建機の自動運転化に挑戦!東大発DeepX、赤字拡大4.1億円超に

東京大学発ベンチャー、AI活用に強み



出典:官報(※クリックorタップすると拡大できます)

建機などの自動化に取り組む株式会社DeepX(本社:東京都文京区/代表取締役:那須野薫、冨山翔司)の第7期決算公告(2023年3月現在)が、このほど官報に掲載された。

当期純損失は、前期比9.3%増の4億1,531万円であった。なお過去3期の当期純損失は以下となっている。


<純損益の推移>
・第5期:▲1億5,933万4,000円
・第6期:▲3億7,994万9,000円
・第7期:▲4億1,531万5,000円
※▲はマイナス

■決算概要(2023年3月31日現在)
貸借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 693,403
固定資産 27,304
資産合計 720,707
▼負債及び純資産の部
流動負債 78,470
固定負債 26,770
株主資本 615,467
資本金 100,000
資本剰余金 1,530,147
資本準備金 810,143
その他資本剰余金 720,003
利益剰余金 △1,014,679
その他利益剰余金 △1,014,679
(うち当期純損失) (415,315)
負債・純資産合計 720,707

■建機の自動化を推し進める東大発ベンチャー

DeepXは、AI(人工知能)技術を活用して工作機や重機など機械の自動化技術を開発する東京大学発ベンチャーで、2016年4月に設立された。

【参考】関連記事としては「自動運転業界のスタートアップ一覧(2023年最新版)」も参照。


「あらゆる機械を自動化し、世界の生産現場を革新する」をミッションに、油圧ショベルやクレーン、ブルドーザーなどの大型建機や重機の自動運転システムの開発や実証を手掛け、労働力不足や熟練作業者不足、過酷作業などの現場の課題の解決を目指している。

2017年10月に米半導体大手NVIDIAのディープラーニングを活用するスタートアップを支援するプログラム「NVIDIA Inception Program」のパートナー企業に認定されたことを発表した。また2020年7月には、総額16億円の資金調達を実施したことを発表している。

出典:DeepX公式サイト
■相次いで新たな取り組みを発表

DeepXは、建設用クレーンなどを製造販売するタダノと共同で、荷振れの抑制を実現するクレーンの自動化技術を開発したことを2022年9月に発表した。AI技術などを活用した技術革新により、移動式クレーンの操作をより簡略化・容易化・自動化・自律化することで、現場の安全性を向上させることができるという。これにより、クレーンを自在に操作できる熟練オペレーターの減少といった問題解決に寄与する。

同年10月には、現場の地上計測室や現場外からリアルタイムで現場の地下作業区画をデジタルツインにより確認できる施工管理システムを開発し、ニューマチックケーソン工法で国内シェアトップのオリエンタル白石に提供を開始した。


ニューマチックケーソン工法は潜函工法とも呼ばれ、鉄筋コンクリート製の函(ケーソン)を地上で構築し、ケーソン下部に作業室を設け、地下水圧に見合う圧縮空気を送り込むことにより地下水の侵入を防ぎ、常にドライな環境で掘削・沈下を行って所定の位置に構築物を設置する工法のことだ。

その後、ニューマチックケーソン工法で使われる建機「ケーソンショベル」向けに、建機自動運転システムを開発し、実証実験を通してケーソンショベルを複数台同時に自動化でき、同システムが現場導入に必要な性能を満たしていることを確認したと2023年7月に発表した。

このシステムの主な特徴として、リアルタイムなデジタルツイン可視化のほか、衝突防止、作業内容を指定しやすいUI(ユーザーインターフェース)、複数台同時自動操作、安定的な自動運転と自動運転が有効な条件外におけるシームレスな手動操作が挙げられるという。

■建機自動運転システム、近く現場に導入へ

今回開発した建機自動運転システムは、2023年度中に現場に導入し実運用を開始する予定のようだ。

幅広い建設機械や重機の自動運転システムの開発や現場実証の支援を行うDeepXの、今後の取り組みに引き続き注目していきたい。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

【参考】関連記事としては「自動運転と建機」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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