自動運転技術、大田区の企業が「テスラ級」目前

Turing山本氏「FSDが視野」



出典:Turing公式サイト

市街地でもハンズオフ運転が可能なレベル2++技術で他メーカーを圧倒するテスラ。オールド系自動車メーカーはもはや太刀打ちできないほど技術開発力に差が生じている感を受ける。

そんなテスラに自前の技術で近付こうとする企業が、東京都大田区に存在する。平和島に本社を構えるTuring(チューリング)だ。同社創業者兼CEOの山本一成氏は9月9日、SNS「X」に「FSDが視野に入り始めている」旨投稿した。


世界的にはまだまだ無名のスタートアップだが、その技術は着実に前進し、テスラとの差をじわりじわりと埋めつつあるようだ。

Turingとはどのような会社なのか、その全貌に迫る。

編集部おすすめサービス<PR>
自動車保険 スクエアbang!(一括見積もり)
「最も安い」自動車保険を選べる!見直すなら今!
新車定額!リースナブル(車のカーリース)
お好きな車が月1万円台!頭金・初期費用なし!
車業界への転職はパソナで!(転職エージェント)
転職後の平均年収837〜1,015万円!今すぐ無料登録を
タクシーアプリは「DiDi」(配車アプリ)
クーポン超充実!「無料」のチャンスも!
編集部おすすめサービス<PR>
スクエアbang!
「最も安い」自動車保険を提案!
リースナブル
新車が月々2万円から!
パソナキャリア
転職後の平均年収837〜1,015万円
タクシーアプリDiDi
クーポンが充実!「乗車無料」チャンス
ジェイエイシーリクルートメント

■Turingの概要

山本氏「FSD視野に」

出典:Turing公式サイト

山本氏は9月9日、Xに「チューリングの自動運転、ここにきて更にレベルが上がっている。FSDが視野に入り始めてきている」――と投稿した。自社技術が向上し、FSDを目視できる位置まで達したようだ。

8月に設立5周年を迎えたばかりで、2010年代に本格的に開発に着手したテスラからは周回遅れのスタートだったにもかかわらず、早くも現行FSDを視認できる位置まで追い上げたようだ。テスラ自身、相当な速度で進化し続けているが、このテスラとの差を埋めているのだ。


テスラのFSDは、高速道路・一般道路問わず広範なハンズオフ運転を実現するレベル2++に達しており、これは大手自動車メーカーが太刀打ちできない水準と言える。

現在、この域に達しているのは中国の新興EVメーカーとスタートアップ系のみで、自前の技術では、トヨタホンダもメルセデス・ベンツもBMWも未踏の状況だ。

レベル2++相当の走行動画も

別の投稿では、込み入った一般道路や、大雨の中を走行する様子を収めた動画も公開している。それぞれ、「チューリングの自動運転AI、空気を読みながら運転して上手!」「大雨の中、マップに従って工事現場の間を縫うように、チューリングの自動運転がカメラだけで走っています☔️」――と記載している。

一方、YouTubeでは、東京、名古屋、大阪、福岡、広島の5都市を走行する様子を収めたダイジェスト版も公開されている。


駐車車両が多い片側一車線の狭い道路で、対向車の接近状況を踏まえながら駐車車両や歩行者などを避け、よどみなく走行する様子や、視界の悪い大雨の中、幹線を走り抜ける様子、東京で学習したE2Eモデルで異なる道路環境の他都市を破綻することなく走行する様子などが確認できる。

こうした動画を見る限り、もはやFSDと遜色ない水準に達しているのでは……と言うのが正直な感想だ。走行中、手動介入が発生したのか、まったく発生せず自動運転を完遂したのか……など気になるところだが、レベル2++として見れば、及第点を軽く超えているのではないだろうか。

自動運転に向けては、どこまで完成度を高め、突き詰めていくかが問われる。通常走行の大部分をクリアすれば一見完成度は高まったように思われるが、1万キロ、10万キロに一度遭遇するようなレアケースにいかに対応できるかが自動運転の肝となる。

第三者目線ではFSDなどとの単純比較はできないが、Turingの技術が相当な水準に達していることに疑いの余地はないだろう。

WayveやMomentaクラスに迫る?

英Wayveや中国Momentaと比較すると、Turingの現在地を把握しやすいかもしれない。WayveはTuringより4年早い2017年創業で、E2Eに早期注目して開発を進めてきたスタートアップだ。Momentaは5年早い2016年に創業された。

両社とも、ロボタクシーなどの自動運転サービスを対象としたレベル4~5相当の開発とともに、自動車メーカー向けのADAS開発にも力を入れているのが特徴だ。

自動車メーカーにレベル2~レベル2++ソリューションを提供することでビジネス性を高めるとともに、より多くのデータを収集することで自動運転開発を加速していく事業戦略だ。

Wayveは日産やステランティスとパートナーシップを結んでおり、日産は2027年にもWayveのE2E技術を活用したレベル2++相当の新型プロパイロットの実装を開始する計画だ。Momentaは中国トヨタと手を組み、同市場向けの「bZ3X(鉑智3X)」に一般道路に対応した「NOA(Navigation on Autopilot)」機能を搭載している。

Turingに話を戻すと、同社の技術がテスラのFSDを視野に収めた……ということは、レベル2++を視野に収めたと言い換えることができる。つまり、先行する有力スタートアップのWayveやMomentaに限りなく近い技術水準に達しつつある……と言えるのではないだろうか。

これまで、先行する海外開発勢に本気で迫る日本企業は存在しなかった。日本では、長らく自動運転バスの開発が優先され、汎用性の高い自動運転タクシーの開発は後回しにされてきた印象が強い。特定ルートかつモデルベース特化型だったのだ。それゆえ、先行勢との差は広がる一方だった。

しかし、Turing然り、ティアフォー然りで、E2E技術に焦点を当てた開発が近年大きく前進し始めた。その国内急先鋒がTuringであり、海外有力勢に迫る勢いで技術を向上させている……ということだ。

なお、今のところTuringは自動車メーカー向けにレベル2++ソリューションを提供していく考えはないようだ。行き着く先はあくまでレベル5であり、その過程として現行FSDを視野に収めた……という段階だ。

設立当初から一貫してE2E開発

Turingは、「We Overtake Tesla(テスラを超える)」を合言葉に設立当初から一貫してE2E開発を進めている。

AIが交通システムの全体像を理解し、自動運転車は人間のドライバーよりも優れた意思決定を行う――という未来を確信し、その可能性に掛けたのだ。

開発においては、「シンプルさ」にもこだわる。カメラのみのセンサー構成で、単一のニューラルネットワークが直接運転判断を行うアプローチだ。

従来の自動運転は、カメラに加えミリ波レーダーLiDARなどを備え、高精度3次元地図を整備するなどあらゆる手段で確実性を高めるものがスタンダードだったが、Turingの自動運転システムは、カメラからの入力情報をもとにAIが認識・判断・制御に至る全行程をワンストップで行うイメージだ。

LiDARや高精度3次元地図といった各要素が安全性に寄与することは間違いないが、システムが複雑化するため全体最適化を図る負担は大きく、コストもかかる。しかし、AIが進化すればこうしたものに頼ることなく、効率的に安全性を高めることができる……という視点だ。

マルチモーダル生成AIや世界モデルも開発

Turingによると、その実現のカギは、世界を理解し、予測する能力を持つ生成AIにあるという。生成AIは膨大なデータを学習してリアルタイムで最適な意思決定を行うが、Turingが開発を進める生成AIは、単なる道路上の状況だけでなく社会全体の動向や予測不可能な事象にも対応できるよう設計しているという。

人間のドライバーが現実世界の状況を理解し、予測して行動するのと同様の能力を持ってこそ自動運転が可能になる……ということだ。

自動運転向けの国産LLM(大規模言語モデル)の開発を皮切りに、マルチモーダル生成AI「Heron」、自動運転向けの生成世界モデル「Terra」、画像から得た運転環境を自然言語で詳細に説明し経路計画を生成可能な自動運転向けVLAモデルデータセット「CoVLA Dataset」などを開発している。

2026年3月には、VLAモデルによる国内初のリアルタイム制御・公道走行を実現したと発表している。米国・中国勢に周回遅れと言われる日本だが、この構図をひっくり返すポテンシャルをTuringは有しているのかもしれない。

新卒に「破格の年収2000万」!?東京の自動運転ベンチャー

■【まとめ】周回遅れの日本をけん引する存在に

Turingは2030年を目標に完全自動運転車の開発・実装を目指している。設立当時の2021年時点では、その野望を無謀と受け取る層も少なくなかったかのように思われるが、この5年でAIを取り巻く環境は大きく変わった。Turingは、こうしたAI時代をしっかり見据えていたのだろう。無謀という声は今では希望に変わりつつある。

国内自動運転業界における麒麟児が、周回遅れの日本をけん引する存在になる日もそう遠くない将来訪れるのかもしれない。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事