モビリティ系の非上場企業、重要決算2023年末振り返り

メーカー系非上場企業から新興企業まで



出典:官報/各社決算

自動運転をはじめとしたCASEの波が押し寄せるモビリティ業界。自動車メーカーを軸としたこれまでの業界地図は姿を変え、新進気鋭のスタートアップやメーカー新設企業らが活躍する場面が増えてきた。

イノベーションに向けた取り組みが進行中の2023年。新興勢の業績はどのようなものだったのか。バラエティ豊かなモビリティ系の非上場企業14社をピックアップし、その動向に迫る。







■SkyDrive:予約販売のフェーズへ プレオーダー続々
出典:官報

空飛ぶクルマ開発の国内筆頭株SkyDriveの第5期決算(2023年6月現在)は、当期純損失40億4,004万円となった。前期(同17億4,323万円)から赤字額が131%増加した。

開発・社会実装に向けた取り組みは順調で、この一年間を振り返ると2023年4月にシリーズCラウンドの追加調達を発表し、商用モデル「SD-05」の個人向け予約販売を開始したほか、大豊産業とプレオーダー契約を締結するなど予約販売のフェーズに突入している。

7月には、チャーター機運航会社の米オースティンアビエーションと5機のプレオーダー、9月には韓国の航空機リース会社・Solyuと最大50機の大型プレオーダー、11月には一般社団法人MASCともプレオーダー契約をそれぞれ結んでいる。

製造面では、製造子会社を設立し、スズキの協力のもと同社工場で年間最大100機の製造が可能になったことも発表されている。

2025年開催予定の大阪・関西万博も間近に迫り、2024年は目に見える形のニュースが飛び交うことに期待したい。

【参考】SkyDriveの決算については「空飛ぶクルマ最大手のSkyDrive、赤字額が40億円突破 第5期決算」も参照。

■ヤマハモーターパワープロダクツ:自動運転にもってこいの小型低速モビリティに商機
出典:官報

ヤマハ発動機グループのヤマハモーターパワープロダクツの第100期決算(2022年12月現在)は、前期比16.1%減の当期純利益15億1,000万円が計上されている。

ゴルフカー ・ ランドカーは、ラストマイルを移動するグリーンスローモビリティとしてゴルフ場外での注目が高まっている。低速・小型の走行機能は自動運転にも向いており、福井県永平寺町をはじめとしたレベル4サービスにも活用されている。

レベル4としては永平寺町のほか沖縄県北谷町でも実現しており、このほかにも高知県四万十市西土佐や山形県高畠町、福岡県みやま市でも実証が行われている。初期の自動運転時代を築くモビリティとして今後の動向に注目だ。

【参考】ヤマハモーターパワープロダクツの決算については「自動運転ゴルフカー開発のヤマハ子会社、純利益16%減の15億円」も参照。

■Preferred Networks:自律走行可能なロボットで飛躍
出典:官報

日本を代表するAI系ユニコーン企業で、IPOのうわさが絶えないPreferred Networks。第9期決算(2022年2月~2023年1月)は売上高76億5,500万円、当期純損失30億6,600万円を計上した。

深層学習を中心に、コンピュータビジョンや自然言語処理、音声認識、ロボティクスなど幅広い分野で研究開発を進めている。モビリティ関連では、トヨタから出資を受けており、サービスロボットの共同開発など多方面で協業しているようだ。

自動運転関連では、鹿島建設と建築現場内でロボットが自律移動するシステム「iNoh(アイノー)」を、アマノと自律走行可能な小型床洗浄ロボット「HAPiiBOT(ハピボット)」をそれぞれ共同開発している。2023年2月には、人の指示で家具の自動運転を行う家庭用自律移動ロボット「カチャカ」も発表している。

2021年に自律移動ロボットの研究開発・製造を担う子会社Preferred Networksを設立しており、ロボット分野での活躍が拡大していきそうだ。

【参考】Preferred Networksの決算については「日本最強ユニコーンPreferred Networks、損失30億円超 第9期決算」も参照。

■ティアフォー:ソリューション展開加速、次期決算に期待大?
出典:ティアフォー公式サイト

国内自動運転開発スタートアップの代名詞的存在であるティアフォー。2021年10月〜2022年9月までの売上高は前期比8.6%増の7億8,397万円、当期純損失は同17.8%増の39億1,097万円となった。売り上げは鈍化しているものの堅調に伸びているようだ。

ほぼ一年遅れの公告のためリアルタイムなニュースと業績にずれを感じるが、2022年10月に公開開始したプラットフォームサービス「Web.Auto」「Pilot.Auto」をはじめ、デジタルツイン指向の自動運転シミュレーターのオープンソース公開、センサフュージョン開発キットや遠隔監視ソリューション、レベル4自動運転機能評価用ツールキット「L4 V&V」の提供を開始するなど、ソリューション展開を加速している。

2023年6月には、EV生産を加速させるソリューション「ファンファーレ」の提供を開始し、自動運転EV生産・量産環境の構築にも本格着手している。次期決算を楽しみにしたいところだ。

【参考】ティアフォーの決算については「自動運転企業の筆頭格!ティアフォー、売上8%増の7.8億円 損失は39億円に拡大」も参照。

ダイナミックマッププラットフォーム:韓国でも事業開始
出典:ダイナミックマッププラットフォーム公式サイト

高精度3次元地図の作成・提供を一手に引き受けるダイナミックマッププラットフォーム(旧称ダイナミックマップ基盤)の第7期決算(2022年4月1日〜2023年3月31日)は、売上高13億4,300万円、当期純損失47億4,000万円となった。

自動車メーカーや測位メーカーらがこぞって出資するオールジャパン体制の企業で、すでに国内の高速道路をはじめとした自動車専用道路3万1,910キロを網羅している。ハンズオフが可能な高度レベル2やレベル3車で採用されているほか、各地の実証でも活用されている。

2023年7月には、高精度3次元地図データ事業を韓国で開始したことを発表している。国内の一般道路の地図作成やグローバル展開など、まだまだ飛躍は続きそうだ。

【参考】ダイナミックマッププラットフォームの決算については「ダイナミックマッププラットフォーム、純損失47億円 自動運転向け地図など作製」も参照。

■ZENコネクト:国内初レベル4を運行 接触事故からの復帰に注目
出典:官報

福井県永平寺町でレベル4サービスの運行を担っているZENコネクトの第6期決算(2023年3月31日現在)は、当期純損失75万円となり、前期の当期純利益202万円から赤字転落した。

同エリアのまちづくり全般を担っているため自動運転事業単体の収支は不明だが、国内初のレベル4サービス実装で注目度は高い。

ただ、2023年10月に駐輪されていた自転車と接触事故を起こし、運行を中止している。冬季間の休業を経てシステムをどのように向上させ、安全対策を充実させるか、注目だ。

【参考】ZENコネクトの決算については「自動運転「日本初レベル4」のZENコネクト、第6期は赤字転落」も参照。

■V-Drive Technologies:安全性評価プラットフォームを提供
出典:官報

自動運転シミュレーションプラットフォーム開発を手掛けるV-Drive Technologiesの第1期決算(2023年3月時点)では、当期純損失1億2,216万円が計上された。

同社は、BIPROGYが手掛けていたSIP第2期における研究成果を社会実装するため2022年9月に設立された。自動運転の安全性評価に資するプラットフォーム「DIVP(Driving Intelligence Validation Platform)」を製品化・提供している。自動運転車の安全性・信頼性を仮想空間で効果的かつ効率的に評価していく技術だ。

2023年には、トヨタ自動車の元幹部・葛巻清吾氏を社外エグゼクティブ・アドバイザー、同井上秀雄氏を社外テクニカル・アドバイザーに据えるなど、体制も盤石のようだ。

【参考】V-Drive Technologiesの決算については「SIP自動運転を引き継ぐV-Drive、第1期決算は1.2億円の赤字」も参照。

■先進モビリティ:自動運転バス実証続々
出典:官報

自動運転開発を手掛ける先進モビリティの第8期 (2021年6月1日〜2022年5月31日)決算は、当期純損失5,569万円となった。

高速道路におけるトラックの隊列走行やBRTにおける自動運転バスなど数々の実証に参画しており、2023年に入ってからも埼玉県飯能市や日光国立公園、兵庫県三田市、佐賀県佐賀市、愛知県岡崎市、静岡県三島市、愛知県豊田市などで実証を行っている。

各地で自動運転バス実用化に向けた取り組みが加速する中、同社の自動運転システムがどのように採用され、業績に反映されていくのか。必見だ。

【参考】先進モビリティの決算については「東大発の自動運転ベンチャー、先進モビリティの業績は!?」も参照。

■DeepX:建機自動化、今後の躍進に期待
出典:官報

建設機械の自動化に取り組むDeepXの第7期決算(2023年3月現在)は、前期比9.3%増の当期純損失4億1,531万円を計上した。

建機をはじめあらゆる機械の自動化を推し進める東京大学発スタートアップで、ROS2をベースとしたロボットシステムの開発などを手掛けている。

これまでに、ケーソンショベルの自動化(オリエンタル白石)や油圧ショベルの自動運転化実証(フジタ)、クレーン自動化(タダノ)などに取り組んでいる。

建機の自動化はゼネコンや建機メーカーらが力を入れている分野でもあり、今後の活躍に期待が寄せられる。

【参考】DeepXの決算については「建機の自動運転化に挑戦!東大発DeepX、赤字拡大4.1億円超に」も参照。

■KINTO:赤字続くも売り上げは倍増
出典:官報

トヨタグループでサブスクリプションサービスなどを手掛けるKINTOの第5期決算(2022年4月〜2023年3月)は、当期純損失39億1,700万円が計上された。

赤字から脱却できていないものの、売り上げは第3期32億9,600万円、第4期101億1,900万円、そして第5期198億3,300万円と大きな伸びを見せている。

マイカーを進化させる「KINTO factory」や多彩なサービスを提供する「モビリティマーケット」など、新たなサービス・試みにも挑戦している。モビリティサービスの新たな道を切り開く組織として今後の動向に注目だ。

■EVモーターズ・ジャパン:シリーズCラウンドで14億円調達
出典:官報

EVや充電ステーションの販売、自動運転対応バスの開発などを手掛けるEVモーターズ・ジャパンの第4期決算(2022年4〜12月)は、売上高7,691万円、当期純損失2億9,139万円となった。

2023年3月にシリーズCラウンドで計14億5,000万円を調達するなど、これまでに総額47億2,500万円を調達している。

順調に資金を獲得している印象で、車両製作など本格ビジネス化のフェーズをいつ迎えるか、次年度決算にも要注目だ。

【参考】EVモーターズ・ジャパンの決算については「自動運転EVバスに挑戦中のEVモーターズ、純損失2.9億円計上 第4期決算」も参照。

■ソニー・ホンダモビリティ:AFEELAの先行受注を2025年に開始
出典:官報

ソニー・ホンダモビリティの第1期決算(2022年9月28日〜2023年3月31日)は、当期純損失55億1,900万円となった。

モビリティ変革に向けソニーとホンダが手を組んで2022年に設立した同社。ソフトウェア技術を中心としたモビリティテック企業を目指す方針だ。

第 1 弾商品になるだろうモデル「AFEELA」は、2025 年前半に先行受注を開始し、同年中に北米を皮切りに発売していく計画だ。日本市場は2026年後半を予定しているという。

自動運転機能をはじめ、エンタメ機能などどのような新システム・サービスでモビリティ業界に風穴を開けるのか。今後のリリース情報を逐次チェックしたい。

【参考】ソニー・ホンダモビリティの決算については「ソニーホンダモビリティ、初決算は純損失55億円 自動運転化も視野」も参照。

■アラヤ:「すべてのモノにAIを」をコンセプトに幅広い研究開発
出典:官報

AI開発を手掛けるアラヤの第9期決算(2021年10月〜2022年9月)は、当期純損失1億1,269万円となった。前期の2億5,442万円、第7期の3億1,297万円から圧縮傾向にあるようだ。

建設関連機器の自動化AIをはじめ、流体シミュレーション時間を大幅に短縮する 「NeumaticAI」や自動車部品製造のラインなどでお使いいただける外観検査AIソフト「InspectAI」、運転手の脳活動を計測し、運転時の認知処理を支援するインターフェースに関する研究など、非常に幅広い分野で研究開発を進めている。

画像認識AI技術など、自動運転分野でのさらなる活躍にも期待したい。

【参考】アラヤの決算については「画像認識AI・自動化のARAYA、純損失1.1億円 第9期決算」も参照。

■【まとめ】研究開発と社会実装を両立していくフェーズへ

多くはまだまだ投資先行の段階のようだ。一部技術やサービスは社会実装のフェーズに移行し始めており、今後増収を重ねながら研究開発をいっそう強化していく流れになりそうだ。提供するソリューション・サービスによっては、早期黒字化を達成するケースもあるだろう。

次期決算には、どのような形で新たな取り組みや事業が反映されるのか。各社の動向に引き続き注目したい。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

【参考】関連記事としては「自動運転業界のスタートアップ一覧(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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