発」も参照。

ダイムラー:自動バレーパーキングシステム商用化へ

「CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)」という次世代のモビリティ業界を表す造語を生み出した独ダイムラー。自動運転分野では独自動車部品メーカーのBOSCHと2017年4月に提携を交わし、ソフトウェアとアルゴリズムの共同開発を行っている。両社は、自動運転レベル4相当の完全自動運転車を2020年代初めまでに市場導入することを目指すほか、市街地の走行が可能な自動運転タクシーのシステム開発と量産準備も進めることとしている。

また、両社が共同開発した自動バレーパーキングシステムが2019年7月、独バーデン・ヴュルテンベルク州当局からレベル4相当のドライバーレス完全自動駐車機能として承認を受けたことも発表された。今後、同システムの導入・商用化に向け大きく動き出しそうだ。

【参考】自動バレーパーキングシステムについては「ボッシュとダイムラーの自動駐車システム、自動運転レベル4でGOサイン」も参照。

ボルボ:2021年までにレベル4発売目指す

スウェーデンのボルボ・カーズは2021年までに自動運転レベル4相当の完全自動運転車の発売を目指しており、2013年に発表した「Drive Meプロジェクト」において、スウェーデン運輸管理局などの協力のもと、ヨーテボリ周辺の約50キロメートルの公道で日常的な利用条件下で自動運転実験車を走らせる大規模実証実験計画を立ち上げ、一般市民を交えながら実証を重ねている。

2019年6月には、米配車サービス大手のウーバー・テクノロジーズが開発する自動運転システムを搭載可能なSUV生産車「XC90」を発表した。ウーバーが開発する自動運転システムを容易に導入できるよう、各種センサーをはじめステアリングやブレーキ機能のバックアップシステムやバッテリーのバックアップ電力などを搭載しているという。

また同月には、トラック開発を手掛けるボルボグループが米半導体大手NVIDIAと自動運転プラットフォーム「NVIDIA DRIVE」を活用した自動運転車両開発のパートナーシップを結んだことも発表されている。AI自動運転トラックを開発し、公共輸送や貨物輸送、リサイクル収集、建設業、鉱業、林業などのトラックを使う業界での活用を目指し、ヨーテボリとアメリカのシリコンバレーに共同の開発チームを立ち上げた。

【参考】ボルボとウーバーとの提携については「ボルボ・カーズ、ウーバーの自動運転システムを搭載可能なSUVを発表」も参照。

ルノー:上海に新たな自動運転開発拠点開設 ウェイモとの協業にも注目

日産自動車・三菱自動車とのアライアンスの在り方で揺れている仏ルノーだが、自動運転の開発分野においては協調体制が保たれているようだ。

ルノーと日産は2019年4月、中国・上海に新しい開発拠点「アライアンス研究開発(上海)有限公司(通称:アライアンス・イノベーション・ラボ上海)」を設立したと発表。自動運転やEV、コネクテッドカーの分野に重点を置いた研究開発を進める見込みだ。

また、2019年6月には、自動運転開発を手掛けるグーグル系ウェイモ(Waymo)と無人モビリティサービスに関する独占契約を締結したことも発表している。日本とフランスにおいて無人運転の乗客・配送向けサービスの提供を実現するため、3社でまず市場分析や共同調査を進めることとしており、自動運転タクシーなどの広域展開に注目が寄せられる。

■全欧州規模の自動運転関連プロジェクト、続々と実施

全欧州規模で実施される最大規模の研究及びイノベーションを促進するためのフレームワークプログラム「HORIZON2020」において、2016年以降、自動運転を実現するICTインフラや公道での複合隊列走行、都市道路交通の自動化デモンストレーションなどのプロジェクトを実施している。2014年から2020年までの計画期間で、約800億ユーロ(約10兆円)の公的資金がEUから投入されている。

このほかヨーロッパでは、VWやBMW、ダイムラー、フォード、ルノー、英ジャガー・ランド・ローバー、トヨタ、ホンダなどの参加のもと、自動運転レベル3~4の機能を使用した大規模な実証試験を行うプロジェクト「L3 Pilot」なども行われているようだ。

■【まとめ】各開発企業は横の連携強化 オール・ヨーロッパの取り国も注目

多くの国が連合を成すヨーロッパでは、域内で道路交通などに関するルールを一定程度統一する必要がある。自動運転に関する国際ルール策定などもこの考え方の延長線上にあり、その意味でEUの意識は高い。

また、イギリスの離脱協定で揺れているものの世界的にはEUの影響力はまだまだ強大だ。オール・ヨーロッパの取り組みに注目するとともに、横の連携強化を図る各開発企業の動向からもしばらく目が離せなさそうだ。

【参考】関連記事としては「自動運転、ゼロから分かる4万字まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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