国交省の自動運転担当「テスラの運転経験ナシ」 猪瀬氏が指摘

サイバーキャブに反応し、役人鼓舞



出典:Wikipedia

EV大手テスラが、ついにロボタクシー専用車両「Cybercab(サイバーキャブ)」の運用をテキサス州オースティンで開始した。SNSでもさっそくひろゆき氏ら著名人のアンテナに引っ掛かり、各所で話題となっている。

政界では、テスラ好きで知られる参議院議員の猪瀬直樹氏が反応した。猪瀬氏は役人に噛みつき、「自動運転タクシーに乗って来い」と指示したという。……どういうことなのか。


テスラの動向、そして猪瀬氏の真意を探ってみた。

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■猪瀬氏の発言概要

EVや自動運転にたびたび言及

猪瀬氏は9月10日、歩行者の飛び出しを検知して急停止するサイバーキャブの動画をピックアップし、SNS「X」に以下の投稿を行った。

「残念ながらテスラに乗っている国会議員は僕しかいない。だからEVとSDVについてイロハのイすらわからない。役人も同じ。本日、国土交通省の自動運転の担当部署に説明に来てもらったが、テスラを運転したこともないからこういう動画を見せてもポカンとしている。すぐにでもアメリカ中国へ出張して自動運転タクシーに乗って来い、と指示した」

同氏のアカウントを追ってみると、モビリティ関連の投稿が目立つことがわかった。

  • 「テスラの自動運転タクシー、日本のメーカーしっかりしろよ、というしかない」(9月9日)
  • 「日本だとこれが福祉やってますというやたらにダサいデザインになってしまう。ファミリーカーのような車体の上にでかいカメラを乗っけて」(9月4日/サイバーキャブ関連の投稿を受けて)
  • 「日本には未来がやって来ないのか? 若者よ、未来への侵犯者たれ!」「そもそもこういうのがカッコいいと思う感覚(未来への感度)がなければ話にならないよね。」(9月3日/サイバーキャブ関連の投稿を受けて)
  • 「自動運転で中国やアメリカのほうが全然進んでいる。『昭和16年夏の敗戦』に記したようにこちらには大和魂がある、なんて言い張っていても現実はそうではない。彼我の実力差を認めるところからしか挽回はできない」(8月28日)
  • 「なぜかEVについて書くと乗ったこともなくろくに知らないくせに、わーッと否定の叫び声が溢れる。戦前の反米がいまの反中国なのだろう。中国のEVは激しい技術競争のなかで淘汰され進化している。内燃機関に関わる部品メーカーのしがらみがなく更地からスタートしたので一気に未来へ踏み込んでおり、自動運転のコモディティ化も視野に入れているのだ。日本はHVで時間稼ぎなどと言っているがもうリードタイムはほとんど残っていない」(8月25日)
  • 「EV(SDV)→自動運転(ながら運転)という流れが理解できないお役所。なぜなら霞ヶ関の公用車にはEVがほとんど採用されていないので肌感覚でわからないのです」(8月24日)

猪瀬氏は国会議員の中でも指折りの「EV推し」で、SDV化や自動運転化も推進している。愛車についても8月26日に言及している。


  • 「乗っていますよ。上海製のテスラモデル3に。6年間、故障なし。バッテリーの劣化は航続距離に対してわずか2%。バッテリーは中国製CATLです。自宅充電(設備は20万円程度)なのでコストはガソリン代の半分以下」
  • EVや自動運転の話題となると、中国メーカーや中国技術が取り上げられることも少なくない。その度に「嫌中国派」が湧いてきて同技術を揶揄するが、猪瀬氏はその点については偏見を持たず、公正に評価しているようだ。

国会議員も役人も勉強不足?

さて、最初の投稿に戻ろう。「国会議員の中でテスラに乗っているのは自分のみで、EVやSDVを理解していない議員が多い。役人も同様で、国土交通省の自動運転担当職員もテスラを運転したことがないため、サイバーキャブの動画を見せてもポカンとしている。すぐにアメリカや中国へ出張して自動運転タクシーに乗って来いと指示した」といった内容だ。

国会議員においては、猪瀬氏と同じ日本維新の会参議院議員の佐々木りえ氏も乗っているようだ。他にもいそうだが、「高級外車」の印象を受けるため、それを公言する議員は少ないものと思われる。

また、テスラに乗っておらずとも、EVやSDVに精通していそうな若手議員らもいる。まあ、国会議員総体としては、猪瀬氏の言う通りかもしれない。

国交省職員はどうか。さすがにテスラ経験者はいるものと思われるが、呼び出された担当職員は未経験だったのだろう。ただし、日本国内においてFSDは未実装のため、テスラを所有していたとしてもそれはAutopilot水準となる。

ロボタクシーについても、当該職員は未経験だったのかもしれないが、同省としては過去視察を行っているはずだ。

2025年9月には、中野洋昌国交大臣(当時)が国際民間航空機関(ICAO)総会に出席するためカナダ・米国を訪問しており、合わせて自動運転技術の視察・試乗も実施している。物流・自動車局長も随行しており、おそらく関係職員も同伴しているものと推測される。

EV、SDV、自動運転社会の早期実装を……

それ以前にも、調査のため国交省職員が現地視察を行っている可能性は高いと思われるが、猪瀬氏としては「もっと温度を上げろ!!」ということなのだろう。

猪瀬氏自身がFSDやロボタクシーを体験したことがあるのかどうかはわからないが、こうした最先端技術を担当職員もいち早く体験・共有し、国内実装に弾みを付けろ……と言いたいのだろう。

ひろゆき氏や堀江氏もサイバーキャブをピックアップ

サイバーキャブに対しては、著名人も即座に反応している。ひろゆき氏は、「運転手の居ないタクシー、サイバーキャブ。人間の運転手は居ないので、バックミラーが無く後部にガラス窓がない。サイドミラーも無い。人間の視界で死角になる部分を気にしなくていい。人間の制約を排除して車体剛性を高められる。
構造的には人間のタクシーより安全な車体」とXに投稿した。堀江貴文氏は、YouTubeに解説動画をアップしている。

オースティンでも、さっそく「乗ってみた」系の体験談や、「見かけた」系の話題がSNSに数多くアップされている。わざと車両の前に飛び出し、その挙動を探るものも多い。

■サイバーキャブの概要

2024年発表の自動運転専用車

テスラは2024年、自動運転専用に設計されたサイバーキャブを大々的に発表した。手動運転を前提とせず、ハンドルなどの装置を備えない新規格の2人乗り自動運転車両だ。

イーロン・マスク氏によると、その生産コストは約1.8万ドル程度に抑えられるという。過去、マスク氏は「販売価格は3万ドル(約430万円)未満に設定する」「おそらくWaymo車のコストの20〜25%程度で済む」「WaymoはCybercabより10〜20倍のコストがかかる」など発言しており、ローコスト化にも大きな注目が集まる、まさに新時代の自動車だ。

このサイバーキャブの実装を見据え、テスラは2025年6月、特別なFSDを搭載した「モデルY」によるロボタクシーサービスをオースティンで開始した。大半はセーフティドライバーが同乗する実質レベル3相当のスタイルだが、2026年に入ってからはドライバーレス車両の導入も進めている。

並行して、自動運転専用に設計されたサイバーキャブの量産化も進めており、ここに来てデビューを果たした格好だ。

新規格車はZooxが先鞭

こうした新規格・専用設計車両のロボタクシーは、テスラが世界初ではない。アマゾン傘下Zooxが2025年9月にネバダ州ラスベガスでサービスを開始しており、現在サンフランシスコでもアーリーライダー向けサービスを行っている。

新規格ゆえの問題もある。既存の保安基準(連邦自動車安全基準/FMVSS)を満たしていないため、Zooxは米運輸省国家道路交通安全局(NHTSA)から「待った」をかけられた経緯がある。最終的に適用除外制度を流用する形で許認可を得て限定的な商用運行の道を切り拓いた。

一方、テスラは自己認証のみで運行を開始しており、早くもNHTSAの監査対象となった。協議は平行線をたどる可能性が高い。ただ、NHTSAもFMVSS改正案を示しており、近く新規格車両の実装に新たな道が拓かれる見通しだ。

自動運転技術の水準とは別に、こうした観点の動向にもしっかりと注目したいところだ。

【参考】関連記事「Amazonが「自動車製造」部門を立ち上げ」も参照。

Amazonが「自動車製造」部門を立ち上げ

■【まとめ】米中先行勢との差は今なお開き続けている

猪瀬氏の物言いはやや乱暴だが、政治家はもっとアンテナを張り巡らせ、ロボタクシーの技術水準やサービス動向などの実態をよく知るべきである。世論として、未だに「中国は~」「万が一の責任が~」「安全性が~」といった主張が一定数みられるが、こうした意見を突っ切ってでも開発と実装を推し進めなければ、未来のモビリティ産業において取り返しのつかない遅れを被りかねない。

米中先行勢との差は今なお開き続けていることを自覚し、新たな一手・さらなる一手を模索すべきと思われる。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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