米自動車大手GM(ゼネラルモーターズ)は、同社のレベル4の自動運転車が中国・上海で路上テストを行うための許可を取得したことを2023年8月24日に発表した。
これにより、GMは初めて中国の公道で自動運転車を走行させることができるようになる。なおこの自動運転車には、中国市場向けにGMの現地チームと中国のスタートアップMomentaが共同で開発した自動運転ソリューションが搭載されるという。
【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?(2023年最新版)」も参照。
■GMがスタートする中国での走行テストとは
GMによるレベル4の自動運転車は、上海市金橋の指定されたテストエリアにおいて、まずは1年間、公道走行が可能となった。金橋は中国で初めて自動運転のテスト走行に解放された繁華街で、GMの中国本社とGM中国先進技術センターの本拠地でもある。
路上テストでは、GMの技術が市販車や個人向け車両に大規模に適用できるということのほか、GMのEV用バッテリー「Ultium」とのシームレスな統合を検証する。使用する車両は、米キャデラックのEV(電気自動車)「LYRIQ」で、自動運転システムを後付けしたものになる。なおテスト車両には、安全のためセーフティドライバーが同乗するという。
GM中国エンジニアリング・センターのエグゼクティブ・ディレクターは、「GMが安全性を最優先事項として、上海で自動運転車の実走行テストを実施することを楽しみにしている。これにより、世界最大の自動車市場である中国において、衝突事故ゼロ、排出ガスゼロ、渋滞ゼロというGMのグローバル・ビジョンが一歩現実に近づくことになる」と抱負を語っている。
■トヨタも出資するMomentaと共同開発
テスト走行するGMの自動運転車に搭載されているのは、Momentaと共同開発した自動運転ソリューションだ。MomentaのAI(人工知能)を活用してアルゴリズムの反復を高速化することで、上海における「Intelligent Connected Vehicle(ICV)」開発ガイドラインで規定されている、より高レベルの路上テストと運用に進むためのテスト車両の準備を行っていくという。
Momentaは2016年に北京で設立され、ディープラーニング(深層学習)技術を武器に自動運転関連ソフトウェアの製品化に取り組んでいる。特に画像認識・判断の領域で強みを持つ。
同社は自動運転レベル4を実現する自動運転ソリューション「MSD(Momenta Self Driving)」や、自家用車向けの大量生産に対応した自動運転レベル3のソフトウェア「Mpilot」、「車載器+クラウド+運行管理」のフリート向けソリューション「AutoRing」などを製品化している。
同社への出資企業には、トヨタやGM、ボッシュ、上海汽車集団など大手自動車メーカーが名を連ねている。また2022年4月には、あいおいニッセイ同和損害保険の中国子会社である愛和誼日生同和財産保険有限公司(ADIC)と、戦略提携契約を締結したことを発表した。
■GMの中国展開に要注目
GMは、今回開始する路上テストから得た知見により、高速道路のような走行条件が制限されたエリアから、要求される条件が厳しい都市環境まで、適用できるよう技術を進化させていくとしている。
米自動車業界でトップを争うGMと、中国の注目企業Momentaによるタッグが、自動運転開発で世界をリードする中国においてどのような動きをみせていくのか、要注目だ。
【参考】関連記事としては「GM Cruiseの自動運転戦略(2023年最新版)」も参照。