自動物流道路、「中央分離帯」を破壊して設置か

新物流システム「10年で実現」



出典:国土交通省公開資料

高速道路を無人で走行可能な自動運転トラックと並行して、「自動物流道路(Autoflow Road/オートフロー・ロード)」実現に向けた議論や実証が着々と進められている。

道路空間のスペースを有効活用して物流専用ロードを設け、無人化・自動化した輸送手段で効率的に貨物を運ぶ新たな物流システムだ。中央分離帯を作り変える案も出ている。


その全貌はまだ明かされていないが、どのような方向で議論が進められているのか。自動物流道路の概要に迫る。

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■自動物流道路とは?

バッファリング機能を併せ持つ物流専用道路・物流システムを構築

自動物流道路は、道路空間に物流専用のスペースを設け、クリーンエネルギーを動力とする無人化・自動化された輸送手段によって貨物を運ぶ新たな物流システムとされている。

既存の車道を走行するトラックなどとは異なり、車道と完全に分離された専用設計の閉鎖道路・通路を一定規格の輸送専用モビリティが走行する仕組みだ。

例えば、高速道路上の中央分離帯や路肩スペースを活用する案や、地下トンネルのような形で専用道を設ける案などがある。どういった専用道路を設けるかの結論は出ていないみたいだが、イメージ図や実証を踏まえると、高速道路上のスペースを利活用する案が有力となっている印象を受ける。


この自動物流道路を、規格化したパレットを搭載した無人モビリティが走行してミドルマイル輸送を担い、要所に設けられた結節点で有人トラックやレベル4無人トラックなどに自動で荷物を受け渡すことで、物流効率化を図っていく。

出典:国土交通省公開資料

これまでは、需要が生じた時に要請されたものを短いリードタイムで輸送する非効率な物流が常態化していたが、自動物流道路により、24時間稼働し、需要を見越してあらかじめ輸送ルートに乗せ、輸送モードにバッファリング機能をもたせることも可能になるという。オフピーク時の輸送力を活用することで物流需要を平準化させ、物流全体の効率化を実現する考えだ。

インフラとなる専用道や結節ポイントの建設、規格化された無人モビリティの開発、無人荷役技術、デジタル化など、必要となる要素は盛りだくさんだが、実現すれば物流が抱える諸問題を一挙に解決することができる。

中長期的視野が必要な一大プロジェクトとなるが、スイスの「Cargo Sous Terrain(CST)プロジェクト」など先行事例もある。スイスでは、全長500キロに及ぶ貨物専用地下輸送システム「Cargo Sous Terrain(CST)」事業が進められている。


▼国土交通省・自動物流道路の公式サイト
https://www.mlit.go.jp/road/autoflow_road/

■自動物流道路の議論の概要

自動車に頼らない新たな物流システムが必要

日本における自動物流道路の議論が本格化したのは2023年度だ。物流2024年問題を前に、社会資本整備審議会道路分科会国土幹線道路部会が発表した高規格道路ネットワークのあり方に関する中間とりまとめにおいて、「構造的な物流危機への対応、温室効果ガス排出削減の切り札として、自動車に頼らない新たな物流形態として、道路空間をフル活用したクリーンエネルギーによる自動物流道路の構築に向けた検討を進めていく必要」と提言された。

逼迫する物流需要を踏まえ、通常であれば30年~50年を要するパラダイムシフトを10年で実現する気概を持って当たることが重要――ともされている。

出典:国土交通省公開資料

これを受け、国土交通省は2024年2月に「自動物流道路に関する検討会」を立ち上げ、専門的議論に乗り出した。

無人化・自動化により24時間稼働するインフラ

2025年7月発表の最終とりまとめでは、世界一賢く・安全で・持続可能な基盤ネットワークシステム「WISENET」を実現することとした。

自動物流道路は、道路空間を活用して専用空間を構築し、かつデジタル技術を活用して無人化・自動化された輸送手法により荷物を輸送することをコンセプトに掲げた。さらに、無人化・自動化により24時間稼働するインフラとし、自動物流道路の空間内を輸送だけでなく、荷物の保管場所として活用することで、物流需要を平準化するバッファリング機能を備え、物流全体の最適化の環境を整えるべきとしている。

出典:国土交通省公開資料

物流負荷を高めている小口・多頻度で輸送される荷物をターゲットとし、パレットなどに積載したサイズを輸送単位とする。サイズは、官民物流標準化懇談会パレット標準化推進分科会において標準的な規格として推奨している標準仕様パレット(平面サイズ:1,100mm×1,100mm)の使用を想定する。

想定ルートは、物流量が最も多い東京~大阪間とする。新東名高速道路の建設中区間などでの実験や、小規模な改良で実装可能な区間などにおいて10年後を目途とした実現を目指す方針とした。

▼高規格道路ネットワークのあり方 中間とりまとめ|社会資本整備審議会 道路分科会国土幹線道路部会
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001706699.pdf
▼自動物流道路のあり方 最終とりまとめ
https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/buturyu_douro/pdf/sai-honbun.pdf

コンソーシアムには127社が参加

2025年5月には、自動物流道路の実装に向けた検討を促進するため、「自動物流道路の実装に向けたコンソーシアム」を設置した。自動物流道路の運営や利用に関心がある者、要素技術の保有者など民間事業者と公的機関との情報共有・意見交換を行う場とし、ビジネスモデルやオペレーションの技術的な実証、技術開発促進方策、インフラ整備のあり方などについて検討を行う。

コンソーシアムには2026年3月時点で非公表含め127社が参加している。ビジネスモデル・オペレーション・インフラの3つの分科会に分かれて議論を進めており、すでに実証などにも着手しているようだ。

メンバーには、大林組や鹿島建設、清水建設、大成建設といった大手ゼネコンをはじめ、佐川急便、西濃運輸、福山通運、ヤマト運輸、日本郵便、日本貨物鉄道、アマゾンジャパン、住友倉庫、三井倉庫、三菱倉庫、日本工営、成田国際空港、東芝、富士通、三菱電機、IHI、NTTデータ、EVワイヤレス給電協議会、セブン‐イレブン・ジャパン、アサヒグループジャパン、花王、アイシン、ダイナミックマッププラットフォーム、豊田自動織機――などが名を連ねており、幅広い業界が注目していることがよくわかる。

今のところ、T2やティアフォーといった自動運転開発企業は参加していない。一般車道を走行する自動運転トラックなどとは完全に別の自動化システムを想定しているのだろうか。こうした点も気になるところだ。

2025年度に実証着手

2025年度には、自動物流道路本線の整備箇所の検討をはじめ、本線と拠点間の接続や周辺道路交通への影響、想定される物流量を搬出入するために必要な拠点の設置可能性などの検討を行うため、東名高速道路、新東名高速道路、名神高速道路、新名神高速道路の4区間を事例に、整備イメージのケーススタディを実施した。

また、建設中の新東名高速道路区間における2027年度までの実験に先立ち、既存技術・施設における実験を通じて自動物流道路実装に向けた技術的課題の検証および運用に必要な条件整理などを行うため、以下の6つのユースケースに沿って実証を行った。

  • ①拠点:無人荷役機器による荷役作業の効率化
  • ②本線単路部:搬送機器の自動走行
  • ③本線単路部:異常検知及び搬送機器の回避行動
  • ④本線単路部:搬送機器の通信安定性
  • ⑤その他:搬送機器の運行管理
  • ⑥拠点:搬入車両の到着予定情報の情報提供

①では、搬送機器への荷積み・荷卸しに必要な面積、時間や、トラックから荷卸し・搬送機器への荷積み~運搬、搬送機器からの荷卸し・トラックへの積み込みまでの自動化について、作業継続率や精度などを確認できたという。

②では、搬送機器による自動走行を行い、単体、直進、分合流なし、低速度など一定条件下における必要な道路幅などの走行環境を確認した。

③では、搬送機器の走行中、落下物や火災の発生を想定した模擬実験を実施し、直進、分合流なし、低速度など一定条件下において、インフラ協調によって正しく異常を検知し、停止などの回避行動ができることを確認した。

④では、電波測定遮蔽物(10tトラック、監視カメラ9台)による通信への大きな影響がないことを確認したほか、一定条件下において位置補正用反射体により自己位置推定の補正が可能であることを確認した。

⑤では、高速走行中でも搬送車両に貼り付けた二次元コードの読み取りが可能であることを確認した。また、机上検討において、二次元コードによる荷物や搬送機器の位置の把握など運行管理への活用可能性についても確認できた。

⑥では、ETC2.0を活用し、トラック・拠点(荷役機器)間で到着車両情報を取得することで、物流効率化が可能であることが確認できたとしている。

まずは東京~大阪間の長距離幹線輸送を念頭に、2027年度までをコンセプト実証フェーズに位置付け、各種実証やシミュレーションなどを進めていく。2028年度~2030年代半ばは技術開発・実装フェーズに位置付け、搬送機器の開発などを進めていく。2030年代半ば以降を実装・運用フェーズとし、インフラ整備や搬送機器などの製造を進めていく。

2026年度は、これまでの実証実験やケーススタディで得られた処理能力などの指標を基に、自動物流道路及び周辺交通の交通量・事業シミュレーションを実施する。ケーススタディについては精査を進めるとともに、本線と拠点の接続方法について検討を行う。

既存施設などでの実証実験も引き続き実施し、ユースケースの一連実施や複数台走行時などのデータ取得を行うとともに、2027年度中に実施予定の新東名高速建設中区間での実証実験に向け、検証項目の整理を行う。

■【まとめ】国を挙げた一大プロジェクト

いまいち実像をつかみきれない印象だが、既存の車道を自動運転専用とする「自動運転サービス支援道」とは明確に異なるため、自動物流道路はどのような形であれ新たな専用道を敷設することになる。膨大なインフラ整備を要するため、国を挙げた一大プロジェクトと言うべき事業だ。

今のところ有力視されているのは、高速道路の空きスペースを活用した専用道路の敷設のようだが、東京~大阪間の高速道路を見る限り、中央分離帯スペースに新たな道路を造成する余力はないように思われる。

路肩のスペースを削減して車道を両脇に寄せ、中央に新たなスペースを生み出す……などいろいろな策が考えられそうだが、果たしてどのような形となるのか。

有人トラックなどに荷物を自動で受け渡しすることを踏まえると、中央分離帯スペースからどのように結節ポイントにアクセスするのか。

また、無人で自律走行をおこなう輸送モビリティの全貌もまだ見えてこない。車道も走行可能なデュアルモードビークル仕様とするのか、完全な専用設計車両となるのか、どのような自動運転システムで自律走行を実現するのか。気になる点が山盛りだ。

さらに、長期的には東京~大阪間に留まらず、日本を横断する輸送道の整備が求められるものと思われる。高速道路上のみで完結できるのか、あるいは場所によっては地下道や地上の道路インフラを活用することもあるのか。壮大なプロジェクトであるがゆえ、早く全体像を知りたいところだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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