自動運転時代に花開く「つなぎビジネス」の先見性!

ライドシェアは自動運転タクシーへの布石?





自動運転の到来に向けた機運が徐々に高まってきている昨今。世間では、自動運転時代を見据えたさまざまな「つなぎビジネス」が一足早く登場している。現時点では自動運転技術ではなく「人」がタスクを担っているが、将来自動運転化されることで収益性が大幅に向上するビジネスだ。







もちろん、厳密に自動運転に向けた「つなぎ」を目的として立ち上げられた有人サービスはそう多くない。しかし、将来自動運転技術が導入されることで利便性やビジネス性が向上すると思われるサービスが近年相次いで登場していることも事実だ。

そこで今回は、自動運転への「つなぎ」が目的であるかどうかは問わず、将来自動運転化で収益性が向上するサービスを紹介していこう。

■つなぎビジネスその1:ライドシェア
ライドシェアは自動運転タクシーへのつなぎビジネス

ライドシェアそのものの歴史は古く、一般のドライバーが出発地や目的地が同一である人を自家用車に同乗させる相乗り型のカープールや大型車両のバンを利用して多人数を運ぶ相乗り型のバンプール、ヒッチハイク型相乗りサービスのカジュアルカープールなどがあるが、近年においては、スマートフォンでフォンを活用したプラットフォーム型のTNCサービスを指す場合が多い。Uber(ウーバー)やDiDi(ディディ)が提供するサービスの大半がこれに当たる。

TNCサービス型は、ライドシェア事業者自らが車両を運行するものではなく、プラットフォームによって一般ドライバーと乗客を結び付けるサービスだ。タクシーより低料金で利用可能なケースが多く、時間や自家用車を持て余したドライバーの需要と相まって急激に市場を拡大した。

このTNCサービス型を中心に自動運転車が導入された場合、ライドシェア事業はどのように変化するか。

プラットフォーマーの収益率は現状、決して高くはなく、赤字続きも珍しくはない。投資などの要因も大きいが、例えばウーバーは取扱高(運賃など)の8割をドライバーに支払っており、ざっくりではあるが自社の売り上げは2割となる。この8対2の比率が適正かどうかはさておき、取扱高の大半をドライバーに支払う、いわば人件費が異常に高いビジネススタイルとなっている。

ここに自動運転車を投入した場合、極論ではあるがこの8割の人件費をなくすことができる。代わりに自動運転車の購入費用や維持費用が必要になるが、中長期で見れば人件費に比べコストを低く抑えることが可能になるのだ。

ライドシェア事業のカギを握るのは人件費を抑える自動運転技術の導入にあるといっても過言ではない。実際、ウーバーやディディらライドシェア大手は自動運転開発に注力しており、両社とも開発部門を分社化している。

また、トヨタが自動運転開発でウーバーやシンガポールのGrab(グラブ)、インドのOla(オラ)などのライドシェア事業者を支援するなど、自動車業界からの視線も熱い分野だ。

こうしたライドシェアの自動運転化は、事実上自動運転タクシーと同様のサービスとなる。事業者自らが自動運転車両を導入するため、一般ドライバーが介在する余地がなくなるからだ。

一般ドライバーが自前で購入した自動運転車両をライドシェアに用いることも想定されるが、これは「自動運転個人タクシー」となる。相乗りの要素がなくなるため、もはやライドシェアとは呼べなくなるのだ。

なお、こうした個人を対象にしたロボタクシー事業構想を米EV大手のテスラが発表している。同社は、テスラ車の所有者が車両に乗っていない時間帯に車両をロボタクシーサービス用に提供する場合、1日平均16時間稼働させると1年間で最大3万ドル(約330万円)の収益をあげることができると試算している。

【参考】ライドシェアについては「【保存版】ライドシェアとは?日本での規制と特区制度まとめ」も参照。テスラのロボタクシー構想については「ロボットタクシーとは?自動運転技術で無人化、テスラなど参入」も参照。

■つなぎビジネスその2:エリア内配達サービス
お届け系ビジネスが自動運転で本格化

ソフトバンクグループが新たな動きを見せている。ユーザーの注文を受けて商品を配達する「PayPayダッシュ」の実証実験を開始するようだ。

2020年2月25日時点で詳細は明かされていないが、「ほしい商品を即時でお届け」というキャッチフレーズのもと公式サイトが立ち上がっており、即時配達のテストサービスを地域限定で実施するようだ。運営元はヤフー株式会社となっている。

デリバリースタッフの求人情報によると、勤務地は福岡県福岡市になっており、ユーザーからの注文に合わせて商品をピックアップし、自転車で配達する仕事となっている。

配達対象となる商品が何か、またサービス名にも冠されるPayPayをどのように絡めているのかなど気になるところだが、一般の宅配業と区別して考えると、PayPay導入店などを対象としたデリバリーや買い物代行系の線が強そうだ。

こうしたお届け系サービスも、自動運転でビジネス性が増すと考えられている。無人化によって配送にかかる経費を低下させることができるからだ。

EC(電子商取引)が増加し続け、インターネットでモノを買う時代が到来しているが、配送コストの低下はこの傾向を大きく増長させる。大げさに言えば歯ブラシ一本から宅配が可能になり、店頭販売が主体だった小売り業も近隣地域を対象としたデリバリーサービスを導入していく可能性がある。

PayPayダッシュはこうした動きを見越し、まず有人配達によるデリバリー専用のプラットフォームを立ち上げて提携店や顧客を囲い込み、将来自動運転技術が確立したときに大きな収益を上げる――といったつなぎビジネスとも言える。

また、将来的には、軽貨物マッチングプラットフォームサービス「PickGo」など配送分野のプラットフォームとも競合し、需要に応じてフレキシブルに対応できる配達環境が整うかもしれない。

なお、ソフトバンクグループはトヨタとの合弁「MONET Technologies」でモビリティ事業に力を入れるほか、ウーバーやディディ、グラブ、宅配用の自動運転車両を開発する米スタートアップ企業のNuro(ニューロ)など、多方面で開発を支援している。物流革命、そして小売り革命といった大きなビジョンを描いている可能性もありそうだ。

■つなぎビジネスその3:料理配達サービス
ECサイトができない配達サービスを実現

料理を配達するUber Eats(ウーバーイーツ)も将来の自動運転技術導入までのつなぎビジネスと捉えることができる。飲食料品は冷凍などを除きECには不向きで、出来立てを味わうためには店舗に足を運ぶ必要があるが、そこを逆手に取ったのがウーバーイーツで、調理したての料理までも宅配を可能にした。

アメリカでは既に宅配ピザ大手ドミノ・ピザが自動運転デリバリー車両を使った宅配サービスを一部エリアで実証実験的に行っており、「料理宅配×自動運転」が将来普及する可能性を大いに感じさせる。一方で、過去にトヨタとの提携を発表しているピザハットも、将来的に自動運転車を使ったデリバリーサービスを提供する計画を立てているようだ。

物流倉庫を構えて全国を相手にするECと同様、一定のエリア内で小売などを宅配化する動きも、自動運転の導入によって今後加速する可能性がありそうだ。

■つなぎビジネスその4:オフィス内配達
オフィス内配達にも自動運転の波

近年、都心部のオフィス街を中心に各オフィスへコーヒーやお菓子などを届けるビジネスが増加している。訪問販売形態や売れた分のみを精算する形態などさまざまで、魅力ある商品の提案力などが求められる分野だ。

こうしたオフィス内・ビル内の配達も、敷地内・ビル内を活躍の場とする小型の宅配ロボの導入によって需要が増す可能性がある。

同じビル内に店を構える飲食系店舗が宅配ロボを導入することでデリバリーを容易にするほか、おすすめ商品を搭載した宅配ロボが各オフィスを巡り、訪問販売する形態なども考えられる。

【参考】ビル内宅配ロボについては「自動運転、マネタイズは「ビルの中」から 宅配ロボの需要」も参照。

■つなぎビジネスその5:宅配ロッカー
宅配ロッカーは自動運転と相性抜群

増加する宅配と再配達問題に対応すべく各地で設置が進められている宅配ロッカーも、自動運転技術を搭載した宅配ロボット導入を見越した布石と見ることができる。

ラストワンマイルを担う宅配ロボットの導入において、大きな課題とされるのが各戸の敷地内走行や円滑な受け渡しだ。敷地内に大きな段差があるため玄関に到達できないケースや、現状同様にロボットが到着したにも関わらず家主が不在のケースなどが想定され、自動運転技術だけでは解決できない問題も当然出てくる。

こうした問題を解決する策の一つが宅配ロッカーだ。宅配ロボットが到達できる場所にロッカーを設置することで、宅配ロボットによる配達が非常に円滑なものになる。

宅配ロボットが荷物を置きやすいよう宅配ロッカーに一定の規格を設け、コンピュータ制御を可能にすることでロボットの稼働率が向上するほか、受取人の利便性やサービスの向上も期待することができそうだ。

こうした取り組みは、エストニアのスタートアップ・Cleveronが先行開発を行っている。小包の保管や集配、返却業務を自動化するように設計された大型ロボットポストのようなピックアップソリューションの設置をはじめ、宅配ロボットが無人で荷物を配送し、自宅に設置された専用郵便受けにロボットアームで投函するロボット宅配システム「robot courier」の開発を進めている。

【参考】Cleveronを含む宅配ロボ開発企業については「自動運転ロボ、最適化…ラストワンマイルに挑む新興企業まとめ」も参照。

■【まとめ】つなぎビジネスは先見の明 自動運転時代の勝ち組への布石

「つなぎビジネス」として紹介した各社からお叱りの声が届くかもしれないが、今後到来する自動運転時代に大幅に業績を伸ばす可能性が高い先見の明を持った企業……という見方をもってご容赦願いたい。

ライドシェア事業などが顕著な例だが、採算性が芳しくない有人サービスでローンチし、顧客を囲い込んで社会に定着させ、後に自動運転技術の導入でコストを低減させて大輪を咲かせる――といったビジネススタイルは今後増加する可能性がある。

自動運転時代が到来し、人やモノの移動を変える移動・配送革命や、販売形態を根本から変える小売り革命が起こった後にアクションを起こしても「時すでに遅し」だ。自動運転時代の勝ち組になるためには、今のうちにアクションを起こし、基礎を築いておくことが重要なのだ。

【参考】関連記事としては「自動運転、ゼロから分かる4万字まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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