自動運転予算、国交省が「2800倍」要望 来年度向け

「レベル2++認定制度」も予算化



来年度予算案に向けた各省の令和9年度概算要求が出そろったようだ。国土交通省物流・自動車局は、一般会計で前年度当初比17.5倍の265億円、自動車安全特別会計で同1.4倍の921億円を要求した。


このうち、「自動運転社会の実現」に対し前年度比2,839.12倍となる18億円を要望するなど、自動運転関連施策も勢いを逸することなくしっかりと盛り込まれているようだ。

物流・自動車局の概算要求とともに、自動運転施策の最前線に触れていこう。

▼令和9年度 予算概算要求 概要|国土交通省物流・自動車局
https://www.mlit.go.jp/page/content/002018610.pdf

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■国土交通省物流・自動車局の概算要求

国交省全体では前年度比1.44倍を要望

国土交通省全体では、一般会計 8兆7,694億円(前年度当初比1.44倍、令和7年度補正含め1.35倍)、財政投融資2兆134億円(同1.47倍)を要求している。


このうち、同省物流・自動車局は一般会計265億円(同17.5倍)、自動車安全特別会計921億円(同1.4倍)を要求した。

主要施策別では、以下となっている。

  • ①「総合物流施策大綱」を踏まえた物流革新の抜本的強化209億4,800万円(7.99倍)
  • ②自動車運送業及び整備業における人材確保等の推進62億700万円(30.54倍)
  • ③自動運転社会に対応したDXの推進等156億7,900万円(2.26倍)
  • ④脱炭素社会の実現に向けた自動車分野のGXの推進12億1,000万円(2.12倍)
  • ⑤自動車事故被害者救済、事故防止・安全対策の推進等261億100万円(1.74倍)
出典:国土交通省公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)

自動運転トラック実装加速化事業は前年度比2800倍超

「『総合物流施策大綱』を踏まえた物流革新の抜本的強化」では、2026年3月に閣議決定された「総合物流施策大綱」を踏まえ、物流の生産性向上・商慣行の見直しと人材の確保などとともに、「自動運転社会の実現に向けたレベル4自動運転トラックの早期社会実装」が盛り込まれている。

自動運転トラック実装加速化事業は、前年度比2839.1倍の18億円を要望している。前年度が100万円未満と少額のため実質的に新規事業のようなものだ。


同事業では、悪条件における走行環境やトラブル発生時を想定した対応オペレーションなどの自動運転トラックの走行技術の検証や、有人・無人切替えを円滑に行うことができる高速道路直結の物流拠点の整備、運行管理システムの構築・検証などレベル4自動運転トラックの社会実装に向けた取り組みを加速化する。

高速道路におけるレベル4の自動運転トラックの早期社会実装に向け、自動運転サービスの提供を検討しているコンソーシアムなどによるビジネスモデルの検討や、実証や安全な運行を実現するためのシステム開発などを支援する。

高速道路における自動運転トラック実現に向けては、「自動運転支援道」構築に向けた取り組みなども進められている。インフラ面に関しては、同省道路局の所管となる。物流・自動車局としては、開発・運用サイドを支援する施策を実施していく……ということだ。

出典:国土交通省公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)

ADAS関連事業も

自動運転関連施策となる「自動運転社会に対応したDXの推進等」では、以下となっている。

  • ①高度安全運転支援システム普及促進事業4億円(経済産業省連携事業・新規)
  • ②自動運転(レベル4)法規要件の深化のための調査・検討2億5,400万円(1.1倍)
  • ③自動車登録検査手続のDX123億7,500万円(2.1倍)
  • ④自動車の技術・基準の国際標準化等の推進8億5,000万円(1.2倍)

①では、AIを活用した高度な安全運転支援システムを搭載した車両の開発・普及を促進するため、性能認定制度の運用を開始するとともに、急速な技術開発を踏まえた調査研究を継続実施する。

従来のアダプティブ・クルーズ・コントロールやレーンキープアシストを、AIを活用することで汎用性を高め、より高精度化を実現するレベル2++の実装が日本国内でも2027年度に計画されている。この搭載車両を対象に国が「性能認定」することで、消費者・ユーザーの社会受容性向上を図っていく。

性能認定制度に基づく性能評価の実施、AIを活用した安全運転支援技術の評価手法の検討・改善、性能認定を受けた車両の導入支援を行う。

性能認定制度において、レベル2++の安全性能を「可視化」することで、市場における技術開発競争を促進するとともに、ユーザーが安全性の高いシステムを搭載した車両を選択しやすい環境を整備し、事故削減に効果的なAIを活用した高度な安全運転支援システムを搭載した車両の普及を促進していく。

出典:国土交通省公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)

レベル4関連の検討も継続

②では、自動運転車の社会実装に向け、三位一体の総合的な安全対策のあり方や国際的な議論の動向などを踏まえ、レベル4車両としての責任範囲と判断のあり方の両面から、社会が受け入れられる自動運転車の安全水準の明確化を進めるための調査検討を行う。

③では、自動車登録検査手続のDXを更に進めることにより、申請者や関係事業者の利便性の向上や、職員の業務効率化を図る。これは自動運転と直接関係ないため、詳細は割愛する。

④では、自動車メーカーなどがグローバルに活躍できる環境を整備するため、日本の技術・基準の国際標準化などを推進する。

重要な会議の議長職獲得などを推進し、日本の技術・基準をベースにした国際基準の提案や、アジア諸国との連携などに必要な調査・研究を進めていく。

出典:国土交通省公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)

ADASの安全性能評価やスキャンツール導入支援策も

このほか、「自動車事故被害者救済、事故防止・安全対策の推進等」の中に、自家用車におけるADASに関連する施策「自動車アセスメント事業」や「先進安全自動車の整備環境の確保事業」が盛り込まれている。

自動車アセスメント事業では、ユーザーが安全性の高い自動車を選択しやすい環境を整えるとともに、メーカーに対してより安全な製品の開発を促すため、自動車等の安全性能評価(自動車アセスメント)を実施する。

具体的には、衝突被害軽減ブレーキの試験、衝突試験など、さまざまな安全性能の評価試験を実施する。2027年度は、2028年度以降に新規で評価導入を予定している「自動運転を見据えた運転支援技術」の評価ならびに新規評価手法として導入予定の「バーチャルテスト」「シナリオベース評価」に向けた調査を実施する。

先進安全自動車の整備環境の確保事業では、整備事業者による自動車の点検整備が確実に実施できる環境構築を支援し、適切な点検整備によって自動車の不具合発生を防止し事故防止を図る。

具体的には、スキャンツールなどの導入支援や普及促進のための実態調査を行う。スキャンツールは、自動車のコンピュータに接続し、先進安全装置などの故障情報を読み出すツールで、先進安全装置の誤作動を防ぐための点検整備に欠かせない。自動車のコンピュータ化・高度化に伴い、スキャンツールもさらなる高機能化が必要になっている。

■国の動向

自動運転分野への官民投資は2040年度までに8.2兆円を想定

高市政権下で初めて本格編成される2027年度予算では、日本成長戦略のもと「強く豊かな日本」投資枠が設けられ、予算要求の上限枠(シーリング)を設定せず、必要額を適切に要求できる仕組みが導入されている。

国内民間設備投資や潜在成長率を大きく引き上げる効果の高い措置が対象で、複数年度の計画に基づく予算措置を基本に投資誘発効果の薄いものは柔軟に見直しを行う。

補正予算への依存からの脱却も進めており、2027年度の概算要求は各省庁とも膨らんでいるものと思われる。

日本成長戦略では、17の戦略分野における62の「主要な製品・技術等」で想定される官民の国内投資を、2040年度までに累計370兆円超と見積もっている。積極財政のもと、官民投資を促進して「強く豊かな日本」の実現を図っていく戦略だ。

62の「主要な製品・技術等」の中に「自動運転技術」が盛り込まれており、高い世界自動車販売シェア、多様な走行環境、車両製造技術などの強みを生かし、E2Eなどの国産自動運転システム搭載車両のデータ収集と開発・販売、事業モデル構築、車両とインフラの連携、ソフトウェアプラットフォーム整備などを同時並行で進め、2030年代における世界市場での自動運転車両販売台数のシェア約25%確保を目指す。

具体的には、E2EのAI開発投資を支援するとともに、開発を効率化するためのデータエコシステムの構築、サイバーセキュリティの確保、AIの安全性評価手法の確立など、開発環境の整備を進める。

また、1:N遠隔監視などの事業モデル構築やレベル4、レベル2++事業用車両などの社会実装支援、レベル2++車両の優良認定制度創設、インフラからの支援や道路の適切な利活用に向けた取り組み、通信インフラ整備、事故原因究明体制構築などの導入環境の整備を進めていく。

投資額は2040年度までに8.2兆円を想定しており、その経済波及効果は187.3兆円と想定している。

【参考】関連記事としては「自動運転の「1:N遠隔監視」とは?」も参照。

自動運転サービス支援道や自動物流道路の整備を検討中

物流関連では現在、自動運転サービス支援道の構築と自動物流道路(オートフロー・ロード)構想に大きな注目が集まっている。

日本では、高速道路におけるレベル4トラック実装に向けた開発が大きく加速しており、早ければ2027年度中に実用化される見込みだ。

T2や先進モビリティ、ティアフォー、ロボトラックなどのほか、Applied Intuitionと手を組むいすゞ自動車なども開発を進めている。

国としては、新東名高速道路を基盤にまず東京~大阪間における無人走行を実現し、全国に拡大を図っていく計画で、自動運転車の走行を支援するインフラを備えた「自動運転サービス支援道」の整備を進めている。

高速道路においては、新東名高速道路の駿河湾沼津SA~浜松SA間100キロを皮切りに、東北自動車道(佐野SA~大谷PA間約40キロなど車線に余裕のある箇所から整備を進める計画だ。支援道は物流に限らず移動サービス用途にも活用される。

T2はすでに関東~関西間500キロの高速道路本線の完走に成功している。2026年3月の実証で、レベル2状態ながら一度もセーフティドライバーが介入することなく完走したという。同社は2027年度にレベル4トラックによる幹線輸送サービスの実現を目指している。

ロボトラックは2026年7月、神奈川県・厚木南ICから愛知県・豊田JCTまでの高速道路約260キロにおいて自動運転トラックの実証走行を実施し、ドライバーによる介入を行うことなく同区間の走行を完遂したという。支援道の整備より、民間の開発の方が進んでいる印象だ。

一方、「自動物流道路(オートフロー・ロード)」構想も面白い。道路空間に物流専用のスペースを設け、無人化・自動化された輸送手段によって貨物を運ぶ新たな物流システムを構築する壮大な計画で、高速道路においては、例えば中央分離帯スペースを有効活用して車道と完全に分離した専用道路を設計する構想が持ち上がっている。

長期的な一大プロジェクトとなるため、今後の議論の行方に注目したい。

2027年度にE2E系ADASが動き出す

高度安全運転支援システム関連では、「AIを活用した高度な安全運転支援システム」が挙げられている。これは、E2Eモデルを活用したADASを指すものと思われる。

レベル2++は、高速道路や一般道路を問わずにハンズオフ運転を可能にする運転支援システムだ。高速道路などに限定した従来のレベル2+は、基本的に高精度3次元地図の利用などを前提としたモデルとなっているが、レベル2++はセンサー情報をもとにそのまま解析・判断し、車両を制御する。

2027年度に日産ホンダが実装を開始する計画が持ち上がっているほか、北米で実装済みのテスラも日本での展開に向け実証を重ねている状況だ。

自動運転AIの実力、国が採点 レベル2++で「優良認定制度」

■【まとめ】2027年度は業界が大きく動き出す一年に

自動運転トラックや自動運転タクシー、そして自家用車におけるレベル2++など、2027年度は業界が大きく動き出す予定だ。

どこまで計画通りに進むかは何とも言えないところだが、WaymoやWayveといった外国勢の取り組みも本格化し、刺激材料となるはずだ。

自動運転業界が活気づく一年になるよう、そしてその後の事業拡大にしっかりと結びついていくよう期待したい。

※自動運転ラボの資料解説記事は「タグ:資料解説」でまとめて発信しています。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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