Appleが中止した「自動運転事業」、復活のうわさ

「タイタン計画」はやはり凄かった?



EV大手テスラがついに自動運転サービスに着手し、業界は新たなフェーズに突入した。ネームバリューが高いテスラ。その巨大な事業チャンスに投資マネーが集まる中、かつてトップクラスのネームバリューを誇りつつも開発を断念したあの企業に、あるうわさが出ているようだ。


米アップルだ。「Project Titan(プロジェクト・タイタン)」のもと、約10年間にわたり1兆円超の資金をつぎ込んだものの最終的に事業はとん挫した。完全に事業は停止・空中分解したと思われるが、一部で自動運転事業を復活させる「うわさ」が出ているという。

少なからず、プロジェクト・タイタンで培った要素技術が他の分野で応用される例も出始めているようだ。自動運転分野におけるアップルの再始動はあるのか。憶測含みだが情勢をまとめてみた。

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■アップルの最新動向

F1映画向けにセンサー技術を活用

アップルは近年、デジタルビデオストリーミングサービス「Apple TV+」向けの番組や映画の制作を、子会社を通じて自ら行っている。

近々の注目は、ブラッド・ピットが主演する映画「F1/エフワン」だ。映画の内容は本筋ではないため省略するが、疾走感・臨場感あふれるF1ならではの映像が魅力のようだ。


このF1において、ドライバー視点の映像を取り込む際、カメラの能力が大いに試されるという。設置要件が著しく限定されるコックピット内において、時速300キロ超の音速域で振動しながら移動する映像を、高解像度が必要とされる映画画質で撮らなければならないためだ。

既存カメラでは対応できないため、アップルはiPhoneの技術を基にしたカスタムカメラを開発したという。細かな振動に耐え、高速域においても高精細な映像を撮る技術だ。

米テック系メディアWccftechによると、こうした技術は「プロジェクト・タイタンがなければ実現しなかったかもしれない」と指摘している。自動運転開発で培ったセンサー技術が、ここで生かされているとする見方だ。

自動運転開発に1兆円以上つぎ込んだと言われるアップルだが、開発を諦めたからといってすべての研究開発が無に帰すわけではない。センサー然り、パーセプションに代表されるAI技術然り、SoC然り、車両設計然り、さまざまな技術とモビリティに関するさまざまな知識が蓄積されているのだ。


自動運転開発に従事していたエンジニアの多くが生成AI開発チームに移行したように、これらの知見もさまざまな領域で活用できる。投資した分を回収できるかどうかは未知数だが、iPodやiPhoneなどに続く新たなヒット商品につながれば安いものと言えるだろう。

プロジェクト再始動の可能性も?

また、自動運転関連プロジェクトを復活させてもおかしくはないはずだ。自動運転市場の開発環境・水準は数年で激変する。アップルのこれまでの戦略は失敗に終わったかもしれないが、戦略を練り直すことで再び商機・勝機を見出せるかもしれない。

プロジェクト・タイタンはオリジナルのEV開発に始まり、間もなくして自動運転開発にも熱を入れた。車両の設計から自動運転システムなどのソフトウェア開発に至るまで、すべての面で自社開発を推し進めたのだ。

アップルの自動運転開発そのものの優劣は不明だが、おそらくWaymoクラスの水準に達する見通しを立てることができなかったものと思われる。当初はレベル4~5を目指していたが、2022年ごろには手動制御装置を備えたレベル3市販車の開発にシフトしたことが報じられた。

開発停止直前の2024年1月には、もはや自動運転ではないレベル2+相当のADASまでレベルを下げることが報じられるなど、紆余曲折している様子がよくわかる。技術開発の進捗が思わしくなく、将来に渡る開発コストを踏まえ事業を停止したとみるのが妥当だろう。

また、車両の製造委託も漂流していた。韓国ヒョンデなど各社と交渉していることが報じられたものの、商談がまとまることはなかった。仮の話だが、アップルが話を持ち寄った自動車メーカーのいずれかがOKを出していたら、事態は変わっていたかもしれない。

自動運転車ではないものの、レベル2+を搭載したアップルカーが世に送り出され、新たなロードマップのもと自動運転開発が継続された可能性は十分考えられる。

ビジネスの目はまだ残されている

右往左往した末の事業中止となったわけだが、その判断は紙一重だったはずだ。一部のこだわりを取捨選択すれば、ビジネスの目はまだ残されている。例えば、車内サービスに特化する形態だ。

一定要件を満たしたOEMや自動運転開発事業者に対し、アップルブランドの車内サービスを提供するビジネスだ。アップルブランドとして恥ずかしくない自動運転車を認定し、アップルならではの独占的なサービスを利用者向けに展開すれば、ビジネスが成立するかもしれない。

自動運転タクシーのような単純な移動サービスではなく、例えば「移動映画館」のような「モビリティ×サービス」を主体としたものだ。利用者は、移動目的ではなくアップルのサービス目的で自動運転車を呼び寄せる新たなビジネス形態だ。

自動運転技術が一定水準に達すれば、移動ホテルや移動飲食店など、さまざまな応用サービスが誕生することが予想される。これを先取る形でアップルブランドとネームバリューを生かしたサービスを展開できれば、新たな市場の開拓者として大きな存在感を示すことができるのではないだろうか。

レベル3以上の自家用車向けサービスも視野に収めれば、市場は大きく広がる。憶測だが、アップルは自動運転開発に際し、こうした自動運転車を活用したサービスや車内向けエンタメサービスの開発にも力を入れていたはずだ。この領域は、オリジナルのアップルカーでもなくとも生かすことが十分できる。

【参考】アップルの自動運転開発については「Appleが開発中止した自動運転技術、「数十億ドル」で売却・現金化か」も参照。

Appleが開発中止した自動運転技術、「数十億ドル」で売却・現金化か 

協業体制ならばアップルの新規参入も現実的に

あくまでオリジナルカーに固執するのであれば、クルマづくりに信頼性のおけるOEMと改めて協議し、合弁形式で新ブランドを立ち上げるのも手ではないだろうか。

EV市場の見通しが重要となりそうだが、中国では自動運転開発企業やテック企業とOEMの合弁が次々と立ち上がっている。日本でも、ソニーとホンダがオリジナルEVの開発・販売に向けソニー・ホンダモビリティを設立した。

アップルも、単純に製造委託するのではなく、相手側の意向を反映する協業形式で話を進めていれば交渉は上手くいったかもしれない。

日産のように、クルマづくりそのものの信頼性は非常に高いものの、ブランド力・訴求力が落ち込んでいるOEMもある。こうしたOEMと手を組み、純アップルブランドではない新ブランドを立ち上げ、レベル2+量産車からじっくりと市場を開拓していくのも戦略上アリではないだろうか。

数々の特許技術もビジネスの種に

本気で自動車・自動運転分野への進出を進めていたアップルは、自動車分野において200を超える特許を出願していたと言われている。

自動運転関連では、自動運転車の挙動・動作を周囲のドライバーや歩行者にカウントダウン付きで知らせる技術「Countdown Indicator」や、ジェスチャーで自動車を走行させる技術、隊列走行時にバッテリー電力を譲り合う技術「Peloton」などがある。

このほかにも、バーチャルキー技術やシートを通じて乗員に情報伝達する技術「Haptic feedback for dynamic seating system」、音声アシスタント「Siri」で車両を操作する技術などさまざまだ。車両設備面でも、エアバッグやバンパーシステム、スマートシートベルト、ウィンドウシステムなどもある。

こうしたこだわりが満載だったからこそ、OEMとの交渉がとん挫した可能性があるが、これらを個別の技術としてOEMなどに提供していくのも、ビジネスとして成立するはずだ。

アップルがこれまでに蓄積してきた技術を考慮すると、自動車・自動運転領域で展開可能なビジネスは多岐に及ぶ。個別の技術・コンテンツであれ、アップルブランドの魅力は高く、クオリティへの信頼性も高いため戦略次第で大きな商機となるだろう。

【参考】アップルの取り組みについては「Appleの”極秘”自動運転プロジェクト、判明情報を一挙まとめ」も参照。

Appleの”極秘”自動運転プロジェクト、判明情報を一挙まとめ

自動運転サービス面に特化した再始動に商機

そもそも、プロジェクト・タイタンは極秘裏に進められていた開発プロジェクトで、表に出てきた情報は関係筋によるものがほぼすべてだ。あとは、公道走行の許可権限を有するカリフォルニア州の道路管理局(DMV)の情報やエンジニアの動向などに基づくものだ。

そう考えると、市場の変化を見越してアップルがまた秘密裏にプロジェクトを再始動させていてもおかしくはない。

もちろん、総体としての自動運転システム開発においては、もはや優位性を見出せないため、LiDARやカメラのハード的な高度化やパーセプション技術など、要素技術に特化する形かもしれない。その応用系の一つが、冒頭のF1への活用だ。

アップルが本腰を入れて10年もの期間にわたり開発を続けていた技術は、かんたんに陳腐化しない。喉から手が出るほどその技術やサービスを欲する企業は数多いる。純アップルカーの製作を諦めれば、自動運転領域におけるアップルのポテンシャルは計り知れないものとなる。

例えば、アマゾン傘下Zooxがアップルとパートナーシップを結び、自社オリジナルの自動運転タクシーに全面的にアップルのサービスを取り入れたら……と考えると、興味をそそられないだろうか。アップルプロデュースによるアマゾンの自動運転タクシーといったイメージだ。

Waymoの一人勝ち状態が続く中、後発組が存在感を示すには何らかの差別化が求められる。その有力な一手となり得るのがアップルブランドのサービスだ。

アマゾンとアップルが良好な関係にある点、またWaymoがアップルの絶対的ライバルのグーグル陣営である点を踏まえると、面白いパートナーシップになることは間違いない。

米国では、Waymoに肩を並べる自動運転開発事業者はしばらく出てこない可能性がある。大手自動車メーカーGM系のCruiseでさえ挫折した。ポテンシャルではテスラが台風の目となる可能性があるが、ただの低気圧に変わる可能性もぬぐえない。

こうした情勢を打破するのに、アップルブランド、アップルのネームバリューは絶大だ。後発組とアップルのパートナーシップによる自動運転サービスの登場に期待したいところだ。

■【まとめ】新たなプロジェクトの始動に期待

純粋な自動運転システム開発の面では、もはやWaymoに追い付くのは至難の業となる。しかし、サービス面は開拓されておらず、こうした点に焦点を絞ればアップルが急浮上する可能性は十分考えられる。

これまで培ってきたさまざまな要素技術やサービス、ネームバリューを生かし、アップルが自動運転分野で再始動することで業界全体が活発化する。願望ではあるが、新たなプロジェクトの始動に期待したいところだ。

【参考】関連記事としては「アメリカの自動運転最新事情」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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