テスラの自動運転Cybercab ついに「ハンドル&ペダルなし」で公道を走る

一般販売はいつ?



出典:Tesla公式YouTube動画

ハンドルもペダルもないテスラ自動運転タクシーが、ついに公道を走り始めた。米EV大手テスラ(tesla)は2人乗りロボタクシーCybercab(サイバーキャブ)をテキサス州オースティンで公道テストしており、6月30日にその走行を公式に明らかにした。7月11日にはテスラのAI責任者Ashok Elluswamyが、この車両がエンジニアリングテスト車両であることをX(旧Twitter)で確認している。

走行が確認されたのは工場から出荷された技術検証用の車両であり、右側の座席には安全監視員が同乗する。テスラは2026年内の一般展開を目標に掲げるが、ハンドルやペダルのない車両を認める米連邦規則の改正案はまだ意見公募の段階にある。年内の一般販売には、なお高い規制のハードルが残っている。


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■ハンドルもペダルもないCybercab、公道を走り出す

テスラがハンドルもペダルもないCybercab(サイバーキャブ)をオースティンの公道で走らせている。テスラは2026年6月30日、公式Xに27秒の動画を投稿し、最初の量産Cybercabのエンジニアリングテストがオースティンで始まったと発表した。イーロン・マスクも同日、ハンドルもペダルもないCybercabが市内を走る様子を投稿している。


動画では運転席に人がいない。ハンドルもペダルもない設計のため当然だが、その代わりに右側の助手席に安全監視員が座っていた。2人乗りのCybercabは、ハンドルとペダルに加えてサイドミラーもない。運転に必要な操作系を一切持たない、完全な自動運転専用車である。

この走行は、テスラが2024年10月10日の「We, Robot」イベントでCybercabのデザインを公開してから約20カ月後の出来事だ。多くの業界関係者が予想していたより速いペースと言える。7月11日には、AI責任者のElluswamyが、公道を走るこれらの車両がエンジニアリングテスト車両であることをXで確認した。

【監修者コメント:自動運転ラボの視点】
操作系を持たない量産車が公道を走った。テスト走行と一般販売の間には規制承認とソフトの成熟という壁が残るが、ハンドルなしを前提に規則そのものの改正を待つテスラの賭けが、いよいよ現実の検証段階に入ったと言える。

■エンジニアリングテストという名の技術検証

今回オースティンを走っているのは、顧客を乗せる商用サービスの車両ではない。テスラ自身が「エンジニアリングテスト」と位置づける技術検証の段階であり、走行中も安全監視員が同乗する。目的は、ハードウェアだけでなく、新型車を無人で走らせるソフトウェアを実路で検証することにある。


車両はテキサス州のGiga Texas(ギガテキサス)工場で生産された量産仕様だ。Cybercabは既存のModel Yを改造したものではなく、最初からハンドルもペダルもない前提で設計されている。テスラは無介入で何マイル走り続けられるか、どんな場面が自動運転を難しくするかといったデータを、この検証で積み上げていく。

なお、オースティンで実際に有料のロボタクシーサービスを担っているのは、現在もModel Yである。Cybercabはまだ有料の車隊に加わっていない。7月10日から11日にかけては、Giga Texasの敷地内で従業員向けの乗車が始まると告知されたが、これは工場の私有地での話であり、公道の一般サービスとは別物である点に注意が必要だ。

【参考】関連記事としては「テスラ、自動運転車向けの「巨大洗車場」建設」も参照。

テスラ、自動運転車向けの「巨大洗車場」建設

■カメラのみのビジョン方式、Waymoとの路線の違い

Cybercabの技術的な特徴は、カメラだけで周囲を認識するビジョン方式にある。高精度な距離センサーであるLiDAR(ライダー)やレーダーを使わず、複数のカメラと車載AIだけで環境を読み取る。これは市販車のFSDと同じ思想であり、テスラが長年貫いてきた設計上の賭けでもある。

この点で、ロボタクシー市場の先頭を走る米Google系の自動運転開発企業Waymo(ウェイモ)とは路線が大きく異なる。Waymoはカメラに加えてLiDARやレーダーを重ねた多層のセンサー群を採用する。一方のテスラは車両と運転ソフトを自社で一貫して作り、コスト面で優位に立てると主張してきた。

カメラのみの方式は、車両を安く作れる可能性がある半面、天候や光量、交通量の変化にどこまで対応できるかが問われる。安さを取るテスラと、確実さのためにセンサーを重ねるWaymo。この路線対立こそが、自動運転タクシー市場の競争を読み解く軸になる。

■年内の一般販売はできるのか、立ちはだかる連邦規則

テスト走行が始まったからといって、すぐに一般販売できるわけではない。最大の壁は米連邦の規制にある。米道路交通安全局NHTSAは2026年6月26日、連邦自動車安全基準FMVSS No.135 of 改正案を公表した。ハンドルやペダルを持たない自動運転専用車について、ブレーキペダルの搭載義務を外すことが柱である。

ただし、この改正案はまだ意見公募の段階にある。パブリックコメントの期限は2026年7月27日で、正式な施行にはさらに時間が必要だ。停止距離などの性能要件は引き続き全車に適用されるため、安全基準そのものが緩むわけではない。

テスラは、車両ごとに個別の免除を申請する道を選んでいない。個別免除は1メーカーあたり年間2,500台という上限があり、これでは大規模なロボタクシー展開が難しいためだ。マスクは免除ではなく規則そのものの改正こそが規模拡大の道だと繰り返し述べており、年内展開という目標と、意見公募中という規制の現実の間には、なお距離がある。

■「ハンドル&ペダルなし」の公道走行が示すもの

ハンドルもペダルもないCybercabが公道を走り出したことは、量産ハードの準備が整ったという明確なシグナルである。だが、ソフトウェアの成熟度と規制の承認という課題はなお残る。テスト走行できることと、一般客を乗せて稼げることの間には、依然として大きな距離がある。

規制の側では追い風も吹き始めている。7月9日にはNHTSAの長官が、そもそもハンドルの搭載義務を撤廃することも「絶対に」検討すると述べた。ブレーキペダルに続き、ハンドル要件そのものにも見直しの波が及びつつある。金色の2人乗りCybercabが街に出れば、その成否はこれまで以上に人目にさらされることになる。

走り出したからといって、売れるとは限らない。規制の承認とソフトの成熟という距離が、数カ月で埋まるのか、なお時間を要するのかは見えていない。「ハンドル&ペダルなし」の公道走行は、答えではなく、これから検証される問いの始まりである。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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