中国・百度、自動運転EV量産で4700億円の巨額収益!?オープンソースのアポロの市場化狙う

OEM獲得競争への序章始まる



出典:Daniel Cukier / Flickr (CC BY-ND 2.0)

中国IT大手の百度(バイドゥ)が、遅くとも2024年までに自動運転車を量産する予定であることを明かした。

ロビン・リーCEOが香港経済日報のインタビューに答えたもので、浙江吉利控股集団(Geely/ジーリー)と設立した合弁「集度汽車(Jidu Automobile)」がオリジナルブランドの自動運転車を市場に送り出す計画だ。







アポロ計画のもと中国の自動運転開発をリードする百度だが、自動運転技術の社会実装期を迎えた今、自らの事業のシフトチェンジが求められる段階に達したようだ。

■百度のアポロ計画
第一汽車や金龍客車が量産化スタート

百度は、自動運転開発に必須となるソフトウェアやクラウドサービス、ハードウェアプラットフォームなどをオープンソース化することで開発を促進するプロジェクト「Project Apollo(阿波羅)=アポロ計画」のもと、中国における自動運転開発を主導している。

プロジェクトには中国内をはじめ世界各国の自動車メーカーや部品メーカーらが集結し、アポロの自動運転システムを活用した車両の開発などを進めている。2021年4月時点で174の企業や自治体などがアポロプロジェクトのメンバーに名を連ねている。

オープンプラットフォームでは、HDマップやシミュレーション、セキュリティ、OTA、V2Xなどのクラウドサービスや、ローカリゼーションや知覚、予測、HMIなどのソフトウェア、カメラやLiDAR、HMIデバイスといったハードウェアなど、各種プラットフォームが提供されている。

すでに第一汽車集団がアポロを活用した自動運転タクシーの量産化を進め、公道で試験運用されているほか、二次電池式EV(電気自動車)の開発を手掛ける中国のウェルトマイスター(Weimar Motors)とも2019年に戦略的提携を交わし、量産モデルへのアポロレベル3およびレベル4ソリューションの実装を加速するとしている。

自動運転バスでは、金龍客車がアポロレベル4を搭載したミニバスを2018年に開発し、量産化を進めている。中国勢を中心に、じわりじわりとアポロ搭載車両の開発は進んでいる印象だ。

このほか、自動駐車システムやV2I、V2X、インテリジェントクラウドサービス、HMIや車載アプリなど、完成域に達した技術・サービスが続々と登場しているようだ。

アポロは次のステージへ

順風満帆に思われるアポロ計画だが、自動運転システムが一定の完成度に達し、実証から実用化へとステージが移行し始めている現在、戦略も次の段階にステップアップし、アポロの市場化を見据えた具体的な取り組みに着手しなければならない時が訪れている。

オープンソースによる事業展開は、開発を促進するとともに広く普及を促し、シェアを拡大することに意義がある。自動運転技術が一定レベルに達し、社会実装が本格化を迎える段階に達した今、百度はシェア獲得に向けた取り組みを加速しなければならないはずだ。

アポロプロジェクトには2021年4月時点でOEM 34社が加盟している。水面下でアポロの搭載を試行する動きは多数ありそうだが、第一汽車や金龍客車のように製品化・量産化を推し進める動きはまだまだ鈍い印象だ。各社の背中を押す何らかの材料が必要なのだ。

自動運転EVの完成形を自ら示しOEMを動かす

こうした状況下、Geelyとの合弁「集度汽車」による自動運転車の量産化は、各社の判断に大きな影響を及ぼす可能性が高い。

集度汽車は百度傘下の独立企業として自動車製造業界に新規参入する。Geelyの自動車設計と製造技術に頼る面も大きいが、百度が主体となってオリジナル車両を開発し、自ら完成された自動運転車を世に送り出すのだ。

第一汽車による自動運転タクシーなどもモデルケースとなるが、自ら次世代向けの自動運転EVの形を示すことで、高度な自動運転開発能力を持たないOEMや新興EV勢らに自動運転分野への道を指し示し、アポロ搭載を促すことが可能になる。

政府の影響力が強い中国では、「中国では中国のものを使う」という意識が働き、「自動運転システムはアポロ」というイメージを固定化することができれば主導権は絶対的なものとなりそうだ。

また、自動運転技術のみならず自動車製造に関する知識を吸収することで、さまざまなプラットフォーム(車体)へアポロを搭載するための技術にも磨きがかかり、応用力が生まれる。

さらには、製造技術を熟知することで、IT企業ならではの発想で将来製造現場にイノベーションをもたらすことも考えられる。後段で触れる台湾のFoxconnの取り組みに近いイメージだ。

中国の金融大手Huaxing Capitalは、アポロは2025年までに百度グループに280億元(約4700億円)の収益をもたらすと試算しているようだ。

【参考】百度の取り組みについては「中国・百度、自動運転の大本命に!吉利と最新EV車両製造へ」も参照。

■EVプラットフォーム「MIH」が競合?

台湾のFoxconn(フォックスコン)グループは、EV開発に向けたオープンプラットフォーム「MIH」を2020年に立ち上げた。アポロがソフトウェア主体であるのに対し、MIHはハードウェア関連の技術が多いイメージだが、オープンプラットフォームを武器に一大アライアンスを結成している点で共通する部分が多い。

MIHでは、日本のティアフォーが自動運転技術を提供する。エッジコンピューティング技術を有する台湾のADLINKと、英国・中国を拠点にミドルウェア開発を手掛けるAutoCoreの3社で自動運転システムの構築に協力していく方針だ。

ティアフォーは自動運転OS「Autoware」の標準化を推進する国際業界団体「The Autoware Foundation(AWF)」を2018年に設立しており、MIHにはAWFで参加している。Autowareもオープンソースソフトウェアとして世界各国での自動運転技術開発の促進と普及を図っており、MIH以上にアポロと競合する関係にあると言える。

今のところMIHとアポロに明確な接点はないが、中国のBYTONや米Fiskerといった新興EV勢をはじめ、GeelyもFoxconnとパートナーシップを交わすなど、OEMがすでにかぶり始めている。

特に、世界最大の市場で新興勢力も次々と台頭している中国マーケットを舞台に考えると、MIH(Autoware)とアポロの激突は必至の情勢で、ティアフォーにとってもアポロが大きな脅威となりそうだ。

■【まとめ】OEM獲得競争がまもなく本格化?

中国市場における「アポロ」VS.「MIH(Autoware)」という構図を例示したが、これは決して大げさな例えではない。数年以内に表面化するだろう出来事だ。

現在、自動運転開発は一定水準に達し社会実装期を迎えつつあり、実証含みで実用化を図る動きは世界で加速している。これまで、各社あるいは各グループが個別に自動運転開発を競っていたが、社会実装が本格化するとOEMをめぐる獲得競争も間違いなく本格化する。

こうした動きの兆候はすでに表れており、FCA(現ステランティス)やダイムラートラック、ボルボカーなどが、Waymoの自動運転システムを自車に搭載するためそれぞれ提携を交わしている。ここに自動運転システム開発プレイヤーが顔を揃えることで、OEMをめぐる獲得競争が表面化する。

MobileyeやGM Cruise、Aurora Innovationといった世界の実力派プレイヤーが、OEM獲得に向け本格的に動き出す時期は間近に迫っているのだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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