自動運転、公道の一般道で可能になるのはいつから?

ハードル高い自家用車、サービス用途の場合は?



2021年春、渋滞運転機能「トラフィックジャムパイロット」を搭載したホンダ「レジェンド」が発売され、高速道路における自動運転レベル3の実用化がスタートした。速度制限などあるものの、自家用車における自動運転の幕開けだ。







一方、一般道における自動運転は、事実上実証段階が続いている。法律的にレベル3は実装可能だが、高いハードルを乗り越えるにはまだまだ助走が足りていない状況のようだ。

一般道における自動運転はいつ実現するのか。考察を深めていこう。

■自動運転を実現しやすい環境とは?
専用・閉鎖空間から徐々に混在空間へ

レベル3、レベル4の自動運転システムには、自律走行を可能にする条件となる「ODD(運行設計領域)」が設定されている。

ODDは、主に自動車専用道路や一般道、車線数といった道路条件や、仮想的に線引きした地理的境界線(ジオフェンス)内などの地理的条件、天候や日照状況などの環境条件、速度やインフラ協調の有無といったその他の条件などで構成されている。

例えば、レベル3を可能にしたホンダの渋滞運転機能「トラフィックジャムパイロット」は、高速道路本線上での渋滞時において、自車の速度がシステム作動開始前に時速30キロ以下(作動開始後は約50キロ以下)であることなどが条件となる。こうした各種条件がODDだ。

このODDは「自動運転システムの能力」を示す指標と言える。例えば、速度においては低速よりも高速(制限速度内)の方が高度な自動運転技術を要する。同様に、道路条件においては、自動運転車のみが走行可能な専用道路よりも歩行者をはじめさまざまな交通主体が混在する一般道路の方がハードルが高く、より高度な技術が必要となる。

つまり、高速よりも低速、一般道路よりも専用道路の方が安全性を担保しやすく、自動運転を実現しやすいのだ。

各社が実用化に向け開発を進める自動運転システムがどのようなODDを対象とするかは戦略上さまざまだが、安全を確保しやすい環境・条件下の自動運転から社会実装が進むことは言うまでもない。

自動運転の普及は、一般的に商業施設や空港敷地内、駐車場内といった公道以外の専用空間、次に一般公道との交差を含む自動運転車専用道路、自動車専用道路、自動運転車の走行に配慮した特定の混在空間、一般的な混在空間の順に進む。高速道路に関しては、自動車専用道路でありつつも速度域が異なるため、別途並行して普及していくものと考えられる。

移動サービスは混在空間下で実証加速

自動運転車が走行しやすい環境は上記の順となるが、これはあくまで指標にとどまる。移動サービスなど商用の自動運転車の場合は「移動ニーズ」を無視できないため、混在空間での実現に向けた開発に早期着手する例が多い。

代表例は、国土交通省などが主導して進めている道の駅などを拠点とした自動運転移動サービスの実現に向けた取り組みだ。秋田県北秋田郡上小阿仁村の道の駅「かみこあに」では、期間限定で公道の一部区間を一般車両が進入しない専用区間とした。なお、ドライバーは乗車している。

滋賀県東近江市の道の駅「奥永源寺渓流の里」や島根県飯南町の道の駅「赤来高原」などでも、ヤマハ発動機のカートタイプの低速自動運転モビリティを活用し、ドライバー乗車のもとサービス実証を進めている。

【参考】道の駅における取り組みについては「全国で3カ所目!道の駅×自動運転移動サービス、島根県で開始へ」も参照。

また、茨城県境町では、BOLDLYらが自動運転シャトル「NAVYA ARMA」を使用し、ドライバー乗車のもと定常運行を行っている。福井県永平寺町では、歩行者・自転車専用道の一部区間でドライバーレスの遠隔監視によるレベル3運行が始まっている。

公道におけるドライバーレスのレベル4運行は事実上未実装だが、セーフティドライバー同乗のもとサービス実証を重ね、技術や地域における社会受容性を向上させ、来たるべき自動運転社会に備えている状況だ。

なお、法律上レベル3は高速道路に限らず一般道も走行可能だ。自動運転を前提に開発が進められている移動サービス向け車両であれば、比較的交通量の少ない一般道においてあらかじめ定められたルートを走行するケースなど、ODDの設定次第でレベル3を達成できることも付け加えておく。

■レベル4実現に向けたロードマップ

「官民ITS構想・ロードマップ」によると、自家用車の高速道路におけるレベル3は実現済みで、高速道路におけるレベル4の市場化期待時期は2025年を目途としている。一般道でのレベル4普及は未定の状況だ。

▼官民ITS構想・ロードマップ2020
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20200715/2020_roadmap.pdf

一方、移動サービスでは、限定地域でのレベル4無人自動運転移動サービスを2020年に達成し、その後、遠隔監視のみの同サービスを2022年度目途で実現し、徐々に対象地域の拡大を図っていく方針としている。2025年度には40カ所以上への展開を目指すとともに、混在空間でのレベル4自動運転サービス実現も視野に入れている。

このほか、物流分野では、高速道路でのレベル4自動運転トラックを2025年度ごろに実現するとしている。

出典:官民ITS構想・ロードマップ2020(クリックorタップすると拡大できます)

走行区間が限定されない自家用車においては、まずは高速道路におけるレベル3の機能を高度化し、速度要件などのODD拡大を図っていくものと思われる。並行して、国道など幹線におけるレベル3や、高速道路におけるレベル4実現を目指すものと思われる。

高速道路はゲートで区切られているため自動運転可能なエリアを把握しやすく、自家用車におけるレベル4実現に都合が良い。一方、ODDの設定が非常に難しい一般道においては、国道などの幹線から徐々に実装が始まる可能性が高いほか、場合によっては高精度3次元地図や交通インフラなどが整った一部エリアで先行実施されることも考えられる。

一般道での自家用車による自動運転は、ハードルが高い

いずれにしろ、一般道での自家用車による自動運転のハードルは非常に高い。まずはハンズオフが可能な高度なレベル2の実用化を進め、そこからレベル3・レベル4へと進化させていくことになる。こ

うした過程を踏まえると、高速道路のレベル4は早くとも2025年ごろ、一般道は一部国道などでレベル3の実用化が数年以内に始まる可能性がありそうだが、レベル4は2030年までに実現すれば早期実現と言えるのではないだろうか。

一方、移動サービスなどの商用自動運転は、自動運転車の運行ルールや管理体制が整っており、走行ルート・エリアも明確に定義可能なため、レベル4を可能にする法改正までに下準備が進み、改正法施行とともにサービスインする可能性も十分考えられる。

■レベル4実現に向けたハードル
無人化対応に向け法改正は必要不可欠

現在、道路交通法や道路運送車両法で認められているのは、ドライバーの存在を前提としたレベル3までだ。高速道路に限定されているイメージがあるが、システム要件を満たせば一般道においてもレベル3走行することは法律上可能となっている。

レベル4実現に向けては、道路交通法などのさらなる改正が必要不可欠となる。ドライバーの存在を前提としない、つまりドライバーレス走行に向けた改正がポイントとなる。ドライバーレスでの公道走行においては、安全走行はもちろん救護義務をはじめとした万が一の際の対応など、しっかりと要件を煮詰めなければならない。

現在、国が設置する各種委員会やワーキンググループでレベル4実現に向けたルール作りなどが進められているほか、国土交通省は2022年度予算要望で「自動運転(レベル4)の法規要件の策定」を掲げた。2022年度には法改正に向けた動きが本格化し、早ければ同年度内に改正概要がまとまる可能性もある。

「自動運転法」となるであろう改正道路交通法は、2023~2024年度施行となる可能性が高い。真の意味で自動運転社会が到来し、実用化が進むのはその時点だ。先行するドイツを参考に、議論もいっそう活発化しそうだ。

【参考】法改正の動きについては「ドイツ議員の決断力!「完全自動運転」条件付きでGOサイン」も参照。

自動運転システムのさらなる高度化も

法律上、レベル3は一般道も走行可能だが、現実はそれほど簡単なものではない。高速道路に比べ速度域は低下するものの、自転車や歩行者といったさまざまな交通主体が混在し、進行方向が異なる道路が交わる交差点も多数存在する。交差点が近付くたびにターンオーバーリクエストが発されれば、それはもう自動運転とは言えないだろう。レベル4であればさらにハードルは上がる。

センサーの認識技術や解析技術の高度化はもちろん、下記の高精度3次元地図の整備やインフラ協調などさまざまな技術を融合させ、自動運転システム総体の高度化を図っていく必要がある。

情報インフラやV2Iシステムの確立

高度な自動運転を実現する要素技術として、高精度3次元地図やV2I(路車間通信)、衛星測位システムなどが挙げられる。道路や交通に関するあらゆる情報を先取りし、自車位置を正確に把握する技術だ。

高精度3次元地図には、カーナビマップのような道路情報にとどまらず、道路の幅員や起伏、路肩縁や区画線、停止線、横断歩道などの実在地物、仮想の車線リンクに至るまで、さまざまな情報を立体かつ精密に図化されている。

自動運転車は、こうした情報を先取りすることで安全走行を実現するほか、車両に搭載したセンサーデータと随時照合することで自車位置推定を補完することもできる。

国内ではすでに高速・自動車専用道路約3万2,000キロを網羅しており、現在は一般道への拡大を進めている。計画では、2023年度に8万キロ、2024年度に13万キロを整備する予定だ。一般道における自動運転には、多くの場合この高精度3次元地図の整備が不可欠で、定期更新する仕組みも必要となる。

また、道路インフラと情報をやり取りするV2I技術も重要性を増してくる。交差点や路肩などに設置されたセンサーが取得したリアルタイムの交通情報や信号情報などを活用することで、走行ルート上の状況をいち早く把握することが可能になる。通信技術や通信規格、通信する情報の種別など、あらゆる観点から早期整備が求められるところだ。

道路交通インフラの再整備

自動運転車が物理的に走行しやすい道路交通インフラ作りも今後重要となりそうだ。自動運転車専用・優先レーンの設置や厳密な駐停車禁止区間の設置、道路インフラへの各種センサーの取り付けなど、道路そのものを自動運転に対応したものへと進化させていくことも必要となるはずだ。

■【まとめ】2025年までに社会実装環境が大きく変化?

自家用車とサービス向けの自動運転車は切り分けて考える必要があり、自家用車においては、一般道の自動運転実現にはまだまだ時間がかかる見込みだ。レベル2、レベル3が今後どのように進化していくかが第一の焦点となる。

一方、サービス向けの自動運転車は、ODDの設定次第でレベル3であればすぐにでも実現できる状況にある。ただし、サービス用途においてはドライバーレスのメリットが非常に大きいため、レベル3はレベル4実現に向けた実証の過程にある存在とも言える。レベル2~3で実証を重ね、法改正後のレベル4実装に向け着々と経験値を積み重ねている状況だ。

いずれにしろ2025年までには改正法も施行され、自動運転技術を社会実装する環境は大きく変化しているはずだ。レベル4移動サービスは普及に向けたフェーズに突入している可能性もある。

今後、どのような行程を経て一般道への自動運転普及が図られていくのか。国や開発企業らの動向に注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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