ソフトバンク・ビジョン・ファンドとは?(2022年最新版)

Auroraはじめ新規投資先も続々



出典:ソフトバンクプレスリリース

投資会社としての色を年々濃いものへと変えていくソフトバンクグループ。投資事業をけん引するソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)などの投資損益は、日本企業で初めて5兆円の純利益を出した2021年3月期に累計7兆円を超えた。

2022年3月期は数字を落としているものの累計額は依然6兆円を超える水準で、2021年には239社に投資するなど投資意欲はますます盛んになっている印象だ。







この記事では2022年4月時点の情報をもとに、自動運転をはじめとしたモビリティ関連分野に対するSVFの投資先を紹介する。

▼SVF1&2の投資先一覧 ※PDF5〜8枚目を参照(ソフトバンクグループIR資料より)
https://group.softbank/system/files/pdf/ir/presentations/2021/earnings-datasheet_q3fy2021_01.pdf

■SVF1とSVF2の投資損益ランキング

2022年3月期第3四半期発表時(2022年2月7日時点)におけるSVFの上場投資先における投資損益は、SVF1が投資額計447億ドル(約5.6兆円)で時価計632億ドル(約7.9兆円)、損益は187億ドル(約2.3兆円)のプラスとなっている。

銘柄別では、Coupang(損益+96億ドル)で稼ぎ頭となっている。モビリティ関連では、Doordash(+78億ドル)で2位、売却済みのNVIDIA(+29億ドル)が3位、Uber(+24億ドル)で5位につけている。一方、米中貿易紛争の狭間で苦しんだDiDiは-86億ドルで最下位となっている。

出典:ソフトバンクグループIR資料(※クリックorタップすると拡大できます)

SVF2は投資額計87億ドル(約1.0兆円)で時価計105億ドル(約1.3兆円)、損益は17億ドル(約2,100億円)のプラスとなっている。モビリティは関係ないが、2020年3月期に大きく足を引っ張ったコワーキングスペース事業を手掛けるWeWorkが+1.3億ドルとなっている点に注目だ。

出典:ソフトバンクグループIR資料(※クリックorタップすると拡大できます)

さまざまな事情を背景に一時期落ち込んだ銘柄も、再浮上する余地は必ず残されているということだ。

▼SVF1とSVF2の投資損益ランキング ※PDF63〜66枚目を参照(ソフトバンクグループIR資料より)
https://group.softbank/system/files/pdf/ir/presentations/2021/earnings-presentation_q3fy2021_01_ja.pdf

■上場済み企業
Aurora Innovation(米国)

自動運転開発を手掛ける米オーロラは、SVF1から3億3,000万ドル(約410億円)出資を受けている。オーロラの投資ラウンドにSVFは参加しておらず、おそらくオーロラがUberの自動運転開発子会社ATGを買収した際、Uber株主であるソフトバンクグループがその対価として非公開株を受け取ったものと思われる。

同社は自動運転システム「Aurora Driver」を大型トラックから小型車まで幅広く統合する戦略を展開しており、移動サービス分野ではトヨタ・デンソーと自動運転開発で提携を結び、Uberをはじめとしたライドシェア向けの車両を2024年にも市場化する計画だ。

2021年11月にナスダック上場を果たしており、今後の躍進に期待が寄せられる1社だ。

Didi Chuxing(中国)

配車サービス大手の滴滴出行(Didi Chuxing)にも早くから注目しており、2016年以来複数回に及ぶ出資で、総額約120億ドル(約1.5兆円)を投資しているようだ。

2021年6月にニューヨーク証券取引所に上場を果たしたが、米中貿易紛争を背景に中国当局から上場廃止を迫られ、上場廃止に向けた手続きを進めるとともに香港証券取引所に上場することを承認したようだ。

2022年2月時点でSVFが保有するDiDi株の時価は34億ドル(約4,200億円)となっている。苦しい状況は否めないが、近々で中国当局は金融規制緩和に向けた意向を示しており、今後何らかの形でV字回復することを願いたい。

DoorDash(米国)

オンデマンドデリバリーサービスを展開する2013年創業のDoorDashは2018年、シリーズDラウンドでSVFなどから5億3,500万ドル(約665億円)、続くGラウンドでもSVFなど既存株主から6億ドル(約745億円)を調達している。2020年12月にはニューヨーク証券取引所へ上場した。

自動運転関連では、2019年にCruiseと自動運転車を活用した食料品のデリバリー実証を行っている。

Full Truck Alliance(中国)

2017年創業のFull Truck Allianceは2018年、SVFなどから総額19億ドル(約2,300億円)に及ぶ資金調達を実施している。SVFからは追加出資含め17億ドル(約2,100億円)が出資されているようだ。同社は2021年6月にニューヨーク証券取引所に上場した。

トラック配車プラットフォーマーとして業績を上げており、今後、自動運転車が導入される可能性も高そうだ。

Grab(シンガポール)

東南アジアを中心に配車サービスを展開するGrabは、2014年のシリーズDラウンドを皮切りに2015年のシリーズE、2016年のシリーズFと立て続けにSVFから出資を受けている。SVFからの出資は計約30億ドル(約3,700億円)に上る。2021年12月にナスダック市場に上場した。

同社はこれまで、Drive.ai(アップルが買収)やNuTonomy(Aptivが買収)などの自動運手開発企業とパートナーシップを結ぶなど、自動運転技術の導入に意欲的な面を見せている。

JD Logistics(中国)

EC大手京東商城(JD.com)系列で、スマート物流システム開発を手掛けている。2021年にSVFから出資を受け、同年香港市場に上場している。

2017年に自動運転小型トラックの開発を発表したほか、2018年にレベル4相当の技術を備えた大型トラックや自動配送ロボットを発表するなど、自動運転開発にも意欲的だ。

配送ロボットは、楽天との提携のもと日本国内の実証にも用いられている。

XAG(中国)

自動運転可能な農機やドローンの開発を手掛ける2007年設立の企業で、SVFから2020年に出資を受けている。2021年には、上海証券取引所の「科創板」に上場した。

農業向けドローンでシェア拡大を図るほか、無人走行可能な農作業車の量産化も進めている。地理測量・地形マッピングを手掛けるXGEOMATICSも展開している。

■未上場企業
Arm(英国)

ソフトバンクグループが2016年に3.3兆円もの巨額で買収した半導体大手のArmも、SVFの投資先として名を連ねている。

2020年に同業のNVIDIAに売却する計画が持ち上がったが、独禁法に抵触する恐れから米連邦取引委員会などが反対し、売却を断念した。

ただ、世界的な半導体需要を背景にArmの業績は右肩上がりを続けており、クラウドや自動車、IoT、メタバースなど、あらゆる革命をけん引する第2の成長期を見越し、2022年中に「半導体業界史上最大の上場」を目指す方針だ。

Brain Corporation(米国)

AIソフトウェア「BrainOS」を武器に自律走行可能なロボット開発を進めるスタートアップ。2017年のCラウンドでクアルコムとSVFから計1億1,400万ドル(約142億円)を調達し、同年ソフトバンクロボティクスと提携を交わしている。

清掃ロボットの開発が主体だが、人が同乗可能なモデルも製品化しており、応用すれば自動運転パーソナルモビリティも開発できそうだ。

Cambridge Mobile Telematics(米国)

AIを駆使したテレマティクス技術開発を手掛けており、スマートフォンや車内カメラ、サードパーティ製のデバイス、自社開発したDriveWell Autoを搭載したコネクテッドカーなど、数百万に及ぶIoTデバイスからセンサーデータを収集・分析し、それらをコンテキストデータと融合してさまざまなアプリを展開している。

2018年にSVFから5億ドル(約620億円)の出資を受けたことを発表している。

DiDi Autonomous Driving(中国)

DiDiの自動運転開発部門にもSVF2が別途出資している。DiDiの自動運転開発部門は2016年に立ち上がり、2019年に独立してDiDi Autonomous Drivingとなった。

北京、上海、蘇州、米カリフォルニア州などで公道試験ライセンスを取得し、自動運転タクシーの開発を進めている。ボルボ・カーズとのパートナーシップなどに注目だ。

Getaround(米国)

個人間カーシェア事業を手掛けるスタートアップで、SVFのほかトヨタからも出資を受けている。過去、スマートフォンでドアの解錠やエンジン始動などを行うデジタルキー技術の実証をトヨタと進めており、カーシェアや自動運転タクシーなどのキー技術として今後注目が高まりそうだ。

Light(米国)

カメラベースの知覚プラットフォーム開発を手掛けており、10センチから1,000メートルに及ぶ広範囲で物質の3D構造を認識し、深度情報を提供することが可能という。

2018年の投資ラウンドをSVFが主導しているほか、ソニーやフォックスコンなどからも出資を受けている。

MapBox(米国)

高いカスタマイズ性能を誇る地図開発プラットフォームサービスを手掛けるスタートアップで、2017年にSVFなどが総額1億6,400万ドル(約203億円)の出資を行っている。

2020年にソフトバンクと共同出資し、日本法人「マップボックス・ジャパン」を立ち上げ、販路拡大を図っている。

Nauto(米国)

AIを搭載した安全運行管理プラットフォーム開発などを手掛けている。2017年にSVFやトヨタ、BMWなどから総額1億5,900万ドル(約198億円)を調達している。

同社の車載機は高度なコンピュータビジョンとマシンラーニングを搭載しており、道路環境や運転に関する各種データを収集することができるほか、ドライバーモニタリング機能も備えている。収集したデータを自動運転分野に活用する取り組みなども進めているようだ。

Netradyne(米国)

エッジコンピューティングやコンピュータビジョン技術を駆使したドライブレコーダーをはじめ、コンピュータビジョンやSLAM、クラウドソーシングなどを活用した3次元HDマップ開発などを手掛ける。

2021年のCラウンドでSVFなどから総額1億5,000万ドル(約186億円)を調達している。

Nuro(米国)

車道を走行する自動運転配送ロボットの開発を手掛ける有力スタートアップで、2019年にSVFから9億4,000万ドル(約1,170億円)の資金調達を行っている。

カリフォルニア州車両管理局から自動運転車の商用許可を取得するなど本格実用化に向けた取り組みは着実に前進しており、第3世代となる配送ロボットの生産に向け中国BYDと提携するなど、量産段階を迎えつつあるようだ。

Ola(ANI Technologies/インド)

インド最大の配車サービス事業者で、ソフトバンクからは2015年以後たびたび出資を受けている。子会社で電気二輪製造を手掛けるOla Electric Mobilityも別途出資を受けている。

各種モビリティサービスをはじめ、スマートフォンアプリと連動した車内サービスなどの開発も進めている。

Robotic Research(米国)

軍用自動運転車の開発に長く携わってきた企業で、近年はタグボートからUAV、シャトル、大型路線バス、フルサイズトラックに至るさまざまなモビリティへの統合を進めている。

同社の自動運転システム「AutoDrive」は、Local Motorsの自動運転シャトルバス「Olli」をはじめ、Pratt&MillerやNew Flyerなどが導入しているという。

SVFは、2021年に総額2億2,800万ドル(約260億円)を調達したAラウンドに参加している。

Gaussian Robotics(中国)

自律走行可能な清掃ロボットの開発を手掛けている。2021年にSVFが出資しており、同年には同社が開発した業務用全自動床洗浄ロボット「Scrubber 50」の日本国内販売をソフトバンクロボティクスが開始している。

Keenon Robotics(中国)

配膳ロボットを中心に案内ロボットや消毒ロボットなど屋内向けの自律走行ロボットの開発を手掛けている。2021年にSVFから出資を受け、ソフトバンクロボティクスとのグローバルパートナーシップのもと、サービス業界におけるロボットシステムの導入拡大を図っている。

■売却済みの企業
NVIDIA(米国)

自動運転分野で大活躍中の半導体大手NVIDIAもソフトバンクグループの代表的な出資先の1つだった。2016年にグループが約3,000億円で同社株を取得し、SVFに移管後、2018年に価格下落をヘッジするカラー取引によって売却した。

商談は流れたものの、その後もArm売却をめぐる戦略で同調するなど一定の関係を保っているようだ。

Cruise(米国)

SVFは2018年、米GM傘下の自動運転開発企業Cruiseに対し、総額22億5,000万ドル(約2,800億円)の出資を行うと発表した。

分割融資により、これまでに最低でも9億ドル(約1,120億円)を出資済みだが、GMは2022年3月、SVFが所有するCruise株を21億ドル(約2,600億円)で買い取ることを発表した。時期については未発表だが、SVFの公式サイトではすでにCruiseは「Exited=終了した」と表記されている。

IPOをめぐる意見の対立など憶測をめぐらせたいところだが、背景はさておき2022年3月期決算に向けSVFの業績に貢献することは間違いなさそうだ。

■【まとめ】SBGがスタートアップ各社の開発をバックアップ

世界経済の停滞から時価総額は落ちているものの、投資先の中から上場企業が続々と誕生しており、今後の活躍に期待が高まる一方だ。

ソフトバンクグループによると、2021年に各投資家がリード投資家を務めた案件の調達総額は、タイガーグローバルやセコイアキャピタル、テンセントなどを抑えソフトバンクが首位という。

留まることを知らない投資意欲は、ソフトバンクグループの業績のみならずスタートアップ各社の研究開発を後押し、先端技術の社会実装を加速させる。

自動運転をはじめとするモビリティ業界を支える屋台骨として、引き続きソフトバンクグループの活躍に期待したい。

■関連FAQ
    ビジョンファンドとは?

    ソフトバンクグループの投資事業における看板ファンド。「AI」をテーマに据え、世界の有望企業を探し、投資を行っている。

    ビジョンファンドは何種類ある?

    2016年10月にソフトバンク・ビジョン・ファンドの設立が発表され、これが1号ファンドとなった。その後、2019年7月に2号ファンドの設立が発表された。

    ビジョンファンドはどのように利益を得ている?

    ビジョンファンドに限らず、投資事業は投資額よりも売却額が上回っていないと利益が出ない。ソフトバンクグループは基本的に未上場企業に投資して株式を保有し、上場した株式の価格(価値)が上がることで、利益を獲得することを目指している。ちなみに保有株式については、売却しない限りは利益もしくは損益が確定せず、含み益、含み損という扱いとなる。

    ビジョンファンドが自動運転分野で投資している企業は?

    投資後にすでに上場した企業としては、Aurora InnovationやDidi Chuxing、DoorDash、Grab,JD Logisticsなどがある。未上場企業では、ArmやNuroなどが代表的だ。

    ビジョンファンドの損益は?

    2022年3月期第3四半期発表時(2022年2月7日時点)においては、SVF1が187億ドル(約2.3兆円)のプラス、SVF2が17億ドル(約2,100億円)のプラスとなっている。

(初稿公開日:2021年8月15日/最終更新日:2022年4月13日)







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