トヨタの2025年3月期第2四半期決算発表が11月6日(水)に行われる。中間決算時はメディア向けの会見が行われるのが通例で、世間をあっと言わす大きな話題が飛び出すか注目が集まるところだ。
近々では、10月に米EV大手テスラがロボタクシーを発表した。長年イーロン・マスク氏が温めていた構想がついに目に見える形で姿を現し、大きな話題となった。
もしかしたらトヨタもこの動きに追随し、新たなロボタクシー専用車両の発表など行わないだろうか。トヨタが自動運転タクシーを発表する可能性が極めて低いのはわかっている。発表されれば、それはまさに青天の霹靂と言えるだろう。
しかし、ホンダや日産がすでに自動運転サービス展開に向けた具体的計画を示している事実を踏まえれば、トヨタが発表する可能性も決してあり得ない話ではない。むしろ、発表して然るべき状況ではないだろうか。
果たして、決算発表の場でトヨタ版自動運転タクシーの発表は行われるのか。トヨタの動向に迫る。
【参考】関連記事としては「トヨタの自動運転戦略(2024年最新版) 車種や機能の名前は?レベル2・レベル3は可能?」も参照。
記事の目次
編集部おすすめサービス<PR> | |
米国株投資ならmoomoo証券(株式投資) 自動運転関連株への投資なら!各銘柄の分析情報が充実 | |
タクシーアプリなら「GO」(配車アプリ) クーポン超充実!「実質無料」のチャンスも! | |
頭金0円!定額カルモくん(車のカーリース) 「貯金ゼロ」でも車が持てる!コミコミ1万円から! | |
自動車保険 スクエアbang!(一括見積もり) 「最も安い」自動車保険を選べる!見直すなら今! |
編集部おすすめモビリティサービス<PR> | |
GO(タクシー配車アプリ) | |
最大5,000円分のクーポン配布中! |
■自動運転分野におけるトヨタ
自動車メーカーとしてのトヨタは健在
第2四半期決算としては、先だって発表したグループ主要各社の中で売上高の通期予想を下方修正する動きが出ており、本丸のトヨタも絶好調とは言えない。認証試験の不正による生産減や中国市場の停滞などの影響を受け、予測としては前年同期で増収減益、あるいは減収減益となる見方が強い。
ただし、あくまで絶好調ではないだけで、不調ではない。需要は依然として堅調で、本業としては「強いトヨタ」が顕在だ。為替の影響は避けられないものの、業界をリードする立ち位置はまだまだ続きそうだ。
自動運転分野では影をひそめる?
一方、自動運転関連では依然としてトヨタは動きを見せない。2024年10月にNTTとの協業を深化していく発表が行われた。両社は、交通事故ゼロ社会の実現に向け、切れ目のない通信基盤と大量のデータを賢く処理するAI基盤や計算基盤を組み合わせた「モビリティAI基盤」を共同で構築するという(詳細は後述)。
2023年10月には、未来につながる研究として「路上センシング」の研究開発内容を紹介している。道路に埋め込んだ光ファイバーをセンサーにすることで、車両のみならず人や自転車などの挙動も把握可能にする研究だ。
トヨタが見据えるのは「移動」そのものの変革?
こうした自動運転をはじめとした未来の道路環境や社会を大きく見据えた取り組みが目立つ。Woven Cityもそうだ。自動運転車に限らず、ヒト、クルマ、社会を繋げるさまざまな実証実験を行っていくモビリティのためのテストコースと位置付けている。
モビリティカンパニーを目指すトヨタは、より大きな視点から「移動」を見つめているのだ。100年に一度の大変革を「自動車」の枠に留まらせず、「移動」そのものの変革と捉え、人や社会と結びつけながら次代の在り方を模索しているようだ。
【参考】路上センシングの研究については「トヨタ、「道路埋込型センサー」の研究開始 自動運転時代に先駆け」も参照。
自動運転車の開発は避けて通れない道
とは言え、世界をリードするトヨタが自動運転車を作らなくて良い理由にはならない。目指すべき社会に自動運転が含まれているならば、自動運転車の開発・製造もしっかり担ってこそモビリティカンパニーへの道が拓けるのだ。
これまでにトヨタが実用を見据えて製造・公表した自動運転車両の代表格は、e-Palette(イー・パレット)だ。このほか「LQ」などもあるが、こちらはコンセプトモデルに留まるものと思われる。
「シエナAutono-MaaS」の正式お披露目も?
また、自動運転タクシー向けの量産車としては「シエナAutono-MaaS」が挙げられる。シエナは北米市場向けのミニバンだ。
かつて、トヨタと配車サービス大手の米Uber Technologies(ウーバー・テクノロジーズ)との提携の中で、シエナをベースとした車両にトヨタの高度安全運転支援ガーディアンシステムとウーバーが開発した自動運転システムを連携させ、自動運転ライドシェア車両とする計画が進められていた。
ウーバーが自動運転開発を諦めた後も、その開発部門を買収したAurora Innovation(オーロラ・イノベーション)が改めてトヨタとパートナーシップを結び、シエナにオーロラの自動運転システムを統合している。
このほか、トヨタが出資する米May Mobilityもシエナに自社の自動運転システムを統合し、自動運転シャトルサービスに採用している。
シエナAutono-MaaSそのものの仕様は明らかにされていないが、自動車の製造能力を持たない自動運転開発スタートアップ向けとして支持を集め始めているようだ。トヨタ独自のガーディアンなどが実装されているかは不明だが、自動運転タクシー用途に向いた車両として今後注目度が増すかもしれない。
2024年8月には、トヨタとソフトバンクの合弁MONET Technologiesが東京臨海副都心(有明・台場・青海地区)の公道で自動運転技術を用いた移動サービスを2024年度後半に開始することを発表した。
シエナをベースに、MONET が調達したレベル2の車両2台を使用して自動運転技術を用いた移動サービスを提供するとしている。ここで導入されるADAS・自動運転技術がトヨタ自身のものか他社のものかは不明だ。
【参考】MONET Technologiesの取り組みについては「やはりトヨタが大本命!ついに「自動運転レベル4」、お台場で展開か」も参照。
JPN TAXIの自動運転化にも注目
もう一台、今後注目を高めていく可能性があるのが「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」だ。ユニバーサルデザインのタクシー向け商用車として2017年に発売され、全国のタクシー事業者が広く導入している。
このジャパンタクシーを改造し、自動運転タクシーとする取り組みも進められている。ティアフォー勢だ。同社とJapanTaxi(現GO)、アイサンテクノロジー、損害保険ジャパン日本興亜(現損害保険ジャパン)、KDDIの5社は2019年、JPN TAXI10台を自動運転化し、2020年を目途にサービス実証を開始すると発表した。
遠隔監視による運行など実証を積み重ね、2024年5月の発表では、東京都内のお台場の複数拠点間でサービス実証を行い、2024年11月から交通事業者と共同で事業化を目指すとしている。
段階的に区画と拠点数を拡張し、2025年にはお台場を含む東京都内3カ所、2027年には都内全域を対象に、既存の交通事業と共存可能な自動運転タクシー事業を推進する計画だ。
同事業にトヨタは直接関わっていないものと思われるが、北米におけるシエナのように、国内ではジャパンタクシーの自動運転化が進むかもしれず、自動運転に向け最適化した「ジャパタクAutono-MaaS」が開発される可能性も考えられる。
さまざまなスタートアップへの出資やパートナーシップを通じて、自動運転化に適した車両の仕様をトヨタは掴んでいるはずだ。BEV対応など課題は残るが、車両面では自動運転タクシーを量産化する準備は整ったと言えるのではないだろうか。
【参考】ティアフォー勢の取り組みについては「東京に自動運転タクシー!トヨタ車で11月事業化へ ティアフォー発表」も参照。
自動運転開発は進んでいるのか?
後は、自社開発を進める自動運転システムをどのような手法で強化し、実用化への道を切り拓いていくか――だが、トヨタの場合、この部分の情報がほとんど表に出て来ないのだ。
ガーディアンとショーファーの存在は明かされているものの、その開発状況に関する情報はほぼ出てこない。e-Paletteを用いた実証も増加傾向にあるが、自動運転システムそのものにスポットを当てた情報はほぼ出てこないのだ。
意図的に情報を隠しているのか、あるいは開発が全く進んでいないかのどちらかだが、さすがに後者は考えにくい。日本国内、あるいは米国拠点のTRIで相当の経験値を積み重ねているのではないだろうか。
参考までに、米カリフォルニア州道路管理局(DMV)によると、2022年12月から2023年11月までの期間でウーブン・プラネット・ノース・アメリカが自動運転車による公道実証を行った総距離は4,194マイル(約6,750キロ)に上る。
Waymoなどと比べるとはるかに少なく、ちょこちょこ実証しているレベルだ。他州の状況は不明だが、それほど公道実証を強化している印象を受けない。
どこまで水面下で研究開発を進めているのか不明だが、それでも手を抜いているとは考えにくい。自社による自動運転サービスの実装を急いでいないだけのような気もする。開発競争に乗らず、ビジネス面や社会受容性を踏まえた上で他社よりも遅い実装時期を計画しているのかもしれない。
他社との競争を意識して社会実装を急ぐのであれば、あくまで可能性の話だが、パートナー企業を買収して一気に攻勢に出ることも考えられる。GM×Cruiseのイメージだ。トヨタのプライドがそれを許さないかもしれないが、国外におけるサービス実装であれば十分考えられるのではないだろうか。
いずれにしろ、自動運転タクシー仕様の車両を発表できるフェーズには達しているはずだ。シエナベースかジャパンタクシーベースか、あるいは新モデルか。こうしたモデルを改めてお披露目する機会が近い将来訪れるのではないだろうか。
【参考】e-Paletteを活用した実証については「トヨタe-Paletteの「お蔵入り説」は嘘だった。自動運転シャトル、徐々に表舞台に」も参照。
■トヨタの最新動向
NTTとモビリティAI基盤構築へ
トヨタとNTTは2024年10月、モビリティAI基盤の構築に向け協業を深化させていくと発表した。
交通事故ゼロ社会の実現には、クルマ側でのデータドリブンによる運転支援技術の高度化や将来的な自動運転技術の開発に加え、ヒト・モビリティ・インフラが「三位一体」で絶えず繋がるインフラ協調型の取り組みが必要という。
これらを実現するため、トヨタは安全安心を第一優先としたSDV(Software Defined Vehicle)の開発を進めているが、このSDVの進化と並行して、高速・高品質な通信基盤と膨大な情報を収集し効果的・効率的に処理するAI基盤や計算基盤といったインフラの構築がより重要になるとしている。そこでモビリティAI基盤の出番だ。
モビリティAI基盤は、①分散型計算基盤(データセンター)②インテリジェント通信基盤③AI基盤──を基幹要素に据える。
AIで膨大なデータを分析・処理するためのデータセンターを、NTTのIOWNの次世代光通信技術を活用し、分散した場所に設置する。電力の地産地消の実現や高い電力効率を実現し、膨大な電力のグリーン化を推進する。
通信環境面では、市街地や地方・郊外などのさまざまな交通環境・状況に適した切れ目のない通信により、ヒト・モビリティ・インフラを協調させる仕組みを構築する。これらを土台に、多様なデータを学習・推論するモビリティAIの実現を図っていく計画だ。
モビリティAI基盤の業界における標準化を見据え、両社で2030年までに5,000億円規模の投資を見込む。2025年以降、モビリティAI基盤の開発をスタートし、2028年ごろからさまざまなパートナーを交えながら、三位一体のインフラ協調による社会実装を開始し、2030年以降の普及拡大を目指す。
【参考】IOWN構想については「NTTが「自動運転」に照準!モビリティ分野の取り組みに多方面で参画」も参照。
■【まとめ】SDVやBEVを優先?その後に自動運転?
トヨタの現在地としては、SDVやBEV開発・実装に注力している印象が強い。自動運転よりも、まずは自動車のコンピュータ化(ソフトウェア制御化)と動力面の変革という根本的な部分で競争力を持たなければ、メーカーとして衰退していくことは避けられないためだ。
これらの変革にめどが立てば、いよいよ自動運転を本格化させるフェーズに入るのかもしれない。ソフトウェアプラットフォーム「Arene」やWoven Cityの始動を考慮すれば、その時期は来年2025年に訪れるかもしれない。
トヨタの自動運転戦略が明かされる日はいつ訪れるのか。まずは決算発表に注目だ。
【参考】関連記事としては「自動運転中のテスラ、「減速せずに」シカに激突」も参照。