新規参入相次ぐ!自動配送ロボット、国内プレーヤーの最新動向まとめ

公道での実証実験がさらに加速



出典:パナソニック・プレスリリース

自動運転可能な宅配ロボットの早期実用化に向け公道実証環境が2020年に整い、開発や実証に向けた取り組みが大きく加速している。これまで一部企業にとどまっていた取り組みは裾野を広げ、大手電機メーカーや自動車メーカーらも本格参入に向けた動きを見せている。

この記事では、この1年で大きく進み始めた自動走行ロボットの国内最新動向に迫っていく。


■パナソニック:オリジナルロボットで実証実験を実施

パナソニックは2020年12月、小型低速ロボットを使った住宅街向け配送サービスの実証実験を神奈川県藤沢市Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)で実施すると発表した。

同社が開発したオリジナルロボットを活用し、公道走行時の技術検証や課題抽出、ロボットを利用した新たな配送サービス体験に対する受容性の検証を進めている。

Fujisawa SSTにおける取り組みの中で、公募のもとロボットに「湘南ハコボ」といった愛称が付けられるなど、地域との親和性を高めている印象だ。2021年6月には、地域サービスの実証実験を通常ツアーにプラスするオプションツアーも開始しており、サービスの概要説明やデモ走行の見学などを実施している。

【参考】パナソニックの取り組みについては「パナソニック、住宅街で自動運転配送の実証実験!小型・低速型ロボットで」も参照。


■ティアフォー:小型自動搬送ロボット「Logiee S1」などを開発

自動運転開発を手掛けるティアフォーは2020年12月、遠隔監視・操縦機能を搭載した小型自動搬送ロボット「Logiee S1(ロージー・エスワン)」を開発したと発表した。


屋内外を走行可能で、脱着可能な各種モジュールを車両上部に付け替えることでさまざまなニーズに対応することができる。

同月には三菱商事などとともに岡山県玉野市で公道実証に着手しており、小売店から周辺住民ら複数顧客に対しルート最適化技術を用いて医薬品などの配送に取り組んだ。

2021年8月には、損害保険ジャパン、KDDI、小田急電鉄と4社で取り組んでいる「5G×自動配送サービスプラットフォーム事業」が、東京都の「令和3年度西新宿エリアにおける5Gを含む先端技術を活用したスマートシティサービス実証事業」に採択されたことを発表した。

2022年1月ごろ、西新宿エリアにおいて自動走行ロボットによる5Gを活用した配送サービスの実証実験に取り組む予定としている。

また同月には、川崎重工業との協業についても発表しており、ティアフォーの自動運転システムを活用した自動走行ロボットの全国展開に注目が集まるところだ。

■川崎重工業:ティアフォーなどと実証実験の検討を開始

川崎重工業とティアフォー、損害保険ジャパンの3社は2021年8月、自動搬送ロボット領域における協業に向けた実証実験の検討を開始することを発表した。

川崎重工は自動搬送ロボットの開発などを担い、ティアフォーはオープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」を活用したロボットや運行管理システム、遠隔監視システムなどの開発を行う。損保ジャパンは実証実験計画の策定やロボット運行にかかるリスクアセスメント、保険の提供などを行う。

モビリティ領域やロボット領域で豊富な実績を誇る川崎重工が新たに開発プレーヤーに加わったほか、ティアフォーとしても自社開発以外のロボットを活用した実証実験の検討は初めての取り組みとなっている。

ホンダ:楽天グループと自動配送ロボの走行実証を開始

ホンダは2021年7月、楽天グループと筑波大学構内や公道において自動配送ロボットの走行実証実験を開始したと発表した。

自動配送ロボットには、ホンダがCES2018 で発表したプラットフォーム型ロボティクスデバイスを活用している。自動配送機能を備えた車台に楽天が開発した商品配送用ボックスを搭載し、自動配送を行う仕組みだ。

また、電力源にはホンダが開発した交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack(モバイルパワーパック)」を採用しており、充電を待つことなく継続的な配送サービスを実現できる点もポイントとなりそうだ。

【参考】ホンダの取り組みについては「トヨタとホンダ、「無人配送」でもガチンコ勝負 自動運転技術を応用」も参照。

■トヨタ:自動配送ロボット「S-Palette」を開発中!?

トヨタは、配送用途の自動運転ロボット「S-Palette」の存在をオウンドメディア内で明かしている。詳細は明かされていないものの、実証都市「Woven City」において物流専用道を走行し、物流センターに届いた荷物などを各戸に設置されたスマートポストに運ぶ役割を担う。

また、スマートポストに配送したい荷物を入れておけば、自動で回収する機能も搭載するという。配達物のIoT化や配送ルートの効率化といったオペレーション実証をすでに社内で進めており、まずはWoven City内で実装していく構えだ。

地価に設置した物流専用道を活用しているため、将来的に広く普及するモデルとなるかは正直なところ不明だが、スマートポストの仕組みなどインフラと協調するシステムは有用だ。

宅配ロボットがスマートポストやスマートロッカーに自動で荷物を届け、また回収する仕組みが実現すれば、荷物の受け取りや受け渡しといった作業も自動化することができる。

今後、Woven Cityでどのような実証が進められるのか、要注目だ。

【参考】トヨタの取り組みについては「これがトヨタ未発表の「S-Palette」!物流専用の自動運転ロボか」も参照。

■京セラコミュニケーションシステム:車道で実証実験を実施

京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は2021年7月から、車道を活用した無人自動配送ロボットの実証実験を北海道石狩市で行っている。

ロボットは歩道走行を前提とした小型タイプではなく車道走行を前提とした超小型モビリティで、第一種原動機付自転車(ミニカー)の規格(長さ2.5m以下×幅1.3m以下×高さ2.0m以下)に準拠したサイズで、最高速は時速15キロに抑えている。

歩道走行モデルと比較し大型化することでより多くの荷物を積載可能にしており、複数サイズのロッカー20個を活用したシェアリング型配送サービスの実現に取り組んでいる。

■TRUST SMITH:新進気鋭の東大発ベンチャー

新進気鋭の東大発ベンチャーTRUST SMITHも2021年3月、自動配送ロボットの開発に着手したことを発表している。

同社はこれまで自動運転トラックや自動搬送ロボットの開発などを手掛けてきたが、配送ロボットの公道使用が認められ、配送ロボットの導入が可能になったことを受け、物流業界が抱える課題解決に向け動き出した形だ。

新開発するロボットは、グリップ力のあるタイヤを用いた四輪駆動式を採用し、歩道走行中に現れる軽微な段差の乗り上げなども可能にするという。

【参考】TRUST SMITHの取り組みについては「日本で新たな自動配送ロボ誕生へ!TRUST SMITH、操作性を重視」も参照。

■ソフトバンクグループ:グループ会社2社がロボティクス事業に注力

ソフトバンクグループは、ソフトバンクロボティクスとアスラテックの2社がロボティクス事業に力を入れており、海外製品の国内展開をバックアップしている。

ソフトバンクロボティクスは、米Bear Roboticsが開発した屋内向け配送ロボット「Servi」の取り扱いを2021年に開始し、販売開始した2月には飲食業態を中心に100ブランド以上への導入がすでに決定するなど人気を集めている。

一方、アスラテックは香港のRice Roboticsが開発した屋内配送ロボット「RICE」を取り扱っており、JR東日本が2020年12月から高輪ゲートウェイ駅で実施した実証実験に提供されたほか、2021年2月には日本郵便の実証にもRICE5台が提供されている。

また、東京竹芝エリアのソフトバンクグループ本社においても、セブン-イレブン・ジャパンの協力のもと、ビル内のコンビニ店舗からオフィス従業員らへ商品配達する実証実験が2021年1月から行われている。

【参考】ソフトバンクグループの取り組みについては「Pepperに続くロボティクス事業の全貌(ソフトバンク×自動運転・MaaS 特集)」も参照。

■ZMP:「DeliRo」をサービスパッケージ化

国内宅配ロボット開発の草分け的存在のZMPは、自社開発した「DeliRo(デリロ)」をサービスパッケージ化し提供している。

これまでに、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスや韓国の住宅街、竹中工務店大阪本社の御堂ビル、Takanawa Gateway Fest内、日本郵便との公道実証、ENEOSとエニキャリとのデリバリー実証など、さまざまなケースで実証を行っている。

日本郵便との取り組みは2017年にスタートしており、2020年9月には遠隔監視・操作型の公道走行実証に着手した。一方、ENEOS・エニキャリとの取り組みでは、パートナー企業10店舗の商品を対象顧客にデリバリーする実証を東京都中央区佃・月島エリアで2021年2月に実施している。

■Hakobot:堀江貴文氏がアドバイザーを務める

自動配送ロボットの開発に向け2018年に設立されたHakobot。アドバイザーを務める堀江貴文氏のイベント「ホリエモン祭 in 名古屋」でのお披露目や、長崎県壱岐市で開催されたフェス「SDGs WEEKEND IKI COLORs」などで実証を行い、日々車体の改良を進めているという。

業務提携を結ぶ三笠製作所は、2020年末までに日本国内とヨーロッパで実証実験を行い、2021年早々に販売開始する計画を発表している。計画は遅れているものの、新たな国産ロボットとして今後の動向に注目したい。

■NECネッツエスアイ:「YUNJI DELI」活用サービスの販売を開始

NECネッツエスアイは2020年8月、自動配送ロボット「YUNJI DELI(ユンジ・デリ)」の活用サービスの販売を開始すると発表した。

ユンジ・デリは中国のBeijing Yunji Technologyが開発したロボットで、3段のトレイで仕切ることが可能な積載スペースに最大50キロの荷物を積むことができる。屋内モデルで、病院や飲食店などでの活用を見込んでいる。

同社はこのほか、米Saviokeが開発したデリバリーロボット「Relay」も取り扱っている。

【参考】NECネッツエスアイの取り組みについては「日本に中国から上陸!自動運転配送ロボ「YUNJI DELI」とは?」も参照。

■Drone Future Aviation:慶応義塾大キャンパスでの実証など

ドローン事業を主力とするDrone Future Aviationは、イタリアのハイテクメーカーe-Noviaの子会社Yapeが開発した自動走行ロボットの日本独占取扱権を取得し、慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスでの実証や日本郵便との実証などに取り組んでいる。

また、2020年9月には中国Pudu Roboticsの製品取り扱いも開始し、同年10月から自動配膳ロボット「BellaBot」「PuduBot」の国内導入にも力を入れている。

■【まとめ】新規参入プレーヤー続々、海外製品導入の動きにも注視

これまでは一部企業による閉鎖空間での実証などが主体だったが、2020年秋ごろから公道実証が可能になり、開発意欲を刺激されたプレーヤーが相次いで参入している状況だ。

今後、屋内タイプ、屋外歩道走行タイプ、屋外車道走行タイプなど走行環境に合わせる形で開発の細分化が進み、機能面の進化を遂げていくものと思われる。

また、先行する海外製品の国内導入を図る動きも活発化する可能性があり、こちらの動向にも注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事