ついに自動運転に「巨額の孫マネー」流入か!英Wayveに大興奮

孫会長は未来図をどう描く?



出典:ソフトバンク公式プレスリリース

ソフトバンクグループをけん引する孫正義会長がこのほど、投資先の英Wayve Technologies(ウェイブテクノロジーズ)の自動運転車を体験したようだ。孫会長は、AI主体のエンドツーエンドモデルの自動運転に好感を持ち、大興奮している様子だ。

さまざまな分野でAIによるゲームチェンジを目論む孫会長の目には、市場規模の大きいモビリティ分野の伸びしろがより鮮明に映ったのではないだろうか。もしかしたら、ソフトバンクグループによる自動運転分野への本格的な投資がまもなく始まるかもしれない。


Wayveの概要とともに、ソフトバンクグループ×自動運転の状況をまとめてみた。

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■Wayve×ソフトバンクグループ

アレックスCEOのもとWayveの自動運転車を体験

日経新聞によると、孫会長は東京都内でWayveの自動運転システムを搭載した車両を体験した。運転席にはWayveのAlex Kendall(アレックス・ケンドル) CEOが乗っており、実質レベル2で約1時間走行したようだ。体験の様子は日経新聞がYouTube上で公開しているので、ぜひ参照してほしい。

駐停車された車両を追い抜く際、反対車線に少しはみ出してスムーズにかわす様子を見て「上手に判断していますね。ファンタスティック」と評価。歩行者が多く道幅が狭い道路なども無事に通過し、「1回もハンドルを触ることなくずっと行けましたね」とご満悦の様子だ。

孫会長は「自動運転バスのように決められた通りだけで、道にいろいろなセンサーを取り付けて走るのはまったく古いやり方。それだといろんなところに行けない。特別な車線を決めつけるのではなく、好きなところに好きなように運転できる。これがあるべき姿」と話した。


インタビューでは、「最終的に自動運転は交通事故を限りなくゼロに近づけていく」とし、「スティーブ・ジョブズはスマートフォンで電話に200年に1回の革新をもたらした。アレックスはスマートカーで自動車に200年に1回の革新をもたらす」とWayveを持ち上げた。

記者からの「Wayveや自動運転への投資を拡大していく?」との問いに対しては「機会を見て判断したいと思う」と述べた。

WayveのシリーズCをソフトバンクグループが主導

ソフトバンクグループは2024年、Wayveの総額10億5,000万ドル(約1,600億円)の資金調達Cラウンドを主導した。ラウンドにはNVIDIAとマイクロソフトも参加しており、後にUber Technologiesも参加している。


ソフトバンクグループによる出資額は明かされていないが、同年度、ソフトバンクグループと100%子会社は成長投資を目的に計2,585億3,100万円の投資(一部上場株式などへの投資を除く)を行っており、このうち最も投資額が多かったのがWayveとされている。

同年度の第4四半期に、投資ポートフォリオの再整理の一環としてSVF2へ移管されている。

■Wayveの概要

エンドツーエンドの自動運転システムを開発

Wayveは、ケンブリッジ大学の研究をスピンオフする形で2017年に設立されたスタートアップだ。創業者兼CEOを務めるアレックス氏は、ケンブリッジ大学での受賞歴のある研究をもとに、ディープラーニングを活用して自動運転の課題を解決する新しい手法を試みようと同社を設立した。

同社は、従来のルールベースに基づく自動運転システムをAV1.0、エンドツーエンドモデルをAV2.0と位置づけている。AV1.0は認識、計画、制御の各モジュールを個別に並列設計できる利点があるが、設計、適応、保守に莫大な費用がかかり、高価なハードウェアやHDマッピング、位置推定システムに依存する。これらの点を課題と捉え、早くからAV2.0の開発に取り組んでいる。

当初は、人間の運転を模倣することによる学習「模倣学習」に焦点を当てた。人間の運転データを収集し、その行動を模倣するよう機械学習モデルを訓練することで、特定ルート・エリアといった制限を付さない自由度の高い自動運転を実現するもので、2019年にはエンドツーエンドの学習運転システムを実証している。初めて走行する場所でも自律走行を可能にするモデル開発だ。

データは、自社の自動運転車をはじめ、パートナー車両の車載カメラ映像や車両以外のロボットからも取得している。

また、AIはインターネット上から直接知識を習得している。英国政府が公開した道路交通法のPDF文書をAIが読み、車両や道路、リスク、人間の価値観について学ぶほか、科学、数学、文学、倫理などより広範な情報も読み取っているという。これにより、AIは学習データをはるかに超えた概念を理解し、汎用的な知能を持つことが可能になるという。

ケンブリッジ大学Wayve、強化学習でAI自動運転車が20分で走行技能習得

生成AIも活用、E2Eモデル特有の不透明な判断根拠を明確化

2021年には、ロンドンで学習させた自動運転システムで他の5都市を走行する実証を行い、特別な調整を行うことなく走行することに成功したという。

2023年には、自動運転向けのAIモデル「LINGO-1」や自動運転向け生成AIモデル「GAIA-1」の技術レポートを公開した。

LINGO-1は視覚・言語・行動モデルで、運転シーンについて質問することで、運転環境のどの要因が運転の決定に影響を与えたかを明確にしたり説明したりすることができるという。エンドツーエンドモデルは、AI自らが学習を深めるため各シチュエーションに対するAIの判断基準がブラックボックス化しやすい。

なぜAIがそのような判断を下したかが不透明になりがちだが、LINGO-1はその課題を解決し、運転モデルの説明可能性を高めることができるという。

GAIA-1は、自動運転のための新たな生成AIモデルで、動画、テキスト、行動入力を活用してリアルな運転動画を生成するマルチモーダルアプローチで、現実世界の状況を忠実に再現した運転シミュレーション動画を作成することができる。

日産やS.RIDEとも協業

Wayveは、ソフトバンクグループ以外の日本企業との結びつきも強めている。日産は2025年4月、Wayveの技術を活用した次世代運転支援技術(ProPILOT)を2027年度から市販車に搭載すると発表した。

Wayve AI Driverと次世代LiDARを活用した日産のGround Truth Perception技術を組み合わせることで、最先端の衝突回避能力を備えた運転支援技術の新しい基準を確立するとしている。

Wayve AI Driverソフトウェアは、同社のEmbodied AIのファウンデーションモデルに基づき構築されており、人間のドライバーと同様に複雑な交通状況に対応するよう設計されている。周囲のすべての情報を包括的に把握し、次に起こることや自身の行動が及ぼす影響を予測する能力を持ち、熟練ドライバーのような周囲に調和した安全運転を実現するという。

高速な処理能力により急な状況の変化に直ちに対応できるように備えた安全運転を行う。大量のデータから効率的かつ迅速に学習する能力を持ち、将来にわたって日産車の高い競争力を実現することに期待しているようだ。

2025年5月には、タクシー配車サービスを手掛けるソニー系のS.RIDEとのパートナーシップも発表された。Wayveが開発する運転支援・自動運転向けAIモデルの学習用に、S.RIDEが日本の交通環境や運転特性などの公道データを収集する。

タクシー事業者のグリーンキャブが協力し、交差点や信号などの道路状況、車両や歩行者の動き、道路周辺の環境など幅広い交通シナリオのデータを収集する。

Turing、米Applied Intuition、ソニー・ホンダモビリティ、日本政策投資銀行、日本経済研究所、東京流通センターが2025年4月に立ち上げた平和島自動運転協議会にも、Wayveは参画している。

自動運転に関する実証を随時TRC構内で実施する団体で、WayveのほかNX総合研究所、住友商事、ダイナミックマッププラットフォーム、ティアフォー、トノックス、newmo、ピクセルインテリジェンス、マクニカ、三井住友海上火災保険も新たに参画を表明している。

Turingやティアフォーといった国内代表格の自動運転スタートアップとどのように協業していくのか、要注目だ。

【参考】平和島自動運転協議会については「トラックの一般道自動運転、日本初実装は東京都内の「人工島」濃厚」も参照。

トラックの一般道自動運転、日本初実装は東京都内の「人工島」濃厚

■ソフトバンクグループ×自動運転の動向

Aurora InnovationやNuroなどに投資

ソフトバンクグループの投資会社・ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)はこれまで、自動運転開発事業に関し売却済みを含め米Aurora InnovationCruiseNuro、Forterra、中国DiDi Autonomous Drivingに投資している。

Aurora Innovationは自動運転トラック自動運転タクシーの開発を手掛けており、自動運転トラックはテキサス州ダラス~ヒューストン間で商用輸送サービスを開始している。夜間における自律走行実証にも成功しており、2025年末までにテキサス州エルパソとアリゾナ州フェニックスにも無人配送サービスを拡大する計画だ。

自動運転タクシー分野では、Uber Technologiesやトヨタなどとパートナーシップを結んでおり、こちらの動向も気になるところだ。

CruiseはGM傘下として自動運転タクシーを商用化していた。サンフランシスコ、ロサンゼルスなど積極的にサービスエリアを拡大し、Waymoのライバルとして期待されたが、2023年に起こした人身事故をきっかけに開発は停滞し、2024年末にGMが事業停止を決定した。

なお、SVF出資分のすべてかは不明だが、2022年にGMがSVFが所有するクルーズ株を21億ドル(約2,500億円)で取得する発表を行っており、SVFとしてはしっかりと利益を確保している。

【参考】Cruise株については「孫氏、売却益12億ドルか 自動運転企業Cruiseの株式売却で」も参照。

Nuroは車道を走行する小型~中型の自動配送ロボットの開発を主力としており、近年は自動運転システム「Nuro Driver」をライセンス化し、自動運転タクシーなど自家用車の自動運転化ビジネスにも着手している。

現在、新興EVメーカーのLucid MotorsとUber Technologiesと手を組み、2026年にも自動運転配車車両を発売する計画を進めているようだ。

Forterraは、防衛分野をはじめとする戦場から物流センターまで自律走行可能な自動運転システム「AutoDrive」の開発を手掛けている。明確に道路が整備されていないオフロードでも自律走行を可能にする点がポイントだ。

DiDi Autonomous DrivingはDidi Chuxing(滴滴出行)からスピンオフした自動運転開発事業者で、2025年4月、広州汽車(GAC)・AIONと共同開発した量産対応可能な次世代レベル4ロボタクシーを発表している。2025年末までに量産・納入を開始する計画としている。

配車サービスをはじめモビリティ関連に広く投資

モビリティ関連ではこのほか、Uber Technologies、DiDi、Grab、Olaといった世界最大手クラスの配車プラットフォーマーに早くから投資している。

クロアチアのEVメーカーRimac、子ども向けのライドシェアサービスをはじめ契約輸送サービスを提供するZūm、AI とエッジコンピューティングによりドライビング評価やフリートマネジメントなどを行うプラットフォーム開発を進めるNetradyne、センサーとAIで運転リスクを分析・評価するソリューションを展開するCambridge Mobile Telematics、マイクロモビリティのシェアサービスを手掛けるDott など、幅広い領域に投資しているようだ。

【参考】ソフトバンクグループ×自動運転については「ソフトバンクの自動車・自動運転事業まとめ」も参照。

ソフトバンクの自動車・自動運転事業まとめ(2023年最新版)

Wayveはひときわ特別な存在に?

Aurora InnovationやNuroなど有力企業が名を連ねているが、これらの企業は基本的にルールベースに基づく自動運転開発企業だ。各社ともエンドツーエンドモデルの開発にも着手しているものと思われるが、先見的に取り組んできたWayveの存在感が今後飛躍的に増していく可能性が高い。

現状、Aurora Innovationなどの技術は局所的なものだが、Wayveの技術は原則走行エリアを限定しない。Wayveが開発を進めるエンドツーエンドモデルの実用化が始まれば、業界にゲームチェンジが起こるのは必至だ。

その意味で、ソフトバンクグループにおいてWayveは特別な存在となっていくのかもしれない。孫会長は自動運転分野への投資について「機会を見て判断する」と当たり障りなく回答したようだが、内心は、汎用性の高い自動運転技術が実用化された未来を明確に頭の中に描き、その時を見据え巨額投資を思案しているのではないだろうか。

■【まとめ】実サービス面の動きにも要注目

ソフトバンクグループとしては、投資以外にも自動運転実証・サービス運営事業を手掛けるBOLDLYや、May Mobilityとの協業、トヨタと設立したMONET Technologiesなど、多方面で動きを見せている。

未来を左右する投資のみならず、実サービス面においても今後どのような展開・ビジネス化を図っていくのか、要注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転、米国株・日本株の関連銘柄一覧」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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