「自動運転×ヨーロッパ」の最新動向は? 各国政府や企業の取り組みまとめ

2019年に統一ルール制定目指す



自動車メーカーらが熾烈な自動運転の開発競争を展開する中、各国政府も国際基準作りの主導権を巡って水面下でしのぎを削っている。主導権争いは日本をはじめ米国、欧州、中国が有力視されているが、多くの国が集うEU(欧州連合)はやはり強力だ。


EUの自動運転政策や主だった加盟国の動向はどのような状況なのか、今後の展開を占うためにも一度まとめてみることにした。

■EU・欧州委員会の動き
アムステルダム宣言:欧州統一の枠組み構築へ

EU加盟各国は、2016年4月に自動運転分野における協力に関する「アムステルダム宣言」に調印しており、この中で2019年までに自動運転の実用化や導入に関する欧州統一の枠組みの構築を目指し、欧州共通の戦略を策定することとしている。

具体的には、統一した国際・欧州・国内ルール、データ利用、プライバシーとデータ保護の確保、車車間・路車間通信、セキュリティ、国民の認識と受容性、自動運転に係る共通定義、国際協力の各項目を課題とし、加盟各国は国連欧州経済委員会との密接な連携や国内法の採択、国境間を超えた大規模実証実験などを行うこととしている。

また、欧州委員会は、自動運転に係る欧州共通の戦略の策定をはじめ欧州規制枠組みの見直しや採用、研究開発に向けた連携したアプローチの開発を進めることとし、産業界は欧州戦略策定などへの参加、公共政策と規制介入すべき分野の特定、車車間・路車間通信の開発、相互運用可能性と標準の重要性の認識、自動運転のデータ利用可能性への貢献についての当局との議論、大規模実証実験への参加、自動車産業とテレコム産業との連携、モバイル通信の利用可能性に係る調査を進めることとしている。


HORIZON2020:全欧州規模の自動運転関連プロジェクト

全欧州規模で実施される最大規模の研究及びイノベーションを促進するためのフレームワークプログラム「HORIZON2020」における自動運転関連プロジェクトで、2016年以降に自動運転を実現するICTインフラや公道での複合隊列走行、都市道路交通の自動化デモンストレーションなどのプロジェクトを実施している。

また、欧州委員会と自動車関連企業などで構成するERTRAC(European Road Transportation Reasearch Advisory Council)が2015年7月に公表した自動運転ロードマップでは、条件付自動運転を2020年、商用車における隊列走行を2019年、長距離輸送を2022年、都市交通の自動化を2023年にそれぞれ事業化することとしており、このロードマップに基づいた勧告をHORIZON2020に対して行っている。

L3 Pilot:レベル3、4大規模実証へ 世界の自動車メーカーが参加

自動運転レベル3、4の機能を使用した大規模な実証試験を行うプロジェクトで、独フォルクスワーゲングループやBMW、ダイムラー、米フォード、仏ルノー、英ジャガー・ランド・ローバー、トヨタ自動車、ホンダなどが参加する共同事業体を組織し、自動運転機能のパイロット、テスト、評価をはじめ市場導入に向けた自動運転技術の革新を図っている。

プロジェクトは2017年から4年間を予定しており、予算は6800万ユーロ(約88億円)で、欧州委員会がHORIZON2020プログラムから3600万ユーロ(約46億円)を拠出している。


欧州委員会の最新動向

欧州委員会は完全自動運転社会を2030年代に実現するためのロードマップを2018年5月に発表しており、いち早く域内基準を策定することで国際ルールをめぐる世界の主導権争いをリードしていく構えだ。

2018年内に域内各国の自動運転車の安全基準の統一を図るための指針の作成に着手し、2020年代に都市部での低速自動運転を可能にする。そして、すべての新車がコネクテッド化された後、2030年代に完全自動運転が標準となる社会を目指すこととしている。欧州委の試算では、自動運転社会への移行で2025年までに8000億ユーロ(約104兆円)を超える市場がEUの自動車と電機業界に生まれるとしている。

【参考】EUの動向については「EUは「2030年代」に完全自動運転を実現 100兆円市場誕生に期待」も参照。

ドイツの動き
法整備も迅速、自動車大国としてリーディングカンパニー目指す

ドイツ政府は2015年9月に「自動運転及びネット接続運転に関する戦略文書」を公表しており、インフラ整備や法整備、技術革新、ネット接続性の確保、サイバーセキュリティとデータ保護の5領域を検討すべき政策課題に据えた。

2017年1月には、自動運転における車両制御技術や装置開発の妨げになりかねない法的障害を除去するため、道路交通法の改正案を提出。高度な自動運転機能や完全な自動運転機能を有する車両が開発された際に公道での自動運転を実現できるよう、ドライバーが一定の条件下でシステムに車両操縦を任せられるよう新たな規定を盛り込み、審議の末に改正案は可決され、6月に施行された。

自動運転関連のプロジェクトとしては、2015年に官民共同による自動運転研究プロジェクト「協調型高度自動運転(Ko-HAF:Cooperative Highly Automated Driving)」を立ち上げ、独オペルをはじめボッシュやコンチネンタルなど多数の企業参加のもと2018年11月まで各種試験やデータの収集などを行っている。

2016年からは、経済エネルギー省主導のもと自動走行システムの期待性能水準と評価基準を明確化するため産官学共同で実施する自動走行関連プロジェクト「PEGASUSプロジェクト」を開始しており、アウディやBMW、ダイムラーなどが参加している。

また、2018年には、自動運転車に対するサイバー攻撃への対策を考える産官学プロジェクト「SecForCARs(Security For Connected, Autonomous Cars)」、都市環境において自動運転技術の研究や実用化を目指す「@CITY」プロジェクトなどにも着手するなど、欧州をリードするべくさまざまな取り組みを展開しているようだ。

民間では、世界初の自動運転レベル3の量販化を果たしたアウディを擁するフォルクスワーゲングループやBMW、ダイムラー、大手サプライヤ―のボッシュやコンチネンタルなどそうそうたる顔ぶれが共同・単独さまざまな形で実証実験や研究開発に取り組んでいる。

VW:2020年にはコンパクト自動運転EV「ID.」発売へ

フォルクスワーゲンは自動運転のほか、電動化やコネクティビティ、新しいモビリティサービスなども含めた新テクノロジーなどに対し、2022年末までに340億ユーロ(約4兆3600億円)以上を投資する計画を発表している。そんな中、2020年にはコンパクトクラスの自動運転EV「ID.」を発売することを目指している。

アウディ:2000年代早期から自動運転開発をスタート

アウディは自動運転開発を2000年代の早期から既に開始していた。2005年には米国防高等研究計画局(DARPA)のロボットカーレースでスタンフォード大と共同開発した自動運転車が優勝を果たしている。2017年、市販車として世界初となる自動運転レベル3のシステム「Audi AIトラフィックジャムパイロット」を搭載した新型Audi A8を発売。こうした機能をより高度化したレベル3の「ハイウェイパイロット」を2020年から2021年に各車両に導入し始めていく予定だ。

【参考】アウディの戦略については「アウディの自動運転戦略まとめ 車種一覧やA8が備える機能」も参照。

BMW:2021年に自動運転技術を実用化、「BMW iNext」に搭載へ

BMWは2021年に自動運転技術を実用化し、その技術を搭載した初のモデル「BMW iNext」を発表することを目標としている。既に高度自動運転の開発分野で、米インテル社やイスラエルのモービルアイ社、独コンチネンタル社、米デルファイなどとの連合を形成していることも特筆すべきことだろう。ライドシェア事業の強化を発表するなど、自動車を製造するだけではなく、モビリティサービスへの注力にも積極姿勢を示す。

【参考】BMWの戦略については「BMWの自動運転技術や戦略は? ADAS搭載車種や価格も紹介」も参照。

ダイムラー:ボッシュと提携、2020年代初旬にレベル4搭載車を販売へ

ダイムラーは独自動車部品メーカーのBOSCH社と2017年4月に提携を発表しており、自動運転システムのためのソフトウェアとアルゴリズムの共同開発を進めている。目指すは自動運転レベル4相当の完全自動運転車を2020年代初めまでに市場導入することだ。カーシェアリングや配車サービス事業にも既に参入している。

【参考】ダイムラーの戦略については「ダイムラーの自動運転戦略まとめ 計画や提携状況を解説」も参照。

■フランスの動き
2020年にも自動運転車の公道走行を解禁

フランス政府は早ければ2020年に自動運転車の公道走行を解禁する方針で、法制度の整備も急ぐ。2018年6月に経済改革の一環として閣議決定した「企業の成長・変革のための行動計画に関する法案」の中では、公道実証実験の認可対象となる自動運転車の範囲を広げ、実証実験中に発生した事故における責任の所在を規定する方針についても触れられている。

また、ガソリンやディーゼル燃料で走る自動車の販売についても、2040年までに全廃する計画を2017年に発表しており、EV(電気自動車)などクリーンエネルギーを利用した自動車のみ認める方針だ。

ルノー:2022年までに自動運転を導入予定

民間では、ルノーが2022年までに自動運転車を導入する予定で、2017年10月には欧州初となる自動運転車による公道でのオンデマンドモビリティ実験サービスを開始したことを発表している。また、2018年10月開催のパリモーターショーでは、完全自動運転のEVコンセプトカー「EZ-ULTIMO」を初公開している。

このほか、自動運転シャトルバスの開発を手掛けるスタートアップの「NAVYA(ナビヤ)」と「EasyMile(イージーマイル)」がそれぞれ各地で実証実験を進めており、イージーマイルは2017年9月に混在交通下における初のシャトルバスサービスを開始している。

【参考】ルノーの取り組みについては「仏ルノー、完全自動運転EVコンセプト「EZ-ULTIMO」発表 レベル4技術搭載」も参照。

■イギリスの動き
2021年目途に自動運転車の公道走行可能に

英国では、2021年までに自動運転車が公道を走れるようにするとフィリップ・ハモンド財務大臣が発表しているほか、国内の高速道路管理会社で最高経営責任者(CEO)を務めるジム・オサリバン氏が、英国政府が30年以内に自動運転車以外の公道での走行を禁止する可能性について言及している。

自動運転プロジェクトでは、2014年に発表された「Driverless Cars」プロジェクトで同国内における自動運転の実証試験の実施要領作成や課題となる規制の洗い出しや改正案の検討などを段階的に進めており、2016年にはコネクテッド自動運転車(CAV)のための先進的なテスト環境の構築や先進センサーとコントロールシステムを有する自動走行シャトルの開発と歩行者エリアでのトライアル、車両情報をモニタリングし、セーフティリスクを予測するソリューションの開発、モバイルプラットフォームを通じたV2Xシステムの開発など8つのプロジェクトに資金を投入している。

ジャガーランドローバー:歩行者とアイコンタクト可能な車両発表

民間では、ジャガーランドローバーが開発をけん引しており、2018年8月には歩行者とアイコンタクト可能な最新の自動運転実験車両を発表。フロント部に歩行者を識別するためのバーチャル・アイを2機搭載しており、歩行者に「クルマに認識されている」自覚を促すことなどを狙っているようだ。

また、10月には自動運転レベル4の完全自動運転によるプロトタイプ車両に人を乗せ、公道においてデモ走行することに成功したことも発表している。

このほか、ロンドンのタクシー会社「アディソン・リー」が、英オックスフォード大学発のスタートアップ企業で自動運転ソフトウェアを開発するOxbotica社と組み、2021年にも自動運転タクシーサービスを開始する可能性が出てきたことなどが報じられている。

■スウェーデンの動き
官民一体、市民も交え大規模実証実験展開

スウェーデンでは、官民一体で進められている「Drive me」プロジェクトにおいて、ヨーテボリ周辺の約50キロメートルの決められた道路で市民が自動運転実験車を走らせる大規模実証実験をボルボカーズと共同で実施している。

自動運転レベル4相当の機能を搭載したボルボの自動運転車両を一般ユーザーに貸し出し、自動運転車両と一般車両が混在する日常的な交通環境下で走行することで、自動運転機能の検証をはじめ自動運転システムが下す判断や動作に対するドライバーのリアクションといった自動運転が生活に及ぼす変化などさまざまなデータをフィードバックする狙いだ。

ボルボ:レベル3飛び越し、2021年までにレベル4車両発売

民間では、ボルボカーズが新しいボルボ車での交通事故死亡者や重傷者の数を2020年までにゼロにするという目標を掲げており、2021年までに不確実な自動運転レベル3を飛び越し、自動運転レベル4相当の完全自動運転車の発売を目指している。

■オランダの動き
DAVIプロジェクト実施

オランダでは自動運転車と人との関係や社会需要性に着目した「DAVIプロジェクト(Dutch Automated Vehicle Initiative Project)」が実施されており、車車間・路車間協調システムの構築などを進めるほか、政府機関が自動運転技術の安全性を検証し、型式認定の制度化を検討している。

■フィンランドの動き
MaaS誕生や全天候型自動運転シャトルバスの開発も進む

北欧フィンランドでは、公道走行におけるドライバーの有無は法律上問われないため、自動運転開発に適した環境を有している。同国の研究機関であるVTTフィンランド技術研究センターが開発を進める自動運転車「Martti」が、雪道上における実証走行試験で世界最高となる時速40キロを記録したことが報じられている。

また、自動運転技術の開発を手掛ける「Sensible 4」社が2020年の実用化を目指す全天候型自動運転シャトルバス「Gacha(ガチャ)シャトルバス」の車体デザインを、無印良品でおなじみの良品計画が提供したことなども発表されている。ガチャはEV仕様で、大雨や雪、霧といった悪天候などあらゆる気象条件下でも走行可能という。

このほか、フィンランドは「MaaS Global」社が手掛けるプラットフォームサービス「Whim(ウィム)」を生み出した国で、MaaS発祥の国としても注目が高まっている。

【参考】Whimについては「MaaSアプリ「Whim」とは? 仕組みやサービス内容を紹介」も参照。

■2019年に欧州統一の枠組み構築へ 国際標準制定に向け大きな前進となるか

2019年までに自動運転の実用化や導入に関する欧州統一の枠組みの構築を目指すこととしており、来年には世界を巻き込むような大きな動きがありそうだ。

一方、EU内で覇権を争うかのように独自に施策を進める加盟各国の状況にはばらつきがあり、今後どのような折衝を経て統一ルールを定めるかといった点にも注目したい。


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