自動運転車での宅配サービス、実現までの8つのシナリオを解説!

法整備は?コストは?開発状況は?



出典:各社プレスリリースの画像などから作成

新型コロナウイルスの蔓延によって非接触サービスに注目が集まる昨今。期せずして自律走行が可能な無人配送ロボットへの期待が高まっている。

海外では、米国のStarship Technologies(スターシップ・テクノロジーズ)が実用実証の場を拡大するほか、米Amazon(アマゾン)や中国のJD.com(京東商城)といったEC大手も開発を本格化させている。







一方、出遅れ感のあった国内でも国が本腰を上げ、取り組みが大きく前進しようとしている。現在、国内の状況はどのようになっているのか。物流関係のロードマップを含め、実現に向けたシナリオを想定し、超えるべきハードルを浮き彫りにしてみよう。

【サービス紹介】自動運転ラボを運営する株式会社ストロボは、EC・宅配領域での自動運転技術の活用を支援する「自動運転宅配導入支援・PoC・実証実験コンサルティングサービス」を展開している。詳しくは「ストロボ、小売・飲食業の「無人宅配」導入を支援!自動運転技術で人手不足問題など解消」を参照。

■現在の物流業界の課題

物流業界においてはトラックドライバー不足の問題が既に顕在化しており、インターネット通販といったeコマースが拡大を続ける中、物流需要の増大に対応しきれない場面が散見し始めている。

厚生労働省の「労働力経済動向調査」によると、ドライバーが不足していると感じている企業の割合は増加傾向にあり、2017年では63%の企業が「不足」または「やや不足」と回答している。

また、若年ドライバーの減少とともに高齢化も顕著に進んでおり、配送・運転技術やノウハウの継承にも課題を抱えているのが現状だ。

ドライバーの労働待遇改善が喫緊の課題であり、その解決策の1つが自動運転車や配送ロボットの導入だ。後続車無人隊列走行でトラックが地方へ荷物を運び、無人自動運転車や配送ロボットがラストワンマイルを担うことで、ドライバー不足を解消していく筋道だ。

■物流関係の自動運転ロードマップ
物流全般のロードマップ

官民ITS構想・ロードマップ2020によると、高速道路におけるトラックの後続車有人隊列走行を2021年度まで、後続車無人隊列走行については2022年度以降、高速道路におけるトラックの自動運転を可能にするレベル4は2025年度以降を目途に、それぞれ市場化を期待している。

隊列走行の実証実験は2016年度から進められており、2019年度には半年間に及ぶ後続車無人システム(後続車有人状態)の長期実証も行っている。

2020年度に新東名高速道路での後続車無人隊列走行技術の実現を目指す方針で、その後、2022年度以降に東京大阪間の高速道路における長距離輸送などにおいて、後続車無人の隊列走行の商業化を目指すとしている。

また、隊列走行システムの早期商業化を進めるため、後続車無人に先立って2021年度までにより実用的な後続車有人隊列走行システムの商業化を目指す。その後、その成果を踏まえ、高度な車群維持機能などを備えた有人隊列走行システムの発展型を開発し、2023年度以降の商業化を目指す構えだ。

レベル4トラックは、自家用車におけるレベル4や隊列走行システムの技術などを応用するとともに、経済産業省において隊列走行システムも含む運行管理システムを検討し、高速道路での自動運転トラックについて2025年度以降の実現を目指す方針だ。

限定地域における無人自動運転配送サービスの実現に関しては、無人自動運転移動サービスの技術を応用する形で、2020年度以降に実現することを目指す。具体的には、過疎地域での中心地から集落拠点への往復輸送や、集落内における個別宅周回配送サービスなどを想定しており、その後、サービス対象やエリアの拡大を図っていく。

また、過疎地域においては2017年9月から一定の条件のもと貨客混載を可能とする許可基準の変更が行われており、自動運転車両による運送サービスが可能となった後には、この制度を活用し同一車両で旅客運送と貨物運送の両方を実施することも考えられるとしている。

ロードマップ2020から自動走行ロボットも明記

宅配ロボットに関しては、ロードマップ2019までほとんど触れられていなかったが、ロードマップ2020では、活用イメージとして物流営業拠点や小売り店舗などから住宅や消費者が指定する地点などへの配送、配送及び集荷の1台での実施、同一のロボットで異なる事業者の荷物の配送などを挙げ、実用化によって人材不足の解消や交通環境の向上、生産性の向上、消費者利得の向上などの効果が期待できるとしている。

社会実装の実現に向け2019年度には「自動走行ロボットを活用した配送の実現に向けた官民協議会」が設立され、ユースケースの確定や公道上での実証実験、ロードマップの策定などに向けた取り組みが進められている。

2020年5月の未来投資会議では、安倍晋三前首相から低速・小型の自動配送ロボットの早期実現を促す発言が飛び出し、同月に開催された官民協議会では公道走行実証環境の構築を2020年内に行うため、議論が加速した。

日本では、道路運送車両法や道路交通法において歩道を低速(時速6キロ以下)で走行する小型の無人自動配送ロボットが位置付けられておらず、このため公道実証が行われていなかったが、2020年4月に監視・操作者が近くでロボットを見ながら追従する近接監視・操作型に限り歩道走行を含めた公道実証の枠組みが整備された。

「自動運転車の実証実験に係る基準緩和認定制度」を踏まえて実験計画案を策定し、道路使用許可申請に当たっては円滑な道路使用許可に向け警察庁が都道府県警察と連絡調整を行う。

今後は、遠隔監視・操作型の公道走行実証を可能な限り早期実現を図っていく方針で、官民協議会は整理したビジョンやユースケースを踏まえさまざまなロボットの活用や非公道走行も視野に課題の整理やロードマップの策定検討、事業者による実証を加速させていくとしている。

【参考】配送ロボットに関する官民協議会については「首相が喝!自動運転配送ロボの公道実証「2020年、可能な限り早期に」」も参照。

■実現が遅れるシナリオ
宅配ロボの開発が遅れて実現が遅れる

自動運転技術を搭載した宅配ロボだが、主に道路を走行する自動運転車と異なり、より複雑な歩道なども走行するため、既存の自動運転技術を単純に応用できるとは限らない。

人や自転車、散歩中の犬猫までが行き交い、車道に比べ起伏が激しい箇所も多く、場所によっては障害物となるゴミも散乱しているようなさまざまな通路において、安全を確保しながら安定した走行を実現するのは、想像以上に厄介な問題だ。

また、ラストワンマイルを担う上で重要となる各戸などへの配送時、玄関をはじめとした敷地内の段差など、障害は千差万別だ。車道における自動運転同様、歩道を高精度3次元地図化する取り組みも進められる可能性が高いが、歩道のマッピングは車道以上に困難だ。

地図情報や位置情報をもとにどこまで対象者に近づけるか。場合によっては歩道上で立ち往生する可能性などもあり、こういったシミュレーションに時間を要する可能性も考えられるだろう。

開発コストが掛かりすぎることで遅れる

ドライバーに代わり、荷物などを配達する配送ロボ。実用化からしばらくの間は、採算が取れない可能性が高い。実証段階では大量生産するわけにもいかず、ロボットの単価は当然高価になりがちだが、実用化が始まる際も、どこまで低価格化が進むか見当がつかないものだ。

配送ロボに興味・関心を持つ運送業界も、前のめりの業者以外は価格が落ち着くまで静観する可能性がある。人件費を浮かせることができる部分と、導入に際し必要となるイニシャルコスト・ランニングコストなどを比較し、二の足を踏む可能性は十分考えられるだろう。

その結果、実用化は非常に限定された一部区域でスタートし、サービス範囲を拡大するまでに相当な時間を要することも想定される。

また、実用化後も、大きな段差を乗り越えられるモデルや、航続距離が長いモデル、天候に左右されにくいモデル、大きく重い荷物を運ぶことができるモデルなど、さまざまな課題に対応したロボットの開発コストはかさみ、コストダウンを実現するまで時間を要することも考えられる。

別の観点では、ロボットの開発・製造とともに配送プラットフォームを整備する必要が生じるが、各運送会社やロボットメーカーが開発するのか、あるいは別のプラットフォーマーが参入するのか。さまざまなケースが考えられるが、複数の運送業者の宅配業務を同一のロボットが担う可能性もある。

業界で足並みがそろわないと大変非効率な開発体制が敷かれることになり、汎用性を失った融通のきかないシステムが蔓延することも考えられる。

このプラットフォームの整備に業界としてどこまでコストをかけることができるか。利用者目線に立った利便性の高いプラットフォームが求められる。

法整備が進まないことで遅れる

配送ロボットをめぐる法整備は、やっと検討段階に入った状態だ。自動運転車と比べ走行速度も遅く小柄なため、一見ハードルが低そうに思えるが、車道以外のあらゆるところを走行する可能性があり、歩行者らとの接点が非常に高いため、意外と難航する可能性も考えられるだろう。

大事故にはつながりにくいが、小さな事故を起こしやすい環境にあり、安全確保を中心にどのようなルールを整備していくのか。自動走行ロボットに関する官民協議会の議論に注目が集まるところだ。

一例だが、電動2輪車のセグウェイや電動キックボードの類いは、道路交通法・道路運送車両法上の原動機付自転車に該当すると解されており、公道を走行する場合は前照灯や番号灯、方向指示器の設置など厳格な規制がしかれている。

なお、電動キックボードは一足早く公道実証が始まり、実証地域では特例措置として自転車専用通行帯を走行可能になるようだ。

人が乗るものではないにしろ、配送ロボットが公道を走行する上でも厳格な規制が定められた場合、普及スピードは格段に落ちる可能性が考えられる。

条例のしばりで実現が遅れる

より人間の生活の場に近いところで活躍することが予想される自立走行ロボットは、安全性の確保が最重要課題と言える。仮に法整備がなされ、一定のルールのもと実用可能な社会が到来したとしよう。それでも息を抜くことはできない。地域によっては、走行禁止処置がとられる可能性もあるからだ。

歩道を走行する配送ロボットが何らかの危険を察知し、立ち止まったとする。そこに、無邪気に走り回る子どもや自転車などが衝突して大けがをした場合、責任はどうなるだろうか。そして、世論はどのように傾くだろうか。

過失割合に関係なく、新参者であり血の通わないロボットを悪者とする風潮が広がる可能性は十分に考えられる。そして世論の形成とともに議会をはじめ自治体が動き出し、条例などによって配送ロボットの走行を著しく制限することもあるだろう。

こうした動きは伝播しやすく、必ずしも他地域に規制が広がるとは限らないが、大きな賛否両論を呼び、議論に一定の結論が出るまで配送ロボの稼働は消極的にならざるを得ない状況となるだろう。

こうした懸念は実際に現実として起こりやすいものだ。運用ガイドラインなどの策定段階でしっかりと揉む必要がある。

■実現が早まるシナリオ
宅配ロボの開発が進んで実現が早まる

海外では実用実証が本格している配送ロボット。技術的な問題はクリアしており、日本の企業もさまざまな場面で実証を行う環境が整えばすぐに追いつく可能性が高い。

海外諸国に比べ日本は狭い歩道が多く、日本特有の環境に適した技術開発が試されるところだが、細やかな配慮をもとに柔軟な技術で対応する開発力を持っている企業が多いのも特徴だ。

配送ロボットを含む自立走行ロボットの実現に向けた官民協議会が2019年度に始まり、公道での実証実験を行う環境が2020年内に整備される見込みだが、課題の抽出とともにそれを解決する技術開発も思いのほか早く進む可能性は高い。

ソフトバンクグループのリアライズ・モバイル・コミュニケーションズ株式会社などは2018年10月、北海道札幌市内の商店街で追従・自走式の配送ロボットを使った実証実験を行った。国内における公道では初めての試みだ。また、自動運転ベンチャーの株式会社ZMPは2019年1月、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス内で宅配ロボット「CarriRo Deli」を活用したコンビニ無人配送のサービス実証を行っている。

配送ロボットとしての基本的な技術はほぼ確立されており、あとは実証を通じてより多くの知見を集め、応用範囲を広げていく段階だ。法整備・運用ガイドラインの策定を前に、配送ロボットの技術開発は一定水準に達しているといえるだろう。

開発コストが比較的安く抑えられることで早まる

1,000万円超といわれる自動運転車は確かに高額かもしれない。商用ではなく自家用車として考えた場合、その価格はいっそう重たいものに感じるだろう。

では、配送ロボットはどうか。当然、自動運転車に比べれば格段に値は下がる。さらに、ドライバーに代わって稼働するため人件費の一部と相殺することが可能となり、導入はスムーズに進むかもしれない。

また、1つの集配拠点に複数台が導入されることや、定期的なメンテナンスの必要性なども考慮すると、リース形式がなじむかもしれない。イニシャルコストを抑えられるため、試験的な導入にも最適だ。

最大手クラスが一挙に導入を決めれば、生産コストも下がりいっそう価格は低下する。従来1人のドライバーが担っていた作業を複数台の配送ロボットでまかなうことを考えれば、必要とされる台数は相当な数に上ることが予想される。

海外で先行して実績を積み重ねたメーカーの進出も考えられ、確かな需要を背景に価格競争が展開されることも考えられるだろう。

気軽にロボットを導入できる価格レベルになれば、ラストワンマイルを担う配送側の新規参入が増加するかもしれず、地域における新たなビジネスを生み出す可能性なども考えられるだろう。

このほか、渋滞解消や二酸化炭素排出抑制効果など、社会・環境面でのプラスの効果も大きいため、開発メーカーや導入事業者らに助成が出る可能性も考えられる。実質的なコストが下がるため、導入促進に弾みがつきそうだ。

法整備が進むことで早まる

現在配送ロボットを規制する法律はなく、ゆえに安全確保や運用方法が整うまで日本国内では公道走行することができない。

ただ、電動キックボードなどとは別物として扱われた場合、比較的ハードルの低い法規制や運用ガイドラインが設けられ、技術開発や導入がスムーズに進む可能性が高くなる。

どこまで安全を担保できるか。そして最終的にどのような位置づけとなり、どのようなルールのもと公道を走行可能になるのか。要注目だ。

特区制度を活用し実現が早まる

国の特区制度などを活用し、実証実験をはじめ配送ロボットの実用化を後押しする自治体が出てくるかもしれない。

過疎地域では自動運転レベル4の無人配送サービスの実証なども検討されており、国土交通省などと一丸となって取り組む自治体が先例を作り、安全確保と安定運用に向けた課題抽出をはじめ具体的なガイドラインを定めることで、他の地域でも運用可能なノウハウが一気に構築される。

社会受容性も徐々に高まり、各地で受け入れやすい環境も整うだろう。

また、特区同様期待が高まるのがスマートシティだ。IoT技術でさまざまなモノやサービスをつなぐ取り組みの一環として、宅配ロボットが導入される可能性も高い。自治体中心の取り組みのほか、静岡県裾野市でトヨタが進める「Woven City」のような事業が宅配ロボットの社会実装を加速させる可能性は十分考えられるだろう。

【参考】特区制度などの規制緩和については「ルールを一時停止!自動運転は「規制の砂場」制度で劇的進化を遂げる」も参照。スマートシティについては「自動運転導入を目指している世界のスマートシティ計画まとめ」も参照。

■【まとめ】早期公道実証の実現に期待

一般的に自動運転車と比べれば必要とされる技術水準そのもののハードルは低く、どのようなガイドラインの中でどこまで安全性を確保するかが今後の開発の焦点になりそうだ。

コスト面では、単価や維持費がどれほどになるか現段階では何とも言えないが、リース形式が主力になりそうで、助成や補助金の類が出る可能性も決して低いものではない。導入に際し明らかに障壁となる価格帯では、そもそも継続性が生まれない。

2020年度内にも遠隔操作の公道実証の枠組みがまとまり、実験がスタートする見込みとなっている。本格的な課題の抽出は実証を経てこそ行われるものであるため、早期公道実証の実現にまずは期待したいところだ。

【参考】関連記事としては「ラストワンマイル向けの物流・配送ロボット10選」も参照。

(初稿:2019年6月17日/最終更新日:2020年9月29日)

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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