ボッシュの新概念「PACE」、自動運転のほか「パーソナライズ」も

P、A、C、E、各領域の戦略を探る



(左から)ボッシュ取締役会メンバーのシュテファン・ハルトゥング氏、ボッシュ株式会社のクラウス・メーダー氏、ボッシュ取締役会メンバーのマルクス・ハイン氏=出典:ボッシュプレスリリース

自動車部品供給メーカー大手の独ボッシュは、2019年10月24日から開催されている東京モーターショーで「PACE」という新概念を発表した。

自動車業界では現在「CASE」というキーワードが主に使われているが、この「CASE」と「PACE」にはどのような違いがあるのだろうか。ボッシュの「P」「A」「C」「E」における各戦略も含め、説明していく。


■PACEはどういう意味?CASEとどう違う?

CASEとは「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(シェアリングとサービス ※シェアリングのみを指す場合もある)」「Electric(電動化)」の頭文字をとった造語だ。変革時代を迎える自動車産業の動向を象徴する重要なキーワードで、自動車メーカー各社の事業の方向性を示す指針でもある。

一方でボッシュの掲げるPACEは「Personalized(パーソナライズ化)」「Automated(自動化)」「Connected(ネットワーク化)」「Electrified(電動化)」を指す。つまり、CASEにおける「Shared & Services」の代わりに「Personalized」が加わった形となる。

■Personalized(パーソナライズ化)の戦略

自動車に対する意識の変化により、クルマに対する考え方は変わりつつある。クルマを所有しなくても、相乗りサービスの「ライドシェア」や複数の交通手段を組み合わせる「インターモーダル」、送迎配車サービスの「ライドヘイリング」などの新たな交通サービスを使うことで、個人が自身のニーズに合わせて移動できるようになりつつある。

ボッシュはこうした時代の変化に合わせ、ドライバーや都市環境にかかる負荷を軽減しながら、今後パーソナライズなサービスの提供に力を入れていくという。既に展開している電動スクーターシェアリングサービス「COUP」や従業員乗り合いサービス「SPLT」などはその一環であると言える。


■Automated(自動化)の戦略

ボッシュは交通事故を起こさないモビリティの実現を目指し、自動運転技術の開発に積極的な姿勢を示している。実際のソリューションとしては、ドライバーアシスタントシステムや自動バレーパーキング技術、車両位置の把握技術などを手掛けている。

自動バレーパーキング技術においては自動運転レベル4(高度運転自動化)のシステムを既に構築済みだ。車両位置の把握技術に関しては、2017年から日本で車載ビデオカメラとレーダーを使用した自車位置推定技術「Road Signature」の開発に取り組み、2019年10月からは関東の高速道路でデータ取得を開始している。

2020年度内には自動運転用高精度3Dマップに統合可能な関東地方のマップ用データを完成させる予定だという。

【参考】関連記事としては「ボッシュの自動運転・LiDAR戦略まとめ 日本や海外での取り組みは?」も参照。


■Connected(ネットワーク化)の戦略

ボッシュは2025年には世界で4億7000万台もの車両がネットワーク化されると予測し、こうした点を視野に入れたモビリティサービスのプロバイダーとして市場を牽引していくことを目指す。

ボッシュのネットワーク化を代表するソリューションに「パーフェクトキーレス」がある。実際のキーなしでドアのロックとアンロック、エンジン始動を可能とするもので、高い安全性を担保するという。

■Electrified(電動化)の戦略

ボッシュは年間4億ユーロ(約480億円)を排気ガスの出ないモビリティに投資しており、報道発表では「技術的にも商業的にも電動化において市場を牽引しています」と自信を見せている。

特に最近のソリューションとして同社がアピールするのが「48Vマイルドハイブリッドシステム」だ。最大15%の燃費向上の実現しつつコンパクトなサイズであることが特徴で、2020年初頭にある日本の自動車メーカーから販売されるモデルで採用が決まっているという。

■【まとめ】新時代におけるモビリティ形成に期待

ボッシュが掲げるPACEの各領域はそれぞれ結びつきがある。例えば自動化(A)とネットワーク化(C)は密接な関係にあるし、パーソナライズ化(P)もネットワーク化(C)抜きには語れない。ボッシュは全ての領域で開発に力を入れ、シナジー効果による競争力強化も目指す考えとみられる。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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