Foxconnの「MIH」とは?EVプラットフォーム、自動運転技術の統合も可能

600社以上が参加、自動運転技術はティアフォーが協力



出典:Foxconn公式サイト

CASE領域における業界のイノベーションが、EV(電気自動車)分野で熱気を帯び始めている。EV開発に向けたオープンプラットフォーム「MIH」を立ち上げた台湾・Foxconn(フォックスコン)グループが、業界地図を大きく更新しようとしているのだ。

iPhoneなどのApple製品の製造を一手に引き受けているEMS(電子機器受託生産)大手のFoxconnグループ。そんな同グループが展開するMIHの概要とともに、EV業界の動向に触れていこう。







■MIHの概要
EV製造にイノベーションを起こす

Foxconnは2020年10月、自社イベントHonHaiTechnology Dayにおいて「MIH」というEVソフトウェア・ハードウェアのオープンプラットフォームを発表し、EV分野への正式な参入を表明した。あらゆる分野から参加企業を募り、プラットフォームを介したアライアンスを結成してEV製造にイノベーションを起こす構えだ。

従来の自動車産業特有の開発コストの高さや開発期間の長さ、リソース不足という課題に対し、ハードウェア、ソフトウェアの技術をオープン化することで新しい自動車開発・製造の仕組みを構築していく。

将来の自動車はソフトウェアの更新により継続的にアップグレードされていく仕様となるが、ハードウェアとソフトウェアを分離することで開発サイクルを大幅に短縮することができる。

またプラットフォームを通じて開発者向けにテクノロジーやツールを提供することで自動車業界への参入障壁を低くし、より多くの開発者や企業がEV業界の開発に投資し、革新的なEVアプリケーションを製作できるようにする。

600社を超える参加企業

MIHプラットフォームには、2021年2月時点で600社を超える企業が参加している。

自動車関連では、プジョーやPSA中国法人、フォルクスワーゲントラック&バス、Polestar、オンセミコンダクター、Infineonなどが名を連ねているほか、AImotiveやDeepMap、BARAJA、OUSTER Udelvといった自動運転関連企業や、Microsoft、Arm、AWSといったテクノロジー企業、日本からはNTTなども参加しているようだ。

4つの特徴を持つプラットフォーム

MIHオープンプラットフォームは、以下の4点を特徴に挙げている。

  • ①柔軟にカスタマイズ可能なモジュール
  • ②軽量なワンピース成型
  • ③強力なEEAアーキテクチャ
  • ④自動運転技術

①では、ホイールベースや車高、バッテリーパック、シャーシサスペンションなどニーズに合わせて柔軟に対応可能で、主流となっているB~Eセグメントをカバーしている。これらのモジュラーキーコンポーネントは、技術の進化に伴いアップグレードできるため、常に競争力を維持できるとしている。

②では、一体型アルミ鋳造技術などをもとに車体の軽量設計を実現し、EVで重要視される航続距離の延長に貢献する。また、高度な制御安定性やロードノイズの低減技術も提供するとしている。

③では、従来シャーシと電源のマッチングが重視されていたプラットフォームの設計と開発において、今後はソフトウェア定義がトレンドになり、強力で信頼性の高いEEAアーキテクチャが自動車の機械構造と電子構造をシームレスに統合するとしている。

④では、プラットフォームに自動運転システムを統合できるオープン性と、開発者やパートナーと協力して高度な自動運転システムを実現する人間中心設計、安全性や快適性、手動操作のシミュレーションを考慮したモードを実現するとしている。

自動運転ではティアフォーが協力

フォックスコンは、バッテリーの急速充電や低温最適化技術といった自社の先端テクノロジーを公開していく方針だ。2024年には、商用全固体電池を発売することも発表している。現在普及しているリチウムイオン電池のように可燃性の高い電解液を用いず、また周囲の気温にも左右されにくい特性を持っており、EV向けバッテリーとして注目度が増しているようだ。

最新のハードウェアプラットフォームは、フォックスコンと台湾の自動車メーカー・裕隆汽車(ユーロン)が開発している。両社は2020年3月にパートナーシップを結び、共同開発に向け合弁を設立している。

一方、自動運転関連では、自動運転開発を手掛ける日本のティアフォーが活躍している。エッジコンピューティング技術を有する台湾のADLINKと、英国・中国に拠点を持つミドルウェア開発を手掛けるAutoCoreとともにアライアンスに加わり、自動運転システムの構築・提供に協力している。

3社は2020年7月までに自動運転車やロボットの開発に役立つ自動運転用ミドルウェアとアプリケーションのイノベーションを目指し提携を交わしており、台湾国内において自動運転実用化に向けた取り組みなども進めているようだ。

このほか、クラウドサービスを手掛けるAmazon Web Services(AWS)と協力し、車両ネットワーキングソフトウェアとハードウェアを統合していくことも発表している。将来的には、クラウドオープンプラットフォームの開発や運用、保守を含むMIHオープンプラットフォームの技術サポートを提供するとしている。

開発者ツール「EV Kit」は2021年前半に発売予定

第一弾となる開発者ツール「EV Kit」の技術仕様は2021年1月に公開された。2月に予約を開始し、4月に納品予定としている。最初のステップとしてオープンCANとともにドライブバイワイヤ制御技術を提供するという。

EVメーカーとの協業相次ぐ

今後MIHとどのように関わっていくかは明かされていないが、フォックスコンは2020年にFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)、2021年に入ってからも中国の浙江吉利控股集団(Geely Holdings)やEVメーカーのBYTON、米EVメーカーのFisker(フィスカー)と立て続けにパートナーシップを交わし、共同開発や製造を行っていくことを発表している。

今後のMIHのアライアンスにおいては、EVや自動運転関連のスタートアップの参加に要注目だ。生産能力を持たない新規参入組にとって、車体の製造工場の建設などは大きな壁となるが、新たな生産方式を構築していくフォックスコンの取り組みがこうした壁を壊していく可能性がある。

■EV業界におけるアライアンスの現状

EV開発を巡っては、自動車メーカー間などで共同開発を進める例は多いが、大規模なアライアンスやコンソーシアムが結成された前例はないとされている。

日本国内では、2017年にトヨタとデンソー、マツダがEVの共同技術開発に向け新会社を設立したが、2020年に開発に区切りをつけ、新会社も活動を停止している。

バッテリー関連では、日本総合研究所が2020年10月、車載電池のリユース・リサイクルの付加価値向上と循環構造の確立に必要となるデータ活用技術やビジネスモデルを研究する「BACEコンソーシアム(Battery Circular Ecosystemコンソーシアム)」の設立を発表している。

また、本田技研工業とヤマハ発動機、オーストリアのKTM、イタリアのPiaggioは2021年3月、電動二輪車などの普及を目的に交換式バッテリーコンソーシアムの創設に合意したと発表している。

一方、NTTや日立製作所などは2020年5月、計40事業者賛同のもと、電動業務用車両の普及を目的に「電動車活用推進コンソーシアム」の設立を発表している。

EVにおいてもバッテリーの小型化とともに交換方式が普及すれば利便性が大きく増す。規格化などを進める動きが今後加速する可能性がありそうだ。

■【まとめ】自動車業界の業界地図を一新する可能性も

自動運転分野でグーグル系Waymoや中国の百度らが活躍するように、EV分野においても今後テクノロジー企業が続々と参入を果たし、製造工程の変革をはじめとしたイノベーションを巻き起こす可能性が考えられる。その意味で、フォックスコンの取り組みは試金石となりそうだ。

一方、自動運転車もベースがEVとなり、コンピュータ化が著しく進行するため、同様のイノベーションが起こる可能性が高い。

自動車業界を大きく巻き込み、業界地図を一新するインパクトに発展することも考えられるため、今後の動向に要注目だ。

【参考】関連記事としては「Foxconnが将来、自動運転EVの「世界の工場」になる未来」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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