商用EV(電気自動車)の製造・販売などを手掛ける株式会社EVモーターズ・ジャパン(本社:福岡県北九州市/代表取締役社長:佐藤裕之)の第4期(2022年4〜12月)決算が、官報に掲載されている。
決算期間9カ月間での売上高は7,691万円、当期純損失は2億9,139万円であった。同社は自動運転バスの実現に向け取り組んでいることでも知られる企業で、自動運転レベル4(高度運転自動化)の技術開発にも注力しているようだ。
【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?(2023年最新版)」も参照。
■決算概要(2022年4月1日〜2022年12月31日)
賃借対照表の要旨(単位:千円)
▼資産の部
流動資産 2,403,750
固定資産 1,137,284
資産合計 3,541,034
▼負債・純資産の部
流動負債 507,912
(うち受注損失引当金)(4,801)
固定負債 141,786
株主資本 2,893,310
・資本金 1,647,600
・資本剰余金 1,637,600
・・資本準備金 1,637,600
・利益剰余金 △391,889
・・その他利益剰余金 △391,889
評価・換算差額等 △7,123
・繰延ヘッジ損益 △7,123
新株予約権 5,150
負債・純資産合計 3,541,034
損益計算書の要旨(単位:千円)
売上高 76,917
売上原価 57,436
売上総利益 19,481
販売費及び一般管理費 308,030
営業損失 288,548
営業外収益 1,332
営業外費用 3,741
経常損失 290,957
特別利益 1,812
税引前当期純損失 289,145
法人税、住民税及び事業税 2,248
当期純損失 291,393
■商用EV車両の製造・販売など手掛ける
2019年設立のEVモーターズ・ジャパンの主な事業内容は4つある。1つ目は商用EV車両の開発・製造・販売・レンタル、2つ目はEV車両の充電ステーションの開発・製造・販売だ。そのほかはエネルギーマネジメント事業とMaaS分野となっている。
資金調達面では、2022年6月にシリーズBラウンドで総額9億2,600万円を、2023年3月にシリーズCラウンドで合計14億5,000万円の資金調達を行っている。全ラウンド合計の資金調達額は総額47億2,500万円にも上るという。
出資者には、西日本鉄道や住友商事、阪急バス、NTTドコモ・ベンチャーズ、四国電力、三菱UFJ信託銀行などがいる。
■「低電費で長距離走行」が強み
EVモーターズ・ジャパンが開発する車両は、EV車両専用に設計しており、軽量化を実現しているのが強みだ。バス車両ボディに軽量化材料を採用することで、EV車両のパワフルな走りと長距離航続を可能にしている。
世界最高レベルの低電費で長距離走行を実現する「EVバス」のほか、物流車としてだけでなく乗合バスや小型コミュニティバスとしても運行可能な「e物流車」、3輪自動車の「eトライク」、地域交通の大幅な低炭素化を実現する「eグリーンスローモビリティ」といった幅広いラインアップとなっている。
2023年1月に、大型路線EVバスにおいては国内企業が開発・製造を行うEVバスとして全国初となるEVバスを、伊予鉄バスへ納車した。同年3月には宮城交通へ小型コミュニティEVバスを納車し、仙台都心循環バス「まちのり『チョコット』withラプラス」において運行している。
同年4月にシダックスグループの大新東へ大型路線EVバスを1台、富士急行へEVバス計6台を納車した。6月には、2025年の大阪・関西万博へ向け、大阪市高速電気軌道にEVバス100台を順次納車していくことを発表した。
■商用EV専用の量産組立工場を建設中
EVモーターズ・ジャパンは、北九州市若松区に国内初となる商用EV専用の量産組立工場「ゼロエミッションe-PARK」を建設することを発表し、2023年4月に起工式を執り行った。
強固な商用EV量産体制の構築と、さらなる車両ラインナップの拡充をはかり、福岡県の新たな地場産業の創出や雇用機会創出による地域社会の発展に貢献し、ゼロエミッション社会の実現に向けて取り組んでいく。
さらに冒頭でも触れたが、自動運転の実用化に備え、レベル4自動運転バスの試作開発・試運転も行っているという。
現在の国内のEVバスは、ディーゼル車をEVタイプに改造したコンバージョンタイプが主流だ。それに対し、EV車両専用で開発を行っているEVモーターズ・ジャパンは、独自技術で他社と一線を画している。
同社のEVバスが今後ますます日本各地で採用されていくか、注目だ。
※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。
【参考】関連記事としては「自動運転バス・シャトルでの移動サービス一覧(2023年最新版)」も参照。