独ボッシュの事故データ解析技術、警視庁も注目 自動運転開発も加速

2017年国内売上は10%増の2950億円



出典:ボッシュ社プレスリリース

自動車部品大手の独ボッシュ社は2018年6月6日、東京都内で年次記者会見を開いた。日本国内での2017年の売上高は前年比10%増の約2950億円、グループ全体では同6.8%増で過去最高の781億(約10兆円)ユーロを記録した。

会見では事故発生時の車両の状態を記録するEDR(Event Data Recorder)からデータを取り出すためのツールであるCDR(Crash Data Retrieval)の需要が伸びていることにも言及。日本の保険会社や警視庁などの警察組織からも注目を浴びていることを紹介した。


世界最大ともいわれる自動車サプライヤーの業績や新製品、取り組みなどについて、年次記者会見を追いながら紹介する。

■ボッシュグループ2017年の業績

モビリティソリューションズ、産業機器テクノロジー、消費財、エネルギー・ビルディングテクノロジーの全ての事業セクターで前年を上回った。特にモビリティソリューションズ事業の伸びが顕著で、売上高は前年比7.8%増の474億ユーロ(約6.1兆円)に達しており、2017年の世界の自動車生産台数の伸び2.4%に対し約3倍の成長率を示した。地域別業績では、北米を除くすべての地域でプラス成長を遂げており、特にアジア太平洋地域では同14%増となった。

支払金利前税引前利益(EBIT)については、同6.8%増の53億ユーロ(約6800億円)、研究開発費は同5.7%増の73億ユーロ(約9400億円)で、先行投資の主な対象分野はドライバーアシスタンスシステム、自動運転機能、ディスプレイ分野、インフォテインメントシステム、センサー技術など。

■日本での2017年の業績と自動運転の取り組み

売上高10%増の日本国内においては、同様に自動車生産台数の増加率5%と比べて大きく上回る結果となった。パワートレイン関連や自動車安全の需要に応えた先進安全運転支援分野を含むセーフティーシステム向け製品の取引拡大が売り上げ増加に貢献したほか、医療品向け検査・包装機器の売上増加や油圧や電動駆動の産業機器向け製品の売上が回復したことを要因として挙げている。


自動運転の分野では、日本特有の交通事情に対応した自動運転システムを開発するため2015年から公道試験を行っており、2017年末からは政府が推進する自動運転の開発プログラムSIP-adusに参画。車体周囲の360度センシングや高い処理能力を持つ車載コンピューター、高精度で自車位置を推定する研究開発などを進めている。

2018年4月25日にドイツで開催された年次会見に出席したボッシュ社のフォルクマル・デナー最高経営責任者(CEO)=ボッシュ社プレスリリース
■需要増の事故記録データ解析ツール「CDR」

記者会見では、事故発生時の車両の状態を記録するEDRからデータを取り出すためのツールであるCDRの需要が伸びていることについても触れた。

自動緊急ブレーキやレーンキープアシストなどの先進安全システムや自動運転システムを搭載した車両では、コンピューターで制御されたシステムが意図した通りに作動しているかを確認する必要があり、日本でも未来投資会議で2020年をめどに記録装置の搭載義務化を含む制度整備に向けた大綱がまとめられているため、今後も需要増が見込まれる。

同社のCDRは17メーカー、51ブランドのEDRに対応している世界トップのツールで、日本ではこれまでハードウェアのみの販売だったが、2017年末からデータ解析トレーニングの提供も開始しており、自動車メーカー各社や損害保険会社などの大手損保各社、科学警察研究所や警視庁などの警察組織で使用されているという。


■自動緊急通報と運転行動の分析ができる新しいデバイス「TEP」

従来の後付けできる自動緊急通報用アダプター(eCall)に加え、運転行動の分析ができる新しいデバイス「テレマティクスeCallプラグ(TEP)」を、富士通株式会社とともに日本で販売することに合意した。自動車のシガーソケットに差し込むだけで、プラグに搭載されている加速度センサーと一体型のマイクロコントローラーが衝突の衝撃を検知するだけでなく、加速度やブレーキ、ステアリング操作などの運転行動データを収集するという。

■二輪車向け先進安全システム:レーダーを使用したライダーアシスタンスシステム

二輪車の安全性をさらに向上させるため、アダプティブクルーズコントロール(ACC)、衝突予知警報、死角検知を含むライダーアシスタンスシステムを開発。レーダーセンサー、ブレーキシステム、エンジン制御システムとHMI(ヒューマンマシンインタフェース)を組み合わせた技術で、同社の事故調査報告によると二輪車事故の7件に1件を防ぐことができたという。新しいライダーアシスタンスシステムは2020年から量産を開始する予定。

【参考】東京都内で開催されたボッシュ社の年次会見の詳しい内容については「プレスリリース」も参照。


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