トヨタのサブスク部門KINTO、売上倍増も赤字脱却ならず 純損失39億円計上

第5期決算(2022年4月〜2023年3月)発表



出典:官報(※クリックorタップすると拡大できます)

トヨタグループでクルマのサブスクサービスやMaaS事業を展開する株式会社KINTO(本社:愛知県名古屋市/代表取締役社長:小寺信也)の第5期決算(2022年4月〜2023年3月)が、このほど官報に掲載された。

当期純損失は39億1,700万円で、赤字から抜け出せていない状況が続いている。第4期は62億1,400万円の純損失、第3期は57億2,600万円の純損失を計上していた。


一方、売上高は伸びている。第5期の売上高は198億3,300万円で、第4期の101億1,900万円と比較すると95.9%増とほぼ倍増だ。ちなみに第3期の売上高は32億9,600万円だった。

今後、クルマの「所有から利用へ」の流れは今後さらに加速すると予想され、サブスク事業の今後の伸びしろは大きいと言える。

■決算概要(2023年3月31日現在)
貸借対照表の要旨(単位:百万円)

▼資産の部
流動資産 10,388
固定資産 74,942
資産合計 85,330
▼負債及び純資産の部
流動負債 30,563
賞与引当金 236
固定負債 51,964
退職給付引当金 24
役員退職慰労引当金9
株主資本 2,802
資本金 12,450
資本剰余金 12,450
資本準備金 12,450
利益剰余金 △22,097
その他利益剰余金 △22,097
負債・純資産合計 85,330

損益計算書の要旨(単位:百万円)

売上高 19,833
売上原価 17,315
売上総利益 2,518
販売費及び一般管理費 6,555
営業損失 4,036
営業外収益 159
営業外費用 31
経常損失 3,909
税引前当期純損失 3,909
法人税、住民税及び事業税 8
当期純損失 3,917


■サブスクサービスをメインに展開
出典:KINTO公式サイト

2019年設立のKINTOは、新車のサブスクサービス「KINTO ONE」のほか、厳選した中古車を提供するサブスクサービス「KINTO ONE 中古車」、トヨタ・レクサス既販車のソフトウェア・ハードウェアの機能やアイテムを最新の状態に進化させるサービス「KINTO factory」、MaaSアプリ「my route」などを展開している。

2022年8月には、グループ会社であるKINTOテクノロジーズとともに、AI(人工知能)が日本国内にあるおすすめの外出スポットを1人1人に合わせて提案する独自のアプリ「Prism Japan」を公開した。

2022年12月には、トヨタと共同で新しいクルマのサブスクサービスとして「KINTO Unlimited」を立ち上げ、新型プリウスの一部グレードから提供を開始した。KINTO Unlimitedでは、保険や税金などの諸経費を月額利用料に含めるというKINTOの従来のサブスサービスをベースに、新たに「進化=アップグレード」と「見守り=コネクティッド」の2つの付加価値を提供していくとしている。

またKINTOは、モビリティSaaS「Park Direct(パークダイレクト)」を運営するニーリーと、モビリティ領域において連携を開始することを2023年4月に発表した。この連携により、KINTO ONEで提案できていなかったユーザーの駐車場の確保について、駐車場探しからクルマの契約までオンラインでのサービス提供が可能になった。


■どの段階で黒字になるかに注目

さまざまなサービスを生み出しているKINTO。いまは損益よりも事業拡大に力を入れている印象だが、どの段階で黒字になるかについてもウオッチしていきたい。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

【参考】関連記事としては「トヨタ系KINTO、売上3倍で100億円台に!第4期決算」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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