中国企業、トヨタ・レクサスを「自動運転タクシー」に改造

上場申請済みのPony.ai、既に200台規模



ホンダ日産テスラと自動車メーカー各社が自動運転サービスの計画を公表する中、依然として沈黙を続けるトヨタ。同社の自動運転戦略の行方に注目が集まるところだ。


トヨタ自らの動きは見えないが、もしかしたら周辺の自動運転開発企業を通じてさまざまな戦略を模索している可能性も高い。

例えば2024年10月にナスダック市場に上場申請したPony.aiにはトヨタが出資しており、Pony.aiはトヨタの高級ブランド「レクサス」の車両を改造して自動運転タクシーにしており、トヨタ本体は自動運転事業を展開していなくても、トヨタの出資先がトヨタの車両を使って自動運転事業を展開する例が出始めている。

トヨタ自身、そしてパートナー企業各社の動向をもとに、トヨタの自動運転戦略に迫ってみる。

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■トヨタの自動運転開発

トヨタは自動運転実証に消極的?

出典:トヨタプレスリリース

トヨタ自らの取り組みとしては、e-Palette(イー・パレット)が真っ先に浮かぶ。さまざまな用途に利用可能な自動運転サービス専用BEVだ。


東京オリンピック・パラリンピックの選手村での運行や東京臨海副都心エリアでの実証、愛知県豊田市のサービス実証など実用化に向けた取り組みが徐々に広がっているが、トヨタ自身による一般公道での継続的な実証は聞いたことがない。

2018年の初登場から早6年が経過したが、e-Paletteの一般公道走行を実現する継続的な取り組みは明らかに乏しく、トヨタ自身が力を入れてないのは明白だ。自社工場敷地内などでその用途の可能性を模索する取り組みは地道に行われているようだが、自動運転システムをガチで鍛える表立った取り組みはないに等しい。

2025年に始まる予定のWoven City内で本格的な実証が行われる可能性が高いが、独自の一般街区の環境と一般公道の環境は異なる。

自動運転システムを高度化するには、リアル環境である混在空間化の一般公道における反復走行が欠かせない。ここに踏み出さない限り、トヨタ自らによる自動運転サービスは成立しないのだ。


【参考】e-Paletteに関する取り組みについては「トヨタe-Paletteの「お蔵入り説」は嘘だった。自動運転シャトル、徐々に表舞台に」も参照。

パートナー企業は着々とサービス展開へ

他方、自動運転分野におけるトヨタのパートナー企業は、自動運転サービス実用化に向けた取り組みに積極的だ。多くは出資関係にあり、自動運転タクシーサービスなどにトヨタ車を採用する例も多い。

パートナーシップを通じてノウハウを共有?

つまり、トヨタは開発事業者向けにクルマを供給しているのだ。これが無関係の企業にただ供給しているだけであれば通常の販売と変わらないが、パートナーシップを結ぶ企業とコミュニケーションを図ることでさまざまなノウハウを吸収することができる。

例えば、自動運転に適した車両設計に関するノウハウだ。さまざまなコンピュータ機器やセンサー類を効率的かつ効果的に搭載可能なボディの在り方や必要な電力、実証や無人走行に適したインストルメントパネルの表示方法などに関する知識を磨くことができる。

また、サービス面においても、無人車両に乗客が乗るための手法や後部座席で円滑に車両に指示を出す手法、安全運行に向け乗客が守るべき事項に関する知見、移動時間の有効活用に向けた付加サービス――など、さまざまな知見を蓄積することができる。

さらに一歩踏み込めば、自動運転システムそのものを共有し、共同開発を通じて最も貴重な技術を磨くこともできそうだ。パートナーシップの中身・契約によるところが大きいが、各開発企業の自動運転システムがトヨタ車にどのように統合されるかをはじめ、各企業のパーセプション技術や判断技術などに触れることで多くのノウハウを吸収することができる。

本来社外秘扱いの独自技術に触れ、さらなる高度化に向け共同開発する権利を得ることができれば言うことなしだ。各社の自動運転車が公道走行すればするほどトヨタにも膨大なデータが集まり、開発を加速することができる。特許関係をクリアすれば、各社の基幹技術に触れ、有料無料問わず必要な技術を転用することもできるかもしれない。

こうした面を踏まえると、ある意味トヨタは、各社への車両供給をはじめとしたパートナーシップの過程で自動運転タクシー分野にすでに参入しているとも言える。

車両供給面で間接的に同分野に参入し、さらにはさまざまなノウハウを積み上げているのだ。各社との契約内容が気になるところだが、技術の提供・吸収を通じたパートナーシップは間違いなく存在する。

かつてフォードやフォルクスワーゲンがArgo AIを囲っていたように、開発各企業への出資や提携を通じて自社技術も向上させていく戦略なのかもしれない。

以下、トヨタとパートナーシップを結ぶ各社の動向を紹介していく。

■トヨタのパートナー各社の動向

Pony.ai:『クルマ屋の自動運転』を一緒に開発

Pony.aiの自動運転車のベース車両にはレクサスが使われている=出典:Pony.aiプレスリリース

2016年設立の中国Pony.aiは、2019年8月に自動運転領域でトヨタと提携することを発表している。翌年には、シリーズBラウンドでトヨタから4億ドル(約440億円)を調達するなどパートナーシップを深めている。

2023年8月には、トヨタ自動車(中国)投資有限公司(TMCI)と広汽トヨタ自動車(GTMC)とともに、自動運転タクシー量産化に向け合弁「騅豊智能科技」を設立することも発表している。

新会社への投資額は10億人民元(約1億3,920万ドル/約200億円)超を見込んでおり、GMTCが提供するBEVにレベル4開発に適したトヨタの冗長システムを搭載し、Pony.aiの自動運転システムを統合していくという。

フリート総数は不明だが、2023年時点でPony.aiは約200台のトヨタ・レクサスブランドの自動運転タクシーを稼働させている。RX 450hなどのほか、Autono-MaaSモデル「シエナ」の導入も進められているという。

トヨタとの共同開発も進んでいるようだ。トヨタのオウンドメディア・トヨタイムズによると「中国のスタートアップ企業とともに『クルマ屋の自動運転』の開発に取り組んでいる」という。

Pony.aiの自動運転車を体験する動画には、柔軟な判断により人が運転するのとほぼ同じ感覚で走行する様子が収められており、TMCI会長でトヨタの中国本部本部長を務める上田達郎執行役員は「そこがPony.aiとやっている自動運転の一つの売り」「モリゾウさん(豊田章男会長)が言う、曲がるのはハンドルで曲げるのではなく重心で曲げるみたいな、そういう要素も入れ込もうとしている。クルマ屋の自動運転を一緒にやろうと取り組んでいる」と語っている。両社の提携が、単純な出資や車両の提供に留まらないことを示す内容だ。

ポニーは現在、北京、広州、上海、深センで無人車両の走行ライセンスを取得しており、北京と広州ではすでに無人運行に着手している。米国やルクセンブルク、サウジアラビアでも研究開発や導入に向けた取り組みが進められている。

2024年10月には、ナスダックでのIPOに向け米国証券取引委員会(SEC)に上場申請したことが報じられている。今後、開発と実用化をさらに加速させていくことになりそうだ。

【参考】Pony.aiとトヨタの動向については「トヨタ出資先の自動運転AI、中国の「カオスな道路」ゆえの驚異的進化」も参照。

▼中国のクルマ事情 トヨタらしい自動運転に迫る|トヨタイムズ
https://toyotatimes.jp/newscast/026.html

Aurora Innovation:Uberを介する形でパートナーシップ

出典:Aurora Innovation公式サイト

トヨタは、配車サービス大手Uber Technologiesの自動運転開発を引き継いだAurora Innovationともパートナーシップを継続している。

トヨタはもともとUber Technologiesと提携し、Uberが開発した自動運転システムを統合したシエナを配車ネットワークに加える計画を進めていた。「シエナAutono-MaaS」構想のはじまりだ。しかしUberの開発がとん挫し、開発部門をAurora Innovationが買収したことで新たな局面を迎えた。

Aurora Innovationは2021年2月、トヨタとデンソーと長期的かつグローバル、戦略的なパートナーシップを結び、自動運転車をグローバルに大規模展開していくと発表した。

自動運転システム「Aurora Driver」をシエナに統合して実証を進め、自動運転サービス向けのフリート構築を進めていく計画としている。

すでに統合済みで実証を開始しているものと思われるが、同社は近年自動運転トラック部門に注力している印象が強く、現在の進捗状況がつかみづらい。ただ、Uber Technologiesとの関係を踏まえると実用化した際のインパクトは大きい。

かねてから懸念されていた資金繰りもクリアした様子で、自動運転トラック部門がうまく回れば再度勢いを増すことが考えられる。

「シエナAutono-MaaS」の一番目の計画の流れをくむAurora Innovationの動向に引き続き注目したい。

【参考】Aurora Innovationとトヨタの関係については「トヨタ×オーロラ、提携の真意は?自動運転ラボの下山哲平に聞く」も参照。

May Mobility:日本展開にも意欲

出典:May Mobilityプレスリリース

自動運転シャトルサービスの開発を手掛ける米May Mobilityは2019年のシリーズBでトヨタ、2022年のシリーズCでトヨタやトヨタベンチャーズ、豊田通商、スパークス・グループなどから出資を受けている。2024年のシリーズDはNTTが主導しており、日本企業との関わりが非常に深い点がポイントだ。

ポイントtoポイントのシャトルサービスを中心に、ミシガン州アナーバー、テキサス州アーリントン、ミネソタ州グランドラピッズ、エデンプレーリー、カリフォルニア州マーティネズ、ジョージア州ピーチツリーコーナーズ、アリゾナ州サンシティなどで実証やサービス展開した実績を誇る。

2022年にはソフトバンクも提携を交わしており、ソフトバンクとトヨタの合弁MONET Technologiesを通じた取り組みなどにも注目が集まるところだ。

日本法人もすでに設立されている。NTTとの提携では、May Mobility独自の自動運転技術を日本全国で独占的に販売する権利をNTTが獲得し、両社はトヨタと連携して自動運転エコシステムを開発し、May Mobilityの自動運転システムをさまざまな車両プラットフォームに展開するとしている。

米国ではレクサスRX450hやシエナAutono-MaaSを活用したモデルをすでに実用化している。今後、日本でのサービス展開時、どのような車種を導入するのかなども注目点だ。

【参考】May Mobilityとトヨタの関係については「トヨタの自動運転用シエナ、初の商業利用か!米May Mobilityが発表」も参照。

Nuro:ロボットビジネスから拡大路線へ、自動運転タクシーも視野に

中型サイズの自動運転配送ロボット開発の代名詞的存在となった米Nuroも、今後トヨタ車を取り扱う可能性が高い一社だ。

同社は車道を走行するオリジナル設計の完全無人配送ロボットの開発を進めている。ロボットのサイズは徐々に巨大化しており、最新の「R3」は軽自動車規格に迫っている。

これまではこのオリジナルモデルの実用化を前提に事業を進めていたが、ここにきて戦略を変えた。2024年9月、同社の自動運転システム「Nuro Driver」をOEMやモビリティプロバイダーにライセンス供与するビジネスモデルの拡大を発表したのだ。その対象には、自動運転タクシーや自家用車用途なども視野に収めているようだ。

Nuroは自動運転システムの開発や配送ロボットのドライバー付き実証にプリウスを使用している。また、トヨタ系のウーブン・キャピタルがNuroに出資している縁もある。

将来、Nuro×トヨタの新たな自動運転サービスが誕生する可能性もゼロではないだろう。

【参考】Nuroの取り組みについては「Nuroの自動運転戦略」も参照。

Nuroの自動運転戦略(2023年最新版)

MONET Technologies:トヨタの自動運転サービスを担う?

日本国内では、ソフトバンクとの合弁MONET Technologiesが自動運転関連の取り組みに力を入れ始めている。2024年8月の発表によると、東京臨海副都心(有明・台場・青海地区)の公道で自動運転技術を用いた移動サービスを2024年度後半に開始する計画としている。

シエナをベースにMONET が調達したレベル2車両2台を使用し、サービスを提供する。将来的には数十台の自動運転車両を遠隔で監視するシステムを開発し、車両の台数やサービス提供エリアを拡大していく予定だ。

レベル4に向けた取り組みには触れられていないが、レベル2前提であれば特筆すべきものにはならない。どこかのタイミングで自動運転化を推し進めていくものと思われる。

自動運転システム(ADAS)の開発者なども公表していないが、トヨタ車を導入することに変わりはない。ただ、MONETのようなサービスプロバイダーを通じ、トヨタ車が自動運転化されていくケースも今後出てきそうだ。

また、トヨタによる自動運転サービスをMONET Technologiesがどこまで担うのか――といった点にも今後注目したいところだ。

【参考】MONET Technologiesの取り組みについては「自動運転タクシー、TOYOTA RIDE誕生か!規制緩和で参入可能性」も参照。

■【まとめ】自社サービスは誕生する?

Pony.aiやMay Mobilityなどを中心に協業は深まっているようだ。各社の研究開発の核心部分にトヨタがどれだけ迫ることができているのかは不明だが、ただ車両を提供しているわけではないのは明らかだ。

Pony.aiの例を見ると、自動運転タクシー開発に直接関わっていることも見て取れる。つまり、トヨタはパートナー各社を通じて自動運転サービス事業に参入済み――と言える。

今後、各社の技術がトヨタ独自の自動運転技術に付加されることがあるのか。また、トヨタ自身による自動運転サービスは誕生するのか。トヨタの戦略に改めて注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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