自動運転・AI業界、偉人21人の肖像 年齢順、神童から重鎮まで

落合陽一氏からイーロン・マスク氏まで



自動車本体のみならず、人工知能(AI)やセンサー、地図情報、通信技術など、さまざまな分野の技術が結集する自動運転業界。開発には世界トップクラスの大企業が名を連ねており、優れた経営者やエンジニアたちがたびたびビッグニュースを生み出している。


そこで今回は、自動運転業界のキーパーソンとともに、自動運転と密接に関連するAIについてさまざまな角度から発言している日本人もピックアップし、まとめて紹介する(年齢は2018年6月1日時点。一部はメディア報道などから推測)。

若手注目株の23歳神童、オースティン・ラッセル氏(米ルミナー社)。高い技術力と米インテル社の巨額買収などによって世界から一躍脚光を浴びるようになった58歳アムノン・シャシュア氏(モービルアイ社)。あなたの知っている自動運転・AI業界の著名人は何人含まれているだろうか?

記事の目次

■23歳 オースティン・ラッセル氏(アメリカ)=米ルミナー・テクノロジーズ社・CEO

光を使ったセンシング技術により車両周辺の環境を検知する高精度センサーLiDAR(ライダー)の独自開発を進める米ルミナ―・テクノロジーズの最高経営責任者(CEO)。16歳からアメリカの名門スタンフォード大学で研究にはげみ、中退後に同社を設立した。同社のLiDARシステムは従来よりも50倍以上優れた解像度を誇り、10倍以上離れた距離にある対象物を認識することができるという。トヨタ自動車も既にルミナー社製のLiDARの技術力を認め、既に採用を決めている。

【参考】ラッセル氏については「トヨタも愛した23歳の神童CEOの正体 自動運転の目『LiDAR』と米ルミナー|自動運転ラボ 」も参照。


■28歳 Sameep Tandon氏(アメリカ)=米Drive.ai社・CEO

シリコンバレーに籍を置くスタートアップ企業のDrive.aiでCEOを務める。商業用の車を対象に自動運転レベル4を実現するAI装置の開発に力を入れている。ライドシェア大手のLyftと提携し、自動運転レベル3相当の自動運転技術をサンフランシスコでテストする計画を進めている。下記Drive.ai社公式ツイートの左側がSameep Tandon氏。


■30歳 落合陽一氏(東京都出身)=ピクシーダストテクノロジーズ株式会社・社長

メディアアーティストでコンピューター技術開発のピクシーダストテクノロジーズ社の社長を務める。人工知能科学センター研究員でもあり、落合氏が率いる筑波大学デジタルネイチャー研究室(落合研究室)では「テレウィールチェア」というAI技術を用いた自動運転の車椅子などを開発している。

「最終ユーザーが自分で簡単にAIをプログラミングできることが多様な社会には重要だ」と述べており、ハンディキャップを持つ人なども自分に合わせてプログラミングできれば、高価な補助道具は必要なく対象者の少ない多様な問題を解決できるとしている。このほか、「これまでの普通は、これからの普通でなくなる」など意味深な発言も多い。

■32歳? 佐治友基氏(日本)=ソフトバンクグループのSBドライブ株式会社・社長

ソフトバンクグループでスマートモビリティサービス事業を展開するSBドライブ株式会社の社長兼CEO。同グループ代表・孫正義氏の後継者育成プログラム「ソフトバンクアカデミア」第1期生として新規事業の企画・提案に取り組み、2016年4月、30歳の若さでSBドライブを設立した。

同グループ公式サイトの社員紹介メッセージで「移動(Mobility)は人間が最初に感じる欲求で、移動に対する困りごとを解決するのはAI、IoT、ロボットといった新しい情報革命のインフラと連携する自動運転。ソフトバンクで世界のMobilityを変えたい」と意気込みを述べている。

■34歳 ローガン・グリーン氏(アメリカ)=米ライドシェア大手Lyft・CEO

米ライドシェア大手Lyft(リフト)社のCEO。フォードやGM、Drive.ai、ウェイモなど、自動運転技術に取り組む企業と次々と提携を進めており、2018年にはラスベガスで完全自動運転タクシーの試験運行にも取り組んでいる。2018年6月には、配車サービス向けの新しいアプリの導入を発表している。

■35歳? 程維氏(中国)=中国ライドシェア大手滴滴出行・創業者

中国ライドシェア大手滴滴出行(ディディチューシン)社の創業者・CEO。20代後半に会社を設立し、初期の配車サービスアプリを開始したのを皮切りに、中国の巨大インターネット企業テンセントの支援や合併などでサービスや資金を拡充し、瞬く間に巨大企業に成長させた。

2018年4月には、ライドシェアやカーシェアリングの世界的な普及を目指す企業連合「洪流連盟(Dアライアンス)」を設立。トヨタをはじめ世界の部品大手企業など31社が参加している。2018年5月には、ブロックチェーンを活用したライドシェアアプリの開発計画が表面化し、中国最大の仮想通貨取引所Binanceからの出資も予定されている。

■38歳 アンソニー・レバンドウスキー氏(アメリカ)=米Otto社・創業者

グーグル社を退職後、自動運転トラック企業のOtto社を立ち上げる。その後ウーバー社に6億ドル超で買収され、自動運転研究開発の責任者に就任した。しかし、グーグル系自動運転開発企業のウェイモ社が、同社が開発した自動運転関連の企業秘密を同氏が不正に持ち出したとしてウーバー社と傘下となったオットー社を提訴。同氏はウーバー社を解雇された。

【参考】ウーバー社とウェイモ社の関係については、「時価総額100兆円の仲直り ウーバー、グーグルと提携へ『布石』発言|自動運転ラボ 」を参照

■39歳 クリス・ラットナー氏(アメリカ)=アップルからテスラへ移籍したAI技術者

アップル社でプログラミング言語「Swift」を設計し、その責任者を務めた後、テスラ社へ。オートパイロットのソフトウェア部門の副社長に就任したが半年で退社し、現在はグーグル社の人工知能開発チームに在籍している。

■45歳 堀江貴文氏(福岡県出身)=インターステラテクノロジズ株式会社

日本の実業家、著作家、投資家、そしてタレント。さまざまな分野に精通しており、AIに関する発言やトーク動画も多い。東洋経済ONLINEに掲載されているコラムでは「AIに仕事がとられると思っている時点であなたはダサい。仕事を奪われて価値を失うことを恐れる前に、AIを使いこなし価値を生み出す視座を」と述べている。

■45歳 スンダー・ピチャイ氏(インド出身)=米グーグル社・CEO

グーグル社のCEO。2018年6月、社員約3600人がAIの平和的利用に関する嘆願書を同氏に提出したことを受け、自身のブログでAIの開発・利用指針に言及し、社会に資することやプライバシーの保護など7つのポリシーを挙げたほか、人を傷つけることを目的とした兵器と関連する技術や国際法規範に反する監視技術など4つの禁止領域を明らかにした。

【参考】ピチャイ氏のAI開発理念については、「グーグル、AIの禁止4原則公表 自動運転タクシーの兵器化、どう防ぐ|自動運転ラボ 」を参照

■46歳 イーロン・マスク氏(南アフリカ共和国出身)=米テスラ・モーターズ社・CEO

テスラ社の共同設立者でCEOを務めている。高性能な電気自動車を製造し、自動運転システムの開発にも力を入れている。独特の視点で人工知能(AI)開発も進めている。2016年12月、フォーブスの世界で最も影響力のある人物ランキング21位に選出された。

■49歳 ダラ・コスロシャヒ(イラン出身)=米ウーバー・テクノロジー社・CEO

ライドシェア世界最大手の米ウーバー・テクノロジー社のCEO。2009年にウーバー社を設立し、世界70カ国・地域の450都市以上でライドシェアサービスを展開しているとされる。2017年11月時点においては、時価総額10億ドル以上の非上場企業(ユニコーン)の中では時価総額680億ドルで世界一となっている。ウーバーは日本でも2013年に配車サービスを開始したが、白タク行為を指摘した国土交通省からの指導によって、サービスを中止している。

【参考】ウーバーの自動運転車による死亡事故などをめぐる動きについては「米ウーバー死亡事故、緊急ブレーキ作動しない設定 LiDARは歩行者認知 自動運転試験中|自動運転ラボ 」も参照。

■51歳 エザード・オーバービーク氏(アメリカ)=オランダ位置大手のヒア社・CEO

オランダの位置情報サービス大手ヒア・テクノロジーズのCEO。世界最大のコンピュータネットワーク機器開発企業のシスコシステムズの日本法人で社長兼CEOを務めた経験を持つ。クラウドを活用したヒア社の地図情報サービス普及に向け世界戦略を展開しており、2018年5月にはパイオニアの子会社であるインクリメントP社と中国のデジタル地図サービス会社、韓国の通信事業大手会社と提携した。

【参考】ヒア社の戦略については「自動運転マップ、年内に世界100万kmカバー オランダ地図大手HERE社 」も参照。

■53歳 谷口恒氏(兵庫県出身)=自動運転ベンチャーの株式会社ZMP・創業者/社長

次世代自動車の開発用プラットフォームを手がけるロボットベンチャー企業のZMP創業者。ロボット開発から自動車分野にも進出し、自動運転技術を荷物を運ぶ台車に応用した製品「CarriRo(キャリロ)」や新型LiDAR、スマートフォンを使って自動運転車を呼び出す仕組みを実装したサービスなどを手がけている。(谷口氏は下記ZMP公式Youtube動画の1:15前後に登場します)

■55歳 ジェン・スン・ファン氏(台湾出身)=米半導体大手NVIDIA社・CEO

半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)社の創業者でCEOを務める。ゲームやパソコン向けのGPUなどで業績を上げてきたが、近年は自動運転向けのAI開発に力を入れており、トヨタやコンチネンタル社、バイドゥ社など多くの企業と提携している。

■56歳 ジョン・クラフチック氏=米グーグル系ウェイモ社・CEO

自動運転システム開発会社であるグーグル系ウェイモ社のCEO。公道走行試験、走行シミュレーションを重ねAI開発に力を入れている。自動運転車の普及を見越し、車の保守や修理を委託するため2017年に全米最大手の自動車ディーラー「AutoNation」と提携を発表した。アメリカや欧州で自動運転タクシーの実証実験や実用化を目指しており、事業を加速させている。

【参考】ウェイモ社の取り組みについては「月往復10,000回分を自動運転で仮想走行 グーグル系ウェイモ|自動運転ラボ 」も参照。

■56歳 メアリー・バーラ氏(アメリカ出身)=米ゼネラルモーターズ会長兼CEO

ゼネラルモーターズ会長兼CEO。2016年に自動運転システムを手掛ける米スタートアップ企業Cruise Automationを買収した。ソフトバンクグループからも出資を受け、2017年にドライバー不要の完全自動運転車の量産モデルを発表している。

■57歳 ティム・クック氏(アメリカ出身)=米アップル社・CEO

アップル社のCEO。光を使ったセンシング技術で車両の周辺環境を検知するLiDAR(ライダー)を用いて、歩行者や自転車に乗っている人を見分けるソフトウェアや、移動しながら位置の推定とマッピングを同時に実行する「SLAM」と呼ばれるソフトウェアの開発など進めている。2017年からカリフォルニア州での公道試験に力を入れている。

■58歳 アムノン・シャシュア氏(イスラエル出身)=インテル傘下モービルアイ社・CEO

米インテル傘下で高度なカメラ解析技術を持つイスラエル企業モービルアイのCEO。最新の画像処理チップ「EyeQ4」のアップデート版「EyeQ5」の量産体制が整う2021年をめどに、欧州に拠点を置く自動車メーカーの車両800万台に同社の自動運転技術が搭載されるという。また、2019年末までに自動運転レベル3の自動車10万台超を路上に送り出すことを見込んでいる。

■58歳 豊田章男氏(愛知県出身)=トヨタ自動車・社長

トヨタ自動車の第11代社長。トヨタ自動車は2018年5月の2018年3月期連結決算発表では代表スピーチで、自動運転化やコネクテッド化を進めることなどに意欲を示し、「トヨタを『自動車を作る会社』から『モビリティカンパニー』にすることを決めた」と強調した。

■60歳 孫正義氏(佐賀県出身)=ソフトバンクグループ・会長

ソフトバンクグループの創業者で、ソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長。同グループ海外ライドシェア4社の売上高は2017年は650億ドル(約7兆1000万円)に達し、平均1日乗車回数は3500万回に上っている。傘下に抱えているのはウーバーのほか、中国のライドシェア最大手「滴滴出行(DiDi Chuxing)」や東南アジア最大手の「グラブ(Grab)」、インドで普及が進むライドシェアサービス「OLA(オラ)」など。自動運転に必須の高速通信インフラの形成にも力を入れており、アメリカにおける5Gネットワーク構築にも強い関心を示している。

【参考】ソフトバンクのライドシェア事業に関しては「【速報】ライドシェア乗車数、1日3500万回 ソフトバンク傘下Uberなど4社|自動運転ラボ 」も参照。

■終わりに

実績のある大企業の経営者は40代以降が多く、スタートアップ企業は若手が多い傾向がうかがえる。提携や買収、出資などを含めた各社の勢力図を展開すると、自動運転業界では特に若い世代が持つ先進的・先鋭的な発想を基にした技術が高く評価されていると言えそうだ。


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