大企業が買収したくなる有望MaaS系ベンチャー10選

WHILLやNearMe、未来シェア、Azit…





将来の交通の在り方を大きく変えるMaaS。このMaaSをめぐっては、交通機関や自動産業をはじめ、プラットフォーマーやモビリティ開発事業者なども相次いで参入し、協力体制を構築しながら研究開発が進められている。







特に、プラットフォームや新モビリティの開発分野では新進気鋭のスタートアップ・ベンチャーの存在が目立っており、MaaSの実現とともに飛躍的に企業価値を伸ばす可能性が高い。

今回はそんなMaaS関連の注目ベンチャー10社をピックアップし、紹介しよう。

■「MaaS」の構造

MaaSは、一般的に自動車や自転車、バス、電車など、全ての交通手段を単なる移動手段としてではなく一つのサービスとして捉え、プラットフォーム上でシームレスにつなぐ新たな移動の概念を指す。

既存の移動サービスをはじめ、ラストワンマイルを担う新たな移動サービスなども交え、あらゆる乗り物が一つのプラットフォーム上で速やかに予約や決済ができるシステムで、進化形態として、料金システムそのものの統合や政策との統合、さらには駐車場や飲食、医療、住居などとの柔軟な連携なども考えられている。

MaaS開発をめぐっては、新たなモビリティの開発や交通・移動に関わる新サービスの開発、統合プラットフォームの開発などが盛んに行われており、自治体とともに実証を進めるモデル事業も2019年度にスタートしている。

交通課題を解決する公共的な意味合いが強く、一定の地域ごとにMaaSの枠組みが形成されつつある段階で、各社の協力のもと統合プラットフォームとなる器を開発し、そこに一つひとつの要素となる各交通機関の移動サービスを落とし込んでいく形が一般的のようだ。

【参考】MaaSについては「MaaS(マース)の基礎知識と完成像を徹底解説&まとめ」も参照。

■有望MaaSベンチャーの紹介
WHILL:パーソナルモビリティを開発、MaaS事業にも本格着手

パーソナルモビリティの生産・販売などを手掛ける有力スタートアップ。神奈川県横浜市に本社を構えるほか、米カリフォルニア州やオランダのアムステルダムにも拠点を持つ。

機能的かつ洗練された電動車いすの開発に始まり、独自に開発したステレオカメラなどセンサーを搭載した自動運転モデルなど開発の幅を広げている。現在は、パーソナルモビリティをだれもが安全に乗れるインフラとして走らせるMaaS事業にも本格着手している。

2018年12月には、小田急電鉄、ヴァル研究所、タイムズ24、ドコモ・バイクシェアと「小田急MaaS」に関する企業間連携に合意し、2019年中に実証実験を進める予定となっている。

資金面では、2014年に第三者割当増資により1100万ドル(約12億円)を調達したほか、2016年に1750万米ドル(約20億円)、2018年にも約50億円の資金調達を実施している。

Azit:ドライブシェアアプリ「CREW」をMaaS活用

2013年11月に設立された交通系プラットフォーマーで、東京都港区に本社を構える。ドライブマッチングアプリ「CREW(クルー)」を開発し、実用化とともにMaaSサービスの実証を進めている。

CREWは、自家用車に乗せたい人と乗りたい人をマッチングするドライブシェアアプリ。このCREWを活用し、2018年8月に鹿児島県大島郡与論町でドライブマッチングの実証を開始し、2019年4月からは地域のタクシーを配車することも可能な設計にする方針で合意し、MaaSプラットフォームとして定常的にCREWを提供することに合意している。

2019年2月には、日本各地のモビリティの課題を解決する「Local Mobility Project」の始動を発表。2019年4月に長崎県五島市久賀島、同年7月に栃木県那須塩原市及び那須町で、新たな移動手段としてCREWを活用する実証実験をそれぞれ行っている。

資金調達面では、2018年9月にグローバル・ブレイン株式会社、クルーズ株式会社らを引受先とする総額約10億円の第三者割当増資を実施している。

【参考】Local Mobility Projectについては「ドライブシェアアプリ「CREW」運営のAzit社、「Local Mobility Project」を始動」も参照。

Carstay:車中泊スポットシェアサービス「Carstay」を展開、モネへの参加も

2018年6月設立にされた、VANLIFEプラットフォーム「Carstay」を運営するベンチャー。本社は東京都新宿区。

Carstayは全国各地の駐車場や空き地を車中泊スポットとして貸し出す旅行者向けシェアリングサービスで、2019年1月にサービスを開始している。

2019年4月に3000万円の資金調達を行ったほか、2019年6月には、MaaSプラットフォーム構築を推進する「MONETコンソーシアム」にプラットフォーム運営者として参画することを発表している。

【参考】MONETコンソーシアムへの参加については「「バンを家に」のCarstay、MONETコンソーシアムへ参画」も参照。

akippa:駐車場シェアサービスを展開

駐車場のシェアリングアプリ「akippa」を手掛けるプラットフォーマー。2009年2月に前身となる合同会社ギャラクシーエージェンシーを設立し、2014年にアプリ「akippa」のサービスを開始した。大阪府大阪市と東京都千代田区にオフィスを構える。

akippaは、契約されていない月極駐車場や個人宅の車庫・空き地・商業施設などの空きスペースに、ネット予約で駐車できるシェアサービス。2019年6月には、1カ月以上の中長期利用が可能な定期利用サービスを開始するなど、サービスの拡充を図っている。

notteco:相乗りマッチングサービス大手、MaaSを日本に実装するための研究会に参加

株式会社ガイアックスの100%子会社で、相乗りマッチングサービスnottecoを手掛ける。別の企業が運営していた同種サービスの事業譲渡を受け、大幅リニューアルして2015年にサービスを開始した。

実費の範囲内の金額を同乗者が負担することで相乗りを実現する有償(営利)ではないライドシェアサービスとして人気を博しており、2017年3月には、北海道天塩町とライドシェアの実証実験を行っている。

2019年3月には、一般社団法人「ブロードバンド推進協議会」が発足した「MaaSを日本に実装するための研究会」への参加を表明している。

【参考】MaaSを日本に実装するための研究会については「「MaaSを日本に実装するための研究会」発足 トヨタとソフトバンクが共同出資のMONETも参加」も参照。

NearMe:タクシーの相乗りサービス展開、新潟で実証中

社会のあらゆる非効率を、テクノロジーを活用したプラットフォームを活用することで解決を目指すベンチャー。2017年7月設立で、東京都中央区に本社を構える。

まずはじめに、MaaS領域における「タクシーの相乗り」に着目し、アプリ「nearMe.」を開発。2019年4月、ベンチャー企業やスタートアップ企業と連携しながら新しい移動サービスの創出を目的に京浜急行電鉄などが取り組んでいる「KEIKYU ACCELERATOR PROGRAM(京急アクセラレータープログラム)」に採択されたほか、同年7月からは、新潟県長岡市と長岡市ハイヤー協会とともに同アプリの実証実験を長岡市内で開始することを発表している。

rimOnO:新しい乗り物開発ベンチャー、MaaS推進活動を強化

2014年9月に東京都中央区で設立された「新しい乗り物」を開発するベンチャー。2016年5月に試作車「rimOnO Prototype 01」を発表している。

制度整備や資金調達などに苦戦しており現在は開発休止中だが、移動に関するさまざまな課題を解決していくための活動を継続しており、MaaSの推進に向けた活動も強化。一般社団法人「ブロードバンド推進協議会」が発足した「MaaSを日本に実装するための研究会」にも参加している。

電脳交通:タクシー配車プラットフォーマー、瀬戸内MaaS実証実験に参加

2015年12月設立のタクシー配車プラットフォーマー。徳島県徳島市に本社を構え、タクシー配車システムの開発・提供をはじめ、タクシー会社の配車業務受託運営サービス、車内メディアなどを担っている。

2019年7月、JR西日本などが実施する瀬戸内エリアにおける「観光型MaaS」実証実験への参画を発表し、MaaS事業にも正式に参入した。

実証実験では、観光誘客拡大に向け出発地から目的地までの新幹線をはじめとする鉄道をはじめ、現地での船舶、バス、タクシー、レンタカー、レンタサイクル、カーシェアリングなどの交通機関および地域の観光素材を、スマートフォンなどでシームレスに検索・予約・決済することができる統合型サービスの実証を2019年10月から2020年3月まで行う予定。

【参考】瀬戸内エリアのMaaS実証実験については「JR西日本、瀬戸内エリアで観光型MaaS実証 2019年10月から開始へ」も参照。

未来シェア:はこだて未来大発ベンチャー、オンデマンドリアルタイム配車サービス開発

2016年7月に設立された公立はこだて未来大学発のITベンチャー。公共交通の課題解決や新サービスの創出などを手掛けるほか、AI(人工知能)を活用しリアルタイムに全車両の走行ルートを決定できるオンデマンド・リアルタイム配車サービス「SAVS(Smart Access Vehicle Service)」も開発している。

経済産業省と国土交通省による地域と企業の協働による意欲的な挑戦を促す新プロジェクト「スマートモビリティチャレンジ」の推進協議会に参加しているほか、JTBとの資本業務提携や、経路検索サービス「駅すぱあと」を手掛けるヴァル研究所との提携など、活動の幅を拡大している。

シンクトゥギャザー:自動運転開発ベースに最適な低速EV製品化

群馬県桐生市で2007年に設立されたEV(電気自動車)企業。最高時速20キロ弱の低速電動コミュニティビークルで10人乗りの「eCOM-8」や16人乗りの「eCOM-10」をはじめ、2人乗りの低速EV「eCOM-mini」などの開発を手掛けている。

eCOM-10などは自動運転システムの開発ベース車両としても有用で、群馬大学などが自動運転の実証実験などに活用している。

群馬大学の改造のもと自動運転機能を備えたeCOM-10は、2018年10月に大分市、同年12月に東京都が実施した実証実験で実際に活用されている。

見た目のインパクトにも優れた10輪車仕様ということもあり、観光地などでMaaSに組み込むと話題を集めそうだ。

■【まとめ】MaaS業界地図は拡大傾向、資本業務提携からそろそろ買収事案も?

MaaS関連では、今まさに産声を上げた企業や水面下で活躍する企業などもあり、ピックアップしきれないほど業界の地図は拡大を続けている。

公共性の高さと利便性の高さから、MaaSが将来社会に浸透するのはほぼ間違いない。ある意味成功が約束されている分野と言え、MaaS関連企業の価値はトータルとして上がっていくことになる。

もちろん競争が介在することから脱落する企業も出てくることになるだろうが、伸びしろの大きい分野におけるベンチャー企業の躍進は想像を超える。資本業務提携もぽつぽつと出てきているが、大企業による大型買収などのニュースが流れるのも、そう遠い未来の話ではないだろう。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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