
トヨタが自動運転商用ビジネスに動き出した。自動運転サービス専用BEVとして開発が進められてきたe-Palette(イー・パレット)の販売をついに開始したのだ。当面はレベル2相当のシステムに対応可能な車両として提供するが、2027年度を目途にレベル4に準拠した自動運転システム搭載車の市場導入を目指すとしている。
トヨタが動き出すことで国内市場がどのように変わっていくか非常に楽しみなポジティブニュースだが、世界に目を向ければ残念ながら小さなニュースでしかない。なぜならば、開発で先行する各社はとうの昔に無人の自動運転サービスを実現しているためだ。
Waymoと比較すれば、トヨタは最短でも8年遅れとなる計算だ。この差は非常に大きいが、果たして挽回できるのか。結論から言えば、少なくとも「自動運転技術のコモディティ化」の先に、トヨタが勝つ世界線は存在する。自動運転分野におけるトヨタの立ち位置を探っていこう。
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■e-Paletteに関する動向
e-Palette発売、2027年度にもレベル4市場導入目指す

トヨタは2025年9月、さまざまなモビリティサービスに活用できるBEV「e-Palette」の販売を開始した。当面はレベル2相当のシステムに対応可能な車両として提供し、2027年度にレベル4に準拠した自動運転システム搭載車の市場導入を目指し、継続して機能実装していく。
車両価格は2,900万円からで、環境省による「商用車等の電動化促進事業」の対象(補助金額1,583万5,000円)になっている。
トヨタとしては、TOYOTA ARENA TOKYOやその周辺エリア、Toyota Woven Cityから導入を開始し、輸送サービスでの活用や物品販売を行う移動型店舗など、さまざまな取り組みを進めていく方針のようだ。加えて、一部地域で販売店や自治体、自動運転パートナーと連携した自動運転実証などを進め、2027年度にレベル4システム搭載車の市場導入を目指すとしている。
車両制御インターフェースに対応して開発されたさまざまな開発企業による自動運転システムを搭載することで自動運転に対応することが可能となる。
自動運転システムと車両制御システムの接続を標準化するとともに、システムの堅牢性や信頼性を高めるための冗長システムを搭載し、自動運転システムとセットで安全な走行の実現に寄与し、トヨタの自動運転を実現するとしている。
【参考】関連記事については「トヨタ、Googleやテスラに負けじと「市販の自動運転レベル4」発売へ」も参照。
自動運転システムはサードパーティ製?
プレスリリースに目を通す限り、トヨタが独自開発した自動運転システムは冗長システムとしての役割に留め、開発各社の自動運転システムをe-Paletteに統合していく流れを作ろうとしているように感じられる。
プレスリリースには「今回発売したe-Paletteはレベル2相当の自動運転システムに対応可能な車両」「2027年度にはレベル4に準拠した自動運転システム搭載車の市場導入を目指す」と表記されている。トヨタ自らがレベル4やレベル2を開発し、e-Paletteに実装するとは一言も書かれていないのだ。
現実的にはトヨタはより高性能なレベル2やレベル4開発を行っているが、e-Paletteとしては現状それを頼りにしていない……ということだ。
そう考えると、2027年度のレベル4市場導入も他力本願となる可能性が否めないが、天下のトヨタが格好悪い様を見せることはあり得ない。未来を予感させるような納得の形でレベル4を実現してくれると期待しよう。
■自動運転業界の動向
自動車メーカーの中では遅れているわけではない
トヨタは2027年度を目途にレベル4の社会実装を目指す方針であることが分かった。自動車メーカー大手の中で、レベル4サービスを実現させたのは過去GMだけだ。傘下のCruiseが一時期、米カリフォルニア州サンフランシスコなどで無人の自動運転タクシーを商用化していたが、人身事故をきっかけに事業停止に陥った。
自動車メーカーではこのほか、米テスラが自動運転タクシーの商用サービスを2025年6月に開始したが、助手席にオペレーターが同乗しており、レベル4とは言えない状況だ。2025年中に車内無人化を実現するとしている。
韓国ヒョンデは子会社Motionalが実証を積み重ねている。フォルクスワーゲンの米国法人も自動運転サービスローンチに向けた取り組みを進めているようだ。
国内では、ホンダがGM勢とともに2026年初頭に自動運転タクシーをローンチさせる計画を立てていたが、Cruise事業停止によりとん挫した。日産は2027年を目途に地方を含む3~4市町村で自動運転サービス提供開始を目指す計画だ。
世界各国の自動車メーカー、特に老舗組はこれから――といった印象で、トヨタはとりわけ早いわけでもなく、遅れているわけでもない。
テック系企業と比較すると周回遅れに……

しかし、開発で先行するスタートアップやテクノロジー系企業などと比較すると、その差は歴然だ。世界で初めて自動運転タクシーを商用化したグーグル系Waymoは、2018年末にアリゾナ州フェニックスでセーフティドライバー付きでサービスを開始し、2019年末に限定的だが車内無人のレベル4サービスを開始した。
この2019年と比較すると、トヨタが予定している2027年は実に8年もの開きがある。自動運転タクシーとe-Paletteによる自動運転サービスは種別が異なるが、Waymoが2019年に開始した無人レベル4を、トヨタは2027年度にようやく開始するのだ。
最先端分野で8年の差は非常に大きい。Waymoはこの6年間で、自動運転タクシーサービスをフェニックスのほかカリフォルニア州サンフランシスコ、ロサンゼルス、テキサス州オースティン、ジョージア州アトランタに拡大した。
2026年にはフロリダ州マイアミとワシントン D.C.、テキサス州ダラスでもサービス開始を予定するほか、日本の東京都内でも走行実証を進めており、海外展開も視野に収めている。本格的なエリア拡大期に入った印象だ。
走行経験が技術の高度化に直結する自動運転分野においては、Waymoに追い付くのは非常に難しいと言わざるを得ない。その差が埋まり始めるのは、Waymoの技術水準が一定領域に達し、高度化が鈍化し始めた時だ。ただ、そのころにはWaymoは次のビジネス領域に向かっているだろう。
【参考】関連記事については「Googleのロボタクシー2000台到達!テスラは「まだ30台」と大差」も参照。
テスラと比較すると?

中国百度やWeRide、Pony.aiといった開発勢もWaymo同様、トヨタの相当先を走っている。現状、こうしたテクノロジー企業や新興勢と自動車メーカーであるトヨタが同じ土俵に立つのは難しいようだ。
では、自動車メーカー内ではどうなのか。前述したように、メーカー内で現在先行しているのはテスラだ。常時監視付きながら自動運転タクシーサービスに着手し、2025年内の無人サービス化実現を目指している。
【参考】関連記事については「テスラのロボタクシー、「旅行アプリ部門」で全米1位獲得」も参照。
テスラは創業20年を超えたものの自動車メーカーの中ではまだまだ新興勢に数えられる。最先端技術の導入に貪欲で、イーロン・マスク氏CEOのもと、いまだスタートアップ気質を持ち続ける稀有な存在だ。
自動運転開発にも早期に着手し、自家用車の完全自動運転化を目標に掲げ開発を続けている。現状はADAS(先進運転支援システム)だが、FSD(Full Self-Driving)を継続的にアップデートし、自動運転を実現する戦略だ。FSDは市街地でもハンズオフ運転(レベル2+)を可能にする水準に達している。自家用車の自動運転化を達成した暁には、自動運転自家用車を活用したロボタクシーサービスをローンチする構想も明かしている。
マスク氏は2024年、満を持して独自開発したロボタクシー「Cybercab(サイバーキャブ)」を発表し、自動運転サービス分野への参入を正式発表した。当初予定とは異なる直営ロボタクシーサービスで、車両は新型モデルYに特別バージョンのFSDを搭載したものだ。
オースティン市内の一部エリアで10~20台のフリートでサービスを提供しており、9月現在、運転席は空席にしているものの、助手席に座るオペレーターが常時監視している状態だ。
Waymoなどのように長期に及ぶ走行実証を行った形跡がなく、時期尚早とする向きも強いが、マスク氏は強気で2025年中に車内無人化を果たし、2026年には全米展開を目指す方針だ。
レベル4サービスとしてはまだWaymoに及ばず、年内に無人化を果たすことができる水準に達するか?安全を確保できるのか?――という点で懐疑的に見る専門家も少なくない。そう考えると、先行するテスラとトヨタの差は、それほど開いていないのかもしれない。
しかし、見方を変えれば、テスラのFSDは現時点で世界最高峰と言える。自動運転ではないものの、一般道路含め特にエリアを制限することなくハンズオフ運転を実装しているのは、自動車メーカー、テクノロジー企業含めテスラだけだ。
テスラの強みは、E2E(エンドツーエンド)モデルによる自動運転開発にある。LiDARを使用せずカメラに特化したシンプルなセンサー構成で、認知・判断・制御命令までを一体的にAIが担うモデルだ。ざっくり言えば、AIが自ら思考能力を磨き、柔軟な判断能力で初めて通る道路でも自律走行を可能にする。
Waymoをはじめとした先行勢の自動運転技術の大半はルールベースに基づくものだ。AIを駆使して一定のアルゴリズムを構築し、そのアルゴリズムにプログラミングされたルールに基づいて判断・制御を行う仕組みだ。
判断・制御の指針が明確なためミスを起こしにくいが、自ら応用を利かせて柔軟な自律走行を行う能力に乏しく、初めて通る道路では基本的に自律走行できない。その代わり、一定ルートや一定範囲などに特化する形で学習すれば、非常に精度の高い自律走行を実現できる。
E2Eモデル開発はまだまだ道半ばのため、ルールベースが先行している形だが、E2Eモデルは一定水準に達すれば飛躍的にその能力を高めていく。テスラには大きなアドバンテージが眠っているのだ。
Waymoなど先行勢も軒並みE2E開発に着手しており、今後、自動運転競争に変化が起こるとすれば、それはE2E開発に寄る可能性が極めて高い。
トヨタに話を戻すが、トヨタも恐らくE2E、ルールベースの双方を研究しているものと思われるが、これまでの中心はルールベースに基づくものだ。そう考えると、テスラにも今後大きく引き離されていくことも想定される。
【参考】関連記事については「自動運転モデル「ルールベース」「E2Eモデル」とは?」も参照。
独自路線に商機?
Waymoやテスラなどに大きく水をあけられているトヨタだが、e-Paletteの取り組みをうかがう限り、他社製自動運転システムによる自動運転実現という別路線を歩んでいくことが考えられる。自社開発したシステムは、メインシステムに問題が発生した際にフェイルセーフとして機能させ、冗長性を高める仕組みだ。
トヨタは中国Pony.aiや米May Mobilityなど有力新興勢とパートナーシップを結んでいる。2025年4月には、自動運転の開発・普及に向けWaymoと戦略的パートナーシップを結ぶ基本合意に達したと発表した。
こうした有力開発勢がそれぞれの自動運転システムをe-Paletteに統合し、サービス事業者を交えながら国内外で事業展開を進めていく――とすれば、新たな商機が生まれる。
そう遠くない将来、自動運転システム開発における勝ち組は一握りに絞られることも考えられる。Waymoを上回るビジョンを描けないのであれば、早期に開発競争から降り、別路線を歩むのも正しい一手と言える。
実際、トヨタがどのような自動運転戦略の下、事業を進めているかは不明だが、自動運転開発そのものではなく、その技術を生かすモビリティの可能性を追求する方に重点を置いているように感じるのは、私だけではないはずだ。
■【まとめ】2年後の国内市場はWaymoが中心に?
Waymoは日本交通などをパートナーに東京都内で自動運転タクシー実用化に向けすでに実証を開始しており、トヨタが目標とする2027年度にはサービスを開始している可能性が高い。世界最高峰の技術が導入されれば、国内業界もWaymoを中心に動いていくことになるかもしれない。それほど技術力に差があるのだ。
そうした近未来を想定すれば、無理に開発競争には加わらず、サービスを中心にビジネスを構築していくのは間違っていない。その上で自動運転開発を地道に続け、自動運転社会の在り方や総体的なビジネスを模索していくのだ。
実際のところトヨタがどのような戦略のもと事業を推し進めているかは不明だが、現時点では、開発競争そのものに光明を見出せないように見える。
ただし自動運転の技術自体は、いずれはどの企業の技術も一定水準に達してコモディティ化していき、技術自体が差別化要因にならなくなっていく。そうなれば、安全性や品質という点において世界でも群を抜いているトヨタが最終的には強くなる世界線も想像できる。
今後の業界の構図はどのように変わっているのか。各社の動向に引き続き注目だ。
【参考】関連記事としては「トヨタの自動運転技術、すでに「テスラ超え」か ”実はレベル高い”との声多数」も参照。