トヨタ?ホンダ?自動運転タクシー「日本初」となるのは?

2025年前後?新興勢か、自動車メーカー勢か



自動運転の本格実用化に向けた機運が日に日に高まってきている。自動運転レベル4を実現する改正道路交通法が施行される2023年度は、自動運転サービスの社会実装に向けた取り組みが大きく加速するものと思われる。


自動運転移動サービスの目玉である自動運転タクシーは、いつ頃社会実装されるのか。また、どの企業が日本初のサービス化を実現するのか。各社の動向に迫る。

■新興企業系の動向
ZMP:いち早く自動運転タクシー実証に着手

国内でいち早く自動運転タクシーの実現に動き出したのはZMPだ。2017年に日の丸交通と提携し、同年末までに日本初となる遠隔型自動運転システムによる公道実証を東京都内で実施した。

2018年には、東京都の事業のもと実際に乗客を乗せて走行する営業実証に着手し、2020年には空港リムジンバスと自動運転タクシー、自動運転モビリティを連携させるMaaS実証も行っている。

近年は自動走行ロボットや物流ロボットをはじめとしたロボット分野に注力している印象が強いが、改正道路交通法の施行に合わせて再び動き出す可能性もありそうだ。



ティアフォー:具体的実証に着手 本命へ前進

ティアフォーも自動運転タクシーの実用化に照準を合わせている。同社は2019年、アイサンテクノロジー、損害保険ジャパン日本興亜、KDDIとともに自動運転タクシー車両の開発や運行管理サービスの実証に向け協業を開始している。

2020年には、Mobility Technologiesなどを交え東京都の西新宿で5Gを活用した自動運転タクシーの行動実証に着手した。運転席無人の遠隔監視による走行も行っている。また同年12月に愛知県西尾市で行われた自動運転タクシーコンセプト車両の運行実証にもNTTドコモなどとともに参画している。

2022年以後を事業化段階とし、自動運転タクシーの最終整備とともに継続的なサービス提供に必要なオペレーション体制構築を進めていく方針だ。

同社の自動運転ソフトウェア「Autoware」は汎用性が高く、さまざまな車両に統合可能だ。取り組みの具体性も高く、日本初の自動運転タクシーにおいては本命と言っても過言ではなさそうだ。

【参考】ティアフォーの取り組みについては「トヨタ製「JPN TAXI」を自動運転化!ティアフォーやJapanTaxi、無人タクシー実証を実施へ」も参照。

BOLDLY:自動運転バスの運行経験はピカイチ

意外なところでは、BOLDLYなども有力かもしれない。同社は、運行管理システムや運行ノウハウを武器に、自動運転サービスの導入を検討する自治体や企業らをサポートするビジネスモデルがベースとなっている。

これまでの取り組みは、仏Navya製ARMAを中心とした自動運転バス事業や実証が大半を占めており、自動運転タクシー事業には注力していない印象が強いが、自動運転車や自動運転システムは他社製を用いるモデルのため、パートナー企業次第では自動運転タクシーへの参入もあり得るのではないだろうか。

自動運転サービスの運用ノウハウは国内トップクラスで、効果的な運用に向けたアイデアも豊富だ。ソフトバンクグループのネットワークを活用すれば、自動運転タクシーの開発を進める海外企業とも手を組みやすい。

ARMAのように車両を購入・輸入する形で日本に自動運転タクシーサービスをもたらす可能性もあるのではないだろうか。

【参考】BOLDLYの取り組みについては「自動運転バスのARMA、BOLDLYがオペレーター110人育成」も参照。

TURING:完成車メーカーを目標に掲げ開発加速中

新進気鋭のスタートアップTURINGも気になる存在だ。同社は完全自動運転となるレベル5の完成車メーカーを目指すチャレンジャーだ。

2021年8月に創業後、2022年に千葉県柏市で公道実証を開始し、同年10月には自動運転で北海道一周を実行するなど、驚異のスピードで開発を進めている。

同社が現在掲げる目標は、2025年に100台程度のパイロット生産を開始することだ。その後、2027年には年間1万台規模のライン工場の制作に着手する計画という。

これらが自動運転車となるかは分からないが、新たな完成車メーカーとしての地盤を築き上げながら自動運転サービスに乗り出す可能性もある。

色々な意味で同社が今後どのような道を歩んでいくのか、要注目だ。

■自動車メーカーの動向
日産:2020年代早期にEasy Ride実現

国内自動車メーカーの中で自動運手に同サービスにいち早く着手したのは日産だ。DeNAとの協業のもと、無人運転車両を活用した新しい交通サービス「Easy Ride」の実証を2018年に開始した。自動運転タクシーとは呼称していないが、自由な移動を可能にする点で類似しているため、ここでは自動運転タクシーとみなすことにする。

初年度は一般モニターを対象に神奈川県横浜市で実証を行い、2年目の2019年は事前予約方式からオンデマンド配車方式に変更し、2021年にはNTTドコモのオンデマンド交通システム「AI運行バス」を組み合わせた実証を行うなど、実際のサービス形態を意識した実証を進めている。

当初目標では、2020年代早期に本格サービスの提供を開始するとしている。

【参考】日産の取り組みについては「2018年から4度目!日産が自動運転タクシー「Easy Ride」実証」も参照。

ホンダ:自動運転モビリティサービス実現に向けタクシー事業者と協業

米GM・Cruise勢と手を組むホンダは、3社で共同開発した自動運転技術の国内展開を目指し、2021年に栃木県内で公道実証に着手した。

2022年には、帝都自動車交通と国際自動車との協業のもと、東京都心部での自動運転モビリティサービスの提供開始に向けた検討を開始することを発表した。2020年代半ばの実現を目標に掲げている。

日産同様「自動運転タクシー」とは表現していないが、新しいオンデマンド型無人移動サービスの提供に向けタクシー事業者と手を組んだことから、実質的には自動運転タクシーになるものと思われる。

車両はモビリティサービス専用の「クルーズ・オリジン」を活用する予定としている。今後の実証に要注目だ。

【参考】ホンダの取り組みについては「ホンダ、東京で「レベル4自動運転」の実証実施へ」も参照。

トヨタ:自動運転モビリティの可能性追求に注力か

トヨタはモビリティサービス専用の自動運転車「e-Palette(イー・パレット)」が代表格だ。実験車両としては、米Toyota research Institute(TRI)が開発を進める乗用車ベースの「TRI-P4」もある。

e-Paletteは多方面での活用を見据えており、2020年代前半に米国をはじめとした各地域でサービス実証を目指す方針としているが、具体的な計画は未だ明らかにされていない。

おそらく自動運転シャトルサービスの実証などは比較的早く行われるものと思われるが、トヨタの戦略上、自動運転タクシーよりも無人店舗など自動運転モビリティの可能性を模索・追求していく方に注力する可能性が高そうだ。

【参考】トヨタの取り組みについては「トヨタの自動運転EV「e-Palette」が東京臨海副都心を走る!2022年2月17日から」も参照。

■日本国内における自動運転タクシー
社会実装は2025年前後か?

2023年4月までに施行される改正道路交通法により、国内におけるレベル4走行が解禁される。開発各社やサービス事業者の取り組みは大きく加速し、本格実用化を見越した実証があちこちで展開される可能性が高い。

その大半は自動運転バス(シャトル)など定路線を走行するサービスになるものと思われる。特定のエリア内を縦横無尽に走行することが期待される自動運転タクシーはややハードルが高く、自動運転バスに遅れて社会実装される見込みだ。多くの開発企業が想定する2020年代半ば、2025年前後となる可能性が高そうだ。

乗降ポイント設定で早期社会実装も

ただ、乗降ポイントをあらかじめ設定することで、サービス実装を早めることができるかもしれない。特定エリア内に複数の乗降ポイントを設定し、乗降ポイント間の移動をサービス化する形式だ。

この手法であれば、自動運転車はそれぞれ特定のルートを走行すればよく、停発車時の安全も確保しやすい。利用者が指定したポイントとのずれも発生しない。例えば乗降ポイントを5カ所設定すれば、走行ルートは全20通りとなる。その一つひとつはシャトルサービスと同一となる。

乗降ポイントを10カ所設定すれば全90通り、20カ所設定すれば全380通り…とサービスを増強すればするほど走行パターンは膨大なものとなるが、縦横無尽に走行することと比べればシンプルと言える。

初期においては、こうした複数ポイントを選択可能なシャトルサービスのような形で社会実装される可能性も十分考えられそうだ。

■【まとめ】各社に「日本初」のチャンスあり

自動運転バスの実用化が先行する日本では、自動運転タクシーは後回しにされがちだが、それゆえ実用化まで若干の猶予があり、各社に「日本初」のチャンスがあると言える。他方、もたもたしていると、モービルアイのような海外有力勢が台頭する可能性もありそうだ。

レベル4が解禁される2023年度、各社はどのような取り組みを進めていくのか。要注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転はどこまで進んでいる?(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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