自動運転車による無人宅配サービス、実現までの8つのシナリオ

法整備は?コストは?開発状況は?





海外では、米国のStarship Technologies(スターシップ・テクノロジーズ)が実用化をはじめ、中国の京東集団や独Deutsche Post AGなどが実証実験を進めている自動運転車を使った宅配サービス。米自動車メーカーのフォードは2019年5月、自動運転車と二足歩行が可能な人型ロボットを組み合わせた無人配送の研究開発について発表し、話題となっている。







海外では導入に向けた動きが活発化する一方、日本国内の状況はどのようになっているのか。物流関係のロードマップを含め、実現に向けたシナリオを想定し、超えるべきハードルを浮き彫りにしてみよう。

■現在の物流業界の課題

物流業界においてはトラックドライバー不足の問題が既に顕在化しており、インターネット通販といったeコマースが拡大を続ける中、物流需要の増大に対応しきれない場面が散見し始めている。

厚生労働省の「労働力経済動向調査」によると、ドライバーが不足していると感じている企業の割合は増加傾向にあり、2017年では63%の企業が「不足」または「やや不足」と回答している。

また、若年ドライバーの減少とともに高齢化も顕著に進んでおり、配送・運転技術やノウハウの継承にも課題を抱えているのが現状だ。

ドライバーの労働待遇改善が喫緊の課題であり、その解決策の一つが自動運転車や配送ロボットの導入だ。後続車無人隊列走行でトラックが地方へ荷物を運び、無人自動運転車や配送ロボットがラストワンマイルを担うことで、ドライバー不足を解消していく筋道だ。

■物流関係の自動運転ロードマップ

官民ITS構想・ロードマップ2019によると、高速道路におけるトラックの隊列走行(自動運転レベル2以上)は2019年度に民間レベルで量産向けの車両設計・量産化を検討し、官民共同で後続無人実証実験を進めることとしている。

2020年度には新東名の一部区間で後続車無人隊列走行技術を実現し、必要に応じてインフラ面などの事業環境を整備し、2021年度には走行可能範囲の拡大について検討を進めるとともに後続車有人隊列走行システムの商業化を図ることとしている。後続車無人隊列走行システムの商業化は2022年度以降を予定している。

自動運転レベル4の高速道路における完全自動運転トラックは、2020年度までに必要な制度の見直しなどを進め、自家用車の技術の応用などを踏まえながら2024年度以降の実現を目指すこととしている。

そして限定地域における自動運転レベル4の無人配送サービスは、2020年度以降のサービス実現を目標に据え、過疎地域において中心地から集落拠点への往復輸送や、集落内における個別宅周回配送サービスなどの実現、その後、サービス対象や地域の拡大を図っていく構えだ。

以上は人間が同乗できるレベルの自動運転車のロードマップであり、宅配ロボとなると話は別だ。現在、自動走行ロボットを規制する明確な法律は存在せず、ゆえに公道での実証実験には特別な許可を要するなど高いハードルが伴う。

開発メーカーからは「公道実証を通じたノウハウの蓄積ができず、技術進歩が遅れてしまう」などの意見が出ているほか、自治体などからも「買物弱者問支援や地域商店街の人手不足解消として自動走行ロボットの活用が見込める」といった声がある。

このため政府は、2019年度に自動走行ロボットに関する官民協議会を立ち上げて議論を進めるとともに、道路使用許可の申請に対する取り扱いの基準を策定するなど公道上での実証実験の実現を図り、ロードマップの策定や社会受容性の向上のために必要な措置、必要なルールの在り方、求められる安全性など、各種措置の検討に着手することとしている。

■実現が遅れるシナリオ
宅配ロボの開発が遅れて実現が遅れる

自動運転技術を搭載した宅配ロボだが、主に道路を走行する自動運転車と異なり、より複雑な歩道なども走行するため、既存の自動運転技術を単純に応用できるとは限らない。

人や自転車、散歩中の犬猫までが行き交い、車道に比べ起伏が激しい箇所も多く、場所によっては障害物となるゴミも散乱しているようなさまざまな通路において、安全を確保しながら安定した走行を実現するのは、想像以上に厄介な問題だ。

また、ラストワンマイルを担ううえで重要となる各戸などへの配送時、玄関をはじめとした敷地内の段差など、障害は千差万別だ。地図情報や位置情報をもとにどこまで対象者に近づけるか。場合によっては歩道上で立ち往生する可能性などもあり、こういったシミュレーションに時間を要する可能性も考えられるだろう。

開発コストが掛かりすぎることで遅れる

ドライバーに代わり、荷物などを配達する配送ロボ。実用化からしばらくの間は、採算が取れない可能性もある。実証段階では大量生産するわけにもいかず、ロボットの単価は当然高価になりがちだが、実用化が始まる際も、どこまで低価格化が進むか見当がつかないものだ。

配送ロボに興味・関心を持つ運送業界も、前のめりな業者以外は価格が落ち着くまで静観する可能性がある。人件費を浮かせることができる部分と、導入に際し必要となるイニシャルコスト・ランニングコストなどを比較し、二の足を踏む可能性は十分考えられるだろう。

その結果、実用化は非常に限定された一部区域でスタートし、サービス範囲を拡大するまでに相当な時間を要することも想定される。

また、実用化後も、大きな段差を乗り越えられるモデルや、航続距離が長いモデル、天候に左右されにくいモデル、大きく重い荷物を運ぶことができるモデルなど、さまざまな課題に対応したロボットの開発コストはかさみ、コストダウンを実現するまで時間を要することも考えられる。

別の観点では、ロボットの開発・製造とともに配送プラットフォームを整備する必要が生じるが、各運送会社やロボットメーカーが開発するのか、あるいは別のプラットフォーマーが参入するのか。さまざまなケースが考えられるが、業界で足並みがそろわないと大変非効率な開発体制が敷かれることになり、汎用性を失った融通のきかないシステムが蔓延することも考えられる。

このプラットフォームの整備に業界としてどこまでコストをかけることができるか。利用者目線に立った利便性の高いプラットフォームが求められる。

法整備が進まないことで遅れる

配送ロボットをめぐる法整備は、やっと検討段階に入ったような状態だ。自動運転車と比べ走行速度も遅く小柄なため、一見ハードルが低そうに思えるが、車道以外のあらゆるところを走行する可能性があり、歩行者らとの接点が非常に高いため、意外と難航する可能性も考えられるだろう。

大事故にはつながりにくいが、小さな事故を起こしやすい環境にあり、安全確保を中心にどのようなルールを整備していくのか。自動走行ロボットに関する官民協議会の議論に注目が集まるところだ。

一例だが、電動2輪車のセグウェイや電動キックボードの類は、道路交通法・道路運送車両法上の原動機付自転車に該当すると解されており、公道を走行する場合は前照灯や番号灯、方向指示器の設置など厳格な規制がしかれている。

人が乗るものではないにしろ、配送ロボットが公道を走行するうえでも厳格な規制が定められた場合、普及スピードは格段に落ちる可能性が高そうだ。

条例のしばりで実現が遅れる

安全性の確保は最重要課題と言える。仮に法整備がなされ、一定のルールのもと実用可能な社会が到来したとしよう。それでも息を抜くことはできない。地域によっては、走行禁止処置がとられる可能性もあるからだ。

歩道を走行する配送ロボットが何らかの危険を察知し、立ち止まったとする。そこに、無邪気に走り回る子どもや自転車などが衝突して大けがをした場合、責任はどうなるだろうか。そして、世論はどのように傾くだろうか。

過失割合に関係なく、新参者であり血の通わないロボットを悪者とする風潮が広がる可能性は十分に考えられる。そして世論の形成とともに議会をはじめ自治体が動き出し、条例などによって配送ロボットの走行を著しく制限することもあるだろう。

こうした動きは伝播しやすく、必ずしも他地域に規制が広がるとは限らないが、大きな賛否両論を呼び、議論に一定の結論が出るまで配送ロボの稼働は消極的にならざるを得ない状況となるだろう。

こうした懸念は実際に現実として起こりやすいものだ。運用ガイドラインなどの策定段階でしっかりと揉む必要がある。

より人間の生活の場に近いところで活躍することが予想される自立走行ロボット。

■実現が早まるシナリオ
宅配ロボの開発が進んで実現が早まる

海外では実用が始まった配送ロボット。技術的な問題はクリアしており、日本の企業もさまざまな場面で実証を行う環境が整えばすぐに追いつく可能性が高い。

海外諸国に比べ日本は狭い歩道が多く、日本特有の環境に適した技術開発が試されるところだが、細やかな配慮をもとに柔軟な技術で対応する開発力を持っている企業が多いのも特徴だ。

配送ロボットを含む自立走行ロボットの実現に向けた官民協議会が2019年度に始まり、公道での実証実験を行う環境が整備される見込みだが、課題の抽出とともにそれを解決する技術開発も思いのほか早く進む可能性は高い。

ソフトバンクグループのリアライズ・モバイル・コミュニケーションズ株式会社などは2018年10月、北海道札幌市内の商店街で追従・自走式の配送ロボットを使った実証実験を行った。国内における公道では初めての試みだ。また、自動運転ベンチャーの株式会社ZMPは2019年1月、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス内で宅配ロボット「CarriRo Deli」を活用したコンビニ無人配送のサービス実証を行った。

配送ロボットととしての基本的な技術はほぼ確立されており、あとは実証を通じてより多くの知見を集め、応用範囲を広げていく段階だ。法整備・運用ガイドラインの策定を前に、配送ロボットの技術開発は一定水準に達しているといえるだろう。

開発コストが比較的安く抑えられることで早まる

1000万円超といわれる自動運転車は確かに高額かもしれない。商用ではなく自家用車として考えた場合、その価格はいっそう重たいものに感じるだろう。

では、配送ロボットはどうか。当然、自動運転車に比べれば格段に値は下がる。さらに、ドライバーに代わって稼働するため人件費の一部と相殺することが可能なため、想像以上に導入がスムーズに進むかもしれない。

また、一つの集配拠点に複数台が導入されることや、定期的なメンテナンスの必要性なども考慮すると、リース形式がなじむかもしれない。イニシャルコストを抑えられるため、試験的な導入にも最適だ。

最大手クラスが一挙に導入を決めれば、生産コストも下がりいっそう価格は低下する。従来一人のドライバーが担っていた作業を複数台の配送ロボットでまかなうことを考えれば、必要とされる台数は相当な数に上ることが予想される。

海外で先行して実績を積み重ねたメーカーの進出も考えられ、確かな需要を背景に価格競争が展開されることも考えられるだろう。

気軽にロボットを導入できる価格レベルになれば、ラストワンマイルを担う配送側の新規参入が増加するかもしれず、地域における新たなビジネスを生み出す可能性なども考えられるだろう。

このほか、渋滞解消や二酸化炭素排出抑制効果など社会・環境面でのプラスの効果も大きいため、開発メーカーや導入事業者らに助成が出る可能性も考えられる。実質的なコストが下がるため、導入促進に弾みがつきそうだ。

法整備が進むことで早まる

現在配送ロボットを規制する法律はなく、ゆえに安全確保や運用方法が整うまで日本国内では公道走行することができない。

ただ、電動キックボードなどとは別物として扱われた場合、比較的ハードルの低い法規制や運用ガイドラインが設けられ、技術開発や導入がスムーズに進む可能性が高くなる。

どこまで安全を担保できるか。そして最終的にどのような位置づけとなり、どのようなルールのもと公道を走行可能になるのか。要注目だ。

特区制度を活用し実現が早まる

国の特区制度などを活用し、実証実験をはじめ配送ロボットの実用化を後押しする自治体が出てくるかもしれない。

過疎地域では自動運転レベル4の無人配送サービスの実証なども検討されており、国土交通省などと一丸となって取り組む自治体が先例を作り、安全確保と安定運用に向けた課題抽出をはじめ具体的なガイドラインを定めることで、他の地域でも運用可能なノウハウが一気に構築される。

社会受容性も徐々に高まり、各地で受け入れやすい環境も整うだろう。

■【まとめ】2019年は公道実証と官民協議会の議論に注目

実現が遅れるシナリオ、早まるシナリオの中で相反する内容があるが、見方次第で状況は一変するため、あくまで一つの可能性として記した結果だ。

一般的に自動運転車と比べれば必要とされる技術水準そのもののハードルは低く、どのようなガイドラインの中でどこまで安全性を確保するかが今後の開発の焦点になりそうだ。

コスト面では、単価や維持費がどれほどになるか現段階では何とも言えないが、リース形式が主力になりそうで、助成や補助金の類が出る可能性も決して低いものではない。導入に際し明らかに障壁となる価格帯では、そもそも継続性が生まれない。

2019年度にも公道実証が始まり、課題抽出が進むとともに社会受容性の度合いも明らかになってくる。官民協議会の議論とともに注目の一年になりそうだ。

【参考】関連記事としては「ラストワンマイル向けの物流・配送ロボット10選」も参照。







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