自動運転、マネタイズは「ビルの中」から 宅配ロボの需要

森トラストや森ビル、三菱地所などが導入促進





海外では実用化が着実に進んでいる宅配・配送ロボ。公道での実用実証も加速しており、自動運転技術を搭載したロボットが自宅まで荷物を運びにやってくる時代が幕を開けようとしている。

しかし、これらのロボット導入に待ったをかける存在もある。法律や収益性だ。公道における実証実験には現状さまざまな規制がかけられており、新たな技術ゆえ収益性が不透明……といった側面は否定できない。







これらの課題は迅速に解決しなければならないが、現時点で対応可能な施設も存在する。オフィスビルをはじめとした大型ビルだ。

大型ビルがなぜ宅配ロボに対応できるのか。今回はこの切り口で、宅配ロボ導入に向けた取り組みを交えながら解説していく。

■大型ビルにおいて自動運転宅配ロボが有望な理由

当然のことながら、大型ビル内は公道ではなく基本的に私有地であり、道路交通法や道路運送法の適用外となる。安全面を考慮した運用が可能であれば、即導入できる環境と言えるだろう。

収益面では、ビルに入居するコンビニやカフェなどの小売店舗の利用が促進される。ビルの上階に入居するオフィスワーカーらが商品を購入する際、エレベーターで1階まで下りる必要もなく、スマートフォンアプリで注文するだけで商品を届けてくれるからだ。小売店舗の売り上げ増とともに入居者の利便性が向上する、双方良しのシステムとなる。

また、ビル内店舗の売り上げ増や利便性の向上は、ビルそのものの価値向上につながるため、ビルのオーナー側にとっても賃料アップや稼働率アップを図ることができる。いわば「三方良し」のシステムだ。

ビルの価値向上を期待してオーナー再度がロボットを導入するケースや、売り上げ増を見込む小売店舗が導入するケースなどいろいろ想定されるが、収益向上の裏付けがあってこそ導入は促進される。

また、配送ロボに搭載される機能は今後応用も進んでいくものと思われ、付加機能や新たなサービスなどの展開も見込まれるが、オフィスや商業施設、住居などさまざまな機能を併せ持つ大型ビルは、新たなサービスを享受する多面性も有しているため、ロボットとの相性が非常に高いのだ。

■森トラスト:自律走行型搬送ロボット「Relay」実証、スタートアップへの出資にも意欲
出典:森トラストプレスリリース

国内大手ディベロッパーの森トラスト株式会社は2019年1月、搬送ロボット「Relay(リレイ)」を活用したカフェメニューのデリバリー実証実験を、港区虎ノ門の城山トラストタワーのオフィスビル内で開始した。

Relayは、サービスロボットの企画や開発などを手掛けるスタートアップの米Savioke(サビオーク)が開発した自律走行型搬送ロボット。センサーマッピングによって最適ルートを選択して自動走行することができ、障害物なども自動回避する能力を備えている。自らエレベーターを操作し、別の階へ移動することも可能という。

実証は、このRelayと、国内スタートアップでモバイルオーダープラットフォーム事業を手掛けるShowcase Gig(ショーケース・ギグ)のモバイルオーダーサービス「O:der」を組み合わせ、城山トラストタワー1階に店舗を構える「Café& Deli G G C o.」のメニューをオフィス内の注文者のもとへ届ける内容だ。

注文者が自身のスマートフォンアプリからカフェメニューを注文・決済すると、商品が格納したRelayが自走し、店舗から注文者のオフィス入口、または店舗周辺の座席まで商品を搬送する仕組みだ。到着通知が来た注文者は、待機しているRelayの画面にパスワードを入力することで商品を受け取ることができる。

森トラストは実証を通じて、高層ビルにおけるロボットデリバリーサービスのニーズや事業性、ロボットデリバリーサービスによるビル利用者の利便性・満足度、ロボットデリバリーサービス採用による店舗の運営効率を検証するとしている。

なお、同社は中長期ビジョン「Advance2027」において新規投資事業やイノベーション創出を推進していく方針を掲げており、2018年9月にSaviokeへ出資したことも発表している。

ロボティクス関連ではこのほか、AI(人工知能)や協働ロボットを活用したサービス業界向けのロボットカフェの企画・開発などを行うQBIT Robotics(キュービット・ロボティクス)への出資も行っている。

将来、さまざまなロボットがそれぞれの役割のもと協調・協働し、同社の大型ビル内活躍する姿が見られるかもしれない。

■森ビル:六本木ヒルズ内で荷物の運搬実証、CarriRo Deliが活躍

森ビル株式会社は2017年10月、ロボットベンチャーのZMPと共同で自動走行宅配ロボット「CarriRo Delivery(キャリロ・デリバリー)」を活用した日本初の実証実験を六本木ヒルズで開始した。

CarriRo Deliveryは、物流業界やフードデリバリー業界の配達員不足などの課題解消に向けZMPが開発したロボットで、宅配ボックスを搭載し、レーザーセンサーとカメラで周囲環境を360度認識しながら最大時速 6キロメートルで自動走行し、荷物を目的地へ届ける。必要に応じて遠隔操作をすることも可能だ。現在は「CarriRo Deli(キャリロ・デリ)」として改良が重ねられ、機能が進化している。

実証期間は2017年10月から2018年3月までで、住む、働く、遊ぶなど、さまざまな都市機能が複合したコンパクトシティである六本木ヒルズを舞台に、垂直移動から平面移動まで多様な物流形態を想定し、実際のまちにおける技術面やサービス面の検証を行った。

六本木ヒルズは、2003年の開業時から集荷や配送を集約する共同物流センターの設置により集配の効率化を図ってきたが、さらなる効率化や利便性向上のため、新たな配達サービスの導入を検討しているという。

実証では、第一段階として、六本木ヒルズ内の物流センターから森タワー内オフィスへ、エレベーターを使用して書類などの荷物を配達する実験を実施。その後、物流センターからテレビ朝日の社屋など六本木ヒルズ内の各施設に荷物を運搬する実験もスタートする予定としている。

将来的には、オフィスワーカーへのコーヒーデリバリーや居住者への荷物の配達など、六本木ヒルズのサービス利便性のさらなる向上のため宅配ロボットの本格導入も検討していく方針だ。

■三菱地所:横浜ランドマークタワーで運搬・警備・清掃ロボットの実証実験実施

三菱地所株式会社は2018年9月、AIを搭載した運搬・警備・清掃を担う複数の異なるロボットが活躍する新しい施設運営管理の実証実験を横浜ランドマークタワーで実施した。

運搬は、ドイツの Deutsche Post AGが開発した運搬ロボット「PostBOT」と、フランスのロボットメーカーEffidenceが開発した「EffiBOT」を使用。最大積載重量150キログラムという人の手では運べない重さの荷物運搬を担ったほか、人に付いて走る追尾運転機能や自動走行機能により、防災や館内物流など多くの用途で実証を行ったという。

警備は、2016年設立の国内スタートアップSEQSENSE(シークセンス)が開発した自律移動型のセキュリティロボット「SQⅡ」を使用。国際特許出願中の独自の 3Dレーザーセンサーを活用した自律走行が特徴で、三次元空間を認識して自ら立体地図を作成し、巡回の度に正常な状態との差分から環境の変化を自動的に検出し、異常を発見することが可能という。なお、三菱地所は同社へ出資も行っている。

清掃は、カナダの清掃ロボットメーカーAVIDBOTSが開発し、株式会社マクニカが国内で販売している清掃ロボット「Neo」の導入を検証した。自動運転可能な清掃ロボットで、無人で広範囲を清掃することができ、遠隔でリアルタイムに作業状況を確認できる機能も付属しており、均一な清掃品質を保つことができるという。

同社はこの実証により、AIなどを搭載した警備・清掃・運搬を担う複数の異なるロボットを導入し、ロボットが活躍する次世代型の施設運営管理の検証を行うとともに、実際に稼働している大規模施設で実験を行うことで、省人化の効果の検証や大勢の人が行き交う空間でのロボット活用の課題を洗い出し、実導入に向けた知見を蓄積するとしている。

同社はこのほか、2018年にセグウェイを活用したコンシェルジュサービスや、ALSOK綜合警備保障が開発した警備ロボット「Reborg-X(リボーグ・エックス)」の導入、ソフトバンクロボティクスの清掃ロボット「RS26 powered by BrainOS」と日本信号の「CLINABO」の導入検証など、物流以外でも多方面でロボティクス技術の導入を推進している。

■電通国際情報サービスなど:品川のオフィス街で配送ロボの実証

オフィス内ではなくオフィス街での取り組みだが、電通国際情報サービスなどが2018年3月、配送ロボと遠隔コミュニケーション技術を用いた実証実験を東京の品川インターシティエリアと京王品川ビル間の通路で実施した。

配送ロボットはZMPの「CarriRo Delivery」を使用し、電通国際情報サービスのオープンイノベーションラボと東京大学暦本研究室が共同開発した遠隔コミュニケーションデバイス「TiCA(チカ)」を組み合わせ、物品配送時におけるIoAの実装検証などを行った。

出典:電通国際情報サービスプレスリリース
■類似の取り組み①:導入のしやすさはホテルに軍配 デリバリーロボ導入ホテル増加中

配送ロボの導入において、収益性の点ではポテンシャルの高い大型ビルにかなわないものの、導入のしやすさという点ではホテル業界に軍配が上がりそうだ。館内の仕組みがある程度統一されており、一律の環境下で稼働できるからだ。

国内でデリバリーロボット「Relay」を取り扱うマクニカやNECネッツエスアイなどが導入を促進しており、これまでに品川プリンスホテルや渋谷ストリームエクセルホテル東急、新宿ワシントンホテル本館などで採用されているようだ。

■類似の取り組み②:マンション内宅配システム構築へ 日立製作所ら4社が共同開発

日立製作所と日立ビルシステム、アイホン、フルタイムシステムの4社は2018年9月、配送ロボットを活用したマンション内宅配システム開発における協創を開始したと発表した。

エントランス付近に設置した専用の受付・保管システム付きのフルタイムロッカー(宅配ボックス)と、配送ロボットで構成し、宅配業者が受付ユニットに荷物を預け入れると保管ユニットに収納され、一時保管する。着荷情報は居住者のスマートフォンに専用アプリで通知し、住戸内インターホンの画面にも表示する。居住者がインターホンから配達依頼を出すと、荷物をフルタイムロッカーから取り出し、配送ロボットが館内を移動して玄関前まで届け、インターホンを呼び出す仕組みだ。

4社は2021年度のサービス化を目指し、新築マンション向けに提案を行っていく構え。

■類似の取り組み③:大学構内でも実証

三菱地所2019年3月、人とロボットが協働する「Society5.0」時代の施設運営管理モデルの構築に向けた実証実験や情報発信などを目的とした「戦略的 DX(デジタルトランスフォーメーション)パートナーシップ協定」を立命館大学と締結した。

取り組みの一つとして、米スタートアップのMarble製運搬ロボットの実証実験を、立命館大学びわこ・くさつキャンパスや東京・大手町で実施している。

■類似の取り組み④:羽田空港でRelayなど実証

ロボット技術の活用に向け、国土交通省と経済産業省との連携のもと「Haneda Robotics Lab」を開設した羽田空港も、物流をはじめ警備や清掃、案内支援、移動支援など、さまざまな場面におけるロボット導入に向けた取り組みが進められている。広大な敷地と多機能を誇る空港も配送ロボ実用化候補の一つだ。

物流関連では、「羽田空港ロボット実験プロジェクト 2017」においてアルテック株式会社の「OTTO 100/1500」とNECネッツエスアイ株式会社仲介のもと「Relay」が採択され、実証実験を行っている。

■【まとめ】効率性と多様性が融合した大型ビルが宅配ロボの効用を引き上げる

大型ビルをはじめ、ホテルやマンション、空港などにおける取り組みも例示したが、導入のしやすさという点ではホテルやマンションが有利であるものの、様々な利活用方法が見込めるポテンシャルの観点からは大型ビルに軍配が上がる。

特に複合要素を持つ大型ビルは、まちをそのまま一つのビルに収納したような存在であり、効率性と多様性、適度な自治性が融合した貴重な存在である。

ビル開発や運営を手掛ける大手不動産、ディベロッパーの先進的な取り組みに今後も期待したい。

【参考】警備ロボットについては「自動運転の警備AIロボット11選!空港で街で当たり前の時代へ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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