自動運転レベル3市販車、2022年における各社の発売計画一覧

Daimler、BMW、Hyundaiの3社が少なくとも販売へ



ホンダ自動運転レベル3「トラフィックジャムパイロット」を搭載した市販車を発売し、半年以上が過ぎた。レベル3搭載の市販車については、未だ明確に追随する動きは出ていないが、ライバル勢の開発も大詰めを迎えつつあるようだ。


この記事では、レベル3搭載量産車の発売を目指す各社の動向について解説していく。

【参考】ホンダのレベル3については「ホンダの自動運転レベル3搭載車「新型LEGEND」を徹底解剖!」も参照。

■2022年までに実装予定のメーカー
ダイムラー:当初予定は2021年第4四半期、すでに型式指定も

ダイムラーは2021年第4四半期に新型Sクラスにレベル3システム「DRIVE PILOT」をオプション設定する予定だ。2022年秋とするメディアもあり、時期がずれ込む可能性もありそうだが、すでにドイツ運輸局から型式指定を受けていることから、実装に向け大詰めを迎えていることに間違いはない。


「Driving Assistance Package」など従来のADASに対応したセンサーは長距離レーダーや全方位カメラ、超音波センサーなどで構成されているが、DRIVE PILOTモデルは、ラジエターグリルにLiDARを装備するなど追加コンポーネントが必要となる。

センサーデータを補完するため、高精度3次元地図やディファレンシャルGPS(DGPS)を使用し、誤差1センチ級の位置特定技術を実現するという。ソフトウェアは、すべてのアルゴリズムを高度な安全アーキテクチャの一部として2回計算し、冗長性を高める。

▼ダイムラー公式サイト
https://www.daimler.com/en/

BMW:2022年後半に北米モデルに搭載


BMWは、2020年後半にもレベル3搭載車を市場に送り出す計画のようだ。経済メディアのForbesが、BMW開発ディレクターのFrank Weber氏による談話として報じている。

これによると、2022年後半に北米で発売する予定の7シリーズセダンからレベル3の実装を開始し、その後5シリーズセダンやX5、X7などに順次広げていくという。

最初の地に自国ドイツではなく北米を選んだのは、レベル3の規制がないためとしている。各州法の規制を受けることになりそうな気もするが、こうした点もレベル3実装の重要ポイントとなりそうだ。

▼BMW公式サイト
https://www.bmw.com/en/index.html

【参考】BMWの取り組みについては「自動運転、北米でついにレベル3量産車販売へ!BMW、2022年後半に」も参照。

ヒュンダイ:新型「Genesis G90」にレベル3実装
出典:Hyundaiプレスリリース

韓国ヒュンダイは、2021年11月に開催した「HMGディベロッパーカンファレンス」の中で、自動運転技術の開発担当責任者が2022年発売予定の新型「Genesis G90」にレベル3を搭載すると語ったようだ。

ジェネシスは同社の高級ブランドで、G90はフラッグシップモデルに相当する。公式サイトでは、今のところ2022年モデルに搭載される安全機能は前方衝突防止装置やレーンキープアシスト、高速道路運転支援などが紹介されており、レベル3に関する表記は見られない。

今後、正式な承認手続きなどを経て大々的にプレスリリースが行われるのかもしれず、続報に期待したい。

なお、韓国では2020年5月に自動運転車の商用化促進及び支援に関する法律が施行され、国土交通部長官が試験走行地区や自動車専用道路の一部を自動運転安全区間に指定することが可能となっている。

▼ヒュンダイ公式サイト
https://www.hyundai.com/worldwide/en/

【参考】ヒュンダイの取り組みについては「韓国ヒュンダイ、2022年に自動運転レベル3の市販車を発売へ」も参照。

■実装間近と思われる中国企業
Xpeng:レベル2からレベル3へ進化?

中国新興EV(電気自動車)メーカーのXpeng(小鵬汽車)は2020年にスマートセダン「P7」を発表した際、高速道路や都市道路、バレーパーキング向けのレベル3対応のフルシナリオ自動運転機能などを提供するとしていた。同車に「NVIDIA DRIVE」を提供しているNVIDIAも、P7に搭載されるシステム「XPilot 3.0」がレベル 3 としていた。

ただ、技術的な問題か法規制への配慮かはわからないが、結果的にXPilot 3.0はNGP(Navigation Guided Pilot)などの機能を持つレベル2システムをベースに実装されている。

その後、ソフトウェアのアップデートによって駐車場のメモリーパーキング機能を実装した。事前に記憶した駐車場において、入り口から駐車スペースまで自動で制御可能なようだ。必要に応じて手動介入するレベル3相当の機能となっている。

同社は2021年3月、広州から北京までの3,600キロ以上をP7のフリートで走行する取り組みを実施した。このうち、高速道路約3,000キロをNGPを使用して走行したところ、ドライバーの介入は100キロあたり0.71回になったという。この取り組みは、レベル2の高度化とともにレベル3の実装を見越している可能性が高そうだ。

また、同年4月には3番目のモデルとなる「P5」を発表し、フルスタック自動運転システム「XPILOT 3.5」を搭載するとしている。発売は2021年第4四半期を予定しており、おそらくレベル2の実装に留めるものと思われるが、LiDAR2基を含む32個のセンサースイートを搭載するなど、ハード面はレベル3要件を満たす仕様となっている。そう遠くない将来、アップデートによってレベル3を実装することも考えられそうだ。

▼Xpeng公式サイト
https://en.xiaopeng.com/

NIO:Xpeng同様アップデートでレベル3対応も

中国のNIO(上海蔚来汽車)は2021年1月、最初の自動運転モデルと銘打った新モデル「ET7」を発表した。最新の「NAD(NIO Autonomous Driving)」テクノロジーを搭載し、A地点からB地点までの自動運転を可能にするという。

ただ、こちらもXpeng同様レベル2機能にとどまっており、ドライバーの支援を前提に設計されている。センサーシステム「NIO Aquila Super Sensing」は、超長距離高解像度LiDARをはじめ、11台の8メガ高解像度カメラ、ドライバー監視システム、ミリ波レーダー、超音波センサー、冗長高精度ローカリゼーションユニット、V2Xを含む計33台の高性能センシングユニットを備えている。

メインコンピュータの「NIO Adam」は4つのNVIDIA DRIVE Orinを搭載し、1,016TOPSの処理能力を誇るという。

自動運転に耐え得るスペックとなっており、アップデートによって徐々にレベル3に近づいていく可能性は高そうだ。

中国EV勢では、WM Motor(威馬汽車)もBaiduのアポロプロジェクトと共同でレベル3を開発し、実装を進めていく方針を掲げている。

▼NIO公式サイト
https://www.nio.com/
▼WM Motor公式サイト
https://www.wm-motor.com/en/index.html

長安汽車や第一汽車なども早期に量産計画発表

中国の長安汽車は2020年3月、交通渋滞時に自動運転を可能とする「トラフィックジャムパイロット」を発表し、重慶市とともにレベル3試乗体験会を実施した。ホンダが実装するレベル3とほぼ同様の機能で、同月に中国初と見られる量産化を開始すると各メディアが報じている。

実際に量産化が進んでいるかどうかは不明だが、体験会を実施した点を踏まえると、技術そのものはほぼ完成の域に達しているものと思われる。

一方、第一汽車(FAW)は2020年4月、新エネルギー車とインテリジェントコネクテッドカーを生産する新工場の建設を開始すると発表した。この中で、高級ブランド・紅旗から2020年にレベル3、2021年にレベル4機能を備えたモデルの量産を開始する予定としている。

吉利汽車(Geely)も2019年の発表時点で2021年中にレベル3の量産化を始めると発表している。奇瑞汽車は2018年、サプライヤーのZFとレベル3開発に向け協業を行うことを発表している。

各社の技術水準は不明だが、いずれもアポロプロジェクトに名を連ねており、相応の技術を搭載可能な環境にあると言える。中国政府がレベル3のゴーサインを出した際、各社が一斉に自動運転車を発売することも考えられそうだ。

▼長安汽車公式サイト
https://www.changan.com.cn/
▼第一汽車公式サイト
http://www.faw.com.cn/
▼吉利汽車公式サイト
https://www.geely.com/

■【まとめ】2022年にレベル3時代がいよいよ幕開け

ダイムラー、BMW、ヒュンダイに動きがあり、2022年は市販車レベル3時代が本格的に幕を開けそうだ。それぞれ販売予定のエリア(国)が異なる点も大きなポイントで、各国の法規制のもとレベル3がどのように世界展開されていくかに注目だ。

中国勢も開発意欲が高く、中国政府の意向次第で一気に社会実装が進む可能性が高い。ただ、高度なレベル2技術の誤認に起因する事故も目立ち始めており、場合によっては慎重な姿勢を保ち続けることも考えられる。

いずれにしろ、ホンダに次ぐレベル3実用化メーカーが2022年中に登場することはほぼ間違いない。自家用車における自動運転がいよいよ競争段階に突入することになりそうだ。

【参考】関連記事としては「EVメーカーの自動運転戦略(2021年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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