【資料解説】特定自動配送ロボット等の公道実証実験に係る道路使用許可基準とは?

同一ロボットによる複数エリアでの実証が容易に



警察庁は2021年6月、一部のロボットを対象に公道実証手続きを簡素化する「特定自動配送ロボット等の公道実証実験に係る道路使用許可基準」を策定した。実用化に向け実証が加速する自動走行ロボットの取り組みをいっそう円滑にする狙いだ。







この記事では、特定自動配送ロボットの要件など、同許可基準について解説していく。

▼特定自動配送ロボット等の公道実証実験に係る道路使用許可基準|警察庁
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/selfdriving/robotkijun2.pdf

■特定自動配送ロボット等の公道実証実験に係る道路使用許可基準とは?

自動走行ロボットは、人の搭乗を前提とせず歩道を走行するなど、車道を走行する自動運転車とは枠組みが大きく異なる。このため、自動走行ロボットを公道で実証するための明確な基準がない状況が長く続いていた。

しかし、同ロボットの実用化を求める声が高まりを見せ、2020年に議論が一気に加速する。自動運転の実証実験に係る基準緩和認定制度の活用や自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準の準用など対応策がまとまり、警察庁は「宅配用自動走行ロボット(近接監視・操作型)公道実証実施手順」を策定した。

同年秋には、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現に向けた技術開発事業」も始まり、各地で公道実証が大きく進み始めている。

こうした状況をさらに加速させるための措置が、今回の「特定自動配送ロボット等の公道実証実験に係る道路使用許可基準」策定だ。

審査を簡略化、許可期間も長期化

新たな基準では、240時間以上の走行実績を保有するなど一定の要件を満たすロボットを「特定自動配送ロボット」とし、審査手続きから実地審査を外して書類審査のみとするほか、監視・操作者ごとの運転免許証や訓練状況の事前確認も不要とする。

また、許可期間が「原則最大6カ月の範囲内」から「1年以内」に長期化されている。実証方法や形態、道路交通状況などを勘案した上で、都道府県警察本部及び警察庁との調整を経て1年を超える許可期間を定めることも認めている。

許可更新時や内容の一部変更時においても変更のない資料の再添付は不要とするなど、手続きを簡素化することを明示している。

こうした許可基準の緩和は、例えば同一仕様のロボットを複数エリアで展開する際などに特に効果を発揮する。特定エリアで一定の実証を経た後、類似する環境のエリアで新たに実証を行う場合に「特定自動配送ロボット」として申請手続きの緩和を受けることが可能になるのだ。

自動走行ロボットをビジネス化する場合、その多くは同一のロボットを複数エリアで活用していくものと思われる。自動運転車で言えば、「NAVYA ARMA」をさまざまな地域でサービス展開するのと同様だ。新エリアごとに同じ仕様のロボットを一から審査するのは実施主体側から見れば手間以外の何物でもないが、こうした新たな基準により複数エリア展開を円滑に進めやすくなるのだ。

【参考】自動走行ロボットをめぐる議論については「首相が喝!自動運転配送ロボの公道実証「2020年、可能な限り早期に」」も参照。

■特定自動配送ロボットの要件

この基準では、「自動配送ロボット」を「物品の配送その他のサービスを実施するため、遠隔操作又は自動操縦により道路を走行させることができる自動配送ロボット又は人が乗車するロボット」と規定しており、配送の用に供するものに限らず、さまざまな自動走行ロボットが対象となるようだ。

このうち、特定自動配送ロボットは以下の全てを満たす必要がある。

  • ①走行形態が遠隔型
  • ②車体の大きさが長さ120センチ×幅70センチ以下
  • ③電動機を動力とすること
  • ④時速6キロを超える速度を出せないこと
  • ⑤歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がないこと
  • ⑥道路交通法により歩行者が通行すべき場所として規定されている場所を走行するもの
  • ⑦走行予定場所と同一または類似の環境において、当該ロボットまたは同型ロボットを用いた遠隔型走行を240時間以上実施した実績を有すること
  • ⑧監視・操作者がロボットの走行関係機能を的確に操作できるなど、ロボットの構造として一定の要件を満たすこと

【参考】ちなみに警察庁は今回策定した基準において、自動配送ロボットを7つの区分に分類している。分類については「知ってる?警察庁が「自動配送ロボット」を7種類に分類」も参照。

②~⑤については、道路交通法施行規則第1条の四に定められた「原動機を用いる身体障害者用の車椅子の基準」に準じた仕様となっている。

⑥については、原則として歩道等と車道の区別のない道路においては「道路の右側端」、歩道と車道の区別のある道路においては「歩道」としている。

⑦については、人の乗降や荷物の積卸し、走行に伴うロボットの調整・メンテナンス、走行と走行の間の一時的な待機時間等の走行に付随する時間を含めることが可能だが、走行実績とする時間のうち少なくとも50%以上を実走行時間が占める必要がある。

また、実施主体が走行実績を有さない場合であっても、走行実績を有する他の主体にロボットの監視・操作業務を委託する場合や、走行実績を有する主体による教育・訓練を受け、安全走行に必要な知識・技能を習得した者を監視・操作業務に配置し、かつ不測の事態に備えて走行実績を有する主体による必要なサポートを受けられる場合などは、実績と同等に取り扱われる。

電動車椅子ロボットにおいては、監視・操作者がロボットから離れると停止するトラッキング型の事前走行実証が必要としている。

⑧では以下が求められ、こうした要件は実際に自動走行ロボットを実用化する際に求められるべき機能と言える。

  • 監視・操作者がロボットの走行関係機能を的確に操作できること
  • 監視・操作者が映像及び音により通常の歩行者と同程度にロボット周辺の安全を確認できること
  • 歩行者の交通ルールを遵守して走行することができること
  • 通信が一定時間遅延した際や通信が途絶した際にロボットが自動的に停止することができること
  • 緊急自動車の接近を認知できること
  • ロボットが関係する交通事故が発生した場合に事故の発生を直ちに認知できること
  • 非常時に第三者が起動可能なロボットを停止させる装置が備わっていること
■許可に係る審査の基準

許可の際は以下などが必要となる。

  • ①実験の趣旨など
  • ②走行場所
  • ③安全確保措置
  • ④ロボット(電動車椅子ロボットを除く)の構造など
  • ⑤1名の監視・操作者が複数台のロボットを走行させる場合の基準

②では、走行実績を経た場所と同一または類似の環境であることのほか、横断歩道などにおいてロボットが停止した場合に一般交通を著しく妨げるおそれのある場所においては、通信が原則として途絶しないなど必要な通信環境を確保できる場所であることが必要となる。

③では、遠隔操作ができない場合に直ちに現場に急行しロボットを安全な場所まで移動させるなど、ロボットが停止した場合の明確な安全確保措置が求められる。

④では、道路運送車両の保安基準の規定に適合していることが求められる。

■【まとめ】実証加速で技術開発の進展や社会受容性の向上に期待

走行実績として勘案される「走行予定場所と同一または類似の環境」における類似性の基準が不明なため、場合によっては各都道府県警で判断が分かれることが懸念される。こうした部分についても統一見解が図られるよう明文化する必要があるのかもしれない。

いずれにしろ、こうした走行実績を考慮した審査の簡素化が国内各地における実証を加速するのは間違いない。各地に実証が広がることで技術開発がさらに進むほか、住民の目に触れる機会も多くなり社会受容性も向上する。

早期実用化に向けては、国と民間が歩調を合わせて取り組むことが肝要となるが、こうした事例はその好例と言えそうだ。将来的には、型式指定制度のように、一定の技術要件を満たす自動運転車やロボットを認定し、実証など各規制を緩和する制度の創出などにもつながっていけば言うことなしとなりそうだ。

また、今回の道路使用許可基準はあくまで歩道での時速6キロ以下の走行を前提としたものだが、時速6キロという低速であれば配送効率はあまり高まらない。やはり自動配送ロボットを採算ベースにのせるためには、車両が走行する道路上での走行が認められなければならず、今後の法改正に向けたロードマップの作成や具体的な基準策定が強く求められる。

▼特定自動配送ロボット等の公道実証実験に係る道路使用許可基準|警察庁
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/selfdriving/robotkijun2.pdf

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記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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