強みの「通信」で隊列走行も成功!(ソフトバンク×自動運転・MaaS 特集)

高精度測位サービス含め取り組み続々



出典:ソフトバンク公式サイト

ソフトバンクグループとして投資事業に注力する一方、グループの中核を担うソフトバンクは持ち前の通信技術をフル活用して自動運転分野にアプローチしている。

この記事では、ソフトバンクの十八番(おはこ)と言える通信技術を活用した自動運転分野における取り組みを解説していく。


コネクテッドカーに関する取り組み
無線技術やユースケースを本田技研と共同検証

ソフトバンクは2017年、5Gを活用したコネクテッドカー技術の強化を目的に本田技術研究所と共同研究の検討を開始した。

2018年に開始した実証では、本田技術研究所の北海道上川郡のテストコースに5Gネットワークを配した実験基地局を設置し、商用レベルの環境における5Gコネクテッドカーの技術検証を行った。

具体的には、無線検証では以下の取り組みを行った。

  • 停車状態でさまざまな通信方式を組み合わせ通信品質の検証を行う定点試験
  • さまざまな走行速度における通信方式の組み合わせごとの通信品質の検証や基地局の切り替えの検証を行う走行試験
  • アンテナの設置位置や本数、種類などを変えて通信品質を検証する車両特性試験

ユースケースの検証では、以下の取り組みを実施した。


  • 見通しの悪い交差点における周辺車両の位置情報の伝送
  • 前方車両の急ブレーキ情報を後続車両へ伝送
  • 車載カメラ映像をもとに道路上の落下物を特定し周辺車両へ伝送

検証の結果、最大1Gbpsのスループットを達成したほか、車載器から5Gネットワーク外にあるアプリケーションサーバーへの低遅延通信を実現するなど、5Gと車両との親和性の高さを確認することができたとしている。

車載センサーデータを活用する合弁設立

ソフトバンクは2020年5月、コネクテッドカーを利用し道路インフラメンテナンス事業を展開する合弁「i-Probe」を米国で設立したと発表した。

合弁はパシフィックコンサルタンツとオリエンタルコンサルタンツグローバルとともに立ち上げた。車載カメラなどのセンサーが取得したデータを解析し、路面の損傷状況などをリアルタイムにマッピングして米国の道路管理者(自治体)へ安価に提供する事業という。

車載センサーデータの活用では、ヤフーも2018年にドライブレコーダーから収集した動画データをAI(人工知能)技術で解析し、ガソリンスタンドのガソリン価格や駐車場の満空情報といった道路沿いの視覚情報をテキスト化する実証実験を開始している。


自動車から得られるプローブ情報をコネクテッド技術で利活用していく取り組みは今後加速していく見込みだ。

【参考】コネクテッドカーに関する取り組みについては「米国でコネクテッドカーによる道路メンテ!ソフトバンクら3社が合弁会社」も参照。

■トラック隊列走行に関する取り組み

ソフトバンクは2017年、総務省の「高速移動時において1ms(1000分の1秒)の低遅延通信を可能とする第5世代移動通信システムの技術的条件等に関する調査検討」を受け、SBドライブ(現BOLDLY)や自動運転技術を開発する先進モビリティと連携し、5Gを活用したトラックの隊列走行や車両の遠隔監視・遠隔操作の実証実験に着手した。

2018年3月には、時速50~90キロで走行中のトラックと5G実験基地局間における信号伝送の実証で、無線区間(片道)の遅延時間が1ms以下となる低遅延通信に成功したことを発表している。

2019年には、5Gの新たな無線方式(5G-NR)の無線伝送技術に基づく車両間直接通信の屋外フィールド通信試験で、無線区間の遅延時間が1ms以下となる低遅延通信に世界で初めて成功したほか、5G-NRを活用し高速道路を隊列走行するトラック車両間で車間距離の自動制御を行うことにも成功している。

技術はさらに進展し、2020年3月には、時速約80キロで走行する3台のトラック車両間で、車間距離10メートルで後続車両の自動運転を行うことにも成功している。

「官民ITS構想ロードマップ2020」によると、トラックの隊列走行は後続車有人が2021年、後続車無人が2022年以降の市場化を期待されている。特に後続車有人はまもなく商業化を見据えた動きが始まる見込みだ。こうした新たな市場化の鍵を、ソフトバンクの通信技術が支えているのだ。

【参考】トラック隊列走行の取り組みについては「ソフトバンク、5G-NRでトラック隊列走行に成功 後続は自動運転」も参照。

■高精度3次元地図の作成に関する実証を実施

ソフトバンクとダイナミックマップ基盤は2019年1月、高精度3次元地図・ダイナミックマップに関する実証実験を行い、測定データをMECサーバー上で処理し逐次解析する技術を検証した。

MECサーバーは「Multi-access Edge Computing」の略で、端末から近い場所にデータ処理機能を配備することで、通信の最適化や高速化を図る技術。この技術を活用し、高精度3次元地図製作用の車両が取得した3次元情報をリアルタイムで解析することで、遮蔽物などにより正確に測定できなかった地図情報を走行中の車両内や遠隔地で準リアルタイムに確認することができたという。

未測定箇所をすぐに特定できるため、高精度3次元地図の測量作業を効率的に進めることが可能になる。実証は4G環境で実施したが、今後5Gを活用することで、いっそうのリアルタイム性の向上などが期待できるとしている。

ダイナミックマップは高精度3次元地図にさまざまな動的情報などをレイヤーした構造で、リアルタイムで情報を更新し続ける必要があるため、高度な通信技術が必要となる。一方、自動運転車もセンサーが取得した膨大なデータをリアルタイムで処理しながら走行するため、各車両で一定のデータ処理を行うエッジコンピューティングに注目が集まっている。

【参考】ダイナミックマップについては「【最新版】ダイナミックマップとは? 自動運転とどう関係? 意味や機能は?」も参照。エッジコンピューティングについては「自動運転に必須の「エッジAI」とは?」も参照。

■高精度測位サービス「ichimill」:誤差数センチメートルの測位が可能

RTK測位により誤差数センチメートルの測位を可能にするサービス「ichimill(イチミル)」も開始している。ソフトバンクの基地局を活用することでRTK測位に必要となる独自基準点を全国3300カ所以上に設置し、GNSS(全球測位衛星システム)の精度を高めるサービスだ。

全国に高密度で基準点を配備することで、短時間で安定した測位とハンドオーバーを実現しており、基準点をまたぐような長距離移動においても継続した高精度測位を可能にしている。農業や建設現場などへの導入のほか、自動運転への応用にも期待される測位サービスだ。

■自動運転制御に関わる合流時車両支援の取り組み

ソフトバンクは2019年から5GやセルラーV2X(Vehicle-to-X/Vehicle-to-Everything)通信システムを活用した安全運転支援や自動運転制御に関わるユースケースの共同研究をSUBARUと進めている。2020年8月には、自動運転車が高速道路などの合流をスムーズに行う実地検証に成功したことを発表している。

実証は、SUBARUのテストコースに可搬型5G設備「おでかけ5G」やichimillを導入し、①自動運転車が合流路から本線車道へスムーズに合流すること②渋滞などにより本線車道を走行する車両間に合流可能なスペースがない場合に自動運転車がスムーズに合流する――といった2つのユースケースを想定して実施した。

車両の各種情報を5Gネットワーク経由でMECサーバーに伝送し、MECサーバー側で得られた車両情報を用いて、自動運転車が本線走行中の車両に衝突する可能性を予測計算し、適切に制御する仕組みや、本線車道に接近した自動運転車から本線車道を走行している車両に進入要求や減速指示を含むメッセージを送信する。最適な位置関係になるよう制御計算を行う検証を行い、いずれもスムーズな合流に成功している。

【参考】SUBARUとの取り組みについては「ソフトバンクとスバル、自動運転で「世界初」の成功!どんな内容?」も参照。

■5Gを活用した車両の遠隔運転に関する取り組み

総務省の事業「高速移動時において無線区間1ms、End-to-Endで10msの低遅延かつ高信頼な通信を可能とする第5世代移動通信システムの技術的条件等に関する調査検討」のもと、ソフトバンクは通信事業者Wireless City Planningとともに5Gを活用した車両の遠隔運転の応用事例に関するフィールド実証実験を2020年3月に実施した。

実証では、福岡県北九州市と北九州産業学術推進機構の支援のもと、5G無線端末を遠隔運転車両と遠隔操作センターに取り付け、5Gの応用事例として災害発生後の二次災害発生の抑制を目的に「遠隔運転による放置車両の撤去」のデモを行った。そのほか、模擬交通管制システムから信号制御機まで5Gで信号情報を送信し、信号灯器を閃光信号状態にする実験や、交差点に設置したカメラで車両を検出し、遠隔運転車両に対し交差点の危険情報を通知する実験を行った。

■BRTにおける自動運転バスの取り組み

BRT(バス高速輸送システム)における自動運転バスの開発に向けては、JR各社とそれぞれ取り組んでいる。

2018年度からはJR東日本が主催するモビリティ変革コンソーシアムにおいて「JR東日本管内のBRTにおけるバス自動運転の技術実証」を進めており、この中でソフトバンクはGNSS受信機の設置や車両のRTK測位など位置情報・測位に関する技術を提供している。

一方、2020年3月には、JR西日本と自動運転と隊列走行技術を用いたBRTの開発プロジェクトを開始することを発表した。

「みんな(MI-NNA)の自動運転BRTプロジェクト」と題し、JR西日本が保有する用地内にテストコースを設け、異なる自動運転車両が隊列走行する技術開発を進めている。

■【まとめ】自動運転の根幹をなす通信技術 さらなる躍進に期待

自動運転分野において、ソフトバンクは非常に多岐に渡る取り組みを行っていることがわかった。自動運転車は、センサーデータをはじめ位置情報や交通情報、車両情報など膨大なデータを収集・解析しながら走行するが、こうした各種データをやり取りするには通信技術が必須となる。ソフトバンクは、この通信技術を武器に自動運転分野の進展に大きく関わっているのだ。

一方、見方を変えると、通信技術は他の技術やサービスと結びつくことで本領を発揮する。ソフトバンクグループが形成しつつある自動運転ネットワークの各社とこの通信技術が融合することで、ビジネスとしてもサービスとしても可能性が大きく広がることは間違いない。今後のさらなる躍進に期待だ。

>> 特集目次

>> 主力の通信・投資事業で変革!

>> MaaS実証加速、自治体との連携も

>> ビジョンファンド、注目の投資先は!?

>> 莫大な投資利益の可能性!自動搬送宅配ロボットを開発するNuroの全貌

>> 強みの「通信」で隊列走行も成功!

>> 自動運転バスの実証国内最多!BOLDLYの全貌

>> Pepperに続くロボティクス事業の全貌

>> Armが自動運転で存在感!SBGの「救世主」になるのか

>> 【過去特集】孫正義の事業観(1)「馬鹿な国」発言はポジショントークか

>> 【過去特集】孫正義の事業観(2)「通信+α」事業に巨額投資でシフトへ

>> 【過去特集】孫正義の事業観(3)中国・滴滴出行との記者会見の全貌

>> 【過去特集】孫正義の事業観(4)譲った経営権、米国5Gと孫社長

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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