自動運転業界のユニコーン、時価総額ランキング(2022年最新版)

業界スタートアップ1位は?

B!

自動運転市場が本格化の兆しを見せ、開発企業の株式上場が相次いでいる。その後ろに控えるスタートアップも続々とユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の未上場企業)の仲間入りを果たし、巨額の資金で開発を加速させているようだ。

この記事では、米調査会社CBインサイツが発表した2022年3月時点のユニコーン企業のランキングリストをもとに、特に自動運転関連の取り組みで存在感が高めの企業を抜粋し、ランキング化したものを見ていこう。

■1位:ZongMu Technology/114億ドル(約1兆3,500億円)
出典:ZongMu Technology公式サイト

1位には、自動運転関連で唯一100億ドル超のデカコーンとなった中国ZongMu Technology(縦目科技)が輝いた。同社は2013年の設立以来、ステレオビジョンシステムなどADAS開発を進めていたが、2016年に自動運転開発を本格化し、SLAMやマシンビジョンアルゴリズム、高精度センサー開発などにも力を注いでいる。

2017年に低速レベル4のバレーパーキング技術をリリースしたほか、2018年にはレベル3以上の自動運転ソリューション開発に向け、米サプライヤーのVisteonとパートナーシップを結んでいる。

2019年には長安汽車と低速自動運転や輸送サービス分野で戦略的提携を結ぶなど、OEMとのパートナーシップも確立している。長安汽車や一汽紅旗はすでに同社のバレーパーキングシステムを導入しているようだ。

2020年に発表した総額1億9,000万ドルを調達したシリーズDラウンドには、デンソーやXiaomiも参加している。

▼ZongMu Technology公式サイト
https://www.zongmutech.com/en/

■2位:Nuro/86億ドル(約1兆200億円)
出典:Nuro公式サイト

2位には、車道を走行する大型の自動走行ロボット開発を手掛ける2016年設立の米Nuroがランクインした。

Nuroは高さ1.8メートル、幅1メートルほどの自動運転配送専用車両「R1」を2018年に発表し、以後KrogerやDomino’s Pizza、Walmartといったサービスパートナーとの提携のもと公道実証を進めている。

2022年1月には、第3世代の車両を発表した。大量生産の準備も整っているとしており、本格的な商用化が間近に迫っている印象だ。

資金面では、2019年の資金調達Bラウンドでソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)から9億4,000万ドル(約1,000億円)の投資を受けているほか、2021年のCラウンドでトヨタ系のWoven Capitalから出資を受けるなど日本企業との関連も深い。

大型契約・量産化とともに株式上場に踏み切る可能性も高く、今後の動向に注目だ。

▼Nuro公式サイト
https://www.nuro.ai/

【参考】Nuroについては「Nuroの年表!自動運転配送ロボットを開発、トヨタが出資」も参照。

■3位:Pony.ai/85億ドル(約1兆円)
出典:Pony.ai公式サイト

2016年設立の中国Pony.aiが3位となった。開発を進める自動運転システムはすでに第6世代に達するなど進化を重ね、自動運転タクシーを主軸にトラック開発などにも事業領域を拡大している。

自動運転タクシーは広州にフリートを配備しているほか、北京ではドライバーレス走行や有料サービスの承認を受けている。また、米国では韓国ヒュンダイとパイロットプログラム「BotRide」に取り組むなど精力的だ。

提携関係ではトヨタとパートナーシップを結んでおり、2020年に4億ドル(約475億円)の出資を受けたことが発表されている。

▼Pony.ai公式サイト
https://pony.ai/

【参考】Pony.aiについては「トヨタ出資の自動運転企業Pony.ai、企業価値が1兆円到達」も参照。

■4位:Argo AI/72億ドル(約8,600億円)
出典:Argo AI公式サイト

4位には、フォードやフォルクスワーゲンと手を結ぶ米Argo AIがランクインした。2021年7月には、配車サービス大手の米Lyftのプラットフォームに自動運転車を年内に導入する計画を発表した。2022年までにマイアミ、オースティンでサービスを開始する予定だ。

また、ウォルマートとのパートナーシップのもと、自動運転車によるラストマイル配送サービスをマイアミ、オースティン、テキサス、ワシントンDCで開始することも発表している。

WaymoやGM Cruiseなどに劣らぬ高い技術で自動運転開発競争に新たな風を吹き込むことができるか、要注目だ。

▼Argo AI公式サイト
https://www.argo.ai/

■5位:Horizon Robotics/50億ドル(約5,900億円)
出典:Horizon Robotics公式サイト

AIプロセッサの開発を手掛ける2015年設立の中国スタートアップHorizon Roboticsが5位となった。2017年に発表したAIチップ「BPU(Brain Processing Unit)」を武器に着々とパートナーを拡大しているようだ。

パートナー企業には、長安汽車やNeolix、BYD、Chery、紅旗といった中国企業をはじめ、アウディやコンチネンタル、ボッシュといった欧州企業も名を連ねている。コンチネンタルとはADASや自動運転向けソリューションの商業化に向け合弁を立ち上げることが2021年に発表されている。

一部報道で2021年中の株式上場を目指す動きなども報じられていた。2022年中にどのような経営判断を下すのか、改めて注目が集まるところだ。

▼Horizon Robotics公式サイト
https://en.horizon.ai/

【参考】Horizon Roboticsについては「自動運転向けAIチップ開発のHorizon、2021年中に上場へ」も参照。

■5位:WM Motor/50億ドル(約5,900億円)
出典:WM Motor公式サイト

2015年設立の中国EVスタートアップWM MotorがHorizon Roboticsと並び5位にランクインした。2021年に計44,157台のBEVを納入するなど、着実に業績を伸ばしている。

自動運転技術の研究開発にも意欲的で、Baidu(百度)とのパートナーシップのもと、レベル3、レベル4ソリューションの実装を進めていく計画を発表している。すでにバレーパーキング技術などは実装されているようだ。

▼WM Motor公式サイト
https://www.wm-motor.com/?lang=en

【参考】EV各社の動向については「EVメーカーの自動運転戦略一覧(2021年最新版)」も参照。

■7位:WeRide/44億ドル(約5,200億円)
出典:WeRide公式サイト

2017年設立の中国WeRide(文遠知行)が7位にランクインした。自動運転タクシーや自動運転ミニバスなどの商用化を推し進めており、2022年1月に公道走行距離が1,000万キロを突破したことを発表している。

広州で自動運転タクシーサービスを展開するほか、ミニロボバスも広州、鄭州、南京とサービスエリアを拡大している。2021年9月には、配送向けの自動運転ミニバンのパイロットプログラムも発表している。

2021年10月には、新世代のセンサーキット「WeRide Sensor Suite 4.0」を発表した。大幅な小型化を実現したほか、センサーの汚れを識別し、自動洗浄する機能なども備えているようだ。

▼WeRide公式サイト
https://www.weride.ai/en/

■8位:ECARX/33億ドル(約3,900億円)
出典:ECARX公式サイト

2016年設立の中国スタートアップECARX(億咖通科技)が8位に食い込んだ。スマートコックピットやビッグデータ、チップ、高精度地図など自動車向けのインテリジェントソリューションの研究開発を手掛けている。

同社はGeely Group創業者らが設立した独立企業で、中国各都市のほかマレーシアやスウェーデン、英国などに拠点を設けている。これまでにBaiduなどから資金を調達している。

▼ECARX公式サイト
https://www.ecarxgroup.com/

■9位:Graphcore/27億ドル(約3,300億円)
出典:Graphcore公式サイト

AIチップの開発などを手掛ける半導体スタートアップの英Graphcoreが9位となった。AIコンピューティング用に特別に設計した「インテリジェンスプロセシングユニット(IPU)」が同社の武器だ。

マイクロソフトやサムスン、デルテクノロジーズなど広く出資を受けている。ボッシュやBMWも投資家に名を連ねており、自動車業界からも高い期待を寄せられているようだ。

▼Graphcore公式サイト
https://www.graphcore.ai/

■10位:Hesai Photonics Technology/21億ドル(約2,600億円)
出典:Hesai Photonics Technology公式サイト

上場ラッシュが続くLiDAR業界から、2014年設立の中国Hesaiが唯一10位にランクインした。ZooxやKodiak Robotics、WeRideといった自動運転開発企業とパートナーシップを結んでいる。

資金面では、これまでにBaiduやボッシュ、オンセミ、Xiaomi、美団などから出資を受けている。新しいLiDAR製造センターが2022年に操業を開始する見込みで、100万台以上の生産能力を持つという。

▼Hesai公式サイト
https://www.hesaitech.com/en

■その他にも有力企業が目白押し

このほかにも、日本のAIスタートアップPreferred Networks(20億ドル=2,370億円)をはじめ、自動運転トラック開発を手掛けるスウェーデンのEinride(14.4億ドル=1,700億円)、中国Momenta(10億ドル=1,180億円)など、有力企業が目白押しだ。

また、ランクからは除外したが、ロジスティクス系や配車・移動サービス系の企業も多数ランクインしており、インドのANI Technologies(75億ドル=約8,900億円)や中国Hello TransTech(50億ドル=約5,935億円)、米Via(33億ドル=約3,917億円)など、投資家からの熱い視線は続いているようだ。

■【まとめ】業界に押し寄せるイノベーションの波

Horizon RoboticsやHesaiなど株式公開が噂される企業も多く、ランキングの中から2022年中に上場に踏み切る企業が複数出てきてもおかしくない状況だ。

スタートアップの資金調達額は、各社のテクノロジーやビジネス手法などへの期待の高さを反映したものだ。新たなテクノロジーを武器に、業界にさらなるイノベーションを巻き起こすのか。各社の動向に要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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