自動運転車の「ベース車両」、トヨタ車が続々採用されている理由

「プリウス」や「レクサスRX」が人気



自動運転配送ロボットの開発を手掛ける米Nuroが、セブンイレブンの米国法人と新たな取り組みに着手した。カリフォルニア州初となる商用自動運転配送サービスを開始したのだ。サービス展開にあたり、まずプリウスを改造した自動運転車両で実用実証を積み重ね、その後オリジナルの「R2」導入を図っていく。

自動運転の開発現場では、かなりトヨタ車が採用されているケースが目立つ。この記事では、自動運転開発や実証、サービスにトヨタ車両を使用している事例をまとめてみた。


■Nuro:サービス実証初期にプリウス活用
出典:Nuro公式ブログ

Nuroは2021年12月、7-Elevenとの提携のもとカリフォルニア初となる自動運転による商用配送サービスを導入することを発表した。スマートフォンから注文できる7NOWアプリを活用し、自動運転で宅配する試みだ。

当面は自動運転車に改造したプリウスを使用し、セーフティドライバー同乗のもと配送経験を積み重ねていく。その後、無人配送ロボット「R2」を導入する方針だ。

プリウスから徐々にR2に移行していく導入方法は、同社にとってスタンダードな手法で、クローガーやウォルマートなどとの取り組みにおいても初期段階ではプリウスを使用している。

R2はハンドルなどを備えない自動運転限定車両だが、米運輸省(DOT)及び道路交通安全局(NHTSA)から保安基準上の規制免除を取得しており、公道走行が認められている。とは言え、サービス実装の前段階においてマッピングや安全確認、オペレーションの確認などが必須となるため、有人走行可能なプリウスを活用して準備を進めているのだ。


▼Nuro公式サイト
https://www.nuro.ai/

■May Mobility:RX450hをシャトルフリートに
出典:May Mobility公式サイト

自動運転シャトルバスを開発する米May Mobilityは2021年1月、レクサス「RX450h」をシャトルフリートに追加すると発表した。OEMプラットフォームに自社の自動運転システムを統合する最初の取り組みだ。

同社はこれまで、オフロード車の開発などで知られるPolarisのカート車両をベースに改造した自動運転シャトルを多用していたが、トヨタの車両を活用して自動運転車を量産化・フリート化し、サービス拡大を図っていく方針のようだ。


同社は、トヨタのベンチャーキャピタルファンド「Toyota AI Ventures(現Toyota Ventures)」やトヨタが関わる「未来創生ファンド」から出資を受けており、この縁がトヨタ車の採用につながっているものと思われる。

自動運転RX450hは、第1弾としてPolarisシャトルを運用中のテキサス州アーリントンで4台追加することとしている。

また、同年8月には、ミシガン州グランドラピッズで自動運転RX450hを活用したオンデマンド自動運転シャトルサービスの開始を発表したほか、10月に同州アナーバーでもサービスインしている。

12月には、トヨタモビリティ財団などとともにインディアナ州フィッシャーズで無料の自動運転シャトルサービスを開始することも発表している。

このほか、トヨタとの協力のもとトヨタの米国モデル「シエナ」に自動運転キットを搭載し、2022年中に公共シャトルフリートに追加していく計画も発表している。

▼May Mobility公式サイト
https://maymobility.com/

【参考】May Mobilityについては「レクサスがアメリカで自動運転タクシーに!活躍の場が拡大中」も参照。

■Pony.ai:RX450はじめさまざまなプラットフォームと統合
出典:Pony.aiプレスリリース

中国のスタートアップであるPony.aiも、レクサス「RX450」に自動運転システム「PonyPilot」を統合している。同社は2019年、自動運転技術の開発に向けトヨタと戦略的パートナーシップを結び、シリーズBラウンドでトヨタから4億ドル(約440億円)の戦略的投資を受けている。

同社はヒュンダイ「KONA」やBYD(比亜迪)「秦」、広汽集団のNEVブランド「Aion LX」など、さまざまなプラットフォームと統合を図っており、RX450もその一環という位置付けだ。

中国と米国で自動運転サービスの展開を進めており、例えば中国内では中国メーカー、米国内ではレクサスブランド――といった具合に使い分ける可能性なども考えられそうだ。

▼Pony.ai公式サイト
https://www.pony.ai/

Aurora Innovation:「Sienna Autono-MaaS」実現へ
出典:Aurora Innovationプレスリリース

2021年11月に米ナスダックに上場を果たしたAurora Innovationは、トヨタ「シエナ」に自動運転システム「Aurora Driver」を統合し、ライドシェアネットワーク向けに量産・販売していく計画を発表している。

同社は2021年2月にトヨタ及びデンソーとパートナーシップを結び、自動運転シエナを2021年中に開発し、2024年後半を目途にUberをはじめとした配車ネットワークへの導入を進めていくこととしている。すでにプロトタイプは完成し、実証段階に突入している。

シエナは、多目的に活用可能なMaaS向けプラットフォーム「MaaS Sienna」としての活用計画が持ち上がっていたが、現在は「Sienna Autono-MaaS」として、自動運転サービス向けのプラットフォーム化を進めているようだ。

▼Aurora Innovation公式サイト
https://aurora.tech/

■Yandex:初期実証にプリウス活用

ロシアのIT大手Yandexも、開発当初はプリウスを独自改造した自動運転車で実証を重ねている。自動運転プリウスで雪道での走行や780キロに及ぶ長距離走行実証、自動運転配車サービス実証などを行ってきた。

その後、2019年に現代モービスとパートナーシップを結んでおり、現在はヒュンダイや起亜の量産モデルをベースにした自動運転プロトタイプ車両の開発を進めているものと思われる。

▼Yandex公式サイト
https://yandex.com/

【参考】Yandexについては「Yandex、自動運転の年表!ロシアのGoogle、虎視眈々」も参照。

■ティアフォーなど:JPN TAXIを自動運転化
出典:ティアフォー社プレスリリース

ティアフォー、Mobility Technologies(旧JapanTaxi)損害保険ジャパン日本興亜、KDDI、アイサンテクノロジーの5社は2019年、トヨタのユニバーサルデザイン仕様のJPN TAXI(ジャパンタクシー)車両に自動運転システムを導入し、自動運転タクシーの事業化に向け共同開発を進めていくと発表した。

JPN TAXIは、高齢者や車いす利用者など、誰もが利用しやすい移動サービス向け車両として国内各地のタクシー事業者が導入している。自動運転車も、誰もが自由な移動を可能にする技術として開発が進められており、親和性が高い車両と言える。

すでに東京都内などで公道実証を行っており、自動運転機能の高度化とともにサービス機能の拡充や事業モデルの精査段階に突入している。

【参考】ティアフォーなどの取り組みについては「トヨタ製「JPN TAXI」を自動運転化!ティアフォーやJapanTaxi、無人タクシー実証を実施へ」も参照。

■ZMP:SUVタイプにレクサスRXシリーズ

ロボット開発を手掛けるZMPの自動運転車両プラットフォームRoboCarシリーズにおいても、トヨタ車が活用されている。

RoboCarは自動運転の開発ツールとして販売しており、1/10スケールのミニカーから1人乗りEVタイプ、ハイブリッドタイプ、ミニバンタイプ、SUVタイプ、小型EVバスなどがラインアップされている。このうち、ハイブリッドタイプにプリウス、SUVタイプにレクサスRXシリーズが活用されている。

【参考】ZMPについては「ZMP、自動運転可能な「RoboCar SUV」の実物を展示」も参照。

■埼玉工業大学:「SAIKOカー」はプリウスがベース

自動運転開発に力を入れる国内各大学でも、トヨタ車を採用する例が多い。埼玉工業大学の自動運転実験車「SAIKOカー」はプリウスをベースとしており、これまでに数々の公道実証を行っている。

長い研究実績を誇る金沢大学の菅沼直樹教授の研究室は、開発車両はVISTAに始まり、LEGACY(スバル)、プリウス、アルファード、XV(スバル)と続き、2019年からRX450hLを活用している。

群馬大学も同様にプリウスをベースに自動運転改造を行っているほか、名古屋大学は低速自動運転を行う「ゆっくりバン」にアルファードを使用している。

【参考】埼玉工業大学の取り組みについては「埼玉工業大学の自動運転車、さいしんビジネスフェア2019に出展 LiDARやカメラ搭載」も参照。

■なぜトヨタ車の採用が多いのか

国内はもとより、海外でもプリウスなどを採用する例が多いことが分かった。2010年代の開発にはプリウス、近年はレクサスのRX450シリーズが採用されるケースが多い印象だ。

国内開発勢やトヨタと資本・提携関係にある企業がトヨタ車を採用するのはむしろ当然かもしれないが、Nuroはトヨタからの出資前にすでにプリウスを採用している。Yandexも自発的にプリウスを採用している。

なぜトヨタ車がベースとなっているのか。プリウスの場合、世界的に市場に出回っている量産・普及性や、取り回しやすいボディサイズ、費用対効果、ハイブリッドシステムなどが採用理由に挙げられそうだ。一方、RX450もハイブリッドモデルが採用される例が多く、サービスインを視野に一定のラグジュアリー感も検討材料となっている可能性が考えられる。

特に、ハイブリッドやプラグインハイブリッドが重要視されている可能性がある。各機能がコンピュータ化される自動運転車はBEVが一つの理想となるが、現状は航続距離などが課題となり、長時間に及ぶ実証やサービスに耐えきれない。

しかし、ハイブリッドであれば長時間走行はもちろん、バッテリー関連も強い。自家用車同様、自動運転車もBEVに向けた過渡期においてはハイブリッドやプラグインハイブリッドが重宝されるのかもしれない。

■【まとめ】自動運転タクシーはBEVとEVが混在?

開発段階においては、中古でも手に入れやすい普及モデルで、ハイブリッドの代名詞的存在であるプリウスが重宝されているのかもしれない。

また、新車が前提となる今後のサービス実装期においては、乗り心地などや高級感なども考慮し、RX450などのハイブリッドを採用する例が多くなるのかもしれない。

もちろん、中国WeRideのように、日産のBEV「リーフ」を自動運転化している例もあり、BEVとEVが混在していくことは間違いない。

近い将来、自動運転タクシーの主力モデルはどうなっているのか。予測を立ててみるのも一興だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事