自動運転タクシー、日本一番乗りはホンダ濃厚か 日産やティアフォーの動向は?

実用化に熱、5陣営がしのぎを削る



出典:ホンダプレスリリース

ホンダが米自動車メーカーのGM勢とともに、日本国内で自動運転モビリティサービスの実現に向けた技術実証に着手する。GM傘下のCruise(クルーズ)と3社で共同開発した自動運転技術の実用化を本格化させる構えだ。

国内では、定路線を運行する自動運転バスの実証が盛んだが、自動運転タクシー実用化に向けた取り組みも熱を帯び始めている。


この記事では、ホンダの取り組みの概要とともに、国内自動運転タクシーの開発動向を解説する。

■自動運転分野におけるホンダとGM勢の取り組み
2018年に自動運転分野における協業開始

ホンダとGMはもともとバッテリーを主体にEV(電気自動車)分野でパートナーシップを結んでいたが、クルーズを交える形で2018年10月に協業領域を自動運転分野に拡大することを発表した。

無人ライドシェアサービス事業のグローバル展開の可能性を視野に、さまざまな使用形態に対応するクルーズ向けの無人ライドシェアサービス専用車を3社で共同開発していく内容だ。

協業に向け、ホンダはクルーズに7億5,000万ドル(約850億円)出資するほか、今後12年に渡る事業資金として約20億ドル(約2,240億円)を支出する予定としている。


クルーズがモビリティサービス向け自動運転車「Origin」発表

クルーズは2020年1月、ステアリングやペダルなどの操作機器を排したボックス型の自動運転モデル「Origin(オリジン)」を発表した。オリジンはホンダを含む3社で共同開発したもので、詳細は明かされていないものの広々としたキャビンを誇る自動運転モビリティサービス事業専用車両となっている。

【参考】Originについては「GM Cruise、ハンドルなしオリジナル自動運転車を発表!」も参照。

日本での自動運転サービスを見越し2021年中にも技術実証へ

ホンダは2021年1月、以前の資本業務提携関係に基づき、日本における自動運転モビリティサービス事業に向けた協業を3社で行うことに合意したと発表した。

GMのボルトをベースにしたクルーズの試験車両「クルーズAV」を活用し、2021年中にも日本国内で技術実証を開始する方針で、将来的には3社が共同開発を進める「オリジン」を活用した事業展開を目指すとしている。

具体的なサービス内容には言及されていないが、車両タイプから自動運転タクシーやシャトルサービス用途などが想定される。

栃木県内で公道実証に着手

ホンダは2021年9月、3社共同による自動運転技術に関する公道実証を栃木県宇都宮市と芳賀町で開始すると発表した。

事前準備として、まず地図作製車両を用いて高精度地図を作製し、準備が整い次第自動運転車両「クルーズAV」を用いて公道走行を重ね、日本の交通環境や関連法令などに合わせた自動運転技術を開発・検証していく。

技術実証においては、ホンダとクルーズが共同で開発作業に取り組むとともに、栃木県内にあるホンダ施設内に実証拠点を新設し、推進していくこととしている。

自動運転サービスを担うホンダモビリティソリューションズ

ホンダは2020年2月、日本国内におけるモビリティサービス事業の企画立案や運営を担う事業運営子会社「ホンダモビリティソリューションズ」を設立した。GM勢との自動運転サービスの運営は、このホンダモビリティソリューションズが担う予定となっている。

同社は、自動運転モビリティサービスをはじめロボティクス・エネルギーなどを組み合わせた新しいサービスを提供することで、交通弱者への対応や渋滞・排ガス・交通事故といった社会課題の解決、移動の利便性の向上を目指すとしている。

現在、ホンダのカーシェアサービス「EveryGo」の事業運営を手掛けるほか、MaaS分野における取り組みとしてneuetが運営するシェアサイクルサービス「Charichari(チャリチャリ)」との連携などを行っている。

トヨタなどと同様、ホンダもモビリティサービス分野における取り組みを本格化させているのだ。

■国内における自動運転タクシーの開発動向

国内における自動運転タクシーは、日産×DeNAやティアフォー勢などが研究開発を進めているほか、イスラエルのモービルアイとWILLERが手を組み、ロボタクシーソリューションの国内導入を見据えた取り組みを進めている。

日産×DeNA:Easy Ride実装へ

日産とDeNAは2017年、無人運転車両を活用した新しい交通サービス「Easy Ride(イージーライド)」の共同開発を開始し、翌2018年、2019年に神奈川県横浜市でサービス実証を実施している。

Easy Rideには、日産が米NASAと共同開発した「Seamless Autonomous Mobility(SAM)」など最先端技術が積み込まれている。

2021年7月には、NTTドコモと横浜市内のみなとみらいと中華街エリアで、自動運転車両を用いたオンデマンド配車サービスの実証実験を9月から開始することを発表している。

Easy Rideと、AIを活用したオンデマンド交通システム「AI運行バス」を組み合わせ、将来の完全自動運転による交通サービスを想起させる最新技術やサービスをモニターに体験してもらい、その実用性を検証する。

ティアフォー勢:西新宿エリアで実証に注力

一方、ティアフォー、JapanTaxi(現Mobility Technologies)、損害保険ジャパン日本興亜、KDDI、アイサンテクノロジーの5社は2019年11月、将来の自動運転タクシーの事業化に向け、ユニバーサルデザイン仕様のJPN TAXI車両に自動運転システムを導入するサービス実証実験を共同で進めることに合意したと発表した。

ティアフォーが自動運転ソフトウェア「Autoware」を活用した自動運転タクシー車両を開発し、2020年11月に東京都西新宿エリアで5Gを活用した実証実験を行った。

なお、ティアフォーと損保ジャパン、KDDI、アイサンテクノロジー、大成建設、日本信号、大成ロテック、プライムアシスタンスの8社は、東京都が公募した2021年度の「西新宿エリアにおける自動運転移動サービス実現に向けた5Gを活用したサービスモデルの構築に関するプロジェクト」に採択され、2021年秋から冬にかけ公道における自動運転車両の走行実証を行う予定だ。この実証でもJPN TAXI車両をベースに開発した自動運転車が活用される。

【参考】ティアフォーらの取り組みについては「トヨタ製「JPN TAXI」を自動運転化!ティアフォーやJapanTaxi、無人タクシー実証を実施へ」も参照。

WILLER×モービルアイ:2021年中にも国内実証に着手予定

WILLRは2020年7月、モービルアイとの戦略的パートナーシップを発表した。日本をはじめアジア諸国でロボタクシーソリューションを提供していく構えだ。

モービルアイが自動運転技術と自動運転車両を提供し、WILLERが各地域やユーザーに合わせたサービスデザインや規制要件の整理、モビリティの管理、運行会社向けのソリューション開発を担い、自動運転タクシーやシャトルの商用化を進めていく。

2021年に日本の公道で自動運転タクシーの実証実験を開始する予定で、2023年のサービス開始を目指し、次いで台湾やASEAN諸国におけるサービス展開を図ってく方針だ。

【参考】WILLERの取り組みについては「WILLERとMobileye、自動運転タクシー「日本第1号」候補に!?」も参照。

ZMP:遠隔型や営業実証、MaaS連携などを実施

ZMPは2017年にタクシー事業を営む日の丸交通と協業を開始し、遠隔型自動運転システムの公道実証実験を東京都内で実施した。翌2018年には、自動運転タクシーによる営業実証実験も行っている。

2020年1月には、日本交通や三菱地所など7社で成田空港や羽田空港と東京シティエアターミナルを結ぶMaaS実証として、空港リムジンバスと自動運転タクシー、自動運転モビリティを連携させる実証を行うなど、着実にステップアップしている。

2020年度以降は自動走行ロボットや自動運転歩行速ロボットの実用化に注力している印象が強いが、レベル4に対応した法整備などが整い次第、大きく動き出す可能性がありそうだ。

■【まとめ】相次ぐ自動運転タクシー分野への参入 一番乗りの予測は困難…

一足早く自動運転タクシー開発に着手していたZMPや日産×DeNAに加え、ティアフォー勢、WILLER勢、そしてホンダ勢と同分野への参入が相次いでいる状況だ。

いずれも国内外の有力企業で、どの陣営が最初にサービスインするか予測が困難な状況だ。レベル4に向けた法改正の動きも着々と進んでおり、2023年ごろをめどにレベル4サービスの環境が整う可能性が高い。法改正の動きが明確になれば、その動きに合わせて実証もますます盛んに行われていくことが予想される。各社の取り組みに引き続き注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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