空飛ぶクルマの開発企業まとめ 日本と世界、開発進捗は?

日本はCARTIVATORが一歩リードの様相





ラスベガスでBell Helicopter Textron社が発表したエアタクシー「Nexus」=出典:住友商事プレスリリース

地上における自動運転とともに、空中における自動運転の開発も着々と進んでいる。空飛ぶクルマ、エアモビリティなどと呼ばれ、パーソナルユーズをはじめタクシーのような気軽な移動サービスを提供する新たな移動手段として注目が集まっている。

今回は、日本をはじめ世界各国の開発企業に焦点を当て、ロードマップとともに最新動向を紹介していく。







(※本記事で紹介している企業様以外で、空飛ぶクルマの開発に取り組まれている企業様がいらっしゃいましたら、編集部までご連絡下さい)

■【日本】CARTIVATOR&SkyDrive:2019年9月に有人機飛行試験を予定

「モビリティを通じて次世代に夢を提供する」をミッションに2012年に始動した有志団体「CARTIVATOR(カーティベーター)」と、空飛ぶクルマの実用化に向けCARTIVATORから派生する形で2018年7月に設立された「SkyDrive(スカイドライブ)」。

2018年9月に無人機飛行試験を実施し、2019年9月には有人機飛行試験を予定している。将来的には、独自目標として東京オリンピック開会式における聖火点灯デモを実現し、2023年に有人機を販売開始するロードマップを立てている。

取り組みがメジャーになるにつれ続々とスポンサーも集まっており、2019年だけでも8月までにUACJ、ローデ・シュワルツ・ジャパン、青山製作所、日本郵政キャピタル、東京海上日動火災保険など15社が支援を表明している。同年5月には、愛知県豊田市と新産業創出へ向けた「空飛ぶクルマ」開発に関する連携協定を締結するなど、自治体との結びつきも強まってきた。

2019年1月には、米ラスベガスで開催されたCES2019に開発中のエアモビリティ「SkyDrive」の1/6サイズ機体のモックを出展した。2019年9月には独ベルリンで開催されるコンシューマーエレクトロニクス展「IFA」にも出展する予定で、世界に向けたPRにも本腰を入れているようだ。

■【日本】エアロネクスト:4D GRAVITYで世界進出、宅配向けドローンも開発

ドローン・アーキテクチャの研究開発を手掛ける2017年設立のスタートアップ。設立以前から研究が進められており、ドローンの飛行姿勢や動作に応じて重心位置を最適化させる重心制御技術「4D GRAVITY」の特許などを持つ。

「4D GRAVITY」技術を搭載したフライングロボットの開発や、物流、ひいては人を運ぶ空飛ぶクルマのプラットフォーム創生事業、包括的なUAVコンサル事業などを行っている。「荷運び」に特化して設計された宅配専用ドローン「Next DELIVERY」なども発表済みで、2019年3月に幕張メッセで開催された民間ドローン産業の国際展示会「Japan Drone 2019」では、量産試作機や新型VTOLなどを公開している。

2019年2月、上空シェアリングサービス「sora:share」を手掛けるトルビズオンと新しい空域の経済化に向け業務提携を交わし、都市部において日本初となる配送実証実験を「FUKUOKA Smart EAST推進コンソーシアム」で実施することを発表した。

中国市場にも力を入れており、2019年5月に深せん市に現地法人を設立。同年6月には、ドローンメーカーの深せん市科比特航空科技有限公司(MicroMultiCopter Aero Technology)や深せん智航無人機有限公司(Shenzhen Smart Drone UAV)、深せん清華大学研究院の外郭団体などとそれぞれ提携を結び、同市場への参入を本格化させている。

■【日本】テトラ・アビエーション:世界コンペに向け試作機製作中

東京大学発のスタートアップとして2018年に設立され、空飛ぶクルマの開発プロジェクトプロジェクト「teTra」を推進しているテトラ・アビエーション。米ボーイング社が主催する空飛ぶ車のコンテスト「GoFly」に勝ち残り、最終ステージに向けて1/1サイズの試作機の製作を進めている。

GoFlyは賞金総額2億円の「空飛ぶクルマ」開発コンテスト。2018年6月の第1ステージでは、世界95カ国から数百の応募がある中、テトラはトップ10に入りステージを突破した。試作機・プロジェクトの進行具合を基準に審査する第2ステージも潜り抜け、2020年第1四半期に開催される予定の最終ステージに向け、1/1サイズの試作機を製作している。最終ステージは、サイズ・ノイズ・タイムアタックによって争われるという。

コンテスト終了後も開発を引き継ぎ、5年をめどに誰もがどこででも利用できる空飛ぶクルマの普及を目指すこととしている。

開発に向け、2019年5月には第三者割当増資によりDrone Fundなどから約5000万円の資金調達を実施したと発表した。引き続きパートナー企業を募集している。

■【日本】A.L.I.Technologies:実用型ホバーバイク2020年販売目指す

UAVに関する研究開発を手掛ける2016年設立のA.L.I.Technologiesは、国内では珍しい公道を走れる実用型ホバーバイクの開発で注目を集めている。

同社が開発を進めるホバーバイク「Speeder Series」のスタンダードモデルは、最高時速120キロで地上数10センチを走る1人乗りバイク。空飛ぶクルマではなく低空を走行する「空飛ぶバイク」だが、エアモビリティの一つとして覚えておきたい。

2019年3月にSpeederの公開飛行実験を実施。ドローンやブロックチェーン、AIなどの要素技術を盛り込み、革新的な機動性と安全性を両立させているという。2019年中に限定モデルの予約受付に着手し、2020年後半の納車を目指すほか、量産型の販売も2022年に照準を絞って開発を進めている。

また、ドローン開発にも力を入れており、2019年5月に「空のインフラ」にかかる構想とそれに関する特許群を発表している。ブロックチェーンを活用した複数通信網管制システムの構築など、高度な研究開発力の実用化に注目だ。

■【日本】日本電気(NEC):通信監理基盤など移動環境の構築目指す

空の移動革命の実現に向け、NECも本格的に動き出している。空飛ぶクルマの移動環境に必要となる交通整理や機体間・地上との通信などを支える管理基盤の構築に向け、機体管理の機能や飛行特性を把握するために試作機を開発し、NEC 我孫子事業場に新設した実験場で2019年8月までに浮上実験を実施した。

「空飛ぶクルマ」の機体に関しては、専門的に開発を進めるCARTIVATORらを支援していく方針で、同社はこれまでに培ってきた管制技術や無線通信技術、無人航空機の飛行制御技術、重要インフラ分野におけるサイバーセキュリティ対策に関する知見を活用し、空飛ぶクルマのための新たな移動環境の実現に向けた検討を進めていくこととしている。

【参考】NECの取り組みについては「空飛ぶクルマ実現へ、試作機の浮上実験に成功 NECが発表」も参照。

■【日本】P.P.K.P.パーソナルプレーン開発プロジェクト:大阪万博への出展目指すVTOL開発有志グループ

空の新たな交通手段開発を目指す有志グループ「P.P.K.P.パーソナルプレーン開発プロジェクト」も自動運転可能なVTOLの開発に熱を入れている。

自動運転システムの基礎作りとしてグライダーベースの1人乗り自動運転航空機の開発などを通して期待制御システムや遠隔監視・操作システムなどの基礎を固め、VTOL機へとブラッシュアップしていく方針で、2025年を目途に技術開発を完了し、大阪万博への出展を目指すこととしている。

技術としては、プロペラの外周側と内周側のピッチを独立して制御することで空飛ぶクルマの性能を飛躍的に向上させることが可能なプロペラの開発などが発表されているようだ。

【参考】P.P.K.P.パーソナルプレーン開発プロジェクトについては「「空飛ぶクルマ」の性能を飛躍的に向上させるプロペラが登場!」も参照。

■【アメリカ】Bell Helicopter:ヤマトや住友商事とパートナーに

ヘリコプター大手のBell Helicopter(ベルヘリコプター)は、ラスベガスで2019年1月に開催されたCES2019でeVTOLタイプの空飛ぶタクシー「Bell Nexus」を発表した。

最大5人が搭乗可能なビッグサイズで、可動式の6つのローターで垂直離陸や移動を可能にしている。オスプレイの開発ノウハウなどが生かされており、2023年までに飛行試験を開始することとしている。

日本では、宅配最大手のヤマトホールディングスが取り組む「空の輸送」構想に関し、機体の開発・製造をベルが手掛けている。小型機と大型機の開発を進めており、2019年8月に機体の試験デモを米国で実施し、2020年代半ばまでの実用化を目指す方針だ。

また、住友商事も2019年4月までに、エアモビリティ分野での新規事業の創出を目的にベルと業務提携を結んでいる。無人ドローンやエアタクシーを活用したサービスを検討し、2020年代半ばごろの実用化を目指す構えのようだ。

【参考】ヤマトとベルの取り組みについては「ヤマト、空の自動運転機を10年以内に実用化 米ベルヘリコプター社が開発担う」も参照。住友商事とベルの取り組みについては「住友商事、米Bell社と提携 空飛ぶタクシー分野に参入」も参照。

■【アメリカ】Uber Technologies:空飛ぶタクシー「Uber AIR」2023年商用化へ

配車サービス大手の米ウーバーも、空飛ぶタクシー「Uber AIR」の開発を進めており、2023年のサービス実用化を目指している。

構想は2017年に発表され、4人乗りのeVTOLを活用した空飛ぶ配車サービスによって都市間の移動時間を大幅に短縮するなど効率的な移動サービスの提供を目指すこととしている。

テキサス州やカリフォルニア州などでの試験飛行のほか、豪メルボルンでの試験飛行計画も発表されており、2023年までにカリフォルニア州などの都心に発着拠点となるスカイポートを複数設置し、商用化を実現させる方針だ。

■【アメリカ】Kitty Hawk:空飛ぶタクシーの開発加速に向けボーイングと提携

米カリフォルニア州に本社を構えるスタートアップのKitty Hawk(キティホーク)は、2人乗りの空飛ぶタクシー「Cora」の試験飛行をすでにニュージーランドで開始している。

Coraの航続距離は約100キロメートルで、速度は時速180キロメートルを出すことができ、地上約150メートルから約900メートルの間で動作する機体だ。

2019年7月までに、航空宇宙機器開発最大手の米ボーイングと提携を交わしたことも発表されており、近い将来大きな動きがあるかもしれない。

■【ドイツ】Volocopter:空港拠点とした商用化プロジェクトにも着手

独スタートアップのVolocopter(ボロコプター)は、2017年にドバイで空飛ぶタクシーの飛行試験を実施するなど、この分野における先行組の一社だ。

2020年代前半の商用機製造・販売を目指しており、2019年3月までに、ドイツの空港運営会社であるフラポート社と手を組み、空港を拠点に空飛ぶタクシーの有料サービスを提供するプロジェクトに着手したことなどが報じられている。

■【ドイツ】Lilium:5人乗り「Lilium Jet」の有人飛行試験成功 2025年までに商用化目指す

ドイツ勢では、2015年に設立されたLilium(リリウム)も有力株だ。プロペラを備えず電気ジェットエンジンで垂直離陸を可能としたVTOLの開発を進めており、滑走路を使った離陸も可能という。

2017年4月に2人乗りプロトタイプの無人テスト飛行を実施したほか、2019年5月には、5人乗りの機体「Lilium Jet」による有人飛行試験に成功した。36個の電動ジェットエンジンを搭載しており、最高時速300 キロメートル、航続距離300キロを達成可能という。

2025年までに世界中のさまざまな都市で商用化する方針で、それまでに実証サービスなども進めていくこととしている。

■【フランス】Airbus:次世代エアモビリティ開発に向けプロジェクト続々

航空機メーカーの仏エアバスも、空飛ぶクルマの開発に向けさまざまなプロジェクトを立ち上げている。「アーバン・エアモビリティ・プロジェクト」では、独自動車メーカーのアウディなどと手を組み、地上の走行も可能なエアタクシーの開発に取り組んでおり、2020年代にも道路と空中を利用したフライングタクシーサービスの実現を目指す構えだ。

Vahanaプロジェクトでは、米シリコンバレーの企業と協力し自動操舵システムの開発を進めている。2018年2月までにフルスケールモデルの「Vahana Alpha One」の初飛行動画を公開しており、2020年の完成に向け着々と研究を進めている。

このほか、エアタクシーから大型商用飛行機に至るまで、スケーラブルな自動運転システムの構築を目指す「Project Wayfinder」なども立ち上がっており、エンジニアの採用を加速しているようだ。

【参考】アーバン・エアモビリティ・プロジェクトについては「独アウディと仏エアバス、10年以内に空飛ぶタクシー実現へ プロトタイプ発表、実証実験も」も参照。

■【イギリス】VRCO:エアモビリティ社が国内独占販売権を締結

2人乗りのeVTOL 「NEOXCraft」の開発を進める2015年設立の英国企業VRCOは、2019年中の初飛行を計画しているようだ。

詳細は明かされていないが、空飛ぶクルマの販売や関連インフラの整備、関連サービスの構築・提供などを行う2019年8月設立のエアモビリティ株式会社がVRCOと日本における独占販売権を締結しており、今後の動向に要注目だ。

■日本国内におけるロードマップ

空飛ぶクルマの実現に向け、経済産業省と国土交通省が2018年8月に立ち上げた「空の移動革命に向けた官民協議会」が空の移動革命に向けたロードマップを同年12月に取りまとめた。

これによると、2019年から試験飛行や実証実験などを行い、経験や知見を高めるとともに事業者ベースのビジネスモデルの構築・提示も進め、2023年を目標に「物の移動」などから事業をスタートさせる。その後、2030年代にかけて地方における人の移動や都市における人の移動などに拡大していく方針だ。

制度面では、実証実験の結果をフィードバックしながら試験飛行のための離着陸場所や空域の調整・整備、技能証明の基準や機体の安全性の基準といった必要となる制度について、国際的な議論を踏まえながら整備していくこととしている。

また、実証実験の促進などに向け「地方公共団体による空の移動革命に向けた構想発表会」も開催されており、福島県、東京都、愛知県、三重県、大阪府の5都府県が空の移動革命に向けた構想を2019年8月にそれぞれ発表した。

福島県は世界に類を見ないロボットテストフィールドの整備を進めており、2020年春にも開所する予定という。また、愛知県は、空飛ぶクルマの開発・生産拠点を目指す構えだ。

【参考】空飛ぶクルマのロードマップについては「空飛ぶクルマの事業化は2020年代 官民評議会でロードマップ素案」も参照。

■【まとめ】国内企業も続々参戦 環境整備とともに実証・実用化が加速

国内では、カーティベーター以外の企業による活動も活発化しており、インフラ整備やプラットフォームサービスなど付随する技術やサービスに関する取り組みも加速している印象だ。

海外では、飛行試験に取り組む企業が徐々に増えてきており、日本同様、実証環境の整備とともに各企業の動きもどんどん可視化されていきそうだ。

CESをはじめ、世界各国のテクノロジー系展示会などにおけるコンセプトモデルの発表も今後増加するものと思われ、空飛ぶクルマの現実味が増すとともに、新たなモビリティを活用したさまざまなサービス・アイデアも続々と登場しそうだ。







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