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高速道路における自動運転トラック実用化に向け、ヤマト運輸らが動き出した。同社やダイナミックマッププラットフォーム、日野自動車の子会社ら4社は2025年2月、新東名高速道路の駿河湾沼津SA~浜松SA間で走行実証を実施する。
自動運転車優先レーンの稼働を目前に控え、各社の取り組みが一気に加速しだした。開発各企業とともに、自動運転トラック輸送を最初に実現するのはどの物流事業者となるかも今後の注目ポイントとなる。
ヤマト運輸の取り組みをはじめ、自動運転トラック業界の最新動向について解説していく。
記事の目次
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■ヤマト運輸らの取り組み概要
自動運転トラックによる共同輸送を効率化するシステム構築へ
ヤマト運輸とダイナミックマッププラットフォーム、BIPROGY、NEXT Logistics Japanの4社は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した事業「産業DXのためのデジタルインフラ整備事業/デジタルライフラインの先行実装に資する基盤に関する研究開発」のもと、2月25日から3日間に渡り新東名高速道路駿河湾沼津SA~浜松SA間で走行実証を実施する。
4社は自動運転を支援するデータ連携システムを開発しており、実証では、同システムによる自動運転トラックの走行安全性、共同輸送の効率化の実現性について検証を行う。
高精度3次元地図開発を担うダイナミックマッププラットフォームは、「ダイナミックマップ情報配信による自動走行支援システム」を開発した。道路形状に応じた高精度な気象情報や渋滞などの道路状況データを車両へ提供可能とするシステムで、車両単独では検知出来ない数キロメートル先の情報を認識可能になるという。
また、車両の正確な位置情報を物流事業者へ提供することで、運行管理や緊急時の退避判断が必要となるシーンでの活用にも期待が寄せられる。
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ソフトウェア開発などを手掛けるBIPROGYは、「シミュレーションを用いたニアミスシーンを情報共有するシステム」を開発した。
車両や外部システムから取得したニアミスデータを用いてシミュレーション環境を構築し、自動運転車両開発時の安全性検証に資する多様なシナリオの提供を可能とした。
日野自動車の子会社で物流最適化ソリューションの開発などを手掛けるNEXT Logistics Japanとヤマト運輸は、「自動運転トラックを想定した共同輸送効率化の支援システム」を開発した。
荷物情報やトラックの空き情報など共同輸送に必要なデータを入力し、荷物とトラックの空スペースをマッチングするシステムと、荷主・物流事業者が連携できるAPIにより、物流事業者のトラック積載率や稼働率を向上させることが可能となる。
また、同システムと自動運転遠隔監視システム、自動走行支援システムを連携させる環境も構築したほか、共同輸送時のトレーラーの不正連結や荷受人に扮した不正引き取りなどを抑止するシステムの開発を通じ、共同輸送オペレーションのトレーサビリティ管理設計を実施したという。
これらのシステムを活用し、自動運転実証を通じて共同輸送における最適な運行計画立案や自動運転車安全走行支援、走行環境変化に対応した運行計画変更、緊急事態対応支援などについて検証を進める。
自動運転トラックは先進モビリティのものを使用し、レベル2状態で走行する。
物流関連事業者の積極的な参画が重要
自動運転トラックの実現には、開発事業者だけでなく物流関連事業者の主体的な協力が欠かせない。自動運転タクシーなどの人の移動サービスとは異なり、基本的に一つの輸送でサービスが完結せず、かつ運ぶ対象物となるモノは自律して動いてくれないからだ。
モノは、工場などから直接、あるいは一度倉庫に集荷され、まとめて長距離輸送した後、再び倉庫などを経て小分けされて各配送先に送られる。その都度、大型や中型、小型トラックなどを乗り継ぎ、効率的に配送しなければならない。
また、モノは人と異なり自ら動かないため、積み下ろしなどに人手を要する。こうした点も含め、無人化・省力化を図っていかなければならないのだ。
例えるならば、自ら動かない人々を鉄道やバス、タクシーなどを駆使してそれぞれ遠い目的地まで輸送するようなものだ。バスやタクシーといった個別のサービスに留まらず、全体としての流れを考慮しながら各所でスマート化を図らなければならない。
そう考えると、ヤマト運輸のような物流事業者は受け身になることなく率先して自動運転分野に進出し、開発事業者と協働して事業に臨むことが望ましい。
高速道路におけるレベル4トラックの実現は全体の一要素に過ぎないが、重要な一歩でもある。実証がスムーズに進み、実用化に結びつけば、日本の物流大手としてヤマト運輸が自動運転トラックを本格的に展開する「第一号」となるかもしれない。
物流事業者の中でどの企業が最初に本格的な無人配送を実現するか。その行方を占う競争はすでに始まっているのだ。
■高速道路における自動運転トラック実現に向けた国の動き
RoAD to the L4の主要テーマの一つに位置付け
高速道路における自動運転トラックに関しては、経済産業省・国土交通省の委託事業「RoAD to the L4」でも2021年度に重要テーマの一つに位置付けられ、デジタルライフライン全国総合整備計画においても早期に取り組むべき事項に挙げられている。国策として事業が進められているのだ。
RoAD to the L4では、テーマ3として「高速道路における高性能トラックの実用化に向けた取り組み」が位置づけられ、レベル4トラックを実用可能とする環境整備や、道路情報などを活用した外部インフラ支援システム、事業化を見据え複数台のレベル4トラックの運用を可能とする運行監視・運行管理システムの整備などに5カ年計画で取り組んでいる。
2025年度までに車両技術を実現し、運行管理システムや必要となるインフラ、情報など事業化に必要な事業環境を整備し、2026年度以降に高速道路でのレベル4トラックやそれを活用した隊列走行などの社会実装を目指す方針だ。
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黎明期となる2026年ごろは、事業者がレベル4トラックを安全に走行でき、事業に活用できることを確認するため、中継エリアや高速道路直結型物流施設を必要としない車内有人のレベル4の実現を目指す。
また、普及期・成熟期となる2030~2040年頃を見据え、車内有人・無人、中継施設の有無などどのような走行モデルが志向されるのか、各モデルの共通部分のみの実装を目指すのかなど議論を進めていく。
物流事業者の目線としては、区間の拡大や直結型物流施設からの発着など多様な運用が可能になることが期待される一方、大手に限らず中小事業者も活用でき、SA・PAの活用など他道路利用者にもメリットのある施設が望ましいと想定し、事業を展開していく方針としている。
このテーマ3は、豊田通商を主幹企業に日本工営、先進モビリティ、みずほリサーチ&テクノロジーズの4社が実施機関に名を連ねているほか、いすゞ、日野、三菱ふそうトラック・バス、UDトラックスの大型車メーカー、佐川急便、西濃運輸、日本通運、日本郵便、福山通運、ヤマト運輸の物流事業者も取り組みに参画している。
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【参考】RoAD to the L4については「自動運転、「RoAD to the L4」とは?」も参照。
自動運転車優先レーンを設定
デジタルライフライン全国総合整備計画では、早期に取り組むアーリーハーベストプロジェクトとして「自動運転サービス支援道」の構築が掲げられており、新東名高速道路の駿河湾沼津SA~浜松SA間約100キロが正式に実証エリアに選定された。今回、ヤマト運輸が取り組むエリアもここだ。
同所では、2025年3月3日から平日夜間に限り第1通行帯を「自動運転車優先レーン」に設定し、自動運転トラックの実証を行う。
自動運転システム面での実証をはじめ、自動運転トラックが自動駐車・自動発進可能かを確認する自動発着技術、車両単独では検知できない工事規制情報などの先読み情報を路側機から適切に各車両に通信する先読み情報提供システム、合流支援情報提供システムなどの検証を進める。
取り組みエリアは、他車の邪魔になりにくい6車線区間を中心に順次拡大していく予定で、2025年度以降に東北自動車道などでも展開する予定だ。現時点では、佐野SA~大谷PA間約40キロが有望視されているようだ。
中長期的には、2026年度以降に大動脈となる関東~近畿間で優先的に展開し、10年以内を目途に東北から九州までをつなぐ計画だ。
【参考】自動運転車優先レーンについては「高速道に「自動運転車優先レーン」!深夜時間帯に限定、新東名で」も参照。
■開発各社の取り組み
T2はパートナーシップを拡大、物流全体のスマート化に前進
開発サイドとしては、隊列走行技術の開発から国の事業に携わってきた先進モビリティをはじめ、T2やティアフォーといった新興勢も自動運転トラック開発に着手している。
高速道路における自動運転トラック開発に事業軸を置くT2は、2024年6月の実証で駿河湾沼津 SA~浜松 SA 間 116キロをドライバー未介入で連続自動走行することに成功するなどいち早く事業化に取り組んでいる。
同年7月には、佐川急便、セイノーホールディングスとともに、2024 年 10 月から 2025 年 6 月にかけ自動運転トラックを用いた幹線輸送の実証実験を東京~大阪間の高速道路一部区間で実施することを発表した。
東名高速道路、新東名高速道路、伊勢湾岸道、名神高速道路、新名神高速道路、京滋バイパスにまたがる取り組みを計画しているようだ。
同年10月には、味の素やハウス食品グループなどを株主に持つF-LINEとも同様の取り組みに着手することを発表したほか、その後も大王製紙やパナソニックオペレーショナルエクセレンス、三井倉庫ロジスティクス、日本郵便、JP ロジスティクス、福山通運なども同事業への参加を表明している。
また、NIPPON EXPRESS ホールディングス、全国通運、日本フレートライナー、日本貨物鉄道と、自動運転トラックと貨物鉄道を組み合わせたモーダルコンビネーション実証に向けた検討も開始している。
2024年11月には、レベル 4 トラックによる幹線輸送サービス実現に向けた仲間づくりを推進するため「自動運転トラック輸送実現会議 ~L4 Truck Operation Conference~」を設立したと発表した。佐川急便、セイノーホールディングス、日本貨物鉄道、日本郵便、 福山通運、三井住友海上火災保険、三井倉庫ロジスティクス、 三菱地所、 KDDI、三菱ふそうトラック・バス、名鉄 NX 運輸、日本通運、大林組が参画している。
パートナーシップをしっかりと拡大している点がポイントだ。自動運転技術の確立に留まることなく、物流全体の効率化につなげていく好例となるか、期待を含め注目したいところだ。
【参考】T2の取り組みについては「自動運転トラック、高速道で「90分未介入」に成功!三井物産系ベンチャー」も参照。
ティアフォーは商用車メーカーの自動運転化を後押し
自動運転バス実用化に向けた取り組みが大きく前進しているティアフォーは2024年5月、高速道路トラック向け自動運転システムの基本機能を開発し、2024年度から新東名高速道路での実証を開始すると発表した。
開発成果をリファレンスデザインとして商用車メーカーへ提供し、高速道路トラックへの自動運転機能の早期導入を支援する方針だ。独driveblocksの技術により高精度地図を必要としない認識技術を導入し、長距離・広域の高速道路環境に対応するという。
純粋に自動運転技術を磨き、商用車メーカーの取り組みを後押ししていくアプローチだ。
【参考】ティアフォーの取り組みについては「自動運転トラック、新東名高速で「高精度地図なし」実証 ティアフォー」も参照。
■【まとめ】物流事業者の取り組みに注目
国の事業やT2の取り組みを軸に、物流関連事業者の参画が広がっている印象だ。大手物流事業者は一通り国の事業に名を連ねているが、求められるのは積極的かつ主体的な参画だ。
今後、どの企業が自動運転トラック輸送を最初に実現することになるのか。振り出しは協調路線ベースの共同輸送となるかもしれないが、こうした技術・サービスをロジスティクス全体で生かすには個別のさらなる取り組みが必要となる。引き続き各社の動向に注目したい。
【参考】関連記事としては「自動運転、日本政府の実現目標・ロードマップ一覧|実用化の現状解説」も参照。