倉庫で「ダブル自動運転」!日野子会社NLJ、赤字増え5億円超

物流業界における省人化や自動化を推進



出典:官報(※クリックorタップすると拡大できます)

日野自動車子会社のNEXT Logistics Japan株式会社(本社:東京都新宿区/代表取締役:梅村幸生)=NLJ=の第5期決算公告(2023年3月現在)が、官報に掲載されている。

当期純損失は、前期の4億4,700万円から赤字額を13.8%増やし、5億900万円であった。第3期以前の決算は官報では公開されていないようだ。


<純損益の推移>
・第4期:▲4億4,700万円
・第5期:▲5億900万円
※▲はマイナス

■決算概要(2023年3月31日現在)
賃借対照表の要旨(単位:百万円)

▼資産の部
流動資産 104
固定資産 301
資産の部合計 405
▼負債及び純資産の部
流動負債 831
固定負債 342
株主資本 △768
資本金 418
資本剰余金 378
資本準備金 378
利益剰余金 △1,564
その他利益剰余金 △1,564
(うち当期純損失)(509)
負債及び純資産の部合計 405

■物流業界の問題解決のため日野自動車が設立
出典:NEXT Logistics Japanプレスリリース

NLJは、ドライバー不足や積載率の低下などの課題に直面する物流業界の顧客ニーズに応えるための新しい物流のかたちを提案する新会社として、日野自動車により2018年6月に設立された。ドライバー不足解消や積載率向上による物流効率の最適化のほか、労働時間の適正化、輸送品質の向上、環境負荷の低減、物流の利便性向上に取り組んでいる。

より効率的に多くの荷物を運ぶために、ダブル連結トラックの運用や積載率の向上を目指した実証実験を行っている。2023年3月には自動運転フォークリフトと自律走行搬送ロボットを用いたトラックへの荷積み・荷下ろしの自動化と荷姿の標準化について検証した。これにより、ダブル連結トラックを含む複数種類の車両での荷役や車両の両側からの同時荷役、同一荷室内における異種混載パレットの荷役が実装可能な段階にあることを確認したという。


同年7月からは、将来の物流結節点における作業の自動化に向け、自動荷役の実装を開始した。自動運転フォークリフトと自律走行搬送ロボットの連携による荷役作業の自動化において、同社の相模原センターに入庫する、一部支線便トラックからの荷下ろしと、トラックの両側からの同時荷役を実装するという内容になる。アイシンが自律走行搬送ロボットの提供、豊田自動織機が自動運転フォークリフトの提供を行った。

なおNLJは2021年度から、経済産業省による「物流MaaSの実現に向けた研究開発・実証事業」実施団体として選出されており、今回の自動荷役実装もその一環として行われている。

同社は今後、トラックへの荷積みや荷積み・荷下ろし時間の短縮、同一荷室内における異種混載パレットの荷役について取り組み、さらに車両情報や荷物情報と連携したシステム環境の構築を行っていくとしている。


■安全な運行を実現する取り組みも

NLJは、省人化についての取り組みとして、ダブル連結トラックの実走も行っている。これによりドライバー1人で2台分の輸送が可能になり、また積載率を60%にすることにより、これまでの積載率40%のトラック3台分の荷物を運ぶことが可能になるという。

また安心・安全な運行を目指す取り組みとして、2020年5月からドライバーに睡眠改善のアドバイスをするスマホアプリの実証実験を、パートナー企業と共に開始した。腕時計型の睡眠計測デバイスで取得したデータを分析し、各ドライバーに適した睡眠アドバイスを提供する。睡眠課題を改善することにより、より良い健康状態で業務に従事できるようになり、居眠りや注意力不足などによる交通事故を防止することが期待できるという。

■NLJが「2024年問題」の救世主に?

NLJは「幹線輸送の効率化・省人化を目指した、新たな運送スキームの運用。また、あらゆる荷主企業・運送事業会社にご利用いただける物流の仕組みの確立を目指します」と掲げている。

そのために「物流効率の最大化(ドライバー不足解消、積載率の向上)」や「安心安全な物流(労働時間の適正化、輸送品質の向上)」、「持続可能な社会の実現(環境負荷の低減、物流の利便性向上)」の実現のため、実証実験や実装に取り組んでいる。

間近に迫る物流の「2024年問題」の解決を目指し、物流業界のために改革を行うNLJの今後の取り組みに引き続き注目だ。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

【参考】関連記事としては「迫りくる2024年問題、カギを握る「自動運転化」」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事