ライドシェア無人化の衝撃!中国DiDi「自動運転車100万台」宣言

配車サービス大手が自動運転開発を加速



出典:DiDiプレスリリース

中国配車サービス大手のDidi Chuxing(滴滴出行:ディディチューシン)がこのほど、壮大な計画を発表したようだ。2030年までに100万台の自動運転車を導入する内容で、その用途は言わずもがな自動運転タクシーだろう。

この10年で大幅に市場を拡大したライドシェアサービスは、今後10年で自動運転車両への置き換えが進み、自動運転タクシーサービスと統合されていく可能性がある。DiDiの発表は、そんな将来を強く予感させる。







また、DiDiが将来導入する100万台をどの自動車メーカーが製造するのかも、今後は関心が高まっていきそうだ。DiDiの株主であるトヨタが提供することになるのか、それとも中国内資になるのか、はたまた欧米の大手メーカーが生産を受託するのか、気になるところだ。

この記事では、DiDiの配車サービス事業や自動運転戦略をおさらいし、自動運転タクシー業界の将来像に触れてみよう。ちなみにDiDiに関しては6月27日に上海で自動運転レベル4(高度運転自動化)の自動運転タクシーの試験サービスを開始したことも報道されている。

■DiDiの配車サービス事業

DiDiは2012年の設立以来、アプリを活用したタクシーやライドシェアの配車サービスで成長を遂げてきた。現在は、バイクシェアやカーシェア、フードデリバリーなどコンテンツの多角化を図りながら中国をはじめブラジル、チリ、コロンビア、メキシコの中南米各国、日本、オーストラリアの計1000都市以上でサービスを展開している。

ユーザー数は5億5000万人、登録ドライバー数は3000万人を超え、一日当たり3000万回、年間100億回以上のサービスを提供している。

2018年4月には、トヨタやルノー日産三菱アライアンスを含む世界各国の自動車業界パートナー31社と共に「洪流連盟(DiDi Auto Alliance、Dアライアンス)」を設立すると発表した。同社のプラットフォームを活用し、スマートモビリティの促進などを進めていく狙いで、自動車の販売やリース、ファイナンス、フリート運用、カーシェアをはじめ、業界標準の共同開発などを行っていく方針のようだ。

日本では、ソフトバンクと共同で2018年にDiDiモビリティジャパンを設立し、国内タクシー事業者と手を組んで同年9月からタクシー配車サービスを行っている。以後、対象エリアの拡大とともに事前確定運賃の導入やタクシー需要が高いと見込まれる場所をAIが提示する「DiDiヒートマップ」の提供、デジタルサイネージサービスの導入、フードデリバリーサービス「DiDi Food」の実証など、日本に見合ったサービス展開をいろいろと模索しているようだ。

2020年6月までに25都道府県でサービスを提供しており、堅調に事業拡大路線を歩んでいるものと思われていたが、同年7月1日から青森など11県の全地域、及び北海道と3県の一部地域でサービス提供を中止することを発表した。これにより、7月からのサービスエリアは14都道府県になる見込みだ。

また、7月13日から乗車ごとにアプリ利用料を徴収することも同時に発表している。それぞれ理由は公表しておらずさまざまな臆測を呼んでいるが、純粋な拡大路線から収益性を重視した事業体制へのシフトを進めている可能性が高そうだ。

■DiDiの自動運転戦略
ロボタクシー実用化に向け自動運転開発を加速

DiDiは早くからビッグデータやAIを活用するなど先端技術で配車サービスのスマート化を進めてきたが、自動運転分野への本格進出は2016年に差し掛かってからとなる。2016年に自動運転を研究開発する部門を立ち上げ、2017年には米国にAIをベースにセキュリティや自動運転技術を研究するDiDi Labsを設立した。

2018年には、米カリフォルニア州で自動運転車の公道試験走行の許可を取得した。カナダのトロントにもラボを立ち上げ、研究ネットワークを拡大している。

2019年には、カナダの深層学習研究機関Milaと提携を結んだほか、中国の広州汽車集団(GAC)と自動運転を含むスマート自動車の技術分野におけるパートナーシップの拡大に向けた契約を交わしている。

また、自動運転開発部門を独立してDiDi Autonomous Driving社を設立し、自社の研究開発を加速している。2019年8月には上海の嘉定区でロボタクシーサービスのパイロットプログラムに着手することを発表し、既に上海で自動運転タクシーの試験サービスを開始している。

2030年までに100万台の自動運転車を導入

2020年6月には、100万台以上の自動運転車両を2030年までに導入する計画であることを英メディアのBBCが報じている。BBCによると、COO(最高執行責任者)のMeng Xing氏が香港のメディアが主催するオンライン会議に出席し、計画について説明したという。

100万台の自動運転車と言えば、米EV大手のテスラが思い浮かぶ。テスラCEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク氏は2019年4月、本社で開催した技術説明会で、2020年中に100万台以上のロボタクシーを稼働させると発表した。

なお、2020年6月現在までに大きな進捗はなく、テスラの生産能力を考慮すると現実的な数字ではないことは明らかだ。恒例となったマスク氏による大風呂敷との見方が強い。

では、DiDiはどうか。自動車の生産能力に乏しいDiDiにおいても100万台は野心的な数字となるが、広州汽車集団やトヨタをはじめパートナーシップを結ぶ自動車メーカーは多い。また、2030年までの10年間の計画であることから、目標としては決して不可能な数字ではないものと思われる。

2020年5月には、ソフトバンク・ビジョン・ファンド主導のもとDiDi Autonomous Drivingの資金調達ラウンドが完了したことも発表されている。自動運転子会社として最初のラウンドでは、5億ドル(約535億円)超を調達した。

自動運転やV2X(Vehicle-to-Everything)システム、AI開発への投資の増加により、高度な研究開発への投資を継続することで安全性と効率を向上させていく。

また、独自の自動運転向けのテスト車両の開発に加え、プラットフォームから蓄積された輸送データを活用してシミュレーションテストを実行し、既存のフィールドテストデータ量を補完することで研究開発の効率を向上させ、アルゴリズムの開発速度を高めていく。

自動運転車の大量生産に向けては、グローバルな自動車産業パートナーとの協力をさらに深めていく予定としており、100万台の生産を担う自動車メーカーの行方にも今後注目が集まりそうだ。

【参考】DiDi Autonomous Drivingの資金調達については「Didiの自動運転子会社、ソフトバンクGなどから5億ドル資金調達」も参照。テスラのロボタクシー構想については「米テスラ、2020年に100万台規模で自動運転タクシー事業」も参照。

■自動運転開発に力を注ぐ配車プラットフォーマー

配車プラットフォームサービスを主力としつつも自動運転開発に力を注ぐ企業はDiDiだけではない。米Uber(ウーバー)やLyft(リフト)も自動運転タクシーの実用化に積極的だ。

ウーバーも早くから自社開発

ウーバーも早くから自動運転技術の自社開発を進めており、2019年には株式上場も果たしたほか、研究開発部門Advanced Technologies Group(ATG)の分社化も発表している。

空飛ぶクルマの開発も手掛けるなど先進的な取り組みが目立つが、2018年に自動運転車の試験走行で死亡事故を起こし、2020年3月まで公道実証を控えていた。

【参考】Uberの取り組みについては「Uber(ウーバー)の自動運転車を徹底解剖!LiDAR、カメラ…」も参照。

リフトはAptivと自動運転タクシーの実証実験

一方、リフトは米Aptiv(アプティブ/旧デルファイ・オートモーティブ)とパートナーシップを結び、2018年からラスベガスで自動運転タクシーの実証実験を行っている。2019年には累計乗車回数が5万回を突破したと発表しており、乗客からの評価も上々のようだ。

自社内における開発体制は明らかになっていないが、工場跡地を自動運転車の実証実験に活用していることなどが報じられており、アプティブ任せではないことを裏付けている。

配車プラットフォーマーは最有力候補

こうした配車プラットフォーマーは、自動運転タクシーの商用化において最有力候補となる。ドライバー不在の自動運転タクシーは「配車」への依存度を高めることになるため、配車システムとネットワークを確立し、顧客を確保しているこれらのプラットフォーマーは、大きな変更なく自動運転車両を導入することができるのだ。

DiDiの自動運転技術は未知数な部分も多く、今後本格化することが見込まれるパイロットサービスが試金石となることは間違いない。サービス実証の動向に注目だ。

■自動運転タクシー業界の動向

自動運転タクシー業界では、米グーグル系のWaymo(ウェイモ)が2018年に先陣を切る形で有償サービスを開始している。2019年にはセーフティドライバーなしの運行も達成しており、けん引役としての地位はしばらく揺るぎそうもない。

米国では自動車メーカー・GM(ゼネラルモーターズ)系のCruise(クルーズ)が2020年初頭に自動運転の実車となるモデル「Origin(オリジン)」を発表し、虎視眈々と商用化に向けた取り組みを加速させている。

中国系では、トヨタが出資するPony.aiやAutoX、WeRideなどスタートアップの成長が著しく、それぞれ米国や中国などで実証に着手している。

インターネット大手のBaidu(百度)もアポロ計画のもとレベル4車両の公道実証を本格化しており、生産体制の構築も進んでいるようだ。

実用実証においてはDiDiも含め各社ほぼ横並びの状況で、まもなく商用サービスを巡る戦国時代に突入する可能性が高い。

日本国内では、日産とDeNAが共同開発を進める「Easy Ride」やZMPのほか、ティアフォーら5社が自動運転タクシーの開発に乗り出したことを2019年11月に発表しており、第3勢力として期待が高まっている。

【参考】自動運転タクシー業界の動向については「自動運転タクシー、もはやGoogleだけにあらず!「実証」と言えど世界で定期運行続々」も参照。

■【まとめ】ライドシェアの行き着く先は自動運転 事業シフト進む

北米や中国、東南アジアなどを中心に大きな支持を集めるライドシェアサービスだが、継続的な先行投資の影響もあって収益面が追い付いていない感が強い。タクシーも同様だが、人件費率の高さがネックとなっているのだ。

ゆえにドライバーを無人化する自動運転タクシーの実用化は、配車サービスの中身を一変させるインパクトをもたらす。ライドシェアサービスなどの行き着く未来は自動運転社会にあるのだ。

今後、DiDiをはじめとした配車プラットフォーマーがどのように自動運転分野へ経営資源を集約していくのか。事業のシフトはすでに始まっており、自動車業界を巻き込んだ自動運転サービス合戦の火ぶたはまもなく切って落とされる見込みだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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