自動運転で日本ピンチ!Googleは中国、Uberは韓国に接近

勝者をめぐる競争はすでに始まっている



テクノロジー系企業の躍進が著しい自動運転業界。グーグル系の米Waymo中国の浙江吉利控股集団(Geely)と新たなパートナーシップを結び、米Uber TechnologiesはMotionalの自動運転車を配車プラットフォームに導入した。







自動車製造能力を持たない新規参入組が、自動車メーカー各社と手を組み自動運転サービスの実用化を図る動きが活発化している印象だ。

この記事では、社会実装が始まった自動運転サービスをもとに、テクノロジー企業と自動車メーカーの関係に迫る。

■テクノロジー企業と自動車メーカーの関係
Waymoをモデルケースにパートナーシップが続々

自動運転分野では、自動車製造能力を持たないものの、自動運転システムやサービスプラットフォームなどを武器に存在感を高める企業が続々と台頭している。Waymo(ウェイモ)や中国のBaidu(百度)などがその代表格だ。

多くの場合、これらの企業は自動車メーカーと手を組み、車両を供給してもらう形で自動運転車を構築する。テクノロジー企業と自動車メーカーのパートナーシップは、自動運転開発のパイオニア的存在であるWaymoがモデルケースとなり、その後スタンダード化していった感が強い。

自動車メーカーとしても、車両販売による利益だけではなく、自動運転に適した車体研究に関する知見を得られるなどメリットは大きい。自動運転サービスそのものが大きな注目を集めるため、PR効果も得られそうだ。いち早くWaymoと手を組んだFCA(現ステランティス)のように、そこに商機を見出す自動車メーカーもある。

Waymoは数々のOEMとパートナー関係に
出典:Waymo公式ブログ

Waymoは、ステランティスをはじめ、ルノー・日産・三菱アライアンス、ボルボ・カーズ、ジャガー・ランドローバー、ダイムラートラックなど、数々のOEMと手を組んでいる。近々では、2021年12月に中国Geelyとのコラボレーションを発表している。

GeelyのプレミアムEV(電気自動車)ブランド「Zeekr」が製造する自動運転専用に設計された車両に自社の自動運転システム「Waymo Driver」を統合する内容だ。

新車両はハンドルやペダル類を備えない特別設計で、乗客の快適性、利便性、好みを優先するよう最適化されているという。数年のうちに米国内の自動運転タクシーサービス「Waymo One」のフリートに導入していく計画だ。

Waymoはアリゾナ州フェニックスに次ぎ、カリフォルニア州サンフランシスコでもWaymo Oneを開始している。ニューヨークでも2021年にマッピングを開始したほか、2022年10月には数カ月以内にロサンゼルスでも自動運転を開始することを発表している。

これまでのサービスにおける使用車両の多くはクライスラー「パシフィカ・ハイブリッド」やジャガー「I-Pace」がベースとなっているが、今後さまざまな車両が導入される可能性は高い。

【参考】Waymoの取り組みについては「Google、「中国企業」に自動運転車の製造委託 相手はGeely」も参照。

Uber TechnologiesはMotionalに急接近
出典:Uberプレスリリース

配車サービス大手のUberは2022年12月、自社のライドシェアネットワークで初となる自動運転車両を導入した。選ばれたのは、韓国の現代自動車(ヒョンデ)と米Aptivの合弁Motionalだ。

ヒョンデの最新EV「IONIQ 5」をベースとしたロボタクシーで、ネバダ州ラスベガスを皮切りにサービスを開始した。当面はセーフティドライバーが同乗するが、2023年中にも無人サービスの一般公開に着手する計画だ。

ウーバーとMotionalはすでにUber Eatsによる自動運転宅配の分野でサービスを開始しており、これが移動サービスにも拡大された格好だ。

両社は2022年10月までに移動サービスとモノの配送にまたがる10年間に及ぶパートナーシップを結んでいる。移動と配送両方に及ぶ契約は業界初という。今後、戦略的に全米の各都市にサービスを拡大していくとしている。両社の距離は急速に縮まっている印象だ。

【参考】Uberの取り組みについては「Uberの自動運転タクシー、選ばれたのは「韓国製」車両」も参照。

LyftもMotionalと協業

配車サービス大手のLyft(リフト)も、Motionalとパートナーシップを結んでいる。リフトは早くからAptivとパートナーシップを結び、ラスベガスで自動運転タクシーのサービス実証を進めてきた。これがそのままMotionalに移行した形だ。

両社は複数都市にまたがるパートナーシップを結んでおり、ラスベガスのほか、2022年11月にはロサンゼルスでもサービスを開始したことを発表している。

【参考】Lyftの取り組みについては「「完全無人」自動運転タクシー、Lyftがラスベガスで2023年から展開へ」も参照。

■日本の自動車メーカーの採用状況
Waymoは日産・三菱を採用?不採用?

前述したように、Waymoのパートナーは多岐にわたり、その中にはルノー・日産・三菱アライアンスも含まれているが、日産や三菱の車両がWaymo Oneに導入されているかは不明だ。少なからず、クライスラーやジャガーの後塵を拝していることは間違いない。

Motionalに後れを取ったトヨタ・Aurora勢

一方、UberやLyftのケースでは、トヨタとの関係が気になるところだ。Uberは2016年、トヨタとライドシェア領域における協業を検討する旨の覚書に締結したのを皮切りに、2018年には自動運転技術を活用したライドシェアサービスの開発促進および市場への投入に向け協業を拡大することに合意している。

当初計画では、トヨタの北米向けミニバン「シエナ」をAutono-MaaS専用車両とし、Uberの自動運転キットとトヨタのガーディアンシステムを搭載して2021年にUberのライドシェアネットワークに導入される予定としている。

2019年4月には、トヨタ、デンソー、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)の3社が、自動運転ライドシェア車両の開発を加速するため、Uberの自動運転開発部門Uber-ATGを基とした新会社へ計10億ドル(約1120億円)の出資を行うことも発表されている。

その後、Uber-ATGは自動運転開発を手掛ける米Aurora Innovation(オーロラ・イノベーション)に買収され、Auroraとトヨタ、デンソーが新たにパートナーシップを結び、シエナにAuroraの自動運転システム「Aurora Driver」を統合し、Uberをはじめとしたライドシェアネットワークへの導入を図っていく計画が発表されている。

もたもたしている…とは言わないが、開発競争で後れを取り、Motionalに先を越された格好だ。なお、自動運転トラックの分野においては、Uberの配送マッチングプラットフォーム「Uber Freight」においてオーロライノベーションのパイロットプログラムが進められている。今後、移動サービス面での巻き返しに期待したいところだ。

トヨタはLyftとの関係強化も?

Lyftのケースでは、トヨタグループのウーブン・プラネット・ホールディングスが2022年に同社の自動運転部門「Level 5」を買収した経緯がある。

自動運転の開発能力を高めることが主目的とされており、親会社であるLyftとは、自動運転技術の開発加速に向けLyftのシステムと車両データを活用することに合意している。

現時点ではLyftのフリートに開発車両を導入する話は出ていないが、将来に渡って否定されるものではなく、チャンスはあるはずだ。トヨタ純正の自動運転システムを搭載した車両が実用化された際、その動向に改めて注目したい。

【参考】Aurora Innovationについては「Aurora Innovation、自動運転の年表!トヨタやボルボとの協業も具体化」も参照。

【参考】Lyftの自動運転開発部門買収については「超優秀エンジニア1,200人で勝つ!トヨタ、Lyftの自動運転部門を買収」も参照。

中国ではパートナー各社が一部車両を導入

中国ではどうか。トヨタが出資するPony.aiは、レクサスRX450に自動運転システムを統合済みだ。同様に、日産と手を組むWeRide、ホンダの現地法人と手を組むAutoXなど、それぞれが各メーカーの車両に自動運転システムを統合している。

一部は間違いなくサービス実証などに導入されているが、フリート全体における割合は不明だ。各社とも中国自動車メーカーとも協業を進めており、主役を張るには優先順位的に厳しいものがあるかもしれない。

【参考】中国における動向については「ホンダ車が中国で自動運転タクシーに!?AutoXとの提携で予感されるもの」も参照。

May Mobilityはトヨタを積極導入
出典:May Mobilityプレスリリース

一方、米May Mobility(メイ・モビリティ)のようにトヨタ車を積極導入している例もある。同社はトヨタから戦略的出資を受けており、これまでにレクサス車やSienna Autono-MaaS (S-AM)を自動運転化し、シャトルサービスやオンデマンドのマイクロトランジットサービスなどを展開している。

パートナー企業は、トヨタのほか豊田通商や東京海上、ブリヂストン、MONET Technologiesなど日本勢が多い。同社は日本法人を設立しており、今後日本国内で新たな動きを見せる可能性が高そうだ。

■【まとめ】日本勢は劣勢?

水面下で進められているプロジェクトなどあるため一概には言えないが、現状オープンな環境にある自動運転サービスにおいて、日本勢は劣勢にある感が強い。

近い将来、Uberをはじめとする配車プラットフォーマーやタクシー事業者などが本格的に自動運転モビリティの導入を図る時代がやってくる。自動車メーカーは、自らのサービス展開だけでは勝ち組になり得ず、より多くのパートナーを獲得しなければならない時代がやってくるのだ。

こうした時代を見据え、サービス実証やネットワークの拡大などを早期に図っておくことは思いのほか肝要なのかもしれない。

【参考】関連記事としては「自動運転はどこまで進んでいる?(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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