自動運転関連企業、主な資金調達一覧(2021年最新版)

有力スタートアップが続々、株式公開も増加

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出典:Aurora Innovation公式サイト

自動運転技術の実用化が始まり、本格的なビジネス展開も徐々にその輪郭をあらわにし始めた。実用化に向けたロードマップが現実味を帯びるとともに資金調達も活発となり、LiDAR開発企業を筆頭に株式公開を果たすスタートアップ卒業組も相次いでいる。

この記事では、2021年に実施・発表された自動運転分野における各社の資金調達と動向について解説していく。

Waymo:2021年6月に25億ドルを調達
出典:Waymo公式サイト

自動運転開発の代名詞的存在となった米Waymoも資金調達を本格化させている。グーグル系列で資金には困らない印象を受けるが、アルファベット傘下の独立企業として将来を見据え、資本業務提携をはじめとしたパートナーシップの拡大にも力を入れているものと思われる。

同社は2020年3月のベンチャーラウンドでアルファベットやマグナなどから23億ドル(約2,600億円)を調達したのを皮切りに、同年5月に7億5,000万ドル(約830億円)を追加。2021年6月には、2回目の外部投資ラウンドとして25億ドル(約2,800億円)を調達している。

2018年にアリゾナ州フェニックスで自動運転タクシーサービス「Waymo One」を開始して以来、ドライバーレス化など技術とサービスの向上を図り続けているが、2021年8月にカリフォルニア州サンフランシスコで新たなプログラムに着手し、利用者限定で自動運転タクシーサービスの実証を開始した。

同年11月には、ニューヨークでも高精度3次元地図の作製を開始しており、自動運転タクシーサービスの拡大路線を本格化させる可能性が高そうだ。

また、自動運転タクシーと同様力を入れている自動運転トラック「Waymo Via」も、ダイムラートラックなどとの協業のもと、テキサス、アリゾナ、カリフォルニアなどで事業を加速させているようだ。

2020年からの資金調達は、こうした事業本格化を見据えたものと思われる。近々大きな動きを見せる可能性も高そうだ。

▼Waymo公式サイト
https://waymo.com/

Nuro:2021年11月に6億ドルを調達
出典:Nuro公式サイト

配送向けの中型自動走行ロボットの開発を手掛ける米Nuroは2021年11月、シリーズDラウンドで6億ドル(約670億円)の資金調達を発表した。出資者には、ソフトバンクビジョンファンド(SVF)やグーグル、クローガーなどが名を連ねている。

2016~2017年のシリーズAで9,200万ドル(約100億円)、2019年のシリーズBでSVFから9億4,000万ドル(約1,000億円)、2020年のシリーズCでSVFなどから5億ドル(約550億円)をそれぞれ調達するなど、資金面は順調な様子だ。2021年3月には、シリーズCの追加でWoven Capitalからも出資を得ている。

配送パートナーには、ドミノピザやクローガー、ウォルマート、FedEx、CVS Pharmacy、Chipotleなどが名を連ね、各地で実証を積み重ねているほか、ヒューストンメトロとともに障がい者向けに食料品などを配達するパイロットプログラムにも取り組んでいる。

同社が開発した自動走行ロボット「R2」は米国運輸省(DOT)と米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)から保安基準に関わる規制免除を受けており、カリフォルニア州車両管理局(DMV)などからはドライバーレスでの公道走行や商用利用の許可も得ている。

本格的な商用サービス展開もそう遠くないものと思われ、株式上場にも注目が集まるところだ。

▼Nuro公式サイト
https://www.nuro.ai/

【参考】関連記事としては「Nuroの年表!自動運転配送ロボットを開発、トヨタが出資」も参照。

■Momenta:2021年11月までに10億ドル超を調達
出典:Momenta公式サイト

中国スタートアップのMomentaは、2021年11月までに追加分を含むシリーズCラウンドで計10億ドル超(約1,130億円)を調達したと発表した。

同ラウンドでは、同年3月にトヨタや上海汽車、メルセデスベンツ、ダイムラー、テンセント、ボッシュなどから5億ドル、9月にトヨタやGMなどから3億ドル、11月に上海汽車などから2億ドルを調達している。自動車メーカー系がここまで集結するのも珍しい印象だ。

同社は、自家用車向けに高速道路や駐車場などで自動運転を可能にするレベル3相当のソフトウェア「Mpilot」や、自動運転タクシーなどへの導入を目指すレベル4システム「MSD(Momenta Self Driving)」などの開発を進めている。

スマートドライブ時代の到来を加速するため、トヨタをはじめとした業界パートナーと緊密に協力し、グローバルな運転環境に適した最先端の自動運転技術を開発・展開していく方針だ。

▼Momenta公式サイト
https://www.momenta.cn/

【参考】Momentaについては「中国の自動運転企業Momenta、トヨタなどから5億ドル資金調達」も参照。

Cruise:2021年1〜6月に77.5億ドルを調達
出典:Cruise公式サイト

GM傘下のCruiseも2021年に多くの資金調達を実施している。1月のコーポレートラウンドでホンダやGM、マイクロソフトから20億ドル(約2,200億円)、4月にはウォルマートから7億5,000万ドル(約830億円)を得たほか、6月にはGM Financialから50億ドル(約5,600億円)の融資を受けている。

同社は2016年にGMに推定10億ドル(約1,100億円)で買収された後、2018年にGM、SVF、ホンダから計41億5,000万ドル(約4,500億円)、2019年に追加で12億ドル(約1,300億円)を調達している。

ウォルマートとは、自動運転配送パイロットの立ち上げを目指し、非接触配達の実証プログラムをアリゾナ州で実施している。また、ドバイ道路交通局とも2023年から自動運転タクシーの運行を行う契約を結んだほか、ホンダとの協業のもと、日本で導入を目指す実証もスタートしている。

さらに、カリフォルニア州車両管理局(DMV)からはドライバーレスの自動運転タクシーサービスの許可も取得するなど、着実に実用化に向けた取り組みが進展している。今後大きく動き出すことは間違いなく、自動車メーカー系の自動運転開発企業としてどのような事業展開を行っていくか、要注目だ。

▼Cruise公式サイト
https://www.getcruise.com/

■WeRide:2021年はシリーズBとCで9億ドル超を調達
出典:WeRide公式サイト

中国スタートアップのWeRideは、2021年1月までのシリーズBラウンドで3億1,000万ドル(約340億ドル)を調達したほか、同年5月までのシリーズCではルノー日産・三菱アライアンスのベンチャーキャピタルなどから6億ドル超(約660億円)を調達したと発表している。

自動運転タクシーの実用化に向け実用実証に力を入れるほか、2021年7月に同業Muyue Technology(MoonX)を買収して開発力を強化した。また、9月にはレベル4搭載のバン「WeRide Robovan」を発表し、貨物輸送分野への進出を表明するなど、意欲的な取り組みが目立つ。躍進はまだまだ続きそうだ。

中国スタートアップ勢ではこのほか、Pony.aiが2021年1月までのCラウンドで3億6,700万ドル(約400億円)を調達している。同社は米国市場への上場計画が報じられていたが、米中間の摩擦の影響で計画は一時凍結されているようだ。

▼WeRide公式サイト
https://www.weride.ai/

■Horizon Robotics:2021年2月までに計9億ドルを調達
出典:Horizon Robotics公式サイト

半導体関連では、中国スタートアップのHorizon RoboticsがシリーズCラウンドで2021年2月までに計9億ドル(約1,000億円)を調達している。

出資者には、第一汽車や東風汽車、長城汽車などが名を連ねている。過去のシリーズA、Bには韓国SKグループや米インテル系キャピタルなども参加している。

同社は、独自開発したAIプロセッサ「BPU(Brain Processing Unit)」を武器に自動運転分野に進出しており、すでに新興EVメーカーなどが同社製のチップを採用したモデルを発表している。

2021年10月には、独コンチネンタルと上海に合弁を設立し、自動運転やADASに関するコンチネンタルの知見のもと、AIプロセッサやアルゴリズム開発を加速させていくとしている。

株式上場のうわさも飛び交っており、実現すれば大型案件となることは間違いない。注目度が高い半導体開発分野で大きく名を上げ、グローバル展開を推し進めていく可能性も高そうだ。

▼Horizon Robotics公式サイト
https://en.horizon.ai/

【参考】Horizon Roboticsについては「自動運転関連企業の上場ラッシュは継続!AuroraとHorizonも!」も参照。

■EasyMile:2021年4月に5,500万ユーロの調達を発表
出典:EasyMile公式サイト

自動運転シャトルのグローバル展開を進める仏スタートアップのEasyMileは2021年4月、シリーズBラウンドで5,500万ユーロ(約72億円)を調達したと発表した。出資者にはコンチネンタルなどが名を連ねている。

同社が開発した自動運転シャトル「EZ10」は、日本を含む世界各地で実証や実用化に用いられるなど、早くから自動運転技術を社会実装してきた。

2021年11月には、仏運輸省から公道でのレベル4の走行要件を満たしたことが発表され、2022年の実用化に向け医療キャンパスでサービス実証を進めている。

比較的低速で定路線を走行するモデルのため、初期における自動運転の実装には非常に有利と言える。今後、世界でレベル4の法整備が進むとともに、こうしたモデルへの注目度が一気に高まる可能性がありそうだ。

欧州ではこのほか、自動運転トラック開発を手掛けるスウェーデンのEinrideが2021年5月にシリーズBで1億1,000万ドル(110億円)、自動運転ソフトウェアを開発する英Oxboticaが同年4月までのシリーズBで4,400万ポンド(約66億円)をそれぞれ調達している。

▼EasyMile公式サイト
https://easymile.com/

■Aurora Innovation:2021年11月にナスダック市場に上場
出典:Aurora Innovation公式サイト

自動運転開発の新興勢力の一部は、株式上場の段階に達している。米Aurora Innovationは2021年11月にナスダック市場に上場を果たした。投資ラウンドを卒業し、公開市場でさらなるステップアップに臨む。

12月1日時点の時価総額は85億ドル(約9,600億円)となっている。大口の株主には、ボルボ・グループやUber Technologies、PACCARなどが名を連ねている。SPAC上場のため一般投資家からの注目度はまだ低いが、サービス実装が目に見える段階に達した際に大幅に価値を高める可能性がある。

同社はボルボ・グループなどのほか、トヨタやデンソーとも協業しており、自動運転システム「Aurora Driver」を搭載したトヨタ・シエナをUberをはじめとしたライドシェアネットワークに導入していく計画だ。自動運転シエナはすでに構築済みで、ピッツバーグやダラスなどで実証を重ねている。

▼Aurora Innovation公式サイト
https://aurora.tech/

■Aeva TechnologiesなどLiDAR開発企業

自動運転の「目」となるLiDAR開発企業は、すでに上場ラッシュが始まっている。2020年にVelodyne LidarとLuminar Technologiesが上場し、2021年にも3月にOusterとAeva Technologies、4月にInnoviz Technologies、8月にAEyeがそれぞれ株式を公開している。

12月1日時点における時価総額は、Ousterが約1300億円、Aeva Technologiesが約2500億円、Innoviz Technologiesが約1040億円、AEyeが約970億円となっている。

2017年設立のAevaは、これまでシーズラウンドと2018年のAラウンド、2019年のコーポレートラウンドで資金調達したのみで、非常に早い株式公開と言える。

FMCW方式の4D-LiDARの開発を手掛けており、2021年2月にデンソーと次世代LiDARの共同開発を行うことを発表したほか、同年8月にはNikonと戦略的パートナーシップを交わしている。

AevaはNikonとの提携を「自動運転アプリケーションを超えた拡張戦略のマイルストーン」と位置付けており、自動運転のみならず産業オートメーションなどにも広く展開していく構えだ。

自動運転関連でも同年11月に自動運転トラック開発企業のPlusとの大型契約が発表されており、躍進はまだまだ続きそうだ。

▼Velodyne Lidar公式サイト
https://velodynelidar.com/
▼Luminar Technologies公式サイト
https://www.luminartech.com/
▼Ouster公式サイト
https://ouster.com/
▼Aeva Technologies公式サイト
https://www.aeva.ai/
▼Innoviz Technologies公式サイト
https://innoviz.tech/
▼AEye公式サイト
https://www.aeye.ai/

■Kodiak Roboticsなど自動運転トラック開発企業

自動運転トラック開発を手掛けるKodiak Roboticsは2021年11月、シリーズBラウンドで1億2,500万ドル(約140億円)を調達したと発表した。出資者には、ブリヂストンアメリカズやBMW iベンチャーズなどが名を連ねている。

同社は2018年設立と日は浅いが、モジュール式のセンサースイートで構成される第4世代の「Kodiak Driver」を発表するなど、スピード感あふれる開発を進めている。今回の資金調達で実証用の自動運転トラックや人員を強化し、さらに開発を加速させていく方針だ。

LiDAR開発企業同様、自動運転トラック開発企業の躍進もすさまじく、Gatikは3月に900万カナダドル(約8億円)、8月にはシリーズBで8,500万ドル(約96億ドル)をそれぞれ調達した。

PlusはシリーズDで2月に2億ドル(約220億円)、4月に2億1,000万ドル(約230億円)をそれぞれ調達しており、SPAC上場も検討段階に入っているという。

11月にナスダック市場に上場したEmbark Trucksは、12月1日時点で時価総額4200億円に達している。各社の資金調達の場も株式市場へと移り始めているようだ。

▼Kodiak Robotics公式サイト
https://kodiak.ai/
▼Gatik公式サイト
https://gatik.ai/
▼Plus公式サイト
https://plus.ai/
▼Embark Trucks公式サイト
https://embarktrucks.com/

■【まとめ】自動運転社会の到来は目前 各社が本格的な準備段階に突入

すでに上場した企業を除くと、自動運転領域における2021年の主な資金調達は、以下の通りとなる。

企業 資金調達の概要
Waymo 2021年6月に25億ドルを調達
Nuro 2021年11月に6億ドルを調達
Momenta 2021年11月までに10億ドル超を調達
Cruise 2021年1〜6月に77.5億ドルを調達
WeRide 2021年は9億ドル超を調達
Horizon Robotics 2021年2月までに計9億ドルを調達
EasyMile 2021年4月に5,500万ユーロの調達を発表

WaymoやCruise、Nuroといった代表格がそれぞれ資金調達を加速させている印象で、数年後に迫った社会実装や事業拡大に向け、それぞれ本格的に準備段階に入ったものと思われる。

有力スタートアップの株式公開をはじめ、ステルスモードから表舞台に出てくる新興組もまだまだ相次ぐ見込みで、自動運転業界はさらに賑わいを増しそうだ。

日本では、スタートアップの支援強化に向け経済産業省が専門部署を新設することが報じられている。支援の中身が気になるところだが、競争を勝ち抜くスピード感あふれる研究開発と実用化には、資金調達を行いやすい環境整備が必須となることは言うまでもない。国内の動向にも引き続き注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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