テスラ、「日本の副首都」でロボタクシー運行か

各社が「規制緩和」に熱視線?



副首都機能の整備の推進に関する法律案が2026年7月、参議院本会議で賛成多数により可決・成立した。副首都には、災害時における首都機能のバックアップをはじめ、産業競争力の強化や国際的な経済活動の拠点の形成なども求められる。


副首都の選定先は未定だが、規制緩和のもと新たな都市づくりが行われていくことが予定されている。交通面では、利便性向上や円滑化が求められることから、自動運転サービスの導入に熱いまなざしが送られる。

場合によっては、規制緩和でE2Eが解禁され、副首都にテスラWaymoといった海外有力勢が殺到する――と言ったことも考えられるのではないだろうか。

副首都構想と自動運転について考察してみよう。

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■副首都構想の概要

大阪、愛知、福岡などが意欲

「副首都機能の整備の推進に関する法律案」によると、副首都は、東京圏とその他の地域との間における経済的格差が生じていること、災害その他非常の事態の発生により首都中枢機能を維持することが困難となるおそれがあること、人口減少が継続するおそれがあることに鑑み、整備を推進する。


副首都は、東京圏と並ぶ日本の経済の中心として日本経済の成長をけん引するとともに、災害の発生により首都中枢機能の全部または一部の機能を維持することが困難となった場合に当該機能を代替する。

副首都機能の整備に当たっては、経済基盤の強化を図るため、副首都地域内及び国内外の他の地域との交流や物資の流通を促進するための交通施設の整備や交通の利便性の向上・円滑化の促進、国際会議場施設の整備その他の都市機能の増進に寄与するまちづくりの推進など必要な措置が講ぜられなければならない。

その際、事業の高度化及び生産性の向上並びに新規事業創出を促進するため、必要な規制緩和の推進、国や関係地方公共団体が保有するデータの事業者による活用の促進など措置を講ずることも求められる。

今後、政府が指定要件などを取りまとめ、今秋にも閣議決定される見通しとなっている。現時点では、大阪府(大阪市)、愛知県(名古屋市)、福岡県(福岡市)が意欲的に動いており、北海道(札幌市)、宮城県(仙台市)なども関心を示しているという。


副首都は複数が指定される可能性もあり、今後手を上げる自治体も出てきそうだ。なお、指定時期については未定となっている。

▼副首都機能の整備の推進に関する法律案
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g21105004.htm

交通の利便性向上には自動運転が欠かせない

都市としての機能を強化するため、副首都はさらなる交通施設の整備や交通の利便性の向上・円滑化が求められる。その際、必要な規制緩和の推進も奨励される――といった感じだ。

副首都に手を上げる道府県・政令市は、基本的に交通インフラは高度に整備されているが、変化する需要に柔軟に対応可能な交通インフラやサービスが確立されているか?と問われれば、イエスとは言いづらい状況だろう。

周辺エリアを含めた居住人口や交流人口の増減、インバウンドなどを加味すると、その変化に長期スパンで対応可能なインフラ整備は非常に難しい。こうした課題は、ソフト面で効率性や利便性を高めていく必要がある。

そこで浮上するのが、自動運転やMaaSだ。無人化により運用コストが下がることが前提となるが、導入・運用が容易な環境が整えば、需給を見越した上で効率的かつ効果的なサービスを提供することができる。

実際、構想に自動運転モビリティが盛り込まれる可能性は極めて高い。副首都構想を練る段階の現在、自動運転バスは実用化を開始し、自動運転タクシーの実現も目前に迫っている。そして、計画に着手する頃には技術とサービスが一定程度成熟し、普及段階を迎えているはずだ。

この自動運転サービスを構想に盛り込まなければ、「旧態依然とした交通サービスを続けていきます」と宣言しているようなものだ。さらなる経済活性化や国際化が求められる副首都で、そのような構想を発表できるわけがない。

具体的なビジョンを描けないまでも、「自動運転を推進します」と言う文言は外せない。規制緩和と結び付け、民間などがより導入しやすい環境を用意する流れになっていくことに期待がもたれる。

■副首都×自動運転

Waymoやテスラも興味津々?

出典:Waymoプレスリリース

こうした未来を見据え、開発各社も精力的に動くはずだ。資本力があり、グローバル路線を鮮明にしたいグーグル系Waymoはその筆頭と言える。

すでに東京都内で実証を進めているが、第2、第3の展開エリアの選定も水面下で進めている可能性が高い。日本独自の交通ルールなどへの自動運転対応が済めば、横展開が容易になる。

横展開が進めば進むほど収益性も高まり、需給に合わせて各エリアのフリートを増減しやすくもなる。アルファベットグループとして世界の覇権を獲りにいくのであれば、副首都での展開などは必須と言えそうだ。

また、規制緩和でエンドツーエンド(E2E)モデルの自動運転への道が拓ければ、米テスラが大きく動き出すかもしれない。

日本政府はE2E導入に向けた取り組みを加速しているが、現状は自家用車におけるレベル2++を想定したものだ。あくまで人間のドライバーの責任のもと、市街地などでもハンズオフ運転を実現する技術だ。

英Wayveと手を組む日産が2027年度にも導入する計画を立てており、それまでに実用化に向けた規制面などを整えるとともに「優良認定制度」を創設し、普及を図っていく構えだ。なお、レベル4以降のE2E自動運転に関しては、安全性評価方法の確立を進めている段階だ。

このE2Eの代名詞的存在であるテスラは、北米や一部海外でレベル2++を可能にする「FSD(監視付きフルセルフドライビング)」を実用化している。日本でも正式導入に向け2025年に実証を本格化しており、2026年~2027年ごろに実装にこぎつける可能性が高い。日本を有望市場の一つに位置付け、販売面を含め今後攻勢に出ることも考えられる。

そんな状況下、仮に副首都で規制緩和によってE2E自動運転がいち早く可能になる――とすれば、テスラはどう動くか。

まず間違いなく、FSDによる自動運転実現に本腰を入れるだろう。テスラは米テキサス州オースティンで一部ドライバーレスのロボタクシーを実現しているが、技術的ハードルが高く、ジオフェンスで走行可能エリアを区切りながら技術の高度化を図っている。近々では、Cybercab(サイバーキャブ)の公道実証にも着手したようだ。

出典:Tesla公式YouTube動画

海外では、E2Eの許認可の壁が厚く、レベル2++ですらなかなかゴーサインが出ない状況だ。前のめりの姿勢で最新技術の導入を進めたいイーロン・マスク氏にとってもどかしい状況と言えるが、そこにE2E可能な副首都が登場すれば、高確率で身を乗り出してくるのではないだろうか。

本腰を入れたときのテスラは、想像の斜め上の猛威を振るう。日本市場でテスラが大暴れする日が到来するのか、要注目だ。

ティアフォーはどう動く?

こうした海外有力勢を迎え撃つ日本勢の筆頭は、ティアフォーだ。同社は2019年、アイサンテクノロジーやKDDIなど5社共同で自動運転タクシーの事業化に向けた取り組みに着手した。

東京都内などで地道に実証を重ね、2025年3月にはハンドルとペダルの操作が不要な自動運転タクシーの新型プロトタイプを発表している。

代表取締役社長の加藤真平氏は、2025年末にSNSで「Waymoのような自動運転レベル4、もう間もなくオープンソースで実現できそう」と発信している。また、年明けには「こちらは開発途上ですが、Teslaのようにカメラ画像のみを入力としたE2E自動運転のオープンソース化にも取り組んでいる」旨発言している。

加藤真平氏=撮影:自動運転ラボ

Waymo同様、長らくルールベースに基づく自動運転開発を進めてきたが、2024年10月、東京大学大学院系の松尾研究所とともに、レベル4のODD拡大に向け生成AI開発を開始したことを発表している。

大量の走行データを学習して実世界の運転行動の常識を模倣できる大規模世界モデルを構築することで、事前に定義したルールが適用できない状況下でも周囲の環境情報から適切な運転行動を生成可能なE2Eを実現するとしている。

ルールベースの確実性とE2Eの柔軟性を併せ持つハイブリッド方式で、自動運転「レベル4+」を目指すとしている。

当初計画では、2025年に東京都内の一部、2027年には東京都内全域を対象に既存交通事業と共存可能なロボットタクシー事業を推進するとしていたが、計画は遅れているようだ。

ただ、2026年7月に株式上場を果たし、企業として新たなフェーズに突入した。技術と商用化に自信がなければこのタイミングで上場はできないはずだ。

E2E導入により広域展開への道も拓けた。黒船に立ち向かうリーダーとして、副首都における取り組みにも期待したいところだ。

上場のティアフォー、「テスラ式自動運転」も開発

日産などの国内勢はどうする?

国内勢ではこのほか、newmoやMoveEz、日産×Wayve、ホンダなどが自動運転タクシーの開発を進めている。

日産×Wayveは、配車サービス大手Uber Technologiesとの協業のもと、日本展開を進めていく。日産とWayveは2027年度を目途に自家用車市場でレベル2++の実装を目指すほか、同時期にドライバーレスサービスの提供も視野に入れている。

Uber TechnologiesがWaymoと仲たがいしたとする報道もあり、対Waymoの先陣となる可能性も高そうだ。

ホンダはGM系Cruiseとの共同事業が中止となったが、独自に自動運転タクシーサービス実用化に向け動き出している。提携する米Helm.aiの技術などを武器に戦線復帰する可能性がある。

newmoは自動運転タクシーの実証に2025年に着手した。東京都大田区の東京流通センター内に開発拠点「Autonomy Garage Tokyo」を設け、2026年内に自動運転開発チームを2倍の規模に拡大するという。大阪府内での実用化などを視野に入れているようだ。

WeRideやPony.aiなどはどうする?

Waymo、テスラ以外の海外勢の進出も気になるところだ。有力な自動運転タクシー開発企業は世界的にも限られているが、中国勢の動向に注目したい。

地政学リスクはつきまとうが、WeRideやPony.aiあたりは日本に進出しても違和感を受けない。WeRideはルノー・日産から出資を受けており、自動運転バスはBOLDLYが日本市場向けに導入している。仮にだが、BOLDLYがWeRideと手を組んで自動運転タクシー市場に参入すれば、大きな話題となることは間違いないだろう。

一方、Pony.aiはトヨタとパートナーシップを結んでいる。自動運転タクシーにいまいち関心を示さないトヨタだが、Pony.aiの日本進出をバックアップする形で関わってくる可能性は否定できない。トヨタが動けば国内市場も揺れ動くことになりそうだ。

このほか、中国Baidu(百度)や、米アマゾン系Zooxなども自動運転タクシーの有力勢に数えられる。今のところ、これといった日本市場との接点はないが、規制緩和の匂いを嗅ぎつけグローバル路線とともに日本市場に参入する――といった流れが起こっても不思議ではないだろう。

■【まとめ】副首都構想を機にさらに開発熱が高まる

すでに日本展開を決めている開発企業は、おそらく副首都での展開も見据えた戦略を練る――というのが基本路線だろう。また、E2E解禁という規制緩和が実現すれば、テスラなどの新たな勢力が意欲を示す可能性が高い。

副首都選定がいつごろになるかは不明だが、国内における自動運転タクシー事業は現在進行形で進められている。副首都構想を機にさらに開発熱が高まっていくのか、業界の動向に要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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